side 日向ヒナタ
ペインのうち五人を片付けて、残ったのがナルト君のお父さんがどこかに飛ばしたあの一人だけになったところで、突然上から思い切り圧し潰された。それは私だけじゃないようで、サスケ君やサクラちゃんも地面に叩き付けられている。
重圧は広がっているようで、里のほぼ真ん中で戦っていた私達を巻き込んで木の葉の里の建物の殆どが崩壊して行くのが見える。その崩壊の中心部は、私たちのいるこの場所。顔を動かすことはできないけれど、白眼の力で上に視線をずらしてみると……そこに飛ばされたはずのペインの一人がいた。
他に周囲を見渡してみると、私たちが倒したペインの死体が存在しない。衝撃に耐えながら視界を広げて探してみれば、木の葉の里の壁の外、少し入った森の中に六体のペインが倒れ伏していた。
そのうち一体は私たちが戦っていた六体の中にはいなかったけれど、見覚えがある。あれは自来也様が持ってきたペインの亡骸と同じ顔。つまり、ペインはあれを奪って直してから隠し札として残しておいたんだろう。だから四代目様に飛ばされたあの一人が戻ってきて、今こうして木の葉を壊している。
それどころか、この威力だと耐えられるのは私くらい。サスケ君は須佐能乎が頑丈だけどあれはあくまで鎧のようなもの。鎧の中身は普通の人間より少し頑丈程度でしかない。四代目様はどうかは知らないけれど、サクラちゃんは前線で戦えると言っても医療忍者。耐えるのではなく無理矢理治すのでは負担がかかりすぎる。私とサスケ君はある意味慣れているけれど、これに耐えられるとは思えない。
十数秒。粉砕され削り飛ばされた地面から身体を起こすと、ズタズタにになったサクラちゃんと須佐能乎に身を包んだサスケ君、そして瞬身の術で突然現れた四代目様。ただ、四代目様もかなりボロボロだ。一度受けてから何とか術を起動して致命傷だけは避けたんだと思うけれど、状況は悪化の一途を辿っている。口寄せされた動物たちを止める数は既になく、少し離れた森の中では応急で直された傷を治すペインがまず自身を治し、次々に倒したペイン達を治している。
……北斗神拳が通じればもう少し楽だったんだけど、死体相手に通じる技は持っていない。反射技もチャクラを見ることができる相手には不意打ちの効果は無くなってしまうし、そもそも普通の放出系の忍術をほとんど使ってこない相手には相性が悪い。柔拳は撃ち込む度に一瞬経絡系が乱れて動きが止まるけれど次の瞬間には元通り。これは本格的に詰みに近い。そして何より……お腹が空いた。ナルト君がくれた不思議な豆はこれでおしまい。ここから先は消耗戦になる。
サクラちゃんの百豪の術にはまだ余裕があるようだけれどどうも出力を上げる度にだんだんと動きが荒くなってきているように思える。サスケ君もチャクラがあまり残っていないようだし、まだ多少余裕があるのは四代目様だけ。
「サクラちゃん。大丈夫?」
「……えっと……ああ、うん、大丈夫よ」
明らかに大丈夫じゃないと思ったのでサクラちゃんを白眼で見てみると、お腹からではなく頭からチャクラが湧き出ている。それも凄まじい量が。そしてチャクラが湧き出る度にサクラちゃんの顔が苦痛に歪み、ぶつぶつと何かを呟き始める。
「大丈夫……私は、春野サクラ……木の葉の里の、忍者……大丈夫……まだ覚えてる…………!」
「まだ覚えてる? ……サクラちゃん、まさか記憶を力に!?」
「あれ? えっと……ごめんなさい、誰だかはわかるんだけれど名前が出てこないの。貴女もこの術を知っているの?」
「使えはしないけど知ってはいます。……どのくらい焼いたの?」
「そうね……もう両親の顔は思い出せないわ。名前もね。でも大丈夫、まだ私は戦える」
「……そう」
柔拳でサクラちゃんの意識を刈り取る。流石に自分の名前すらいちいち確認しないといけないくらいに記憶を焼いているサクラちゃんにこれ以上無理をさせるわけにはいかない。もう使っちゃった分についてはどうにもならないけれど、残っている分ならなんとか記憶に戻したりできないだろうか。
いや、今はそれよりもやらないといけないことがある。サクラちゃんを四代目様に預けて一旦退避させてもらって、それからサスケ君に一瞬の幻術でサクラちゃんに起きていたことと戦線離脱することを伝える。記憶をチャクラに変換する術。多分あれをサクラちゃんに教えたのはナルト君だ。サクラちゃんがサスケ君に置いて行かれてしまっていることを悔やんでいるのは知っていたけれど、まさかナルト君に相談してあんな無茶な術まで教えられているなんて……ナルト君って本当に身の程知らずが好きだよね。
自分の実力以上の力を欲しがる人に、自身の大切な物を削らせながら発揮される力を与える。記憶や知識や感情を焼いてチャクラに変えるあの術もそうだし、自分の血肉を食べさせて成長する武器もそう。私の場合はどんな時でもたくさん食べないと飢えて死んでしまうこの身体がそうなんだと思うし、サスケ君の場合……多分だけど殺されすぎて死への恐怖や忌避感の欠如した今の状態がそうなんじゃないかと思う。
それでも、確かに私たちは貰うものを貰ってしまった。だったらもうやるしかない。
「だよね」
「ああ、そうだな」
サスケ君と拳を合わせる。ナルト君のようにチャクラ無しで自動の心伝身なんてものはできないけれど、チャクラの糸を繋げてお互いの思考や見ている物を常に共有することはできる。
「じゃあ、戦おう」
「ああ。まあ気楽にいこうか」
Q.なんで気楽?
A.危険度の比較対象がガチなナルチカだから。
Q.サクラが記憶の殆ど消し飛ばしてるんですけど!?
A.そう言う術だ。アキラメロン(AA略)
Q.サスケって前回のあれで死んだんじゃ?
A.サスケ「須佐能乎が無ければ即死だった……!」