出発の前日に千尋に頼まれたから荘太について行こうとするわたしと、元々の持ち主は千尋なのだからついて来るなと言う荘太とで言い合いの末、デュエルで勝った方の言い分を通すという、この世界ならではの出来事があったが、わたしの勝ちで終わり、無事デュエルアカデミアに来ることができた。
そして入学式も終わり、各寮で行なわれる歓迎会まで時間があったので、案内も兼ねて荘太と一緒にアカデミア内を散歩していたのだが……
「ここはエリートである俺たちオベリスクブルーのみに使用が許されたデュエル場だ!お前達の様な雑魚が入って良い場所じゃない!」
オベリスクブルー生三人とオシリスレッド生二人がなにやら言い争っていた。ていうかあのレッド生十代じゃ…?あ、こっちに気付いた。
「おーい、荘太!」
荘太はため息を吐き、手を振る十代に近づくと
「で、お前は初日から何してんだ?」
「歓迎会まで時間があったから探検してたんだ」
探検て、子供か……
「で、ここに来たらこいつ等に文句つけられてさ」
……なるほど、中等部からのエリート組であるブルー生はプライドが高い上に他の寮を見下す人が多いからさっきみたいな台詞もポンポン吐くんだよね。十代がムカつくのも解るけど適当に流してすぐ離れたらいいのに。
そんなことを考えていると
「万丈目さん!こいつ等クロノス教諭を倒した110番と14番ですよ!」
万丈目?確か財界と政界に勢力を伸ばしてる家系だっけ。政治とかあんまり興味無いんだけど珍しい苗字だったから覚えてたんだよね。三兄弟だって話だからこいつは三男ってことか。
「ビークワイエット。諸君、はしゃぐな」
………口調とか髪型とか同学年の筈なのに偉そうな態度だとか、いろいろとツッコミ所が多すぎるけど人前で実体化するわけにもいかないので我慢する。
それにしてもあの髪毎日セットしているのだろうか…
万丈目三男の演説(彼自身と腰巾着二人の態度からそう言うしかない)は続く。
「彼等がクロノス教諭を倒したのはただの偶然。入学試験では目立っていたがすぐに他の有象無象に埋れていくだろう」
………うん、典型的なブルー生だ。ちょっと芝居がかってるけど。
「なんだと!偶然かどうか見せてやるぜ!」
「そうだな、デュエルすれば簡単に解る」
そう言ってデュエルディスクを構える二人。
十代はともかく荘太まで……眼鏡君はあわあわ言ってるだけで役に立ちそうにないしどうやって止めよう……
頭を抱えるわたしを他所に荘太達とブルー生の間で緊張感が高まっていく。
そしてそれが爆発する寸前
「あなた達、何してるの。もうすぐ寮で歓迎会が始まる時間よ」
通路から長身の女性が現れた。
途端に万丈目の態度が変わる。
「やあ天上院君。入学してまだ右も左もわからない彼等にデュエルの世界の厳しさを教えてあげていたのさ」
万丈目の態度からしてこの天上院という女性は荘太達と同じ一年生らしい……いろいろとデカ過ぎるだろ、ホントはいくつだ。
万丈目の台詞に対し天上院は険しい顔のまま言う。
「そんなことをしていたら歓迎会に間に合わなくなるわよ。ブルー一年生男子の首席が遅刻したらマズいんじゃない?」
「くっ、行くぞお前達!」
万丈目達は逃げるように去って行った。
その後、自己紹介をしてそれぞれの寮で行なわれる歓迎会に参加するために別れた。歓迎会では荘太がラーイエロー一年生首席の三沢大地と出会いデッキ構築理論について夢中になっていたが、わたしはテーブルの下でこっそり実体化して料理をパクついていたので詳しくは知らない。
「ふう、食った食った」
歓迎会も終わり、自身に与えられた部屋に入ると荘太はすぐにベッドに寝転んだ。
「食べてすぐ寝ると牛になるよ」
そんなことを言いつつ千尋に今日の出来事を報告するためにアカデミアから支給された生徒証も兼ねた荘太のPDA(情報端末の略)を借りてメールを送信し荘太に返す。
「変なこと送ってないよな?」
「そんなことしないって。荘太に友達が増えたってこととか寮が綺麗だとかそんなことぐらいだよ」
それでも一応確かめる荘太。疑り深いなあ。
「確かに変なことは書いてないな」
そう言って閉じた途端にPDAがメールの着信を報せる。
「もう返事がきたのか?随分早いな」
だが送り主を見るとそこにあるのは知らないアドレス。
