「癒してくれネビル!!!」
「でもロン、シリウスさんにとってはいい事なんじゃ・・」
「-俺-にとっては最悪だ!!そのほっぺフニフニさせてくれよ~ネビル・・」
最悪だ!シリウス・ブラックが無罪証明されてからの俺の生活は激変した!!ほぼ全てあのおじさんが悪い!!!
アズカバンを出てから、何故か毎日子供の家に居やがるようになった。
「何でいんだよおっさん、ルシウスさんも貴族の偉い人でも働いてるぞ。毎日プラついてて恥ずかしくねえのかよ。」
フリーターどころか現在プータローのシリウスに苛ついてガチで説教してやったら、
「働いたことねえ。」超あり得ねえ事ほざきやがったこのおじさん!!
今までどうやって生きてきやがった!ホグワーツ卒業後何して生計たててやがった!!どうやって生活費稼いでいやがった?まさか知られていない悪事か、よもやのイケメンなのを利用したヒモ野郎かこのおジンは!!
「・・俺ん家どこだと思ってる。ルシウスがグリンコッツに代理で金降ろしてきてくれたから心配はないぞ?
今暇だしルシウスがまだ世間には俺の事知らせるなっていうから、きちんと理由を知っているのはお前達だけだ。よってお前達で遊ぶことにした。」
「・・ようはあんた親のすねかじりの寄生虫野郎か・・」
「・・お前マジ今いくつだ?本当に9歳か?」
「うっせえぞこの穀潰し!!やる事ねえんだったら家業継いで、まっとうに生きろこの穀潰しが!!」
俺は16歳から手前で生活費は稼いでたもんだが、この顔だけがいい極潰しは腹が立つ!!ぶん殴りたいほどに!!
「嫌だね。」
「・・は⁉」
「あんな腐った家継ぐんなら死んじまったほうがましだ!!!」
-血-だの生まれだの後生大事に生きていて、意にそわない者は家族の系図から平然と消すあんな冷たい家なんぞどぶに捨てても・・
「じゃあ今すぐブラック家の名前捨てて、好きに生きて野垂れ死ね。」
-家-の事を悪しざまに言ったシリウスに、ロンは容赦する気を捨て去った。
-家族-を何よりも愛し守るロンの地雷を、シリウスは見事に踏み抜いた。
「恩恵受けて好き勝手生きてきた阿呆が。食うに困らなくて生活費で悩んだことがない-家-に守られてぬくぬくと生きてきたお坊ちゃんが、無名で生きてけるほど世の中甘かねえんだよ。
世間の厳しさ何にも知らない極潰しが食わせてもらってる恩も感じずに、偉そう抜かすなよクソガキが。」
こいつはあれか、年だけくったバカガキ決定だ。何が魔法界の王族の嫡子様だか、ちゃんちゃらおかしくて笑えるな。
激おこのロンは本当に恐ろしく、言われた当人も聞いていた親友達も一瞬でフリーズを起こして
「・・お兄ちゃん怖い・・」兄大好きっこのジニーをもドン引きさせた。
当然シリウスのも固まった。自分は闇の勢力と戦って修羅場をくぐり抜けてきて一人前の大人になっているつもりだった。
しかしだ、ロンの言う通り生活で困った事はアズカバンは例外として他は一度もない。
子供の頃から高価なものに囲まれて育ち、着るもの食べ物は全て一流の物ばかり。
嫌って飛び出したはずのブラック家に養ってもらっている自分は果たして大人だろうかと、ショックを受けたシリウスは本気で悩んだ。
だからといって家は継ぎたくない!スリザリンではなくグリフィンドールに入ったというだけで、俺を見捨てた家なんぞ誰が継ぐか!!
純血主義の-例のあの野郎-に与した家なんぞ惜しくもない!!
「・・お前本当に馬鹿な。」
家を継ぎたくない理由を聞いてやったが、最早あんた呼びもやめた。まさか魔法界の王族の嫡子様が、-純血主義-の本当の意味知らなかったなんて思わなかったぞ。
俺と同い年のドラコだって知ってんのに、おジンが知らないってどういう事だよ。
「あんなおっさん、これってルシウスさんから教わった事なんだがな・・」
子供達の遊びの邪魔にならない場所にルシウスとドラコを引っ張って、ルシウスさんから教わった事をそのままシリウスに話してやった。細かい捕捉はドラコに任せて。
「・・連綿と続くものをきちんと後世に・・」
「俺はそう受け取った。分かりやすいのが純血の一族の-血-の扱い方だな。」
話を聞いても納得しないシリウスに俺なりの-純血主義-の解釈をしてやる。
「俺こないだドラコの家で遊んでて、鼻ぶつけて鼻血を出したんだよ。紙で拭いてごみ箱に捨てたらドラコにえらく怒られた。」あの超かわいいドラコの激おこはちと怖かった。
「・・どうやって捨てた?」
「そのまま紙を丸めてポイ。」
「それって無謀すぎるだろう、マルフォイ家が闇の陣営の者だったらお前呪い殺されてんぞ?
