聖なるかな 〜鞘を求めて〜   作:ぴんころ

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第二十七話:そろそろ土偶排除も……

「私も混ぜてくださいな?」

 

 土偶の群れに入り込んだ少女はユーフィーによく似ている。違いはある。確かにあるが、見た目といい雰囲気といい「成長したユーフォリア」と言われれば誰しも納得してしまいそうな見た目だ。

 違いとしてはユーフィーが未だ幼い見た目であるが、その少女はすでに俺と同年代。十六、十七程度の見た目であることと、龍の角を髪の隙間から生やしていること。そして、その衣装の所々に龍を模したアクセントが存在していること。例えば、龍が(とぐろ)を巻いているようにも見えるマフラー。例えば、彼女の身を包む藤色の浴衣に似た装束の柄。そういった細かいところに。

 

「アムッ!」

 

 その少女に向けて叫ぶ。神剣使い()の深層心理を元にして姿形が決定されるという神獣。俺の心内に住まうアムがその「守護神獣」としての形をとって顕現した少女へと。微妙にこーくんを乗っ取られている気がしないでもないが、何を言っても現実は変わらないわけで。それならせめて、アムにもしっかりと働いてもらおうと顕現させているが、ぶっちゃけた話をすると神獣として出てきているに関わらず俺よりも強い。

 

 当人曰く、エターナルとしての俺の実力が先の昇華で最低限「神獣として顕現させられる」レベルには達したから勝手にこーくんの肉体を借りて出てきた、とのことらしい。その結果なのだから意匠が残っているのは仕方ないことなのだとか。

 

「全て、全て……この鞘の内に」

 

 先の進化に伴い、すでにアムの本当の名前もわかっているのだが、それでも呼び慣れたこの名前の方が楽だ。今の正面の敵と戦っているユーフィーもその見た目とか、そもそも俺の心中にいるはずの彼女が出てきたこととか色々と驚いていたが、彼女も戦える、普通に戦力としては強大だということがわかってからは、彼女の立場もあってか信用して背中を任せている。

 

 そんなアムは、土偶から向けられる実体を伴わない、ビームなどの攻撃をその手の中にある鞘の内へと全て納めていく。ユーフォリアに向けられたものもかばい、納め、そしてそれらの数が合計十を越えた頃。

 

「解き放ちます」

 

 極太の光線が鞘から放たれる。十本分の光線が、まとめて吐き出されるかのように。あの鞘の本来の担い手であるアムが振るうそれは、ただ前世の記憶を頼りにして振るっている俺のものよりも遥かに美しく、まるで一つの演舞を見ているかのようだった。

 

「オーラフォトン──」

 

 けれど見てばかりはいられない。アムが十本分の光線を編み合わせてできた極太の剣を横目に、俺も己の武器へと意識を向ける。右手で土偶の存在する空間を切断することであらゆる防御を透過して、左手でそもそも防御という概念を砕く「粉砕」という結果を残す一撃を放つ。

 

 その左手の手首から、延長するかのように刃が伸びる。それを投球するイメージで、一度右半身を前に出してアンダースローの体勢で左手で空間を薙いだ。

 

「──スライサー!」

 

 分離した左手の刃が、回転しながら飛んでいく。神速のそれも土偶の表面にはほとんど意味をなさないが、それでもわずかには効果は存在する。動きを止めたその瞬間に、ユーフィーの放つドゥームジャッジメントが穴を開けた。

 

 もう、土偶の数は残り少ない。あと十体程度。それも、すでに半数近くがタイムアクセラレイト中の時深さんによって切り刻まれている。旅団の面々は倒れ伏していたり、気絶していたり、ナルカナ以外はまともに動けそうな状況ですらない。

 

