己がために   作:粗茶Returnees

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 模索しながらのんびり更新していきます。
 


1話 アンダーワールドへ

 

 俺の友人ことキリトとツルンでいると次々と面白いことに巻き込まれる。面白いと言ったら語弊があるか。事件と呼ばれる案件にも関わることがあるから、不謹慎極まりないな。

 最初の出会いはソードアート・オンラインというゲーム。俺は年の離れた従兄弟のオッちゃんことクラインに誘われてこのゲームを買った。同じゲーマー同士最先端のゲームをやろうぜってな。

 クラインと一緒の時間にログインして、そしてキリトに出会った。俺とクラインはベータテスターだったキリトに基本動作を教わって、それが体に馴染んだ頃に事件が起きた。ログアウト不可能。ゲームの死が現実の死となるデスゲーム。茅場風に言うなら、「本来のソードアート・オンライン」。

 キリトは先に進むことを選んだけど、クラインは仲間を見捨てられないって言って別れることが決定。俺はクラインについていくことにした。一緒に攻略していくって約束だったからな。それでその後はクラインがリーダーを務めるギルド"風林火山"に加入。ソロでも勝手に動き回ってたから、それでキリトとも仲良くなった。

 

 ソードアート・オンラインを脱出したら次はアルヴヘイム・オンラインだ。ナーヴギアで死にかけてたのに俺は懲りずにすぐにそのゲームを買ってダイブ。母さんに腹パンされたね。んで、そこで遊んでたらしばらくしてキリトと遭遇。ハーレム王の正妻ことアスナが捕まってるからグランドクエスト攻略することになった。

 人の脳を勝手に弄くり回すなんて悪趣味だったなー。そんな悪趣味な人は悪趣味なスライムになってたよ。斬り刻んだけど。スライムって斬れないんだろうなって試したら斬れたから、斬り刻みました。俺がそうしてる間にキリトはちゃんと救出できたらしいよ。茅場がどうのって言ってたけど、まぁあのオッサンは知らね。もう何してても不思議じゃないから。二次元で生きるようになってても不思議じゃないよ。

 

 そんでそん次がガンゲイル・オンラインだろ。菊岡の馬鹿に話を持ちかけられたんだよね。キリトが承諾したから俺も承諾。銃撃戦のゲームを仮想世界でできるのって楽しいだろうなって。まぁ案の定殺人事件が起きてたわけだけど。

 大変だったなぁ。真相が分かったら、観客を白けさせない程度に奮闘してるふりをして脱落。キリトがダイブしてる施設まで行って、バイク()を用意。キリトがログアウトしたらすぐさまヘルメットを渡してシノンこと朝田詩乃の下へ。

 なんで家が分かるのかってのも話は簡単で、詩乃を狙ってた馬鹿とは知り合いだったから。こいつヤベーなって思ってプレゼントとして自家製発信機を渡したんだよね。見た目はスマホアクセサリーだけどな。あいつ友達付き合い良いから、渡したらちゃんと付けてくれてたよ。ちなみにこいつもゲーム仲間だったぞ。

 

 で、今は菊岡が関わってる"ラース"でバイトしてるってわけ。キリトと一緒にな。ダイブしてる時の記憶は飛んでるんだが、それも機密を守るためだから仕方ない。次はいつ足を運ぼうかなって考えてたら、件の菊岡から電話が入った。

 

『至急ラースへと来てほしい。ポイントを言うからその場所までは自分の足で来てくれ』

「珍しく急な上に用意悪いな? 緊急案件か?」

『あぁ。君にとっても無視できないと思うよ──キリトくんが意識不明の重体だ』

「……へぇ。話は後で聞かせてもらおうか。すぐに向かう」

 

 電話を切って支度をする。財布やら携帯やらバイクの鍵やら。母さんに呼び止められたけど、キリトのためって言ったらGOサインくれた。うちの母さんは人間関係を重視するし、一言だけで察しちゃうからね。キリトがヤバイって言ってないのに伝わったみたい。

 

「場所は……これ海岸じゃん。さては船だな」

 

 菊岡から送られてきた座標をマップで調べて経路を表示させる。スマホをバイクのホルダーにしまって、エンジンを起動させる。何回経路を見ても高速道路を使うしかないが、請求は菊岡にしておこう。ETCもちゃんと読み込まれてることを確認してバイクを発進させる。高速に乗れば限界まで速度を出すとするか。捕まりはしないだろう。

 

「そんなわけで海岸にたどり着いたわけだが、はーん? 俺とキリトってヤバイやつに関わってたんだな。俺は退屈しのぎになればなんでもいいが、キリトはこれどうなんだろうな」

 

 停泊していた船はどう見ても自衛艦。菊岡の所属を考えれば不思議でもないのだろうが、さすがに一言言いたくはなる。バイクごと中に入らせてもらって、いざラースへ。

 

「……大丈夫か君」

「大丈夫です。ただの船酔いですから。うぷっ」

「外の空気を吸うといい。私もついて行くから」

「すみません……」

 

