NARUTO〜ほんとはただ寝たいだけ〜   作:真暇 日間

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NARUTO~27

 

 side うずまきナルト

 

 あまりにも時間が余ってしまったのに加えてどうも俺に対しての不信感が拭えていないようだから、俺の話をするとしよう。

 

 俺の名前はうずまきナルト。四代目火影とうずまき一族の巫女の間にできた唯一の子だ。確認したけりゃ三代目の爺さんにでも聞いてくれ。俺がそう言ってたと聞けば素直に話してくれるだろうよ。

 さて、一応里を救った英雄の息子である俺がどうしてここまで嫌われているのかと言えば、簡単に言うと四代目火影が封印したという九尾の狐のせいだ。まあ落ち着け。これには様々な誤解が入り組んでできてしまった仕方のない出来事みたいなもんでな? 俺は里のことはそこまで気にしちゃいないのさ。

 で、どうして狐のせいで俺が嫌われているかって話だが、簡単な話だ。四代目火影が九尾の狐を封じたのがこの俺の中だからだ。強めにチャクラを練れば今でも封印式が浮き出てきたりするが、面倒だからやらんぞ。

 おかしいとは思わなかったか? 四代目火影が九尾の狐を封じたという話は聞いても、どこに封じたという話は全く聞かないだろう? 普通に考えれば箝口令が敷かれてもおかしくないが、しかし同時にその場所を守るために数多くの忍びが動員されてもおかしくは無い。むしろそうなっていない方がおかしい。何しろ相手は里を焼き尽くした九尾の狐。もしも封印が解けてしまえばそれを封じる術を持った四代目火影はとっくに死んでしまっているのだから被害がどこまで大きくなるか分かったものじゃない。

 しかし、現実にはそうなっていない。なぜか。

 九尾の狐のような所謂『尾獣』と呼ばれる存在は、道具に封印するのはまず不可能だ。封印の内側で暴れられれば少しずつ封印は緩み、緩んだ封印の隙間からチャクラが漏れ出して道具を傷つけ、あっという間に出てきてしまう。だからこそ尾獣は人間の身体に封印されるのが一般的だ。それは俺であったり、お前たちの知っている奴で言えば砂隠の隈が凄いあいつもそうだ。

 

 ……騒ぐなよ鬱陶しい。単なる事実だ。

 ちなみにあいつに封じられているのは一尾、砂の身体を持つ大狸だな。砂の里では老僧の魂がどうとか言われているが、その老僧も俺やあいつと同じように身体の中に尾獣を封じられていたんだろうよ。長生きしちまったからそのことを忘れられたのかもしれないが、流石にそこまで知らん。

 で、尾獣を体内に収めた人間ってのは尾獣から力を得ることによって凄まじい力を発揮できることがある。ただし、それには心を通わせたり会話したりで分かりあった上で尾獣と協力関係を築くか、あるいは尾獣を調伏して力を奪い取るかのどちらかの方法を取る必要があるけどな。

 

 ……俺? 俺は素だ。何もしてない。話し合いはしたが協力関係を築けるほど仲良くは無いし、だからと言って調伏して無理矢理力を奪うようなこともしていない。やろうとすれば調伏の方なら今すぐにでもできると思うが、面倒だしな。多分遊びに使うから貸してと言えば普通に貸してくれんじゃないか? 尾獣のチャクラってのは人間のチャクラとは質がだいぶ違うから、普段の俺じゃ使えない術に使えたりするからな。実用性はともかくとして。

 まあともかく俺が嫌われている理由だが、俺が生まれたのは九尾による木の葉の里襲来と同時だ。そして事件が終わってみれば残っていたのは破壊されつくした里と死んだ英雄とその妻、そして九尾が居なくなると同時にそこに現れたように見える俺だけだった。

 ここまで言えばまあ察するだろう? 里の上層部は俺のことを知っている。なにしろ火影の息子だ。いつ生まれるか。母親が産気づいたのはいつか。そう言ったことを知らないわけがない。そして、四代目が俺につけると言っていた名前を俺につけた。だが、何も知らない木の葉の里の住民は、俺こそが九尾の狐だと思い込んだ。里を燃やし、数多くの人を殺し、四代目火影を奪った化物が、姿を変えてそこに現れたと。

