side うずまきナルト
悪戯の意味も込めて、サルケに聞いてみた。もしも兄への復讐を諦める代わりに家族を生き返らせてやると言われたらどうするかと。サルケは一度は鼻で笑い飛ばそうとして、しかし言った相手が俺であるということを思い出したのか真剣に悩み始めた。うん、まあ普通に考えればあり得ないことだし悩んだところで意味など欠片もないことだが、どうもサルケの中では俺はマジで万能だと思われているらしい。実際求められていることは可能だから言い訳とかできないよな。
「……確認したい。できるのか?」
「嘘偽りなく答えよう。できる」
「……時間を貰いたい」
「悪いがあまり時間が無い。……ああそうだ、証拠が欲しいなら少し付き合え」
そう言って連れて行ったのは、親父とお袋の名義で買った新しい家。以前使っていたところは俺が帰ってきた時には予想通り私物が全部消えて代わりにゴミで溢れていたから爆破しておいた。被害は軽微だったそうだ。
そして出てくるのはかーちゃんで、俺が連れてきたサルケを見てきょとん顔。
「ナルト? えっと……お友達?」
「同じ班で任務する程度の仲だから……戦友? 戦友は友達に入るか……?」
「入れて良いと思うけれど……そう、ナルトにも友達が……ミナトー!ナルトがお友達を連れてきたわよー!」
「……若いだろ。死んだ当時の姿で生き返らせたから、肉体年齢的には俺と十ちょいしか変わらないんだ」
「マジか……と言うか、ミナトってのは……四代目か!?」
「おう。できるとは思ってたが確認で生き返らせてみたらやっぱりできちゃってな。そこでお前に『兄への復讐を諦めるなら親族を生き返らせてやる』って話を持っていく事にしたわけだ。ついでにお前の兄がどうして一族郎党皆殺し一歩手前までやったのかの裏話も教えてやるぞ」
「待て。裏があるのか?」
「あったぞ。確認も取った。そしてお前の兄はお前に恨まれても仕方ないが同時に殺してからそのことを知ったら俺に『どうしてあの時教えてくれなかったんだ!興味を持っていなくとも殴って縛り上げて筋弛緩剤叩き込んででも教えろよ!』と逆切れしそうだと思ったからまあ教えておこうかと」
「……イタチへの復讐ではなく、そちらにしろと?」
「するかどうかはお前に任せる。ただ、殺した後で聞いたら間違いなく死ぬほど悔やむだろうから先に聞かせておいた方がいいなと。聞く?」
「聞こう。復讐を諦めるかどうかは俺次第なんだろう?」
「ああ。俺は別にこの約束は破られても構わないと思っている。何が何でも破られたくない場合はそれなりの対応をするからな。勿論破られた時には相応の報復を行うが」
「報復ってのは具体的になんだ?」
「お前の姿で霧隠れに不法侵入して唯一残された忍刀であるヒラメカレイを叩き折って逃げ、雲隠れに不法侵入して雷影に乳首ドリルを実行して逃げ、岩隠れに不法侵入して土影をひたすら爺呼ばわりして逃げてやる」
「相応の報復ってレベルじゃないだろそれは……!」
「なあに破らなければいいんだ破らなければ。あともしその時に名前を聞かれたら『うっちゃりサルケ』って答えてやるから安心しろ、今のお前の服で行くから家紋は残ってもお前の名前は残らない」
「ふざけんなもっと嫌だわそんなもん!」
「なあに破らなければいいんだ破らなければ」
まったくこいつはからかうと楽しいな。からかいすぎると怒るかもしれないし、もったいぶりすぎると切れそうだからそのあたり気を付けないとな。
「まあともかく上がってけ。そして飯を食え。お前の答えを聞くのはその後だ」
「……わかった。邪魔をする」
邪魔するなら帰ってどうぞ、って喉まで出かかった。危ない危ない。こう言う奴にノリで発言はしてはいけない。たまにマジで帰る奴がいる。
兎にも角にも今日は色々楽しい日だ。そして同時に面倒な日だ。恐らくサルケは俺の誘いに乗って兄であるイラチではなく木の葉を復讐の対象とするだろう。サルケの蘇った一族たちは、一旦闇に紛れて今度こそクーデターを成功させようとするだろう。オカマ丸は俺がいることを考えて音の四人衆をできるだけ秘かに潜入させようとするだろう。ペインたちは木の葉を間違いなく滅ぼそうとするだろう。うちわの目を奪ったあいつは木の葉を変えようとして滅ぼすだろう。とても面白い日になることは間違いない。
その日がとても楽しみだ。
Q.教えてしまうんですか?
A.教えます。
Q.木の葉に救いは残されていないんですか?
A.大蛇丸が木の葉を狙わなくなり、サスケが木の葉に復讐しようと思わなくなり、蘇るだろううちは一族が木の葉へのクーデターを取りやめ、ペイン達が木の葉を滅ぼす前に打倒し、ダンゾウをこっそり暗殺でき、さらにナルトがなんとなくそんな気分にならなければワンチャン。