NARUTO〜ほんとはただ寝たいだけ〜   作:真暇 日間

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NARUTO~30

 

 side 日向ヒナタ

 

 美味しかった。とっても美味しかった。今まで食べた何よりも。今まで口にしたあらゆるものよりも。もしかしたら、初めて出会った時に食べさせてくれた金色のお米のおにぎりよりも。

 とても美味しい物を食べさせてもらったせいなのか、私の身体は今絶好調だ。全部が見える。筋肉の引きつりから次の動作がわかる。神経を通る生体電気からフェイントか本命かがわかる。チャクラの流れと量から狙いがわかる。身体の中を流れる経絡の点穴の位置すら手に取るようだ。

 私は突き出される手を払い、流し、一つずつ点穴を潰していく。私の腕に兄さんの手が触れる度に自分の点穴の確認をして、塞がれていたら自分の手を当ててこじ開ける。僅かに痛みが走るけれど、それもすぐに消えてなくなる。本当に、今の私の身体は普段よりずっとよく動いてくれる。

 

 何かを言っている気がするけれど、私はそれを気にすることも聞くこともなく動き続ける。私が弱い事なんて知ってるし、怖がりだってことも知ってるし、今更他の誰かに言われて自覚するようなものでもない。運命がどうとか人は変わらないだとか、そんなものは……ナルト君のように言うのなら『どうでもいい』。私が私の思うままに生きることが運命だと言うのなら、私はそれに満足できる。たとえそれで誰かに殺されるようなことになっても、最後まで私が私でいられるのならば私は一向にかまわない。

 兄さんの手を打ち払い、掌にある点穴も抑え始めたことでようやく兄さんも私が点穴を見切っていると気付けたらしい。そしてそれに気付けたと言うことは、兄さんもまた点穴を見切れていると言うことだ。的確に点穴を突いてきたからそうだとは思っていたけれど、これは時間を掛ければ私のように点穴を治せると思っておいた方がいいかもしれない。そのつもりで早めに点穴を塞げるだけ塞いでしまう。点穴を全て突いてしまえばチャクラが身体を流れなくなり、全身の身体能力が大きく落ちる。そこまでできれば理想だけれど、それより何より安全策。針を使った遠隔での点穴封じや空掌を圧縮した空気弾での点穴封じ、そして足での柔拳。できるものも隠し札もまだいくつかあるけれど、確実に決められるという時にしっかり使っていきたいと思う。

 伸びてきた手を打ち払わずに掴み取り、勢いに合わせて回転を加えれば兄さんは空を飛ぶ。そして浮いている背中にある点穴を片端から突いていって、もうすぐ点穴封じも終わる。ただ、最初の方に突いた指先の点穴が開き始めている。普段から指先をよく使っているからだと思うけれど、点穴って鍛えられるんだ……へぇ……私もあとでやってみよう。

 ちなみにナルト君に点穴封じを受けてもらった時にはその場で新しく点穴を作ってそこからのチャクラ放出による衝撃波で負けた。『真の英雄は目で殺す』らしいけど、ナルト君はほんとに目で殺せそうで怖い。見たところが燃え上がったりしそう。あと目からビーム出したりしそう。

 

 でも、兄さんはやっぱり諦めが悪い。全身の点穴をほぼ塞がれているのに、それでもまだ立とうとしている。運命とかよくわからないことを言っているけれど、運命論者っていうのはおよそ二通りだと思っている。

 自分の現状に納得できないけれど自分の力ではそれを変えることなんてできないから仕方ないと自分を納得させるためにそう言っている家畜と、自分の行動が全て正しいからこそ運命が味方すると言って憚らない幼児的万能感の抜けきらない子供。兄さんの場合は両方かな? 自分より下の人には自分の意志を押し付けて自分こそが正しいと言って憚らず、けれど自分より強い存在には内心不満を抱きながら結局初めから諦めて何もできない臆病者。猿山の大将、井戸の中の蛙、虫の中では強いけれど鳥には簡単に食べられてしまう百足……あたりかな?

 

 なんだっていいけれど。

 

 日向の柔拳でなく、ナルト君の柔拳。チャクラを使わず相手の力を利用して組み伏せ、無力化する。唯一開いている点穴には触れず、相手からも触れさせず、抑え込んでから首筋に手を当てる。これ以上暴れれば経絡ではなく神経、それも脊髄を破壊できると兄さんに教えるように。

 チャクラを使えず、動くこともできず、唯一の勝ち筋も潰されて、そして私にこれからの人生を握られている。分家に生まれた日向の天才児、宗家に生まれた落ちこぼれの私に負ける。周りから見れば大番狂わせ。もしかしたらこのことでお父様から呼び出されてしまうかもしれないけれど……今更だ。

 ナルト君のように木の葉の里全体がどうでもいいと言う訳ではないし、日向の家でもハナビには肉親の情ともいえるものが残っている。でも、お父様には今まで育ててもらった恩があるだけで情は一切抱いていない。多分これはナルト君に引っ張られて考え方が寄ったんだと思う。

 

「……まいった」

 

 小さく、囁くように放たれた言葉だけれど、試験官の人はそれをしっかり聞き取って私の勝利を宣言してくれた。

 さあ、後はナルト君が勝てば美味しいご飯で本選出場のお祝いができる。

 

 後ろで何かを言っている兄さんがいた気がしなくもないけれど、私が今更言えることなんて何もない。私は何も返すことなくその場を去った。

 




Q.ヒナタさん強くね……?(震え声)
A.なお殺す気はなかったので本気ではあっても全力ではなかった模様

Q.それはそうと餌付けされすぎてね?
A.フルコースもあったりします。三虎よりはやばくないとだけ。


現在70話まで執筆してますが、このまま進むとサスケがホモォ……ルートに行く可能性が出てまいりました……何故だ……? あれか?火遁使いだからって 焦熱世界・激痛の剣とかやらせようとしたからですかね?
といっても直接的な表現はしないと思いますけどね。するとしても多分死ぬほど悩む描写くらいだと思われますし。

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