お前の親はそんなことも教えなかったのか?」
-古い純血の一族の血-は血そのものに力がある場合が多い。
一般の魔法族よりも魔力が濃かったり、その家の身に受け継がれる独自の魔法を使える力だったりと様々にある。
中には-グリーングランス家-の様な呪いが血に掛けられているのもある。
グリーングランスの一族は全て短命で30代で必ず死ぬ残酷な家系だ。
それは何時の時代かは分からないが、当主の一家が敵対勢力に-血-を抜き取られ呪いを掛けられたことから端を発する。
血とは恩恵を授けるのみならず、呪いの媒介としての効果が十二分に発揮をされる。
その恐ろしさは親から子へと受け継がれるはずだ。少なくとも一般魔法族ではなく、端っことはいえ聖28一族に名を連ねるウィーズリー家の子供ならば。
「ああ~詳しい事は知らんけど、父さんと本家が断絶してて俺ん家メッチャ忙しくて生活してくので一杯一杯で教えてる余裕が無えんだと思う。
俺ん家はいいとしても、一般の魔法族はそんなこと教わらないんだろ?名家が口伝してるか学ばない限りはさ。」
「・・そうかもしれないな。」
シリウスは学生時代の友人達を思い出す。ジェームスは同じ名家だったから知っていても、ルーピンはそこそこで、ピーターは-魔法使いの常識-を全く知らなかった。
教えてくれる知識を持ったものが身近にいなかったから。
「要は魔法ってのは今まで先達たちが積み上げてきたもんだろ?その良さも、便利だけど生じる害もよく知っていて、対処方法をきちんと生み出して次世代に継ぐのが聖28一族の本来の役割だと俺は思ってる。」
「役割?」
「そ、まあわかりやすく言えば先生や教授みたいな役割かな。魔法の知識を蓄え知らない奴に教えて、いざ問題が起きれば真っ先に先頭に立って弱い奴を守るんだ。
俺はそんな魔法使いを目指してる。俺の大切なものたち全員を守れる奴に、その為にドラコと勉強してるんだよ。」
「僕はロンの考えは-高貴なる者の務め-に相当すると考えています。」
ロンの考えを聞いて押し黙ったシリウスに、ドラコが自分から話しかけた。
ドラコはわりと人見知りで挨拶以外に話をする相手は限られている。シリウスに対してもそうだったが、ロンがシリウスを受け入れる方針の様なのでギリ話し相手にしてもいいと思ったので解禁したのだ。
「確かにロンの家も名前だけであれば聖28一族に数えられていますがご存知の通り分家の、しかも本家とは断絶状態で裕福とは程遠いです。
しかしアーサーさんの家は皆がロンと似たり寄ったりの考えを自然と持ち合わせています。
お金があるだけ権力があるだけの腐った家や新参者達は到底持たない、いえ持ち得ない考えを自然体得しているのは本物の純血主義の家で育ったアーサー・ウィーズリー氏の影響だと思います。
僕はロンと違って聖28一族の本来の仕事は魔法界の門番で守護者であるべきだと考えています。
入ってきた者を教え導き敵から守り抜く存在であるべきだと、己が何を求められるのかを忘れないために古き家訓と教えを受け継ぎ守るのが純血主義であると。」
まあ親のアーサー・ウィーズリーは端々でその考えが出ているだけで、当人は親・マグルを謳っているあまり尊敬すべき人物ではないとは内心でつぶやくドラコであった。
なぜあの親からロンの様に素晴らしい子が生まれて育ったのか摩訶不思議で、他の兄妹達もまた然りだ。
ドラコは中々に腹黒くマルフォイ家の嫡子にふさわしい育ち方をしているのだったがそれは今は別にいい。
二人の壮大な純血主義の解釈を聞いてシリウスは完全に壊れてしまった。
「・・親父に会いてえ・・」とか抜かすほどに。
シリウスの父は最早死んでいる。両親祖父母弟も全て死んでこの世にはいない、死者に会えないのが世の常と言いたいところだがどっこいここは魔法界。
絵にその人物の人格をコピーする疑似絵がある!!
