side うずまきナルト
原作において死んでしまった三代目の爺さんは、生き延びても長くは持たないで死んでしまった。あの年であれだけのチャクラを使い、内臓に傷も受けてよく一年近くも生き延びたと言えるくらいだ。
死ぬ前に聞いた通り、三代目の爺さんは蘇らせることはしない。エロ蝦蟇仙人と答えが同じなあたり、やっぱり師匠と弟子ってのは似る物なんだなと思わされた。
人を生かすってのは難しいものだ。人を死なせるよりよっぽど難しい。人は誰であろうと殺せば死ぬが、誰であろうと殺さないことで生かし続けることはできない。何かあれば簡単に死ぬ。それが人間だ。
これで俺をこの里に縛る鎖が一本解かれた。三代目の爺さん。イルカ先生。彼女。最近では蘇らせた親父とかーちゃんもいるが、暮らしている場所が俺の作った異空間なので簡単に連れていく事ができるし、サルケやその家族も俺の作った世界の中に居候しているような状態なので里に縛り付ける鎖としては機能していない。
残った鎖はあと二本。その二本の鎖に金槌を振り下ろし続ける馬鹿が沢山。俺が大人しくしている理由がその鎖にあると言うことも知らず、馬鹿が馬鹿らしく馬鹿なことを繰り返してるのは見ていて滑稽と言う以外にない。愚か愚か。サルケも怒るぞ。
三代目の爺さんの葬式だが、俺は不参加だ。と言うか、参加させてもらえなかった。こういうところでも本当に頭が湧いている。だがそれは別にいい。俺は霊なら見えるし、霊体になった三代目の爺さんが昇天する直前に会いに来て話もしたから別にいい。だが三代目の爺さんがいなくなったからと言って三代目の爺さんに禁止されてた俺への手出しを再開しようとするのは正直どうなんだろうな。まあアレに関してはサルケに譲るって言ってしまったから俺は手を出せないんだ。できればさっさと終わらせてもらいたいところだが……難しいな。少なくとも今のサルケでは勝てないだろう。
まあともかく、三代目の爺さんの追悼式として俺は何も食べず、精神世界の中で丸一日九喇嘛と九喇嘛とショ狸と戯れることにした。
もっふもふやでぇ……。
『……もう好きにすればいい』
『同意』
『あきらめればらくになるぜ……かんしょくだけならきもちいいしな……』
右手に九喇嘛(陽)、左手に九喇嘛(陰)、膝の上にショ狸(陰)。ついでに俺の中に封印したら同化しちゃった俺と言う名の名も無き尾獣がいればもっと面白かったかもしれないが、残念なことにと言うべきか同化した俺と俺は完全に同一存在だ。つまり力が増えただけで俺がどうにかなるわけではないのだ。
何が言いたいかと言うとモフモフパラダイスは誰にも渡さない。そのためなら暁が尾獣を集めている理由を『重症なケモナーの集まりが世にも珍しいチャクラの獣を集めて○○○○しようとしている』とかそんな噂を流すことも辞さない。精神的にかつ社会的に死ぬがいい。
『それ儂等にも効く奴』
『儂等の精神が削られる方が間違いなく早い』
『そうなるまえにひざをかせー!ねかせろー!もふもふしろー!おれさまたちをいやせー!』
はいはいモフモフモフモフ……
『すやぁ……』
『こやつ寝よった……間抜けな寝顔だなクソ狸め』
『儂の前でこいつが眠るなど少し前までは考えられんかったな』
まあ人は変わる。人じゃなくとも生きていれば変わるし存在し続けていれば変わる。不変のものなど存在しない。座にいる俺ですら様々な情報を追加されていく過程で色々と変わっていく。記録も記憶も移り変わるもんさ。
『は、若造が。儂はこれでも千年以上存在する化け狐だぞ?』
俺は中身だけなら数千億年は存在しているが?
『……爺かよ』
『……爺だなお前。やっぱり人間じゃなかったか』
一応人間だぞ? いやまあ確かに人間から若干変化して神格とか持ってるが元は人間だ。ただの人間がいつの間にやら英霊になり、神霊となり、人間でない部分も確かにできたが……それでも俺の認識上は人間なんだよ。何しろ生きていた頃は人間だ。神ではない。
それに英霊なんてのは基本世界に縛られた使い勝手のいい人形みたいなもんだ。俺はその中では使いにくい方だと自負しているが、俺以上に使い勝手の悪い奴も当然いるし俺以上にえげつないのも頭おかしいのも普通にいる。そんな中に俺が並べられて存在しているってだけでもう何もかもがおかしいんだよな。
あー、まあ、いいか。もう気にしない。三代目の爺さんとは別れを済ませた。遺言も一応聞くだけ聞いた。叶えるかどうかは別として。
(今まで木の葉がお前にしてきたことを鑑みれば恨むななどとは言えん。)
(しかし、もしも許されるのであれば。ほんの少しでもそんな気分になってくれることがあるのであれば。)
(一度だけでいい。木の葉の里を、守ってほしい)
……あー、やだやだ。本当に甘ったるい爺さんだったよ、三代目の爺さんは。
Q.死んだの?
A.死にました。ナルトが生き返らせる予定は現状なし。
Q.遺言は守るの?
A.状況次第。