side うずまきナルト
キスには意味があるというのを知っているだろうか。
愛情を伝える物であってもその愛情が親愛のものであるか友愛のものであるか敬愛のものであるかによってキスする場所は変わってきたりもするし、場所によっては愛情よりも欲望を伝える場合があったりもする。
つまり、キスとは言葉を用いないコミュニケーションであり、俺のスタイルの範囲内でもあるわけだ。
ちなみに俺が一番多くしたキスの場所は指先だったりする。される場所は耳やら首筋やらが多いんだが、そこに込められた意思については黙秘させてもらう。
そして、この世界で最も多くキスをした場所も、同じく指先である。
無言使いを得てから、俺は親しい相手との会話があまり多くなくなった。親しい相手には俺の本心を伝えたかったし、本心は言葉で伝えるよりも無言使いで伝えた方がより正確に伝えられるからだ。言葉で返すのは大抵相手をからかう時、もしくは本心を伝えるつもりが全くない時、親しくもなんとも無いからむしろ本心を伝えたくない時くらいで、そしてそれは俺にとって世界に存在している大半の相手に当てはめられるものだった。かつての束姉さんのように人間という存在にほんの僅かの期待も抱いていないが故の対応ではなく、単純に俺が好意を向けるに値しないと判断した相手が非常に多かったからと言うだけの話だ。あと、そもそも勝手に心を読まれることが多かったから無言でもあまり変わらないという落ちがあったりもするが、まあ気にしないでいいだろう。気にするならそもそも心を読まれているということの方を気にするべきだろうし。
実際、俺がこのスタイルという物を手に入れた世界では基本的にどいつもこいつも異様にキャラが濃い奴ばかりで態々本心を伝えたいと思うような奴はそういなかった。本心を伝えて一緒に居たいと思えるような奴は数少ないし、本心を伝えて実際に受け入れてくれる奴と言うのはそれ以上に少ない。何しろ俺は友愛と親愛と恋愛の区別がつかないある意味人格破綻者だ。唯一、全く性欲に結びつかない愛情を『敬愛』として独立させることはできたが、それは大抵の奴らは当然のようにやっていることだ。褒められるようなことでもなければ罵倒されるようなことでも無い。ごく普通のことだと認識している。
で、キスをするとなると相手が必要になる訳だが、その相手は……実は名前を知らん。顔は知っているし、漫画に名前も出ていたし、それ以前にアカデミーで同学年なんだが、直接名乗られていないからな。そもそも関わりがあまりなかったせいで名前を覚える対象にはなっていなかった。ちなみに原作においては主人公であるうずまきナルトの顔を見ると顔を真っ赤にして恥じらってしまうとある良家のお嬢様だが、まあ色々あってそれなりの付き合いをしている。具体的には意思疎通は無言のままで行い、ちょくちょくお互いの修行を手伝う程度の仲だ。
最近の彼女は回天を改造し、防御ではなく攻撃に重きを置いた技を開発している。全身の点穴からチャクラを放出しながら高速回転することによって飛び道具や術に対しての防壁とするのが正式な回天らしいが、彼女はチャクラを放出する点穴を指先のものに限定し、さらにかなり細く鋭く放出して糸のようにすることで物を斬れる糸を作り、周囲でぶん回して防御しながら斬りつけるという技を目指しているそうだ。
だがまあその技は制御が難しいうえに指先の点穴への負担が大きくよく指先を怪我しているのを見たので、ちょいとチャクラを混ぜ混ぜして医療忍術もどきの実践として指先にキスをしたりするわけだ。キスはキスだがどちらかと言うと治療に近いな。
初めのころはそれをする度に驚いたり顔を赤くしたり気絶したりしていたものだが、今ではだいぶ慣れて来ていて顔には出さないが少々心臓の鼓動が早くなってしまう程度に収まっている。それでも未だに怪我をしたところをできるだけ隠そうとするし、恥ずかしがってもいるようだから指先以外は無理強いはしないようにしている。指先でもだいぶセクハラだが、太腿とかにやったら完全に事案だからな。お縄になっちまうわ。