NARUTO〜ほんとはただ寝たいだけ〜   作:真暇 日間

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NARUTO~118

 

 side 春野サクラ

 

 木の葉隠れの英雄。サスケ君とヒナタ、そして私はそんな言葉で祭り上げられた。ナルトが置いて行った六体のペインの死体。そしてそれに突き刺さっていたサスケ君の刀と、明らかに柔拳の物である内部破壊の跡、そして私か師匠くらいしか出せないだろう拳の跡。間違いなく殺された筈の皆が生きているのは私の行動の結果となり、ペイン達を倒したのは私たち三人とされた。四代目様は存在を隠され、そしてナルトのこと、九尾の人柱力の事は誰一人として覚えていなかった。それこそあの時ナルトの傍にいた私たち以外には。

 私はサスケ君とヒナタが目を覚ますまで近くで待っていることにした。その間、ナルトに渡された幻術・時空輪廻の書を読み続ける。戦いに必要だからチャクラコントロールや身体の動かし方には一切手を付けてこなかったけれどそれ以外の記憶は大半が焼かれてしまっている。完全に壊されてしまったからそもそも無いんだけれど、私は自分の家がどこにあるのかもわからないくらいだ。

 顔はわかる。どんな人かもわかる。どんな術を使うのかもわかる。けれど名前がわからない。そういう人が私達のお見舞いとしてやってきたけれど、今まで成長させてきた感受性や感情まで全部焼いてしまった私は上手く笑えた自信が無い。だから、私はつい言ってしまった。

 

「……ごめん、みんなの名前って何だっけ?」

 

 私の症状は激しい戦いの後遺症のようなものだと診断された。実際には術の反動のようなものであって戦闘によるものではないのだけれど、まあある意味間違ってはいないから別にいい。

 ただ、私が名前を聞いた時の反応は凄かった。いのなんて私の額に触って熱があるかを確認して、ふざけてるのかと聞こうとして私の目を見て本気で分からなくなっていると言う事を察した。そして私が戦っていた相手が敵の記憶を読み取り、魂を抜く能力だった事を思い出して私の記憶も抜かれたのかと心配してくれたようだった。まあ、実際にはほぼ自爆のような事なんだけど。

 と言っても私からするとナルトと言う忘れようにも忘れられない存在を忘れてしまっている皆の方がよっぽど重症に思えて仕方ない。だってナルトだ。あのナルトだ。この場にいる誰もがナルトに一度は自分の秘密を暴露されている。私とサスケ君のは置いておくとして、いのは昔一人で料理をして出来上がったものを味見した時に余りのまずさに昏倒して漏らしてしまったこととかをバラされたし、シカマルは父親のシカクさんが隠している秘蔵の本の場所を全部知っていて時々こっそりと借りていることを知られていたし、チョウジは拾い食いして中ってカロリーコントロールなんてしていないのにがりがりになるまで下痢をしたとか、キバはダイナミックマーキングの練習中に赤丸のことを目で追い続けていたせいで眼球に直撃して悶え苦しんだことがあるとか、とにかく全員が何らかの形で秘密を暴露されている。それこそ自分自身忘れていたかったいくつもの記憶を無理矢理ほじくり返されて泣きそうになった回数も一回や二回じゃない。

 そんな相手を忘れている時点で正気じゃないと思うけれど……術の効果で記憶を燃やされているのだから仕方ない。

 

 とにかく私はやらなければいけないことがある。サスケ君とヒナタにナルトからの預り物を渡さないといけない。そしてその時、もしもナルトの事を忘れているようならその記憶に刺激を与えて思い出させてあげないといけない。それができるのは今では私しかいない。

 まあ、サスケ君とヒナタが起きるまでは待たないといけないんだけれど……一体いつになったら起きるんだろう? ナルトは起きるのに半日くらいはかかると言っていたけれど、それ以上にかかってもおかしくはない。のんびり待とう。

 




Q.サクラはナルチカの事をどの程度覚えているの?
A.重要人物として大体の情報はあります。名前は焼いちゃいましたが。

Q.ナルチカが蘇らせたんだからすぐ起きんじゃないの?
A.記憶が一部焦げ付いているのでその影響です。

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