学戦都市アスタリスク ~朝霧海斗のいる六花~ 作:みるくぜりぃ
初SSです。
―――レヴォルフ黒学院
それは≪星脈世代≫の少年少女を集めた学園水上都市六花に存在する六学園のうちの一つ。
そのレヴォルフ黒学院を含めた六学園の生徒たちは優勝すれば好きな望みをかなえてくれるという≪星武祭≫を目指して切磋琢磨している……らしい。
というのも知識だけであって実際に詳しいことはしらない。
そのレヴォルフ黒学院の前に俺、朝霧海斗は立っている。
すべての物事において0と100はないと思っている俺だが,レヴォルフ黒学院高等部の生徒になるとは
俺の人生において限りなく0に近い事象だったのは間違いないだろう。
事は1か月前に遡る。
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日本の暁東市。ここは日本の中でも有数の都市で特にお金持ちが住む高等区が存在する町。男子は資産家を護衛するためのボディーガードとして、女子は一流のお嬢様になることを目的とした学園、憐桜学園がある。そして俺はその憐桜学園にボディーガード候補生として在籍していた。
まあ今、その学園をやめてきたとこだが。
「さて、これからどうするか」
手持ちは俺をこちら側に連れてきた張本人である憐桜学園校長の佐竹から与えられたスーツと腕時計、それに一年間の迷惑料として仕方なく受け取った1万円、これだけしかない。
ほぼ無一文。衣食住どれをとっても満足にはない。
それどころか学歴も戸籍もない。人権すらあるのか怪しい。
「まあ、なるようになるだろ」
最悪あの場所、禁止区域に戻ることになるだろう。今でもあの場所でも生きていく自信と力は持ち合わせているつもりだが……。
これからのことを考えながら何気なしに時計をみて日付を確認する……と、
「き、今日はなにわ探偵シリーズの発売日じゃないか!?」
本をこよなく愛する俺だがその中でもお気に入りのなにわ探偵シリーズ。
臨時収入も入ったことだし本に全部使おう。金を持ち歩くのは俺に合わない。
どうせなら本屋で1週間ぐらい立ち読みをしてから買ってやろう。
その間は公園のベンチで寝て、飯はその辺りにいるすずめでも雑草でも食べれば問題ないだろう。そうと決まれば本屋だな。
立ち読みで何時間粘れるかのギネス記録を目指し、本屋に向けて歩き出そうとして―――
「朝霧海斗君だね」
ふいに後ろから声をかけられる。
後ろを見るとスーツを身にまとった中年の男が立っていた。
知らない男だ。周りには5人ほどボディーガードを連れている。姿はみえないが4、5人ほど人混みに護衛が紛れているようだ。佐竹の知り合いか、はたまた憐桜学園の関係者か。
「そうだが……そういうあんたはだれだ?」
警戒感を露わにしながら尋ねる。
「これは失礼……私はこういうものです」
そういいながら名刺を差し出すおっさん。
「統合企業財体ソルネージュ幹部……?」
と書かれた名刺を渡された。
本でみたことがある。確か六花に構える六学院の一つであるレヴォルフ黒学院の運営母体となっている統合企業財体のひとつであったと記憶している。そして統合企業財体と言えば国すら頭が上がらないことで有名であり、いわばこの世の支配者といえる存在だ。
「んで、天下の統合企業財体の幹部のおっさんが一般市民の俺になんのようだ?」
おっさん呼びに後ろの護衛たちの視線が鋭いものへと変化した。
「私はまだおっさんと言われるような年齢ではないのだが―――まあいい、これ以上の話はとりあえずそこの車に乗ってからにしよう」
そういいおっさんは車を指す。いかにもVIPが乗る車でテロや狙撃による暗殺を防ぐためか一般車とは違う素材でできていた。
「大した予定はないし、それに天下の統合企業財体の幹部が俺に何の用があるのか、というもの気になる。おっさんについていくのはいいが……あんたが本当にソルネージュの幹部かもわからない上にぞろぞろと護衛を連れていくのは気に入らねえー――ここで護衛を全員外せ」
無理難題を吹っかけてみる。何かの拍子に車内で護衛に襲われても問題はないが。
「君がそう望むならそうしよう―――お前たち今日はもう帰っていい」
護衛に向けてそう発言する。
「さすがにそれは容認できません せめて私だけでも―――」
食い下がる一人の護衛。依頼主に直接意見するところから護衛のリーダー格なのだろう。
周りの護衛たちも頷いていることから同意見だろう。
「同乗するならクビにするがそれでもかまわないか?」