 誤解だ。冤罪だ。事実とは異なる。しかし、全くの的外れと言う訳でもない。実際に俺は外から見れば九尾襲来の直後にこの里に現れたし、九尾が俺の中に封印されている以上俺を指させば中にいる九尾も指さしているような状態にある。そして人間ってのはたとえ事実と違ったとしても自分が納得できる答えを探したがるもので、理不尽を受けたならば欝憤を何かにぶつけたがるもんだ。そして目の前には九尾の狐が化けていると言われている俺の姿があった。自身が様々な物を失ったのに、のうのうと過ごしている俺と言う存在が居た。

 要するに、俺が悪意やら憎悪やらに慣れているって言ったのはそう言うことだ。単なる事実として悪意も憎悪も受け慣れている。三代目の爺さんの目の届かないところで俺を殺そうと首に苦無を投げつけられたこともあったし、買い物をしようとすれば前の奴が10両で買っていったのと同じ物を買おうとすると300両も取られ、挙句にそれを払って店を出ようとしたら泥棒だと叫んで商品を奪い返し、周囲の奴を集めて袋叩きにした挙句に警邏に突き出しやがった奴もいた。

 

 ……さっきも言ったろ。俺はもう里の事なんざ気にしちゃいない。例えこの里が滅ぶとしたら俺は座して見守るし、住人が皆殺しにされるんだったら見捨てる。誰かによって救われるんだったらそれもただ観察するだろう。里のことなどどうでも良いからな。続こうが滅ぼうが知ったことかよ。

 ただ、三代目の爺さんやイルカ先生には色々と気にかけてもらっていたからな。特に三代目の爺さんは暗部の総帥が俺を洗脳して駒としようとしていたのを見とがめ、禁止してくれたからな。そう言うごく少数の悪感情を持ってない相手が居なかったら、木の葉の里を本気で潰す方向に行動してたな。三代目の爺さんたちがいるから木の葉が滅びそうなときでも静観するだけでその血を一滴も残さない方に行動しないと決めているし、今も動いていないんだ。あいつらは今の千倍は三代目の爺さんに感謝した方がいいと思うね。

 

 憎んでるか? さてな。そうかもしれんがよくわからん。九尾曰く、俺の精神構造は常人のそれとだいぶかけ離れてるらしくてな。恋愛、親愛、友愛、性愛と言った様々な形の好意と、嫌悪、憎悪、殺意、嗜虐欲と言った様々な負の感情が同一線上に全部並んでるそうだ。だから俺は誰かを殺したいほど憎いとは思わない。殺したいと思ったらただ殺したい。ひたすらに殺したい。ただただ殺したい。相手の尊厳を踏みにじるとか行動を後悔させるとか謝らせたいとかひれ伏させたいとかそんなことは一切考えない。殺したいと思ったんなら殺す以外は考えない。

 同じように憎むだけならただ憎い憎いと思うだけだ。行動はしない。ただ憎む。ひたすらに憎む。そしてそれらを面にも出さない。代わりに、そいつが助けを求めていて、俺が助け無かったら間違いなく死ぬという時に俺は偶然目が悪くなったり耳が遠くなったりしてそいつの存在を見逃すことがあるかもしれないし、そいつが気付いていない間に狙撃されてこのままだと眉間に苦無が生えるって時には偶然話しかけたい内容を思いついて話しかけて警戒を逸らすことがあるかもしれないが、まあ大したことじゃない。感情が表に出にくくなった原因のくせに『殴っても何をしてもあの表情なのはあの化け狐が化けてるからだ』とか言ってくるような奴の末路なんざ気にしない。

 ただただひたすらに死んでほしい消えて欲しいと思うだけだ。いつか俺の知らないところで俺の知らない間にできるだけ無残に惨たらしく苦しみ抜いて死ねと、心の底から祈るだけだ。大したことなかろう?

 

 まあともかくだ。俺が嫌われている理由も悪意や殺意に慣れてる理由も大体わかったろう? 一人一人からは大したことがなくとも、千人、万人分の悪意や殺意を受け続けてれば慣れるもんさ。慣れないとやってけない。抜けようとすると俺の中にいる九尾を狙って色々とやってくる奴もいるだろうしな。そいつさえ死ねば俺はさっさと離れてもいいんだが……ああ言う奴に限って長生きするからな。面倒なことに。

 俺の話はこれで終わりだ。重苦しくてすまんな。わざわざ話すようなことでもないと思ってたんだが、気になってるようだったから。

 

 じゃあ、また明日。俺はいつも通り修行してから寝るよ。じゃあな。

 




Q.これサスケ達心折れない?
A.主人公格だから大丈夫っしょ(雑)

Q.と言うかマジでこんな状態なの?
A.この世界ではこんな感じです。

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