お散歩・お散歩楽しいな~、夜にはピーブズに会えちゃうよ~。
「こんばんは、ピーブズ。」
「・・お前こんな夜中に何してるの?」
「散歩だよ。ここ数日ずっとしてたの気が付かなかったか?」
「・・お前とは関わりあいたくないから・・」
あ~あ、百倍返しが効き目抜群か。でも別にいい、こいつとは分かり合えなくても気にしない。
「俺がフィルチに知らせるとは思わないのか?」
自分と会っても、落ち着き払っているロンが憎らしくなる。
「別にいい、好きにしろ。罰則は受けるつもりだ、逃げも隠れもしないよ。」
・・本当に憎らしい。怯えない奴に構っても、面白くないので放っておくことにした。
行ったか。さて今日こそは当たりの部屋に行けるといいんだが、その前に「こんばんはフィルチさん、ミセス・ノリス。」
今日はよく人に会う。
「・・残念だが、お前さんを寮監に引き渡せねばならん。」
「分かってるよ、それが仕事だもんな。」
フィルチは本当に残念そうな顔をした。他の生徒だったら喜んで仕事をするのに、よりにもよってただ一人の若い友人を捕まえなければならないなんて。
「俺は逃げも隠れもしない、その代わり少しだけ付き合ってほしい。一緒に来てくれ。」
「・・それによって罰則が重くなってもか?」
「やらなければならない事があるんだよ。」
どうやらロンは本気のようだ。
「いいだろう、おいでミセス・ノリス。」
「ニャー」
「抱っこしてやろうか?」
「ミセス・ノリスは一人でも・・」
フィルチとミセス・ノリスの三人で入った部屋には、中央に-鏡-が置いてある部屋だった。
「これは・・この鏡は!!見てみろミセス・ノリス!儂が魔法を使っている!!あ~なんと素晴らしい・・」
フィルチさん・・泣きながら鏡の虜になっちまった。間違いなくこいつはみぞの鏡だ。
人の心の奥にある-絶対に叶わない望み-を映す、腐った嫌な鏡だ。
俺の望みはただ一つ、賢者の石を-見つけたい-だ。使いたいと望むものは得られず、見つけたい者だけが手に入るって、考えたダンブルドアは重篤な中二病か?
みぞの鏡の中の俺が、にっこりと笑って右ポケットに-石-を入れた。
望むものが得られたのか、教授に見てもらわないといけないか・・言い訳どうしよ~?
鏡からフィルチさんを引っぺがして、俺は自分からマクゴナガル先生に自首をした。
「・・残念です。Mr.ウィーズリー、グリフィンドールは五点減点です。以後は他の罰則も追加をします。部屋にお戻りなさい。」
「はい、おやすみなさいマクゴナガル先生。」
目的の物は手に入り、俺は一人部屋に帰った。ハブられた感はあるが自由に出来てこれはこれで便利だ。
起きて朝一で教授を訪ねて、件の石を見せたら盛大なため息をついてきた。
「・・これをどうして・・どうやって手に入れたのかね?」
いかにロンが規格外であってもこの件はそれでは収まりがつかない。きちんと聞かないといけない重要案件だ!
「いや・・夜の散歩で入った部屋に鏡があって、見てたら金持ちになってハリエットに何でも買っている俺が映ったんだよ。」
「・・それで?」
「お金もいいけど、売ったら大金得られるもの欲しいな~って思ったんだよ。例えばドラゴンの心臓とか、ユニコーンの角とか、ペゾアールの石とか、賢者の石とか、大量のマンドゴラとか、バジリスクの鱗・・」
「ストップだ!ロン、今何が欲しいと・・」
「えっと・・ドラゴンの・・」
「いやもういい・・そうか、使うではなく-売るために-に欲したか。」
なんか教授がブツブツと言って、考えこんじまった。賢者の石を売るリストの真ん中に入れる事によって、賢者の石は自分にとってはお金になるものの一つで、それ以上の意味はないという誤魔化しだ。
実際手に入れても使ってみたいとは全く思わん。人間は寿命まで精一杯生きてなんぼだ。
「それで教授、これなんだ?」
「・・君が売ったら大金が手に入ると言っていた賢者の石だ。」
「なんでそんな物がホグワーツにあるんだ?しかも俺でもホイホイと手に入っていいのか
?」
「君はこの石の価値については?」
「・・質問を質問で返すって失礼だろう。カエルチョコのオマケに、ニコラス・フラメルが出て賢者の石って載ってた。気になってパーシーと調べた事がある。その石の力で長生きすんだろ?」
「欲しくはないのかね?」
「不老不死なんて下らねえよ。時間が欲しい研究者ならともかく、俺には無用の長物だ。」
「・・これをどうするのかね?」
「持ち主はニコラスさんなんだろ?どうするか本人に聞くのが一番だけど、今どこにいるんだ?」
「私に心当たりがある。任せてくれまいか?」
「・・石は?」
「それも私が預かろう。」
「分かった、任せるよ教授。」
素直に賢者の石を置いて、ロンはあっさりと出ていった。
この石はヴォルデモートを誘き寄せる物として、フラメルに自分がダンブルドアの使いとして借り受けたもの。
