「彼は一体何なんですか?」
「・・それをお主に調べて欲しいから呼び寄せたのじゃが?」
「でも僕の-用向き-はシリウスからの依頼ですよ?ホグワーツの見取り図を作るから手を貸せって。
彼には借りがありますからね~。半人狼の僕なんかを、彼の持っている店の一つの店長にしてくれた借りが。
ああ、貴方にも借りがあるのは自覚していますよ。-将来人狼のスパイ-が欲しいから、半人狼の僕を特例で入学させてくれた借りが。」
リーマスは-校長室-の机に腰を掛け今回の依頼主の長い白髭を弄びながら、依頼主の心も弄りながらにこやかに告げる。
ホグワーツはいれた理由はずっと前から知っている、それこそ学生時代から。
自分をホグワーツに入れてくれた彼をずっと見続けているうちに。
これがミネルバの様な善意の塊の様なものだったら、そんなことは考えなかっただろうが、彼はどこか打算を感じさせる。つまるところ将来の自分に恩を売るための行動で、自分を子飼いにしたいのかと察しはついていた。
でも別にいい。この人は自分の本性を知っても逃げなかった数少ない人だ、大事にしてあげないといけないな~。
この人は本当は寂しがり屋で、グリンデルバルトやヴォルデモート並に本当の愛を知らないおバカさんで、寂しいから虚栄心と名誉欲で満たされたくて、顔も知らない大勢から名前を呼んで欲しがる愚かな人だ。
足元を疎かにして、本当に自分の事を思ってくれている人たちに気が付かずに、孤独だとか思っちゃっている愉快なおじいちゃん。
そして実は小心者で嫉妬深い。
現にロナルド・ウィーズリーのこれまでの-功績-報告したら顔色変わった。
曰く今魔法界の間で有名な-子供の家-のアイディアを出したのは彼だった。
今や子を持つ魔法族の間では子供の家は大人気。共働き世帯と一人っ子や兄妹が減ってきた中同世代か身近な子供が少ないので、子供の世界を広げてあげたいという親たちが増えている。
子供の家ならば簡単な昼食と大きめの水筒を持たせれば半日はお任せだ。
出資しているのがあのブラック家とマルフォイ家を筆頭に、名の通った名家たちが運営をしているからセキュリティーは万全に敷かれているうえに、自分達の親と同い年の魔法族達が子供達を室内で見守りつつ、古い魔法やしきたりをきちんと教えてくれる。
更には月に一度は外部から講師が呼ばれ、あの魔法生物の第一人者のニュート・スキャマンダーが招かれた時には-親も見に行っていいですか!-の問い合わせが殺到したほどの人気を博した。
その子供の家の発展で、後1・2年で-魔法幼稚園-なるものが出来るという。
6・7歳のからホグワーツ入学する前の間に通えるミニホグワーツで、寮生ではなく通いで実施をするという。
上流者の空いている古城を改装をして、通いたい者達の家とポートキーと煙突ネットワークを繋げて安心をして通える仕組みで、教師はホグワーツの教師枠には入れなくとも、教師をしたいという熱心な者達を面接をし、合格をした選りすぐりの者達だ。
無論強制ではなく、ホグワーツへの予備準備としてはどうかというお手軽な物。
寮制と違ってホグワーツよりもかかる費用が少なく、将来性はあるが貧しい家の子供は早いうちから融資を持ち掛けるという福利厚生もしっかりとしている。
未就学児を探すのは魔法省と連携を図り、マグル生まれの子も対象視野に入れている。
両親が双方マグルなのは魔法使いの子にとっては辛い事が多い。ある日普通だった我が子が、突然浮いたり泣いただけで物が壊れたらホラーだが、未成年魔法の感知を受けた時点で
魔法省の役人がきちんと説明に行き、その時点で魔法を正しく教えるところがある事を知れば、
マグルの両親も安心をし、マグルの両親から虐待を受けてしまう子供も救済できるかもしれない素晴らしいシステムだ。
これが成功を収めれば、魔法界にとっては革新的な出来事だ。
無論説明をされたからと言って全ての親たちが納得するわけでないのも知っている。半純血の子供も捨てられるほどだ。
マグルの両親だって分かったからこそ捨てるかもしれない。
その為のシステム案ももう出ている。子をいらないと言った親から子を引き取り、手厚く接して子供の心が癒えた時に、子が欲しくてもできない魔法族の両親に養子縁組をするシステムだ。
聖28一族でない限りは血筋だのなんだの言ってくるものは少ない。子が欲しい魔法族の夫婦と、親を欲する幼い魔法族の子供の縁持ちを、子供の家が仲介をする案だ。
法的手続きは魔法省が、縁組の適正調べとその後の経過見守りを一手に子供の家がと役割分担の土台も出来ている。
子供の家がそれらを可能にしているのは、きちんとしたマンパワーがあるからだ。