肝心の本文には、自身のベストカードを賭けたアンティデュエルを申し込むということと場所と時間が記されていた。おそらく万丈目達だろう。
答えは解っているが聞いてみる。
「行くの?」
「面倒臭いけど行かなかったら臆病者呼ばわりされそうだし、言われっぱなしは好きじゃないしな」
「じゃあ、わたしのデッキ使ってよ」
「昨日デュエルしただろう」
「そうだけどさ、やっぱりデュエルモンスターズの精霊としてはデュエルで使ってもらう方が嬉しいんだよね」
「わかった。貸し一つな」
「うん」
よし、交渉成立。約束の時間が楽しみだなぁ。
そして約束の時間。指定されたブルー生専用のデュエル場にいたのは万丈目達だけではなく、十代と彼の弟分だという丸藤翔もいた。
「荘太!お前も呼び出されたのか?」
「不本意ながらな…」
デュエルが楽しみでたまらないといった風な十代と違い荘太はお腹がいっぱいだからかとても眠そうである。うっかりミスしないといいけど。
万丈目の取り巻きが眠そうな荘太に対して挑発する。
「わざわざ負けに来るとは酔狂な奴らだな。今すぐ謝れば見逃してやるぞ」
それに対して荘太はと言うと
「え?悪い聞いてなかった。もう一度言ってくれないか?」
眠いからってそれは無いでしょ。
取り巻きは馬鹿にされたと思ったのか顔を真っ赤にして
「ふ、ふざけやがって!万丈目さん!この半端者は俺が相手をします!」
沸点低いなぁ。でもブルー生だしこんなもんかな。
「じゃあさっさとやろうぜ。俺は早く帰って寝たいんだ」
「すぐにその減らず口もたたけなくしてやる!」
それぞれデュエルディスクを構え
「「デュエル!」」
デュエルディスクの表示を確かめると先行は取り巻きらしい。
「俺のターン!ドロー!」
随分と力が入ってるなぁ。
取り巻き:手札5→6
「俺は魔法カード《古のルール》発動!その効果で手札のレベル5以上の通常モンスター《エレキテルドラゴン》を攻撃表示で特殊召喚!」
エレキテルドラゴンATK2500
なるほど、ブルー生だけあってそれなりの腕はあるのか。
「さらにカードを一枚伏せてターンエンド!」
取り巻き:場、エレキテルドラゴンATK2500、伏せ1、手札3
「俺のターン。ドロー」
荘太:手札5→6
「俺はモンスターをセット。カードを三枚伏せてターンエンド」
このデッキは準備が大事なんだよね。
荘太:場、モンスター(裏守備)1、伏せ3、手札2
「ははっ俺のドラゴンの前になす術も無いみたいだな!ドロー!」
取り巻き:手札3→4
「俺は《アレキサンドライドラゴン》を召喚!」
アレキサンドライドラゴンATK2000
また効果無しのドラゴン…[バニラドラゴン]?
「更に永続罠カード発動《竜の逆鱗》!その効果で俺のドラゴンは貫通効果を得る!エレキテルドラゴンでモンスターに攻撃!『エレキテル・ウィップ』!」
エレキテルドラゴンが電気を纏った尻尾を振るい攻撃してくる。しかし
「悪いがそれは通さない。罠カード《和睦の使者》発動。さらにチェーンして永続罠《DNA移植手術》発動。俺が宣言するのは水属性だ」
DNA移植手術の効果で取り巻きのドラゴン達が水属性を表す水色のオーラに包まれる。
「そして和睦の使者の効果によりこのターン俺が受ける全ての戦闘ダメージは無効となり俺のモンスターも戦闘では破壊されない」
「ちっ防がれたか」
ふふふ……そしてこれからがこのデッキの本領発揮だよ。
「さらにモンスターのリバース効果が発動する」
「何っ!?」
わたしの出番だーっ!!
「《水霊使いエリア》のモンスター効果発動!このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手フィールド上の水属性モンスター1体のコントロールを得る。俺はエレキテルドラゴンを選択。『アクア・テイム』!」
フィールドにソリッドヴィジョンとして現れたわたしはそのまま手にした杖をエレキテルドラゴンに向け、魔法を放つ。すると
「お、俺のドラゴンが!?」
わたしの隣にやって来た。
「くそっ俺は永続魔法《凡骨の意地》を発動してターンエンド!」
悪いけどそのカードの出番は無い!
「エンド前に速攻魔法《皆既日蝕の書》フィールド上の全てのモンスターは裏側守備表示になる」
危険は無いって解ってるけどいきなり真っ暗になるのはなんとかならないかな?