撒き餌をまいて、ハリエットとヴォルデモートを退治させるダンブルドアの計画は、ロナルド・ウィーズリーによって潰えたか。それでも別にいい、今の自分はハリエット達を守ることが第一だ。
最早アルバス・ダンブルドアの計画には手を貸す気はない。
「フラメル氏からの返事はあの石は・・・・・・・・。」
「あ~そう。分かった。」
フラメルからの返事を聞いたロンは、にんまりと笑った。
明日の朝には決着だ。
遅い!ロンはどうした⁉
朝の遅い時間になってもロンは大広間に現れなかった。
セブルスをはじめ、ロンが大好きな者達一同は何かあったのか不安そうな顔をして待っている。彼に限って体調不良は考えにくく、何かのトラブルを引き寄せたのかと。
しかし心配するだけ損だった。ハリエットが捜しに行こうとした矢先に「おはようございます!!遅くなりました~。」
能天気な声と笑顔で大広間に入ってきた。
「遅いぞロン!!どこ・・」
「悪いハリエット、後にしてくれ。・・アルバス・ダンブルドア校長に聞きたい事がある!!!」
ソノ-ラスを使ったようなロンの大音声に、大広間の喧騒は消え失せた。
「・・今回は何かの~Mr.ウィーズリー。」
この子供はいつも厄介事でしか自分に話しかけては来ない。今回は一体何であろう。
「-この石-を知ってるか?」
ロンは黄みがかった琥珀色の石を教職員全員に見えるように差し出した。
「・・それは賢者の石でねえか!!ロン!!!そいつどこ・・」
「・・そうか、あんたはこれが賢者の石だって知ってたのかハグリッド。マクゴナガル先生もその顔だと知っていた。それであんたはどうなんだ校長先生。」
「・・知っておる。フラメルが闇の勢力に取られんようにと儂に相談をしてきたので預かった。」
「・・偶然だけれども俺が手に入れた。何の石か分からなかったから教授に調べてもらって、持ち主の人にどうするべきか聞いたよ。彼はこうしてくれってな!!」-ガッシャーン!!-
「あ・・何と言う事を!!!ロナルド・ウィーズリー!!その石は・・」
「こいつは今の人間にとっては扱いきれないもんだ。確かにこの石の力は凄い、死せるものとても命を長らえさせる代物だ。でもそれはこの石を浸した水を飲んでる限りの話で、
石もいつかは効力が切れる時が訪れる。その時にはやはり死んでしまう、命を一時永らえさせる不完全な不老不死の石。完璧を作りたかったがもういいというのが、フラメルが送って来た手紙に書いてあった。石は存外脆くて、魔法を使わずとも床に叩きつければ壊せるともな。この結末はフラメル夫妻の望みだ。本来の持ち主の望んだことを、あんたが怒る筋合い無いだろう。」
ロンの言い分は正しい。その一言でしか言い表すことが出来ないほどに。
石の持ち主の望みを叶えだけなのだから。
「騒がせました、片付けて朝飯食べます。」
カチャカチャと壊れて飛び散った石の破片を集め飛び散っ、「インセンディオ―炎よ-」ボン!!
中の液体諸共すべて焼き尽くした。何者も二度と悪用できない様に。
こうしてロナルド・ウィーズリーの奇想天外な行動ページに新たに追加が加わった。
魔法界の秘宝の一つである賢者の石をためらいもなく破壊をしたと。
「俺の大事な天使達よりも大切なものなんて存在しないんだよ。」
惜しくはなかったのかと聞かれる度に、ロンは事もなげに答えた。家族と天使達を愛するロンらしい答えだった。
「ご主人様・・・」
「よい、泣くなクィレル。」
「・・ですが~・・」
「ロナルド・ウィーズリーの言う通り、あれに頼ったところで不完全な復活しかできなかっただろう。何かに依存をするなぞ俺様らしくはなかった。・・どうやら焦っていたのだな俺様は。」
「・・今後はどうなさいますか?」
「賢者の石は無くなったがホグワーツに残れ。ハリエット・ポッターの動向をみる。どうやって死の呪文から生き延びたのかを知っておきたい・・ロナルド・ウィーズリーには感謝せねばなるまいか・・俺様の目を覚まさせてくれたのだからな。」
賢者の石を壊されたことでダンブルドアは増々ロンを警戒し、ヴォルデモートとクィレルは今後の相談をして来年も教員でいることを決めた。
「それからクィレル、ユニコーンの血を飲む計画の止めだ。あれは呪いが強すぎる、お前が死んでは次を見つけるのが面倒くさい。」
「では・・」
「・・前回お前に引きずられて酔って分かったが、お前が今の倍の食事をすればいいのだ。そうすれば俺様にも栄養がきちんと行き渡る、今しばらくはそれでいい。その間に完璧な復活方法を探せばよい。」
「かしこまりました我が君。」
こうして賢者の石を巡った事件は、表面化されずにちょっとした騒ぎで幕を閉じた。
石を守った英雄が現れることなく。
こうしてクィレルはヴォルデモート共々にホグワーツに残る事となりました。
次回は番外編で、ロン達の出演はありません。
この場をお借りして、誤字脱字の多い筆者を見捨てずにお助けくださっている大勢の方達に感謝を述べさせていただきます。
推敲を重ねても見逃してしまうと思いますが、努力していきたいと思います。