小学校を卒業したら入るもの、なーんだ?
正解は中学校です。
では中学生男子がなるものといえば?
正解は中二病でした。
そう、俺ら3人は見事に中二病認定されていた。どうしてこんな事になってしまったんだ……
認定当初、訳がわからなかった俺らが周りに聞いてみると、誰から聞いたかは覚えてなかったが覚えていた錬金術の話をしたり、力の制御が〜などと言って体育や休み時間のドッヂボールなどを休んでいたことが原因らしい。
俺らのせいじゃん。
でもよく考えてほしい、中二病とは「中学2年生頃の思春期に見られる、背伸びしがちな言動を自虐する語。転じて、思春期にありがちな自己愛に満ちた空想や嗜好などを揶揄したネットスラング」とwikipediaには載っている。
でも、この中で俺らに当て嵌まるのって中学2年生頃って部分だけじゃん。
空想なんかしてないし、自己愛どころか他者への愛に溢れてるからドッヂボールも休んでるんじゃん。
いややっぱり妄想は少しだけ……
って違う、本質はそこじゃ無い、もう良いよ。中二病らしくこの世の闇とか探してやる。せっかく俺らには秘められた力があるんだしな。
見つけちゃったよ…………
1人で道を歩いていたらいきなり変な空間に迷い込んだので進んでみると、死体が散乱していた。
ばっちいので触らないように進むと後ろからグジュルグジュルという粘性の高い液体が沸騰する時にしそうな音がした。
振り返ると死体が立ち上がってこちらに向かってくる。
しかも腕が新しく生えて4本になっていたり、猛獣のように鋭い爪も生えたりしているので即座に蹴り飛ばして四散させた。
脆いな、まぁここら辺にいる奴は雑魚ばっかだからな(既プレイ感)
雑魚は俺に触れる資格などない。
そんな感じで、強くてニューゲームごっこをしつつ雑魚敵を蹴散らして進んでいくと、ボス部屋っぽいところにたどり着いた。
なんかうるさいので上を見上げると、女の子が空を飛んでいた。
お、親方!空から女の子が!
「くっ、なんだよこの魔女は。感知にも引っかからないし、これは魔女の能力なのかキュゥべぇ」
いつもと同じように魔女の結界に入って、いつもとは全く毛色の違う魔女に苦戦していた。
「…………」
「キュゥべぇどうしたんだよ……っ!?新手の魔女の反応、どうすれば……」
すると突如として近くに魔女の反応が現れた。今戦っている魔女の反応は動いていない。キュゥべぇに助言を求めても、あらぬ方向を向いて微動だにしない。
「いや、そっちは気にする必要は無いよ。杏子、君はこのネクロモーフを倒してくれれば良い」
「ネクロモーフ?それがこの魔女の名前なのか?それと新しく出現した魔女を気にする必要はないって……他の奴にグリーフシードを取られるのはゴメンだぞ!」
突然キュゥべぇが話し始めたかと思うと、魔女の名前を告げると共に、新しい魔女を気にしなくていいと言い出した。
「新しくここに入ってきたのは魔女じゃないってことさ、むしろ味方、助っ人だよ」
「魔女じゃないのに魔法少女の感知に反応するって……それに助っ人って」
キュゥべぇの訳のわからない説明に困惑していると
「親方、空から女の子が!」
「んえっ、お、男?何してんだ早くここから出て行け!」
「おぉっ、本当に女の子だった。その格好もしかして天使か何かなのか?それともサイバネティックアンドロイド?それとも、普段は大人しい優等生で友達は少ないけどそれは仮の姿で、夜になると人知れず世界の平和のために戦ってる魔法少女とか」
「いやなんの話してんだよ……じゃ無くて早くどっか行け!助けるつもりはねぇぞ」
「いやいや、この俺にかかれば有象無象なぞ数の内に入らねぇよ!見てろや魔法少女、この俺の鉄拳が唸るぜぇ!」
「何ふざけたこと言ってんだ、あんたみてぇなやつが太刀打ちできる相手じゃねぇんだよ!そもそもあいつは雑魚じゃなくてここのヌシだよ!……ちっ、勝手にしろ!」
「杏子、落ち着いて。彼がさっき言った助っ人だよ」
「あぁ!?知るかよ、あんなやつほっとけ。馬鹿に付き合ってられるか」
「行くぜ、とぉっ!」
それは信じられない光景だった。
いくらキュゥベぇがあいつを味方だとか言ったって、魔法少女じゃ無いただの人間が魔女に太刀打ちできるわけがないのだ、いや、使い魔にだって相対することは無理だろう。
なのに突然現れたあの男は、気の抜けるような掛け声と共に地を蹴ると弾丸のように魔女に突っ込んだのだ、それも明らかに人間の出せる速度の限界を超えた速度で。
そしてあいつが拳を振るうと、魔女が吹き飛んだ。
魔女を殴って一旦地面に落ちた後、再び地面を蹴り、冗談のような速度で魔女の方に突っ込んでいった。
吹き飛ばされた魔女も、あいつが自分に危険を及ぼしかねないということが理解できたのか、迎撃を開始した。