 力を込める。左腕を変貌させる。俺は名前を知らないけれど、深層心理に未だいる、化身(アバター)として神獣の形を借りて外に出てきたアムの本体が知っている。そんな、腕と一体になった永遠神剣へと。アムが知っていればだいたいどうにかなる、そんなレベルにまで引き上げられたために、アムが見たことのある永遠神剣を、「聖賢」から得た知識で名前を知ることで形成を可能とした永遠神剣を。

 

「貫け……!」

 

 世界の名を冠する一撃が、オーラフォトンレイという神剣魔法と合わさり一条の光の槍として突き進む隣で、アムが並走しながらその足元に何かみたことのない永遠神剣を宿す。「聖賢」の力で確かめてみると三位「飛天」という名前の、時間と空間を飛び越える靴型永遠神剣。「時遡」ではなく「時渡り」の力。断絶された空間を飛び越える空間跳躍の力を持つ。

 

「では、私も参加させてもらいます」

 

 その力でわずかに時を飛び越えて、俺のオーラフォトンレイが土偶に直撃する直前という、消えた数秒後に出現した彼女の鞘から、合計十数個分の神剣魔法をひとまとめにした一本の剣が放たれ、俺のオーラフォトンレイが貫く瞬間に合わせて、全く同じ箇所に向けてそれらの神剣魔法全てが指向性を向けて解放された。

 

「うわぁ……うわぁ……」

 

 ユーフィーもその一撃がもたらした破壊に言葉もないようだ。何を言っていいのかわからない、と言わんばかりの表情。

 

 橋が崩れ落ちている。

 

 指向性は持たせてあったし、土偶の範囲以外から抜け出るような一撃ではなかったが、土偶を消しとばした一撃は、持たされた指向性の範囲内で発生させられるであろう最大限の被害をも『出雲』にもたらしていた。

 

「……とりあえず行こう」

 

 なんとなく沈鬱な気分になるし、今から説明するとなると戦闘になるのではないかと嫌な気分にもなるが、もう全部なるようにしかならないだろう。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「今日は疲れた……」

 

 『出雲』を拠点として生活している今、その中で与えられた一室にてなぜかユーフィーとアムを腕枕という形で侍らせながら、隼也はそんなことを呟いた。

 

 もうすでに、今『出雲』には隼也たち三人しかいない。

 

 まず最初に、戻った三人がしたのは、『隼也が戻って来たこと』によって望の死が確定したことで泣き崩れ、文句を言う望を好いていた五人……沙月、希美、カティマ、ルプトナ、ナーヤの五名の対処。

 悲しそうではあったが残りの面々は「男同士の戦いの結果に文句を言うつもりはない」や「逃げるという選択肢もあったのだから、それを選ばずに戦いに向かった望の決断を侮辱する行為だ」などと言って、『時間樹の外に追放された』という事実を聞いて錯乱した五人を沈めていた。

 

 その後、「時間樹から出た望を探しに行きたい」ということになり、時間樹から出るにはどうしたらいいか。

 そんなことを話し合っていた旅団の面々にナルカナが「時間樹の創造神を倒さないと自分はここから出られない」ということを話し。

 そして何より、「時間樹の外にはエターナルがゴロゴロといる」ということを知ったがために、「まずは創造神を殺してエターナルと戦えるという自信をつけよう」と、世刻望という人物を探すつもりの旅団の面々と、ジルオルに会うつもりのナルカナは一緒に『出雲』から出て行った。

 

 まずは学園の生徒を元の世界に帰してから、そしてその後創造神を殺しにかかると、そう決めたということを彼女たちが出て行く直前に隼也は聞いた。

 

「あら、それなら癒してあげましょうか?」

 

 ニコニコと、隣で横になっているアムがさっきのこともありますし、と言えば、反対側で横になっているユーフォリアがダメですよーなんて言う。

 一度、大の字で倒れた隼也の横をユーフォリアが陣取った後、それとは逆の方を陣取ったせいで頭から生えている角が腕に刺さってしまうという事態が発生した。

 それにユーフォリアが慌てたりして、もうすでに傷口は塞がっているとはいえ一時は部屋の中だけではあるが大騒動になっていた。

 

