side 春野サクラ
新しい術を覚えた。チャクラもそう多くなく身体も頑丈とは言い難い私が強くなるための術。それがこの術『焼却錬成・
使い方は覚えている。忘れがたい記憶であるほど燃料とした時に取り出せる力は多く、すぐに忘れてしまうような記憶では殆ど力は取り出せない。だから火力が欲しいのなら自分や誰かの名前をくべてみれば大きなチャクラに変えることができる。そして一度くべた記憶は二度と戻る事は無い。
また、この術は知られていないからこそ禁術ではないけれど、多くに知られることがあれば間違いなく禁術に属されるもの。無理矢理誰かに使わせ、そして得た力を利用して残った人間はそのまま放置してもいい。なにしろ記憶だけではなく歩き方や筋肉の動かし方、呼吸の仕方まで忘れてしまっている相手だ。放置しておけば死ぬ。そしてそれは使いすぎれば私自身にも降りかかる可能性のある未来だ。
それでも私はきっとこの力を使い続けるんだろう。力が無くて嘆くより、記憶を失って嘆く方がよほどつらいとしても。この術の使い過ぎで自分が誰なのかと言う記憶すら失ってしまったとしても。私はきっと私のためにこの術を使う。
きっと私は、最後までサスケ君の記憶だけは焼こうとしないだろうから。
side うずまきナルト
焼かれた記憶。俺がこの術を教えたと言う記憶。俺が他人を名前で呼ぼうとしないと言う事実とその理由。ここまでは俺が狙って焼いた。だが、ここから先はバクラが焼いて行ったものだ。
敵に対しての情。自分に対しての情。そして恐怖心の一部。それを焼いてしまえば戻る事は無いと言ったのにそれでも勢いあまって焼いてしまった。まあ感情は焼けても積み重なった分だけだからいずれ再び湧き上がってくるはずなので大丈夫だろうし、一度抱いた情はある程度付き合っていけば再び芽生える。ただし、全く同じものが芽生えるわけではないから毎回歪みはするだろうが。
『……お前、そんな術を使っていたのか……』
は? 何言ってんだお前。俺が生まれてお前が俺に封じられてからもう十五年近い時間が過ぎてるってのに、一体お前は俺の何を見てきたんだ? と言うかお前は俺の中にいるんだから俺がそんな術を使ったことなんてないことくらいわかりそうなもんだがね。
『おま、え、ちょ、じゃあなんだ? お前あれだけ言った言葉全部嘘かよ!?』
嘘なんて一つも言ってないぞ。俺に常に封印術が掛けられているのは事実だし、記憶を燃料として力を得る術があるってのも嘘じゃない。その内容についても嘘じゃないし、実際にバクラに教えただろう? そもそも俺にかけられている術がその術じゃないってだけの話だ。実際に俺が作った時には自動で記憶を焼いて力に変えるだけの術で制御とかかなり難しかったし、ほっといたら記憶も経験も力に変えて燃え尽きるような術だったのを俺が解析して改造した結果調整できるようになって、僅かに最大出力と効率が落ちたってのも本当だ。
堂々と言おう。嘘など一つもついていないと。
『明らかに誤解を招くことを狙って言ってんじゃねえか!?』
それがどうした。俺は嘘も間違いも言っていない。ちょっと前後が繋がらない話をしてしまって偶然相手がそれに気付かず誤解してしまっただけだ。俺は悪くない。そしてそれが俺を監視している暗部連中に聞かれ根の統括の耳に入って根にその術を覚えさせて暴走して死んでも俺のせいではない。術式をわざと写し取れるようにゆっくりと展開していったのもわざとではない。そもそも術式展開とかしないで念話とかの要領で意識下に刻み込めばそれで全く問題なく出来たとかそんな事実はあるけどない。
『あるのかないのかどっちだよ』
事実としてはあるが無いと言うことにしておきたいから対外的には無いと言う。
『相変わらず変な所でクソ正直だなオイ』
俺はいつでも正直だぞ。ただ胡散臭い言い回しを多用するだけだ。悪いと思ったら謝りもするしな。
そうそう、今度ちょっと封印開けるからそのつもりでいてな。
『出すのか? それともチャクラを奪うのか?』
いやいやチャクラだったら接触してる時間が長かったんだからいくらでも真似られるっての。ただ普通に出すと面倒だから影分身にお前らの意識を載せて出せるようにする。今のところ術式はできてるしお前たちじゃない俺の中にいる奴も出せたから多分行けると思う。すまんな、本体を出してやれんで。
『構わない、とは言わんぞ。礼も言わん』
いいよ別に。俺がやりたいからやるだけだ。
ただ、影分身で出てる時に封印されたりするとどうなるかわからないから気を付けてな。元の身体は一応俺のだからどうとでもなると思うが、ならないかもしれんからな。
Q.根の誰か見てたの?
A.見せてない見せてない。偶然見られた可能性が無きにしも非ずってだけ。
Q.九尾が出るのか……
A.実は九喇嘛ですが初めは『くらみん』とか呼ばせようと思っていたと言う事実があります。