護衛たちに向かってそう発言する男。これには護衛たちも困った表情を浮かべたが……
「わかりました……では全員外させていただきます」
しぶしぶといった表情を浮かべながらリーダーはそう言い残し、去っていく。去る途中にこちらを再度鋭くにらんできた。ここで食い下がってでも、と護衛を続けないことに対して薄情に感じるかもしれないが≪落星雨≫以降は企業の気質を反映した営利主義が一般人にも蔓延しているそのせいだろう。護衛であっても利益がなければ主を護ろうとはしない。
「おっさんに一応言っておくが、このあたりの人混みに紛れているあんたの護衛も全員帰せよ、後ろから車でついてくるのもなしだ」
そういうと男は一瞬驚いたような表情をし、
「もちろん全員帰そう というよりも気づいているとは思わなかったよ」
「明らかにほかの一般人と気配が違うからな」
たぶん尊とかには難しいかもしれないが禁止区域の人間やプロのボディーガードなら気づくだろう。
そうして俺は車に乗り、二人だけの車は走り出した。
「で、おっさんは俺に何の用だ」
車が走り出してから数分、おっさんに尋ねる。
「まあとりあえずこれをみてくれ」
そう言っておっさんは紙の束を渡してきた。一番上には―――
「レヴォルフ黒学院のパンフレット?」
そうあの六花にある≪星脈世代≫が通う学校の一つであるレヴォルフ黒学院。
「まさかここに入学しろってんじゃないよな」
一抹の既視感を感じる。佐竹もわざわざ裏に来てまで入学を勧めてきたしな。
「そのまさかだよ―――朝霧君、君には私たちソルネージュが運営するレヴォルフ黒学院高等部に入学してもらいたい」
「はっ、冗談だろ 俺が何者なのかわかっているのか」
「君のことなら数か月前から調べてある。君の出身、生い立ちからすべてだよ。もちろん佐竹校長の用意していた嘘の経歴ではなく本当の経歴だ」
力強い瞳で俺を見つめながらそう答える男。そういえば以前読んだ本にはレヴォルフは黒猫機関と呼ばれる優秀な諜報機関を保有していると書いてあった。その力を使ったのだろう。
「しかし、ますます俺をレヴォルフに入れようとする意味が分からないな 非≪星脈世代≫の俺をわざわざ禁忌を犯してまでも入学させようとする理由がないだろ」
俺は当然の疑問を口にする。
「まずレヴォルフに君を入れようとする理由から話そう 君の強さも一因ではあるけど一番の理由は君の親と私が知り合いであるということかな」
―――以前にも聞いたことがあるような理由。そう、俺が表の世界に出てきた原因だった。
「俺の親っていうと、おっさんは親父の知り合いか?」
「いや、君の父親―――雅樹さんとは2、3回ほどしかあったことがないね 私は君の母親―――神田川百合さんの知り合いだね」
母親の知り合い―――俺は幼いころに母親を亡くしているため母親のことは知らない。というか母親の名前すら知らない。
俺が困惑しているのをみてか男は写真を渡してきた。そこには男の若いころの姿と一緒に写っている女性―――ほとんど覚えていないがかすかに残っている母親の姿の記憶と合致する。この男は確かに母親の知り合いのようだ。
「とりあえずおっさんが俺の母親の知り合いってことはわかったがなぜ俺を学校に連れていく?」
「それは―――君の母親、百合さんへの恩返しかな」
男は小声でそう言い、どこか昔を懐かしむような顔を浮かべていた。
そして少ししてから我に返り―――ほかの疑問に答えよう、とそう切り出した。
「一番の誤解についてだけど、君は自分のことを非≪星脈世代≫とおもっているみたいだけどそれは間違いだよ―――君は≪星脈世代≫だ」
驚きの事実を告げる男。
「はっ、さすがに冗談だろおっさん―――≪星脈世代≫って魔法みたいに毒素を操ることができたり、歌うことで身体強化ができるいわば魔法使いみたいなものだろ? 俺にはそんなことできねえが」
憐桜学園時代に観た去年の≪王竜星武祭≫の決勝戦を思い出す。憐桜学園では近年増加傾向にある≪星脈世代≫による犯罪も想定し、俺たちの世代から授業内で≪星武祭≫の決勝戦をみるという特別授業があった。
といっても初年度のカリキュラムのため手探り状態で、本当にただ自由に観るだけといったゆるい授業だったが……。
ちなみに尊と侑祈を含めた男どもがやたらとはしゃいでいた。
まあ無理ないな、なんせ去年の決勝は世界的な歌姫であるシルヴィア・リューネハイムと六花最強と呼ばれている孤毒の魔女オーフェリア・ランドルーフェンだったしな。
