まだかまだかと、ハリエットはここ数日そわそわとしている。
お陰で大好きなセブ先生の授業であわや減点を喰らうところだった。
魔法薬を作る時間は大好きだ。寮監のセブルスもだが、何か料理を作っているのと同じ気がして
ホグワーツの授業で最初に馴染んだものだから。
教科書や先生の言う通りに切ったり砕いたり煮込んだり、タイミングはドラコ達が教えてくれて、
今では自分でも何となく分かり始めた。
「魔法薬作りって楽しい!俺もっといろんな薬を作れるようになりたい!!」-夢―という者を初めて持てたのもこの授業のおかげだ。
薬を作って困った人を笑顔にしたい、ロンの様にとセブ先生に言ったらものすごく驚いた顔をされた。
俺なんかじゃ無理なのかなと落ち込みかけたら、ポンと頭に手を置かれてそっと撫でられた。
大きくて少しごつごつしてて、見上げてみれば先生はいつもと全然違う顔をしていた。
泣きそうな、それでも精いっぱい笑おうとしている顔で、見てた俺の方がぼろぼろと泣いた。
以来先生は人前ではハリエット・ポッターって呼ぶけれど、二人きりの時にはハリエットって呼んでくれるようになったのに・・その先生の授業をしくじりかけるほど落ち着かない。
だって!明日からクリスマス休暇なのに!!ダーズリー家からの返事が全く来ない!!!
駄目ならだめって返事くれ!!
「ほらハリエット、百面相してないでご飯はきちんと食べろ。」
「う~ロン~。」
「ダフネ達から理由聞いて知ってるから、それはそれ、これはこれできちんと食べろ。」
こいつもちゃんと成長してる。自分からダーズリー家に歩み寄ろうだなんて凄い事だ。
普通は虐めた奴は許さないになるんだが、もっとひどい虐待を受けても憎んだままじゃなく、
何でどうしてを自分なりに考えたなんて・・ガキ大将のままの駄犬や、人を疑って駒にしか扱わない腹黒狸はハリエットの爪の垢を煎じて飲むべきだと思うぞ、マジで。
―バサリ―
「ああ、来たか。僕は寮に戻って荷物の整理をするよ。」
「ドラコは本当に梟便の群れが嫌いだな。」
「フクロウは好きだけれども、彼等の羽やそのほかの物が落ちてくる中で食事をしたくないだけだよ。」
ドラコって本当にお貴族様だな~って、白のメンフクロウは・・・いた!!
「スノー!!こっちこっち!!」
今年の進級祝いだってシリウスがくれた白い梟がやっと来た!メスで俺の事を子供に思っているのか時折翼で俺の事を撫でてくれて常に側に寄り添ってくれてるいい奴だ。
そのスノーが手紙を持ってる!!
えっと・・これって・・「やった――――――!!!!!!!」
手紙には一言帰って来ていいとしか書かれていなかったけれども超嬉しい!!
「ロン!帰って来ていいって!!クリスマス休暇も帰って来ていいって!!」
嬉しい!本当に嬉しい!!
ソノ-ラスを掛けたような大声であっても、誰もハリエットを咎めようとは思わなかった。
みんな知っている、ハリエットがその一家から受けた仕打ちを。なのに歩み寄ろうとして
家に帰れると喜ぶ彼女を咎める奴がいたら寮なぞ関係なく総出で吊し上げる気満々だ。
「次の日は皆で僕の家に来たまえ、大勢泊まれるから家族連れでもいい。
ロンはどうするんだ?」
「何となくハリエットの方が許可が下りる気がしてたから、今年は帰るって兄貴達と決めて父さん達の了承もとってある。」
「それなら一家揃って来給えよ。父上もお許しくださる。」
「おう頼む。その代わりに夏休みは俺のところにも泊まりに来いよな。」
「分かった。楽しみにせているよ。」
「ねえ、夏休みは親が許してくれたら交代で泊まり合いをしない?」
「それはいいな、でもみんな無理のない範囲でしような。」
「俺のとこは・・」
「だからさ、無理のない範囲だってセオ。ハリエットもハーマイオニーもだぞ。」
一つの手紙が、来年のお楽しみも生んだ。
教職員の席ではマクゴナガルをはじめとした教師陣が温かい目でその光景を見守っている。
「いざとなったら子供の家でキャンプできるように、ルシウスさん達に掛け合うか?」
「それはいい。それならばハンナたちも気兼ねなく泊まれるし・・」
ロンの何気ない言葉から楽しい事が次から次へと生まれてくる素敵な光景を。
それからはあっという間にクリスマス休暇になった。
汽車の中で明日の打ち合わせをした。それをバーノン達にうまく言えるか不安だが、その前にきちんと言わないといけない事がある!!
汽車を降りて、一旦お別れの挨拶をしたハリエットは、心臓が破れそうなほど不安でドキドキしながら人を探した。
今日のロンドンは大雪が降っている、もしかしたら来てないかもしれない・・そう思ったがいた!
今回は小さな荷物だけどやっぱり持ってくれた。無言であって・・言わないと・・言わないと!!
....
「ただいいま!!バーノン叔父さん!!!!!」
ハリエットはありったけの勇気を込めて全身で叫び上げた。バーノン叔父さんと。
受けた仕打ちは今でも忘れられない憎しみもゼロになったわけじゃ無い。それでもこの人は俺の
事を10年間無償で育ててくれた。妻の姉の子供なんほぼ他人で、手紙一枚で押し付けられた俺の事を、だからこう呼ぶことにしたんだ。
拒絶されるかもしれなくとも・・
しばらく沈黙が下りた。ハリエットの大きな声で注目を集めても、バーノンはまともではないと叱らなかった。
不意に、本当に何の前触れもなくバーノンの目から涙がこぼれ始めた。
酷い事をした自分を叔父さんと、ハリエットが言ってくれた。
胸の中では沢山の言葉が詰まっている。今の言葉に対する感謝の気持ちも、今までの罪悪感も、これからはどうやって家族になって行こうかとも沢山の言葉と思いがあるのに!!
「・・家に帰るぞハリエット。」言えた言葉がこのたった一言だとは情けない思いだが、
「うん!!帰ろう!俺達の家に帰ろう!!バーノン叔父さん!」その言葉を聞いたハリエットはとびきりの笑顔で返事をしてくれた。
まるで宝物を貰ったように。
「ただいいま!!ペニチュア叔母さん!!!」家で出迎えたペニチュアにも叔母さんと言ってくれた。
来年の夏休みには夫婦二人で出迎えに行こう。
クリスマスの贈り物でした。
ハリエットにとっては叔父さんと呼ぶにはとてつもない勇気のいる事でした。
―家に帰る―というのはハリエットにとって、まさしく宝物なのです。