「ルシウス!!今すぐ俺をブラック家の本宅に連れてけ!!!」
子供二人に論破されて矜持も何もかもが崩壊をしたシリウスは帰宅早々ルシウスに泣きついてグリルモアにあるブラック家の本宅へと付いてきてもらって
「これはシリウスぼ・・」
「挨拶はいいクリーチャー!!親父の絵をもってくから邪魔すんなよ!!!」
「何とご無体な!!長年お帰りにならずにご帰宅早々にそのような暴挙を!!!!」
「うるせぇ!俺は親父にどうしても聞かなきゃならねえことがあるんだ!!・・今更だけどどうしても聞かなきゃなんねえ・・」
ブラック家の本宅では今でも屋敷しもべ妖精のクリーチャーが家を守り続けていた。
クリーチャーは先代の夫妻も、しもべ妖精の自分に親切にしてくれたレギュラスも大好きだがシリウスは嫌っている。クリーチャーの好きな者達を困らせ泣かせて散々迷惑を掛けた輩だからだ。
今もいきなり帰ってきては当主の間に飾られている先代のオリオン・ブラックの絵を外部に持ち出そうという暴挙をしようとしている!!許すわけにはいかない!そう思ったがシリウスの様子がおかしい、何時もの傲慢さが見られない。それどころか打ちひしがれているように見える。
「・・何にお使いになるおつもりですか?」
「・・親父に教わり損ねたかもしれない事があるかを聞きたい、それだけだ・・」
「ならばオリオン様の絵のみを外してこの家でお聞きになればいいでしょう。その間邪魔が入らない様にクリーチャーめがお守りしましょうシリウス様。」
腐ってもこの男も自分が仕えるべき一族の長子に変わりはない。持ち出されない為の妥協案をきちんと提案してやる。
クリーチャーの言葉を聞き入れたシリウスは、絵の父親をもってかつての自室へと入り、クリーチャーは防音呪文と侵入者防止の呪文を部屋に施した後、主が連れてきたルシウスにようやく挨拶をして紅茶を勧めて下がった。
「・・奥様、そうご立腹なされずに。」
「クリーチャー!あの者は!!」
「はい、奥方様のお怒りはごもっともですがあのお方は少し変わったように見受けられます。」
「・・シリウスが・・」
「はい、少なくともあの傲慢さは見られませんでした。」
「・・そう・・シリウスといい、良い子だったレギュラスも・・私達はどこで間違えたのか・・」
シリウスの母親ヴァルブルガは涙を流す。
長子は純血主義の意味を理解しようとせず、もう一人の我が子も-間違った純血主義-に走り、自分の代でこの家を守り切れなかった当主の妻の責務として、一人の母として我が子等をよき方向に導けなかった後悔の涙を。
シリウスと肖像画のオリオンの話し合いは明け方まで続き、終わった後「・・帰るぞ。」
部屋から出てくるなりルシウスに命じた。
「クリーチャー、主不在のブラック家を守り抜いてくれたことに感謝する。
俺は近日この家に-戻って-くる。」
「!もしやそれは!!」
「その通りだクリーチャー、俺はこの家を継ぐ。ブラック家の当主の務めを果たす・・今まで本当にすまなかった。」
「・・いいえ・・いいえ・・勿体ないシリウス坊ちゃま・・」
「泣くなよクリーチャー、今まで本当に悪かったな。そんなわけでルシウス、俺家継ぐわ。」
「かしこまりました、ならばマルフォイ家の力を持って万全の準備を整えましょう。」
一晩を掛け何を話し合ったかは一切を言わず、ただ決めたことを一方的に命じる。
良くも悪くもこの男は-王-なのだ、正真正銘の。
ルシウスはシリウスの望みを叶えるべく動き出す。
アズカバンから-正式-に出すべく各方面に交渉をし続け3か月後には成果を上げて、翌日の日刊予言紙を賑わせた。
-シリウス・ブラックは無実⁉ルシウス・マルフォイが証言!!-
そのニュースは魔法界に激震を走らせた!!アズカバンでの出来事を知っている者・ルシウスと交渉をした者以外の魔法省の役人は言うに及ばず、ブラックの名を本当の意味で知る全ての魔法族に。
「・・だからってなんで俺相手に愚痴るんだよシリウス。」
当然俺も知った、父さんと母さんはぶったまげてたけど俺は半年前から会っちゃってるし実物のこいつは駄犬なのも知ってるからもういいやで割とどうでもいい。
「皆が皆お前みたいだったら楽だ・・-あいつら-マジでうぜえんだよ!!」
「・・掌返してくる馬鹿か・・無視だ無視!!徹底的に!!!」
「きちんと家継ぐって決めたんだよ!親父みたいな当主に!!・・大人はそうもいかねえんだよ・・」
そんで俺はルシウスさんから全てを聞かされ巻き込まれて、毎日-駄犬-の愚痴相手になっちまった・・何が悲しくておっさんの愚痴聞かなきゃならんのだ!!!天使たちとの触れ合いが出来んだろ!!!!
もうヤダ・・誰かこの駄犬を躾てくれ、マジ捨ててえ・・
「・・あんたはあんたの道を行けばいいだろ、どうせ良い子の仮面なんて数日も持たねえだろ。あんたの理想じゃなくてあんたのしたい事をしろよシリウス。
間違ってたらルシウスさんが止めんだろ。」
こいつに放っておいてほしくて適当言ったら「・・そうだよ!!俺には親父のような事は無理だ!!俺は俺のやり方でやりゃいいんだよ!!!」
シリウスも-大人の対応―には心底うんざりとしていた、俺は俺の王道行ってやる!!
子供のうざいという思いと、お子様な大人の閃きが化学反応を起こして、ブラック家開闢以来の超俺様な王の誕生と相成った瞬間だった。
「なあ他に意見は・・」
「だから何でおれに聞くんだよ!!ルシウスさんに聞け!!!
ジニーたちとの時間邪魔すんな!!」超うぜえんだよ!!滅びろチクショウー!!!
物語りの核作りの為に、主人公周りの話が続きました。
次回もそんな感じです。本編に戻るまで少々お待ちください。