NARUTO〜ほんとはただ寝たいだけ〜   作:真暇 日間

129 / 195
NARUTO~121

 

 side うちはサスケ

 

 ナルトの残した巻物に紙が挟まっていた。それに従って木の葉の地下施設に行ってみると、そこには身体の大半を樹に飲まれた一人の男が半死半生の状態で存在していた。

 ……こいつが、志村ダンゾウ。うちは一族を皆殺しにするようイタチに命じた男。そう思うだけで殺意がゆっくりと湧き上がってくる。四肢を奪われ片目を抉られ舌を噛み切って自殺しないように歯を全て抜かれ、切り落とされた四肢は焼いて止血されているものの一週間近く飲まず食わずのまま放置されていただろうこともあって全身の肉が落ち、皮はたるんで筋と骨ばかりになっている。

 いつもだったらそんな無残な状態であれば敵であっても少しは哀れに思うのだろうが、今の俺は全くそんなことは思わない。ただ無様と嗤うのみ。

 しかし、嗤ってばかりもいられない。ナルトの報告書によると、この状態でならなんと回復が見込めるらしい。こいつに回復されるのは許さない。絶対に許さない。俺は両目を万華鏡写輪眼に変え、ダンゾウに向けて天照を放った。

 

「グアァァァァ……!」

 

 鈍い悲鳴とパチパチと火の粉がはじける音が空間を満たす。ついでに近くにあった元は人間の物だと思われる無数の死体も同じように焼き捨てておく。天照の黒い炎は狙ったものが全て灰になるまで消える事は無い。かなり危険な術ではあるが、封火法印で封じたり加具土命で消したりすることはできる。ちなみにナルトはチャクラコントロールの応用だとかで術式を分解してチャクラに戻して消していた。意味が解らない。それ以外にも特殊な方法で術そのものを吸収したり斥力で弾き飛ばしたり……ん? チャクラコントロールで何とかする以外はあのペインって奴がやっていたような……そうか!ナルトも輪廻眼を持っているんだ!(名推理)

 そんな冗談はさておいて、ゆっくりと燃え尽きていくダンゾウの姿を眺める。……思った以上に何も感じない。うちはの直接的な敵だと言うのに、ただ燃えていると言う認識だけで歓喜も法悦も感じない。イタチの真実を知り、両親だけとはいえ一族がいるせいだろうか。達成感すら感じないのはどういう事だ?

 ふと手を見下ろしてみる。すると俺の手はフルフルと細かく震え続けていた。感情が昂っている証とも言えるこの現象、しかし俺自身に昂っている自覚は全くない。恐怖もなく、興奮もなく、身体だけが震えると言う事は無い事もないが、俺はここに来る前に毒物を身体に入れた覚えはない。一応幻術返しもしておくが身体の震えは止まらない。

 

 ……ああ、そうか。わかった。俺は興奮しているんだ。俺には全く自覚がないが、精神的には興奮しているんだ。

 そう認識した瞬間に、じわじわとではあるが何かを大声で叫びまわりたいような、あるいは思い切り吐き出してしまいたいような、奇妙な感覚に襲われた。涙が勝手に流れ出し、口からは哄笑が溢れ出す。嬉しいのか悲しいのか達成感と虚無感と様々な感情が入り混じり、俺はとにかく嗤い続けた。笑って笑って声が枯れるまで嗤い続けて、泣いて泣いて涙の色が透明から赤に変わるまで泣いて、死体と仇が灰すら残らず焼き尽くされて、天照の炎に焼かれた地面しか残らなくなった頃になって漸く止めることができた。

 復讐は果たされた。本当ならば木の葉の相談役に収まっているあの二人も殺したいところだが、今の状況であれを殺したら面倒なことになるのは目に見えている。直接的な命令を下した男の首だけで今は我慢しておこう。どうせ後十年もしないうちに勝手にくたばるだろうしな。

 俺の手で殺せないのは業腹だが仕方ない。機会があれば是非殺したいところだが、残念なことにその機会は無さそうだからな。残念なことに。

 

 ……しかし、ヒナタの白眼は凄まじいな。こんなところに居てもまだ見えるのか。方向さえわかっていればそれなりの距離を誰でも見ることができるのが白眼だが、上下を含めたすべての方向を同時に注視するのはヒナタくらいにしかできないんじゃないだろうか。ナルトは……白眼持ってないからできないだろうが、白眼持っていないなら持っていないでまた別の方法で何とか実行しそうな気がする。実際に見えていなくても気配で分かったとかそう言う系統のやつな。

 俺? 俺はそんな人外染みた特技とか持ってないから。気配察知も自分を中心に鈍の間合いの範囲内までしかわからないし、チャクラも色で強さや範囲がわかる程度。ナルトのように見てもいないのにチャクラの集束が甘いとか見様見真似で千鳥を使って指先から放出して千鳥レーザーとかできるほどのチャクラコントロールも無いし、相手が術に変換したチャクラを術からチャクラに変換し直して吸収するとか絶対無理。ナルトじゃあるまいし。

 ともかく俺は普通だ。一般人だ。異常なのはナルトとヒナタ、そしてサクラだ。ヒナタはフィジカル面が頭おかしい。サクラはあんな術を実用している時点で精神面で頭おかしい。そしてナルトはもう全体的に頭おかしい。まったく、強い奴ってのは頭おかしい奴しかいないのか!

 




Q.おう鏡見ろや
A.サスケ「イケメン常識人が一人映っているな」

Q.サスケ君名推理過ぎない?
A.自分で冗談だと思っているのでノーカンで。

Q.ヒナタの白眼、そろそろ転生眼に変わっても良くない?
A.いやいや、まだ駄目。

Q.代償を支払う代わりに強力な力を与えるナルチカはサスケとヒナタにはどんな代償を支払わせたの?
A.サスケは精神の奥深くにまで刻み込まれたトラウマとナルトの言う事ならつい従ってしまう条件反射を植え付けられた代償に力を得ました。ヒナタはナルト以外と食べる食事がどれもこれも非常に味気ないものになるという人生の楽しみを一つ奪われる代わりに力を得ています。サクラは……まあわかるからいいですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。