「おにーさんを癒してあげるのはあたしの仕事ですっ」

 

「よしよし……」

 

 えへーと抱きつくユーフォリアを隼也は愛で始めて、それをジト目で至近距離からアムは見ていた。

 

「ちょっと、私がすぐそばにいるときにイチャつき始めないでもらっていいですか……!?」

 

 何が悲しくて自分そっくりの少女と自分の来世がイチャイチャしているのを見てないといけないんですかっ、こっちはまだ隼也がそこまで神獣を顕現させることに関しては安定させられていないせいでこの部屋程度の距離から離れることはできないんですよっ、と怒り始めるアムに、さすがに申し訳ないことをしたとでも思ったのか二人はイチャつくのをやめた。

 

「全く、これまでも深層心理の方で見せられていたというのに……そして隼也に関しては女の子の扱い方というものを教えてあげたのに……」

 

「あ、はい、すみません……」

 

「そうだったんですか……?」

 

 片方は萎縮して、もう片方は知らなかったことを知って驚く。

 

「ええ。この『出雲』に来てからの隼也はこれまでよりも優しかったでしょう?」

 

「それはそうですけど……」

 

 でもでもそれまでも十分優しかったですよっと叫ぶユーフォリア。

 

「ありがとな、ユーフィー」

 

「あ……えへへ」

 

 それを撫で始めてまた二人の世界を作り始めたのを見て

 

「いい加減にしなさいっ!」

 

 スパコーン、とアムの作り出したハリセンが隼也の頭に振るわれた。

 

 形の存在しない永遠神剣、「依存」を形成するというありえないこと。

 それを彼女は、『自分がイメージして作り上げたものこそが「依存」の姿である』と解釈してハリセンとして生み出した。

 まさに無駄に洗練された無駄のない無駄に高度な無駄な神剣の使い方としか呼べない代物。

 更に言えばその力も「協奏」の力なのでそれを形成した代償は契約者である隼也が払わないといけないという無駄なダメージも存在する。

 

「痛っ……!?」

 

 ついでに言えば、永遠神剣第三位なので威力は申し分ないし、更にそこに『依存』の能力である紫電もわずかに乗っていたのでツッコミによってダメージが入るという無駄もあった。

 

「おにーさん!?」

 

 さすがにダメージが入るものだとは思っていなかったのかユーフォリアもちょっと驚いた声を上げる。

 

「いいですか、いいですね。ちょっとそこに座りなさい!」

 

 アムからのお説教も始まる。

 これは長くなりそうだと、これまで一度も彼女から説教を受けたことのない二人は確信した。

 

「別にイチャつくな、というつもりはありません。一応、前世の私がこうして出て来ていることを除けば、よくよく物語で見るような『前世からの縁で結ばれる』という代物ですからね。ですがせめて、TPO程度はわきまえなさい!」

 

「……異世界人にもTPOとか理解できるのか」

 

今世の私(あなた)を中から見てて知りました!」

 

 わざわざ、ちょっとした疑問にも答えるあたり優しさがにじんでいた。

 そして隼也も、なんとなくこうして「怒ってくる」という状況がこれまでよりも親密になったような気がしているので特に止める気にはならなかった。

 

「……そうですね。どうしてもやめないというのなら」

 

「いうなら……?」

 

「中学時代の友人だった人物があなたの性癖にぴったりだと言って持って来たエロ本の内容をユーフォリアに伝えます」

 

「やめてっ!?」

 

「あ、教えてください、アムさん」

 

 ニッコリとユーフォリアが見たことないような笑顔で笑った。

 親密になるのはいいことだけではないと隼也は理解した。




皆が難易度スーパーハード(レベル61〜99)でやってるのに一人だけ難易度ノーマル(レベル1〜30)でやってる主人公を見てみたい。敵の仕様もスーパーハード
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