学戦都市アスタリスク ~朝霧海斗のいる六花~   作:みるくぜりぃ

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お久しぶりです。
かなり間隔が空いてしまいました。
多忙で次回もかなり間隔が空きますが出来るだけ頑張っていくのでよろしくお願いします。



孤毒の魔女

尾行されていた日から数日後の放課後。

 快晴の今日。外で本を読もうと思い立った俺は以前買った本をゆっくり読める場所を探して外をさまよっている。

 数十分さまよったのちに公園内に設置されたベンチを発見した。 

 ちょうど日陰になっていて本を読むのには最適だな。

 そう思い読み始める。

 

 

 「なかなかおもしろかったな」

 時刻はすでに19時を回っている。

ふとそれまでは気にしていなかった辺りを見回す。

 広がるのは照明によって照らされた白百合の花畑。実際にみたのは初めてだ。

 百合か。俺の母親のことが頭によぎる。

 しかし実際、記憶の中に母親の記憶なんてほとんどない。

 元々お嬢様だったらしい俺の母親、神田川百合。

 そしてボディーガードだった俺の父親、朝霧雅樹。

 そんな二人が禁止区域に来た理由。

 一番可能性のある理由を考えるなら親父はボディーガードとして一番の禁忌を犯したのだろう。

 ―――護衛対象者と関係を持ってしまった。

 結果として禁止区域に逃れるしかなかったのだろう。

 そこで生まれたのが俺。戸籍も人権もすべて持たない人ならざる者。

 俺の中にある母親の記憶と言えば俺に向かって笑いかける母親の顔。それだけだ。

 となりで親父も笑っていたような記憶もある。

 「そんなわけないだろ」

自分の中の記憶を鼻で笑いかき消す。

あの最低で残虐非道なクソ親父が息子を見て笑いかけるはずがない。

親父の事を思い出せばよみがえってくるのは地獄のような日々。

廃ビルの7階から落ちて足を折れば怒られ、男は殺せ、女は犯せと命じ、出来なければバン一切れで息子を男色家に売り飛ばすような奴だ。

あのような優しい笑顔をするわけがないだろう。

それにしても俺には母親の記憶がない。クソ親父は何も言ってなかったが俺が自我に目覚める前に死んだのだろう。お嬢様には禁止区域の生活が合わなくて病死や餓死で死んだのか、はたまた―――いずれにしてもろくな死に方はしていないだろうな。

 

 

―――過去に思いを馳せても意味はない。今あるのは親父も母親も死んだという事実だけだ。

そう思い、頭の中にあった雑念を振り払う。

―――そろそろ帰るか。

辺りは街灯と白百合畑を照らす照明の光だけで人のいる気配もほとんどない。

暗闇は怖いからな。

ベンチから立ち上がり、さっさと帰宅しようと立ち上がる。

立ち上がった時にふと白百合畑の向こうを眺めると糸杉とその前で立つ一人の白髪の女だろうか。遠くて判別が難しいが身長や体のつくりを見る限り女だろう。しかもレヴォルフの制服を着ている。

ろくでもないやつだろう。絡まれると面倒だ。

悲しいことに最短距離で変えるなら女の方向だ。

仕方ない、遠回りして避けるか―――。

そう考えたが俺の足は女の方向へ向かって歩き出した。

どうしてだろうな。

レヴォルフの生徒に近づかない方が良いという一般常識に相反する行為を楽しみたかっただけなのか。

―――それとも女の背中を見ていると昔の俺、表の世界を知らず、優しさに触れていない頃の自分と被って見えたからかもしれない。

 

歩き始めて少し、俺は糸杉の前に佇む女の近くまでやってきた。

遠くでみたときよりはっきりと女の背中に感じる孤独、悲しみ。

昔の自分に少し似ている。だからだろう、女の背中に向かって声をかける。

「お前が眺めているのは糸杉だな」

女に反応がないので話を続ける。

「糸杉と言えばゴッホによって描かれた糸杉と星の見える道が有名だな。あれはゴッホが自分自身の中にある強い死の予兆を反映したものだといわれている。西洋の方では糸杉と言えば死の象徴と考えられているらしい」

