ネタを纏めるのに時間かかりすぎのポンコツぶりですが、お見捨てなくよろしくお願いします。
冬のホグワーツの朝は矢張り寒い。
今年はイギリスにも大寒波が襲来をして今年は二割増しの大雪が降り、暖房器具のない中世時代の城そのままのホグワーツの外廊下は寒さ対策の呪文や炎を閉じ込めた携帯カイロを持っていない下級生達がバタバタと温かい大広間めがけて駆けていく。
大広間は相変わらずごった返して賑やかだ。
中でも一際賑やかなのはグリフィンドールのロナルド・ウィズリーの席辺りだ。
「ロン、もういらない。お前が食べてる間寝てていいか?」
「お前な、もう少し食べないと肉つかないぞ。。」
「そうよハリエット、もう少し食べないと大きくなれないわよ。」
「う~・・俺はロンの膝に居られればそれでいいよハーマイオニー。」
ただいまスリザリンのハリエットはグリフィンドールのロナルド・ウィズリーのお膝の上に出張中。
つい一昨日迄はロンがハリエットの事を構いつけなかったのが嘘のように、またハリエットを自分の膝の上に乗せて甘やかす日常に戻ってドラコ達はホッとした。
一昨日迄のハリエットは本当に見ていられない程にロンに構ってもらえないと悲しんでいた。
ハリエットはもう入学してきた時とは違い、友人・親友そしてなにくれとなく面倒を見てくれて愛情を注いでくれる三人のお母さんのような人達がいても、ロナルド・ウィズリーは別格なのだと思い知らされた。
もうこの二人を無理にくっつけようとするのは止めにしよう。下手な事で二人の関係にひびが入りかけて、今回は超イレギュラーな事で修復できたが次にそうなれるとは限らない。
修復できず、永劫の溝となった日にはおそらくハリエットが耐え切れずに心を壊しかねない。
それよりは今のままで温かく見守ろう、自然な成り行きが一番良いのだとハリエットを見守る者たち一同は昨日の深夜に規則を破っての緊急会議を称して出した結果を胸に刻み込む。
出席者は無論ドラコ筆頭に、なんと規則の鬼・規律の軍曹と呼ばれて久しいハーマイオニーもばっちりと入っている。
「大切なハリエットの事に、私が出なくてどうるのよ!」
グリフィンドールの才媛は獅子が吠えるが如くのたまい、サクサクと話をすすめさせた。
彼女はもう女ロナルド・ウィズリーと呼んでも良いよね。
「やっとハリエットが笑っているわねドラコ・・」
母その一のダフネは感極まった声で喜びながら目頭をそっと押さえる。ハリエットが笑っているのならばもうなんでもいいではないか。
「そうね。あの子はまだまだ子供なのねダフネ。私達の感覚であの子を急かそうとしたのが間違いだったのよ。恋愛も何もかもがまだ早かったのね。」
母その二のアミルもしみじみと言っている。
ハリエットは本当の心が育ち始めて漸く四年しか経っていないと言うのをつい失念してしまったとダイ反省をした一同を、ハリエットが驚かせた。
「あのさ・・あのさロン・・」
「うん?どうしたハリエット、何か食べたいのか?」
「違う!食べ物じゃない・・あのさ・・・そのさ・・」
言いたい事を上手く言えず真っ赤なグミのような顔をしているハリエットを、ロンはせっつく事無く食事の手を止めて黙って待つ。
何か余程重要な事を言いたいようだ。このまま一日でも二日でも待ってやる。
「クリスマスのダンスパーティーに-私-と一緒に踊ってほちぃ!て!!」
噛んだ・・・重要な事なのに噛むって馬鹿か俺は!ほら見ろ!!なれない言葉なんて使ったから噛むし周りだって・・・周りはなんで静かなんだ。
今ハリエットは何と言った?
ダンスパーティーはどうでもいいですわ・・あの子自分の事・・
ハリエットが自分の事を・・
自身の事を
私と言った!
上級生や教師陣の不意の沈黙に引きずられるように下級生達も黙り込んでしまい、喧騒響く朝食の席に沈黙が降りた。
一人称を変えたくらいで驚かれる。それ程までにハリエットは頑ななまでに自分の一人称を俺で通してきた。
一年目はハリエットの境遇ならば言葉遣いくらいはと見逃していたお母さん達も、二年目あたりからハリエットも女性なのだからと言葉遣いをゆっくりと教えようと頑張ってきた。
その甲斐あってか多少は乱暴だが言葉の端々に丸みを帯びて、男言葉も激減をして女の子らしくなってきたが、どうしても俺と言うのをやめさせることが出来なかった。
女だと弱いから
女は力がない、馬鹿にされる、男たちに虐められる
付け入る隙を与えない為に必死に生きてきた頃の心の傷がそうそう無くなる訳もなく、今でも自分を女だと受け入れるのを怖がっている節がある。
弱い者は踏みにじられると深層のどこかで怯えが残っているのならば、それこそ無理は禁物だとロンがそのままでいさせることにした。
同室のダフネもアミルも三年目の夏休み直前の出来事を目の当たりにしているのでロンの言う事に賛同をした。
三年目の夏に、ハリエットに月のものが来たのだ。
朝目を覚ましたハリエットはいつもと違う体のだるさを覚え、お腹が痛いと起き上がれずに、心配をしたダフネとアミルがマダム・ポンフリーの所に連れて行こうと着替えをさせている最中に、ハリエットの下着の血に気が付いた。
ハリエットは同年齢よりも痩せており月のものの血も極少量で見逃されそうになったが、ダフネ達が幸いにも気が付てすぐに対処が出来た。
新しい下着に交換をさせよとハリエットを促そうとした時、ハリエットの顔を見て愕然とした。
ハリエットの瞳には怯えと戸惑いがない混ざり、涙をぽろぽろと流しているではないか!
二人はハリエットが月のものに驚いたと思い急いで説明をしようとした。
ハリエットの周りにはきちんとした性教育をしてくれるしっかりとした身内の大人の女性はおらず、和解をしたダーズリー夫妻の叔母も、もしかしたらそこまで踏み込んで教えていないのかもしれないと危惧をしたのだが違った。
ハリエットはダンブルドアの手筈でマダム・ポンフリーからきちんと教わり、叔母からも対処となった時は必ず教えるようにと言われているという。
ならば何故泣くのか?
「だって・・俺・・弱い女になっちまう・・」
自分の身を守ることもできない女になってしまうと本気で怯えていたハリエットが、今ようやく自分を-私-と言って、異性であるロナルド・ウィズリーにダンスパーティーに誘いをかけている!これ程目出度いことがあるか?嫌ない!!
「ハリエット・・ハリエット・ポッター。謹んで受けさせていただく。
その日のダンスパーティーを人生最高のものにするとロナルド・ウィズリーの名に懸けて誓う。」
様々な思いの込められた-私-を受け取ったロンは、今までで一番の優しい微笑みをハリエットに向けて厳かに受け取ったのであった。
外伝パニックの余波がここで働きました。
いつもいる人がいつでも側に居るとは限らないとハリエットは思い知り、ロンに対する様々な自分の思いを考えた結果、自分はロンの側に居たい・ダンスパーティーもロンが他の人と踊るのは嫌だとようやく思い至っての告白でした。