今より5年前に、魔法省が秘密裏に行った闇陣営の者達の強制的な校正プログラムが終わり、100近い魔法族が子供の家のスタッフとして日夜働いており、ローテーションでは週に1日・2日とあぶれ気味なのと、スクイブであっても魔法界との縁を切りたくないという、アーガス・フィルチの様なもの達を雇う算段をしている。
この国家規模ともいえる一大プロジェクトの立役者がなんとあのロナルド・ウィーズリーだという。
シリウスから聞かされた時は、こいつ何を寝言を言っているんだという生暖かい目で見てしまい、
俺の言う事疑うのかと喧嘩になりかけた。
だって仕方ないじゃないか、たった7歳の子がそんな凄い事の発端を作りましたなんて言われたら、普通そういう反応になっちゃうよ。
でも調べていれば全部本当だと分かった。全くもって冗談みたいだが。
「彼その内に魔法省から勲一等マーリン賞を貰えるかもしれませんね。あなたとお揃いで。」
-ピクン―
「ふふ、妬いてますか?でも彼が積み上げた功績総合するとそうなりますよ。魔法省も貴方に対抗できる者がいないかを鵜の目鷹の目で捜しています。
幸いあの子は貴方が大嫌いで、貴方の庇護を受けていない中流階級の六男坊。魔法省、特に現魔法大臣にとっては操りやすい取り込みやすい子に映るでしょうから、自分の懐が痛まない賞なんていくらでもばら撒くと思いますよ?
彼にはアクロマンチュラでの功績もある。諸々を含めればシリウスやルシウス・マルフォイ、ホグワーツの教職員、それに貴方のお気に入りのマクゴナガル先生だって彼の勲章授与を検討されていると知れば推薦されるでしょうね~。
このホグワーツをも変える一端を作った奇跡の子供として。」それこそヴォルデモートを倒したと言われているハリエット・ポッターの如く。
世間とは新しい物好きだ。古い功績よりも、リアルタイムのものを好む。それもまだまだ成長をして、物語を紡ぐ様に昨日と違う物を作ってくれる者が。
そこの子供を応援することで自分も凄い事をしている気になる馬鹿たちの、なんと多き事か。
「貴方はそんなことが許せるのですか?」
「・・・リーマス・・儂は・・」ふふふ、本当に困り果てて悩んでいる。
「貴方は本当にかわいらしい御方だダンブルドア先生」
自分の醜い心からずっと逃げ回ってている可愛い老魔法使い。今だってロナルド・ウィーズリーを羨んでいるのに自分の立場と見栄からそれを受け入れられずに今にも泣きそうだ。
「僕はずっと側にいますよ。」可愛いあなたの破滅を見られるその日まで。
・・・・あいつ・・あのじじいの手先だったのか・・きっしょ!!何あいつ!真性の変態か!!!!
あのじじいを手玉に取ってるとかあいつすんげえやばい奴だ・・関わり合いたくねえぇ~
「スキャ、もいいから逃げて来い。」
「ちちゅ~!(合点!!もう限界!!!)」
目薬の魔法が聞いてるときは、半径10キロは俺とあいつは脳内通信が可能だ。
と言っても俺の思念があいつに伝わっても、俺にはあいつの鳴き声しか届かないから何を言っているのか不明なところが難点だ。
でもあいつ本当に抜けてんのな、普通魔法族に飼われているからって、ただのネズミが人語を解するなんておかしいと思われるとか考えてないだろう。
でもいいか、あいつはもう俺のだし。-バチン-無事に俺のポケットに逃げ込めたか。
「ご苦労スキャ、ありがとなリジー。後で・・」
「はい!スキャバーズさんに特上のお肉を!!」
「うん、頼む。本当にありがとう。」
俺は完璧にリーマス・ルーピンを敵と認識をした。
大広間での一件は、あいつにとっては単なる前座にもなって無かった。
初めて他人が気持ち悪いと思った。大広間から無様に逃げ出して、偶々会った教授と、後から来たクィレル先生に何があったって聞かれるほどの有様だったらしい。
脅されたので端的に白状をした。頭ン中覗かれるなんて気色悪いから。
白状した俺を、教授は屋敷しもべに言ってクィレル先生の自室に姿現しをさせた。
何で教授のところじゃないんだって思ったけど、眠くなってクィレル先生のベッドで眠っちまった。
目が覚めたら二人がいた。「今夜はここに・・」
「・・お前の部屋が・・」
「吾輩の部屋は知られている。癪だが現段階ではあいつよりは貴様の方が多少はましだ。」
「・・・俺様がこの小僧を・・」
「今手に掛けるメリットがどこにある?不完全な今の貴様が・・あの腹黒狸の思うつぼになりたいと?」
「・・・・・それはもっと嫌だ!あいつなんぞさっさと滅びろ!!元凶が!!!!」
「・・・激しく賛成だよ先生。でもうるさい。」
「「ロン!!!」」
「えっと・・あの後どうなったの?今何時だ。」
目を覚ましていた俺に気が付かずに、あんな際どい会話するなんてどうかと思うぞ。