「そしてエンドフェイズ時に相手フィールド上の全ての裏側守備表示のモンスターは表側守備表示になり、そのモンスターの数だけドローできる」
取り巻き:場、アレキサンドライドラゴンDEF100、竜の逆鱗、手札5
荘太:場、モンスター(裏守備)2、DNA移植手術、手札2
「ドロー」
荘太:手札2→3
「これで終わりだ。エレキテルドラゴンとエリアを反転召喚。そしてエリアの効果でアレキサンドライドラゴンのコントロールを得る。」
わたしは再びフィールドに現れ、今度はアレキサンドライドラゴンに向けて魔法を放ちこちら側に引き寄せる。
これで相手が手札誘発のカードを持ってなければわたし達の勝ちだね。
「アレキサンドライドラゴンを攻撃表示に変更し、三体のモンスターで直接攻撃。えっと『アクア・トライフォース』」
眠いからって攻撃名が適当過ぎるよ…まあ良いけど。
荘太の指示に従いわたしとその両隣のドラゴンが取り巻きに向かって攻撃する。
「うわぁああぁぁあああ!?」
取り巻き:ライフ4000→0
どうやらクリボーとかは持ってなかったようで、一気にライフが削り取られた取り巻きは敗けたのがショックだったのか呆然としていた。
それはさて置き十代の方はどうなったかなと思い振り向こうとすると
「警備員が来るわよ!アンティデュエルは校則で禁止されてるし最悪の場合退学になるかも!」
と明日香がまた通路から現れた。
「ちっ引き上げるぞ!」
「待て!まだ勝負はついてないぞ!」
逃げる万丈目達とそれを引き止めようとする十代。
「兄貴早く逃げないとマズいっス!」
「そうだぞ十代。レッドのお前は後がないんだぞ」
嫌がる十代を引っ張って急いでその場を離れるのであった。
校舎の外に出て上がった息を整える荘太達。
「こ、ここまで来れば大丈夫かしら」
「怖かったっス〜」
「あと、少し、ゼェ、遅ければ、ゲホッ、捕まってたな」
「まったく余計なことしやがって」
……十代君、他の皆は息を切らしてるのに何でそんなに元気なの?
「あのままだったら俺たち皆退学になってたかもしれないけどな」
「う……悪かったよ」
「だいたい、あのまま続けていても負けて大事なカードを取られていたんじゃない?」
「いや、俺の勝ちだったぜ」
そう言ってデッキトップのカードを捲って見せる十代。捲られたのは《死者蘇生》のカード。
「こいつでフレイム・ウイングマンを蘇生すれば俺の勝ちだったんだ」
その言葉に翔と明日香は感心したようだけれど……
E・HEROの融合体って確か……
同じことを思ったのか荘太が十代に言う。
「十代」
「何だ?荘太」
「フレイム・ウイングマンの効果の一番最初を良く見ろ」
「えっと、『このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない』あれ?」
「つまり、フレイム・ウイングマンを始めとするE・HEROの融合体は正規の召喚条件を満たしていても墓地から蘇生することはできないってことだ」
「じゃあ、俺の負けってことかぁ〜!?」
「あの時はクレイマン辺りを蘇生すれば暫く凌ぐこともできたかもしれないけど……キツかっただろうな」
「眠いくせに隣の十代のデュエルもちゃんと見てるなんて…あなた結構すごいのね」
「ただのクセだよ」
そうそう、昔から自分より周りの人を気にかけて、いろんなことに巻き込まれて。そういうとこが荘太の悪いとこでもあり、いいとこでもあるんだけど。
思い出にふけっていると
「くぅ~っ!あんな強い奴がいるなんて、やっぱデュエルアカデミアに来て良かったぜ!よしっ。早速デッキの調整だ!行くぞ翔!」
「待ってよ兄貴~!」
……ホント元気だねぇ。ていうか今から調整するの?倒れても知らないよ?
「じゃあ俺もそろそろ帰るよ。じゃあな明日香」
「おやすみなさい」
十代と翔を見送った後、明日香とも挨拶をして別れる。
帰ったら千尋に追加報告しなきゃ。
「……遊城十代。それに津川荘太。面白い人達ね……」
後ろから聞こえてきたそんな言葉が耳に残った。
まずは謝罪から。更新が遅くなって申し訳ありません。本来の予定ではもっと早くに更新できていたのですが、当初の予定であった冒頭に描写してあるエリアと荘太のデュエルだけでは短かすぎたので一から書き直していました。これは完全に私のミスです。重ねてお詫び申しあげます。
肝心のエリアのデッキですが、いわゆるファンデッキです。今の環境では瞬殺される自信があります。
ですが、私はこういう二次創作ではガチデッキで瞬殺するよりもネタデッキやファンデッキをいかに魅せるか、ということのほうが物語が面白くなっていいと思っております。もっともこれは他の二次創作作品やその作者を批判しているわけではありません。
感想やアドバイス等ありましたら送って下さると創作の励みになります。
それではまた本作を読んでいただけることを祈っています。