「……」

女は沈黙を貫く。

「そんな辛気臭いもの眺めるよりこっちに広がる白百合畑を眺めるほうが良いと思うけどな」

「……花には興味がないわ」

沈黙を破り、糸杉を眺めながら背中越しに女は言う。

しかし花には興味がないか―――。

「それは嘘だな」

俺はきっぱりと言い切る。

背中越しに女はどうして?といった反応を見せているような気がするので続ける。

「お前は向きこそ糸杉の方を向いてそっちを見つめているが、明らかに意識は後ろに向いているからな」

「それはあなたが後ろから話しかけて―――」

「―――いるから俺に意識を集中させているだけというだろうが、それは絶対に違うな。なぜならお前は俺が話しかける前、それ以前の俺が向こう側のベンチに座っていた時から後ろに意識を向けていた。後ろから襲われることを警戒してという可能性もあるが人の気配はない。それにお前とまだ距離があるにも関わらず感じるこの≪星辰力≫から察せられるお前の実力、レヴォルフの生徒で白髪の女ということから推測される人物を考えると誰もお前を襲おうとは思わないだろうからな」

 

少し俺たちの間に沈黙が流れたのちに女は口を開く。

 

「あなたは探偵?」

 

「いや探偵じゃねえよ、ただの推理小説好きだ」

 

「そう……」

 

再び沈黙が流れたのち再び女の方が沈黙を破った。

 

「私の運命はこことともにある」

女は右手を左胸に充ててそう言う。

左胸にあるものと言えばレヴォルフの校章。レヴォルフの従順な犬ということだろうか。

―――しかし運命か。気に入らねえな。

どこかあきらめを感じる背中からこいつは自分の運命とやらを信じているらしい。

 「くだらねえ」

 そう俺は吐き捨て女に向かって歩みを進める。

 「あなたでは私の運命を覆せない」

 そういい、女は背中を向けながら≪星辰力≫を開放する。

 吹き荒れる≪星辰力≫の暴風とまき散らされる毒素の痛みの中俺は一歩ずつ歩みを進める。

 「運命を覆せないか」

 

 一歩歩みを進める。

 背中越しではあるがこの状況で近づいてくる俺に驚いているようだ。

 

 「お前は運命ってものを信じているらしいが」

 一歩。

 

 「そんなものはない」

 更に一歩。

女に向かって歩みを止めることなく進める。

近づくたびに女の動揺が大きくなっているような気がする。

それもそうだろう。顔こそ見えてないがこの≪星辰力≫と毒素の嵐の中を臆することなく迫ってくる奴がいるのだからな。

近づくたびに痛みも増してくるが表情に出さない。クソ親父の教えがこんなことに役立つとはな。俺は微笑を浮かべて一気に近づき女の手を取り、こちらの方へ振り向かせる。

それと同時に女が観念したのか≪星辰力≫の嵐がやむ。

そしてそのまま白百合畑へと引き込む。

女の顔を見ると予想していた通りの顔があった。

≪孤毒の魔女≫オーフェリア・ランドルーフェン。

世界最強の≪魔女≫と呼ばれる女で前回の≪王竜星武祭≫の覇者だ。

そして困惑した表情の中にも優しい笑顔が見て取れる。

―――やっぱり花、好きなんだな。

 

「変わった人だわ」

 

「よく言われるな」

 

女は笑みを浮かべる。

実際に憐桜学園にいたころはあいつらにも言われたことがあるしな。

 

「あなたの名前は?」

 

首をかしげて上目遣いで尋ねてくる。

 

「俺の名前は朝霧海斗だ 好きな風に呼べばいい」

ウンコマンとかじゃなきゃなんでもいい。

 

「じゃあ海斗……私の名前はオーフェリア・ランドルーフェン オーフェリアって呼んで……?」

 

「わかった オーフェリア」

 

そう言うとほほ笑むオーフェリア。

まとっていた悲壮感や孤独感は消えてなくなっている。

それから二人で照明によって照らされた白百合畑を眺めていた。

どちらからも話すことはなかった。

ただ無言で流れる時間。

数分か数十分だったかわからない。

だが少なくとも悪くない時間ではあった。

時間が時間だけに帰宅の流れとなった。

「それじゃあ海斗……また」

今まで見たこともないとびきりの笑顔を浮かべてオーフェリアは言ってきた。

月光に照らされたその笑顔は魅力的であった。

 「気が向いたらな」

 少し照れ臭くなってそう答えた―――。

 

 

 




誤字脱字の指摘、感想、評価よろしくお願いします。
海斗が違うとかあれば指摘いただけると幸いです。

※追記
活動報告を上げさせていただきました。
活動報告には今後の更新頻度、ヒロイン、主人公、今後の作品の以上4つの項目について記述しております。
ご一読いただければ幸いです。

こちらも軽く訂正しました。違和感がある部分があれば指摘のほどいただけると幸いです。

ヒロインについて

  • シルヴィ
  • オーフェリア
  • シルヴィ、オーフェリアのダブルヒロイン
  • その他のキャラ
  • ハーレム
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