どっちも容姿が良いし、女っ気に飢えた男どもの集まりである憐桜学園で女に興奮しないやつの方が珍しいだろう。俺としても見世物として面白かったしな。
ちなみに薫は尊を含めた男たちにごみをみるような目を向けていたらしい。
それによってまた男色に目覚めたやつもいた―――薫、罪なやつだ。
―――と、話の途中だったな。
そう思い意識を過去から戻し、男の目をみると、男が話始めた。
「君がそう思うのは無理ないよ なぜなら君が≪星脈世代≫として覚醒したのはここ4か月前程度だからね ここ最近体を持て余しているような感覚があるんじゃないかな」
―――確かにここ最近は100%の力を出すことができないような気がしていた。実際に本気をだしたわけではないからわからないが、どこか体を持て余しているような感覚があったのは確かだ。
「≪星脈世代≫ってのは後天的になることなんてあるのか?」
≪星脈世代≫に詳しいわけではないが、少なくとも俺は知らない。
「一応、確認はされていたけど比較的珍しいケースではあるよ 感動や不快感、驚きといった強い感情によって覚醒することがあるね 4か月前に衝撃的なことがあったのではないかい?」
4か月前、と言われ記憶をたどっていくと確かにあった―――人生で一番といってもいいレベルの衝撃が―――
「君の≪星辰力≫はかなりのようだ それこそ私たちのレヴォルフでも冒頭の十二人に余裕で入れるほどにね―――ぜひとも思い当たることがあるなら教えてほしいぐらいだね」
そう言われ俺は困惑する。
なんせ4か月前にあった人生で一番の驚きっていうのは―――尊の下半身のブツが膨張時ですら俺の小指の半分程度でしかなかったということが露見した事件であった。
いや、確かにタオルで下隠していたから気にしているだろうと思っていたがあれほどとは……。
さすがに同級生の下半身事情で≪星脈世代≫として覚醒した―――なんて恥ずかしい覚醒方法は俺でも嫌だな。
ましてそれを教えるのはさすがに……≪星武祭≫に出場し、インタビューで≪星脈世代≫に覚醒した理由を語る俺を想像する。
『元同級生のブツの小ささに驚いて覚醒しちゃいました、てへっ』
笑顔で答える俺と冷めた目の記者たち。年一の放送事故になることは間違いないな。
経緯は一生俺の胸の内にしまうことを固く決め、知らないと男に告げた。
いや残念な顔しないでくれ。
「少し話を脱線したが、ここまで経緯を聞いてどうだろう、朝霧君、君にはレヴォルフ黒学院にぜひとも入ってほしい 君の戸籍問題などはすべて私たちが何とかするし、衣食住提供、学費免除も約束しよう」
男は頭を下げた。破格の条件に加え、少しばかり気になる俺の母親のことを知っている男。
ついていけば色々と知れるかもしない。
だが俺の答えは決まっている。そうして断ると言おうとしたが―――
「と、ここまでいっても君は断るだろう―――ということで秘策を用意した」
自信満々で語る男。ふっ、甘いな、今の俺は1億つまれても首を縦にはふらない―――。
「大久保ブーデ先生の未発表作品を私は1冊持っている……それでどうだろう」
「入学しよう」
速攻で答える俺。
見事な即落ち3コマが決まった。
こうしてパンフレットの下にあった入学に関する同意書にサインし、俺は男に手渡す。
そしてどこへ向かっているかわからない車に乗りながら、レヴォルフのパンフレットを眺めていると―――
六花は君を退屈にしないよ、と男は何気なくつぶやいた。
―――退屈、それは唯一俺を殺せるもの。その言葉を聞き、俺の口角が少し上がった気がした。
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1か月前の事から意識を今に戻す。
―――退屈がない日々。
それが本当にあるのか……少し楽しみだな。
俺は少しの期待を胸に校舎に向かって足を踏み出した。
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特に海斗の言動とか怪しい気がする。
尊のブツのサイズは完全想像です(小さかったはずですが)
海斗の過去もどこかで入れれたらいいなあ……
書き溜めとかは一切ないです。
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シルヴィ、オーフェリアのダブルヒロイン
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