 おかしいな。大きい船は揺れが小さいと聞いたのに。あーでもこれクルーザーくらいだしな。酔っても仕方ないか。あー、この汚い海に汚物を出してしまってもいいのだろうか。さすがにやめとこう。吐きそうで吐けないという最悪の状態だし、ラースまで耐えよう。たしか"オーシャン・タートルネック"だったかな。間違えてる気もするが、ぶっちゃけ名前はどうでもいい。俺が覚える必要はないのだから。

 

「もう少しの辛抱だ。ほら、見えてきたぞ。あれが君の行く場所だ」

「……なにこのロボットが発進しそうな建造物」

「君はロボットアニメが好きなのか。私はロボットアニメの戦艦のほうが好きだね」

「知りませんよ。ロマンが詰まってるとは思いますけど」

 

 この人は生きてる間に戦艦にビームが取り付けられるのが夢なのだとか。夢が若々しいですね。取り付けられた瞬間ビームを打ち出しそうな興奮ぷりなのが怖いけど。

 中へと入り、慣れてないのか案内する人と一緒に迷子になること30分。ようやく呼び出した張本人こと菊岡と会うことができた。ヒガちゃんもいるね。眼鏡コンビだね。

 

「よく来てくれたね。さっそくキリトくんのことだけど」

「ここに来るまでの間にわかったさ。"ラフコフ"メンバーの一人にでもやられたんだろ。キリトの顔を知っていて、かつ犯罪に躊躇がない。そして務所にいない奴となればそれぐらいだ」

「素晴らしいね。説明が省けたよ。では容態のことから言おう。キリトくんは心肺停止状態にまでなった。現代の医療技術が助かる見込みもない。そこで我々が研究しているものの一つ、STLでの治療を試みることにしたんだ。治る可能性があるのはこれしかないからね」

「なるほど。んで、俺はキリトの後を追えばいいわけか。どうせ実験してる仮想世界に放り込んでるんだろ? 俺はキリトの援護をすればいいのか?」

「ははっ、話が早いね。そういうことさ。頼めるかな?」

 

 相変わらずやらしい奴。ここまで説明しといて最後にはこっちに選択権を与えるのか。あくまで本人の意志(・・・・・)と言い張れるように。ただまぁ、ぶっちゃけ俺が承諾する理由もないんだよな。実験用の世界ならキリトの援護をする必要性がない。

 だが──

 

「いいぜ。お前らの手のひらで転がってやるよ」

「あはは、食えないっすね」

「互いにな。STLを使えばいいのか?」

「そうだね。場所は──」

「いや、場所は決めさせてもらう。キリトの横とかゴメンだわ」

「仲がいいのか悪いのか……。一応離れてるポイントとしてはココがあるけど」

「ならそこで」

 

 菊岡に地図で示された場所を頭に入れてこの部屋から出る。今度は地図を頭に入れてあるから迷子にならずにたどり着けた。STLを起動させて台に寝転がる。一応ヒガちゃんと菊岡に声をかけておくか。

 

「もしもーし。聞こえるかー?」

『聞こえるっすよー。さっそくダイブ始めるっすか?』

「そうだな。それとダイブ始めたらアイツを連れ出すまで戻ってこねぇから」

『了解っす。向こうで変なことしないでくださいよー』

『君は余計な影響を与えかねないからね』

「俺をなんだと思ってやがる……。んじゃ行ってくるわ」

『御武運をー』

 

 最近マンネリしてたからな。新鮮味がある新しい世界へと行かせてもらおうじゃねぇか。

 

『あれ!? 菊さん! ちょっとバグが!』

 

 

 ──バグ!? ふざけるn……

 

 

☆☆☆

 

 

 目が覚めたらそこは知らない世界でした。

 ってそれもそうか。俺はここに来たことがないのだから。

 

「どこだここ。しかもヒガちゃんあいつバグとかなんとか……ん? 記憶がある(・・・・・)? たしか機密云々で消すんじゃ……。バグってこのことか」

 

 外の記憶があって中に入っちゃいけなかったんだろうなきっと。余計な影響とやらが及ぼされる可能性が高くなるわけだし。それはそうと、外に出る時には記憶が飛んでるかもしれないのは残念だな。過ごした世界のことは忘れたくないし。

 

「にしてもここ何処だよ。どこの路地裏だよ」

 

 俺がいるのはどこの街かも分からない場所の路地裏。家に囲まれてるな。壁が白いよ。綺麗だね。じゃねぇんだわ。何も役に立たねぇ情報だ。仕方ない、適当に歩いて情報を集めることにしよう。

 

「あっちが大通りっぽいなっておわっ!」

「きゃっ!? な、なんですかいきなり!」

 

 なんだ。どこから声がした。なんかに足が引っかかってコケたんだが。……アレに引っかかったのか。デカイよな。あの大きさが見えなかったって……。

 

「お前は何者ですか! こんな所で何をしているのですか!」

「それはこっちのセリフだわ!!」

 

 大きな箱(・・・・)から上体を出した金髪少女が、自分のことを棚に上げて怒ってくる。本当にそっくりそのまま言葉を返してやりたい。

 なんでこんな路地裏にいるのか。しかも箱の中に!

 

 

 衝撃的な出会いだったさ。本当に。だが、まさかこの子が──




 
 

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