クィレル先生は一応普通の教師なんだから、あんな会話したら超怪しい人認定だ。俺はもう正体知ってるからいいけどさ。
今はもう夜で、俺は気分が悪いから寮にいる事になっているらしい。俺の部屋が一人部屋なのが幸いをした。
そっとしておくのが一番だと教授が皆に言ってくれて、俺の居場所はあいつにも知られずに済んだ。
「今夜はこの部屋に泊まれ。」
「・・あいつだって、俺の部屋まで来ないだろう・・」
「まだまだ甘いな。いいかねロン、あの男はお前が感じた通りの男だ。自分の楽しみの為ならば規則も倫理も平気で無視をするような輩だ。」
学生時代にリーマスに気に入られてしまい、ある日寮の自室にて待ち伏せを受けた。
-君と仲良くなりたいんだよ-嗤っていた、おもちゃを見る無邪気な子供の目で。
「・・教授ってスリザリンじゃ・・」
「どうやって入り込んだのかは今をもって謎だ。当時の屋敷しもべ達は、今の様に生徒に対して姿現しのエスコートなぞしなかった。もっと言えばいないものとして存在をしていた。
今の様に協力をしてくれることの方が稀なのだよ。」
・・本当に気持ちが悪い奴だ!!あいつ何⁉ストーカーの類なの?とっ捕まえてボコっていいの⁉やっちゃうよ俺?
「・・気持ちは分かるがあれは質が悪い。あいつの本性を知っている人間なぞ片手にいるかいないかだ。
この件では駄犬を頼ろうなぞとは思わない事だ。あいつの事を心の底から親友だと思っているんだからな。」
「・・教授はどうしてあいつの本性を?」
「・・・私はいい家庭環境に恵まれてはいなかった。故に不味い者に対して敏感でな。」
お陰で初対面で一発で分かってしまい、握手の手を嫌悪感丸出しではたいてしまったのが運の尽き。
あいつはびっくりとした後に嗤った。口と両目が三日月の様になったゾッとする笑みを浮かべて。
その顔と同じく、心根の歪んだ男だった。
自分を気に入った癖に、ジェームズとシリウスの質の悪い悪戯を黙って見ていた。それでいて学生の間、ずっと自分と友達になりたいと言い続けて付きまとってきた奴だ。
「お前の部屋にも押し入ってこよう、私が見張っている。」あいつはそれすらも見越して
それでも侵入してくるだろうがな。
そんな馬鹿なと思ったら、翌朝に教授からうんざりとする報告が入ってきた。
教授が俺の部屋に行った時にはもうリーマス・ルーピンがいたと、しかも酒瓶もってゴブレットを二つと、酒の肴を沢山持って・・俺の部屋なんだと思ってるんだよあの変態・・
教授がぶちぎれて追い出して、リーマス・ルーピン用の守りの結界を張ってくれたって言ってくれて一安心だ。
スキャの奴は俺がクィレル先生の部屋で寝ている間に、俺の事を探して見つけてポケットの中に入っていたから見つからずにセーフだった。
スキャはあいつの事を怖がっていたのか。多分あいつがホグワーツの敷地内に入ってきたのを感じて怯えて、大広間に行きたがらなかったんだ。
教授が行って、クィレル先生も中座した時にスキャをポケットから取り出した。
遠くにいるのにあいつに怯えているのかブルブルと震えている。ヴォル付きクィレル先生にだってここまで怯えていないのに。シリウスの時だって。
「大丈夫だよスキャ。」そっと両手で握りしめて、温まるように吐息を掛けてやる。
「お前は俺のものだ、どんなことをしても守ってやる。その為には協力をしてくれ。絶対にお前を守れるように、あいつの情報が欲しい。」
屋敷しもべ達やケンタウロス達のようにはしない、俺のものは絶対守る。
スキャの震えが止まって、寝息が聞こえる。
「いたくそのネズミにご執心だなロナルド・ウィーズリー。」
「こいつは俺のものだよ先生。後ロンって呼んでくれよ。」
「お前はそのネズミが-ただのネズミ-だと思っているのか?」
「・・お願い丸無視かい。でもスキャ・・スキャバーズがネズミだろうが何だろうがどうだっていい。」
「ほう、お前とお前の天使達とやらの害になるかもしれんぞ?」
スキャが?ああでもその時には「俺の手できっちりと殺すって決めてるんだ。」
こいつもその事を知っている。裏切ればどうなるか、その末路はきちんと話している。
「もう寝るわ、お休み先生。」
「・・・・」
不思議な餓鬼だ、慈悲深いようでいて酷く冷酷で。
ヒキガエルもどきを追い詰めていたあいつは、見ていて胸が高鳴った。久方ぶりに高揚をした。
ロンから発せられたあのどす黒いあの憎悪は心地よく感じた。そうだ、そんな醜きものなぞ蹂躙してしまえと。
なのにあっさりと放り捨てた。興味がないからもう気にしないと、徹底破壊をしなかった。
「・・お前が俺様の下に堕ちて来い。」
そうすればハリエット・ポッターも、周りの者達もついて来るかもしれない。
ご主人様はそれを望まれるのですか?
