side うずまきナルト
周囲を見渡せば、綺麗なクレーターが作られている。ここは木の葉隠の里。かつてそう呼ばれていた場所だったはずだが、一体いつの間にこんな派手なリフォームをしたんだろうな? これじゃあまともな神経を持ってる奴は住まないと思うんだが。
とまあ冗談は置いておくとして……そうか。今日だったか。ペイン六道が木の葉を襲うのは。
圏境。隠遁術。チャクラ使用禁止。光学迷彩。電子による熱源隠蔽。浮遊。これだけやって俺を見つけることができる奴はそういない。俺の親であろうと恐らくは不可能だし、俺と一緒に鍛えたサルケやヒナタであっても無理だろう。……ああ、そう言えばある意味自分だけが記憶を持って逆行するイザナギを基にした幻術、作ったはいいけどバクラにはまだ教えてなかったっけか。
命が消えていくのがわかる。忍に限らず、生きている者たちの命の炎が次々に掻き消されていくのがわかる。気配もチャクラも感じなくなっていく。
……正直、俺はこの時を待っていたんだ。こうして木の葉が襲われ、俺に付けられた全ての監視の目がよそに行くこの時を。俺は、俺自身による復讐を求めない。俺が知らない間にいつの間にか勝手に死んでいてくれるのが一番ありがたい。できる限り相手の事を思い出したくも無いし、できる限り存在してほしくもない。
そう考えるとこのタイミングで木の葉の里を襲撃し、かなりの人数を殺してくれたペイン六道には感謝の言葉を捧げてもいい。俺の存在を認めようとしないのはどうでもいい。俺もそいつらの存在を認めないし認識もしないだけだから構わない。だから死んでいても知ったことじゃない。だが、俺に直接的な害を齎した奴がどんどんと死んでいくのがチャクラで分かるこの状況はとても愉快だ。
だが、未だに俺に敵意を向ける奴もいる。ペイン六道の狙いが俺だと知ると、俺のせいで木の葉の里が襲われたと喚く奴。憎む奴。自分の命のために知っている限りの俺の情報を簡単に話す奴。耳が良すぎるってのも考え物だな。そう言うのが大体聞こえてしまう。音楽を使った術を使っていたせいかそう言うのに結構敏感になってしまった。
今更下がるような株もない。本当ならこの場でどこぞの目玉爺からの悪因を悪果で返してやりたいところだが、あの自業自得爺の始末についてはサルケに譲ってしまったから殺せない。……殺さなければいい。
根は壊滅した。イザナギを使う間もなく手足を斬り落として右目を奪い、さらに右腕に埋め込まれていた十の写輪眼も奪ってから最低限の止血をし、経絡系にチャクラを流せないように点穴を塞ぎ裏四象封印を発動できないように皮膚を刻み、隠れていた木の葉の地下深くに放置してきた。初代の細胞が無いから回復力は人並み。チャクラも人並み。写輪眼も無いからイザナギは使えず、俺に自身を助けさせるために別天神を使おうにも右目の万華鏡写輪眼は無くなっている。まあ、今の今まで生きてこれたんだ。幸運を噛みしめながら残り短い人生を過ごすといい。
根の人員の死体を全て磨り潰し、特殊な術や血継限界の使い手を焼き払う。細胞の中で細胞を壊しながら増殖する毒蟲がいなければ焼いたりしないで済んだんだが、居たからな。仕方ない。俺に効かなくても自業自得爺には効果があるだろうし、ここに来るだろうサルケにも十分に効果が出てしまう。流石にそれは無いからな。
俺は影分身を解いて本体に記憶と使っていないチャクラと一緒に合流した。
……ああ、どうやら終わったらしい。奪ったものはちゃんと共有の戦利品倉庫(
『にくらまだな、にくらま』
おや、ようやっと回復したか。お前さんが一番だよ。褒美にちょっと俺自身に幻術をかけて五年くらい時間を進めてお前の名前を憶えてやろう。ちょっと待ってろ。
『え、いやべつに―――』
覚えたぞ、守鶴。
『はっや。まじはっや。なんでそれをいつもやらねえんだよ?』
これ精神的に疲れるんだよ。それにわざわざ覚えたくもない上に覚える価値もない奴のために使いたくはない。暇な時間は寝ていたいんだ。どっかの誰かさんのおかげで無理になったけど。
『そうかい。たいへんだな。どうじょうはしねーけど』
いらんいらん。むしろ同情なんぞされてたらもう一回発狂してもらってたかもしれん。
『こえーなおい。……そうだ、くらまとちょうめいももうすぐおきるぞ。くらまははんぶんなせいかふだんよりかいふくがおせえ』
そりゃ仕方ない。諦めるしかねえな。
Q.木の葉は滅びますか
A.今まさに滅んでます。
Q.ダンゾウは死んだ?
A.サスケに殺させる約束をしてるので死んでません。