お前は不満かクィレルよ。
いいえ、全てはご主人様がお決めになられる事。あなた様がそれを望むのならば、私をいかようにもお使いください。
初めてヴォルデモートは他者を殺したくないと望んだ。自分の下へと闇に堕ち、共にいて欲しいと願った。
ロナルド・ウィーズリーが来れば、ハリエット・ポッターもネビル・ロングボトムも共に来よう。
配下になった者達は殺す必要はない、だから殺さなくていい。
あの者達を配下とは思わなくとも、他の死喰い人達の手前そう言うが何故だろう?
何故自分はこれ程までに子供達に対して思い悩むのか、ヴォルデモートは椅子に座ったまま一晩ぼんやりと思い、クィレルもまたそんなヴォルデモートを見守り続け、一夜を明かした。
そんな二人の事はつゆ知らず、ロンは早速行動を開始した。一晩ぐっすりの後は頭が冴える!
ちょっと行ってきます!!
クィレルの部屋から厨房は近く、早速リジーを探してスキャバーズを校長室の100メートル
先に姿現しをさせて、戻ってきたスキャバーズを俺のポケットの中に姿現しをしてほしいと。
魔法族の姿現しは特定の場所のみだが、屋敷しもべ達のはそういった細かい事も可能だと教わっていてよかった。
俺の野生の勘が告げている、あのやばい奴は絶対にじじいが絡んでいると・・違っても疑うだけなら実害がないし試すことにした。
もし本当にじじいのスパイだったら、スキャバーズがあいつの嗅覚で見つかってアウトって思うだろうが、どっこいこっちには秘策あり。
兄貴達が開発をした新薬に、匂いが完全に消せる魔法薬がある。需要は結構あって、主に体臭を気にするお年頃の子供達に大人気らしい。
近頃は悪戯よりももっと人の役に立つものを作って店を出すって言ってたっけ。
試供品で俺にもくれたのをスキャにもつけた。これはつけて1日保つらしい。
魔法薬の説明をして、目薬を塗って、それでもやばそうになったら逃げて来いと言って送り出したら案の定だった。
待って5分後にあいつは校長室に現れて、俺の事をじじいに言っていた・・・って・・ちょっと待て、あれってホントに俺の事報告してんの?
子供の家も、幼稚園も、保護案も養子縁組も全部シリウスとルシウスさんを中心にした大人たちのした事だぞ?
それを俺が全部したみたいに言って、挙句勲一等ってなんじゃそりゃ?
・・・もしかして俺とあのじじいを潰し合わせて高みの見物する気かあの野郎は⁉
冗談じゃねえ!!俺はおまえのおもちゃじゃねえ!!!
「・・あいつが何か仕掛けてきたら潰すぞスキャ。」誰が相手でも敵はぶっ潰す!!!
今までのロナルド・ウィーズリーとその周りの者達が引き起こしてきた化学反応をまとめたみたいな回になりました。
リーマス・ルーピンの外道っぷりが書けていれば幸いです。
でも作者はこのリーマス・ルーピンもロナルド・ウィーズリーに何とかしてもらいます。
彼に丸投げしました。
ヴォルデモートもクィレルも、少しずつですが愛を知りかけてまいりました。
ダンブルドアの弱さもちらほらと出して行ければと思います。
スキャバーズはスキャと呼ばれるほど、ロンに愛されるようになりました。
なお屋敷しもべの姿現しの特徴は筆者オリジナルです。