あの魔女は再生能力を持ち、伸縮自在な腕と鋭い鉤爪で攻撃してくる事は分かっている。
魔女はあいつに対して無数の腕を伸ばして鉤爪で引き裂こうとした。
突き刺さったように見えた鉤爪はしかし、標的をズタズタに引き裂き血煙をあげることはなく逆に一瞬で千切れ、ボトボトと地面に落ちた。
流石にここまでくると、あたしにも何故キュゥベぇが助っ人と表現したのかが分かる。
あいつは明らかに一般人では無い。
もし仮に、地面を蹴って弾丸のような速度で飛び、コンクリートを貫通する威力の攻撃を無傷でいなすのが一般人なのだとしたら、あたし達魔法少女の役目は無いだろう。
しかし、あたしはただ見ているために魔法少女になったわけでは無い。
そもそも先にあの魔女と戦っていたのはあたしの方なのだ、いくら戦えるからって横取りは気に入らない。
仮に魔法少女(男だから魔法少年?)なのだとしたら人の狩場に横入りした分もしっかりお返ししてやらなければ。
だが、今回の魔女とは相性が悪い。
せめて共闘を申し出てみることにした。
「おいあんた、あんたが戦えることは分かった、でもあたしが先に戦ってたんだからな!だからしょうがねぇから協力してあの魔女を倒すってのはどうだ!?」
「おいおいさっきは見放すようなこと言ってたのにツンデレかよ」
「はぁ?何言ってんだお前。そもそもツンデレってなんだよ。良いからさっさと倒すぞ!」
「無知だと……!」
あの男が突然意味の分からないことを言い出したから面倒くさくなって流してしまったけど、冷静になると、果たしてあたしにこの魔女を倒すメリットがあるのだろうか。
あたしはこの化け物のことをさっきから魔女と言っているけど、それはあくまで、慣例的にそう呼んでいるだけだ。
グリーフシードをおそらく持たないであろうこいつは一体なんなんだろう、という疑問の次に、倒してもグリーフシードを落とさないなら倒す意味無いじゃん、ということに気付いた。
実際のところを確認するためにキュゥベえに聞いてみる。
「おいキュゥベえ!この魔女、グリーフシード落とすのか!?」
「うん、御察しの通り落とさないよ。そもそもこいつはネクロモーフと言って魔女では無いからね」
驚きの回答が返ってきた。
「はぁ!?なんでそれを先に言わないんだよ!それが分かってたらわざわざ倒しになんか来なかったのに。というか魔女じゃ無いのに結界を作るってどういうことだよ?」
「なんでって、聞かれなかったからね。それに僕としてはこのネクロモーフを倒してくれた方が嬉しいからね。ちなみにだけどこの空間からはあの本体を倒さないと出られないよ」
「ちっ、しょうがねぇ。なぁあんた!あたしがあの魔女を倒すからあんたは周りの使い魔を倒してくれ!」
「露払いかぁ」
「別にいいだろそれぐらい。さっきも言ったけどあたしが先に戦ってたんだよ!」
「……はぁ〜しょうがないなぁのび太くんは。今回だけだよ?」
「なんでもいいよ!」
「魔女じゃ無くてネクロモーフだって今教えた
ばかりなんだけど……」
キュゥべぇが何事か呟いていたが無視して魔女に向かう。
あいつが魔女の方向から別方向に飛び出してすぐ、轟音が響き出した。
使い魔の相手なんかやってられるか。
あたしも大言壮語を吐いたわけではないということを証明するために、魔女に槍先を向ける。
先程のあいつの戦い振りを見るに恐らく使い魔は邪魔してこないだろう。でも油断はせずに意識を使い魔にも割きつつ、魔女に吶喊する。
接近するとやはり腕を無数に伸ばしてこちらに攻撃を仕掛けてきた。
流石に全てに対処する事は出来ないので槍を持っている右手側から向かってくる腕を縦に切り落とし、空いたスペースから魔女の後ろに回り込む。
槍を横薙ぎにして首を刈る、が、魔女はお構い無しに後ろを振り向いて先程切り落とさなかった右半身側の腕を全て叩きつけてきた。
まさか首を刈っても倒せないとは予想できなかったが咄嗟に槍を盾がわりにする事ができた。
「ぐっ……!あんにゃろう!」
「おーい大丈夫かー!手伝おうかー!?」
「うるせぇ!そっちに集中してろ!」
「冷たい……」
あたしの方をずっと見ていたのかそれともおたしが壁に叩きつけられた衝撃音でこちらを見たのか分からないが心配されてしまった。
ムカつく。
会ったばかりだけどあいつは妙に人の神経を逆撫でするのが上手い。
あいつがこの結界の魔女だと言われたら魔女の反応がするのも相まって素直に殺してしまいそうだ。
だけど今は先に見つけた魔女の方に集中しなければ。
壁に叩きつけられたあたしに対して魔女は先程よりもさらに腕の数を増やし、今度は逃がさない、と言わんばかりに私を腕で作った籠の中に閉じ込めようとしている。
だけど舐めてもらっちゃあ困る。
伊達や酔狂で魔法を封印して戦ってきたわけじゃない。
直ぐさま体制を立て直して、あたしに接近してくる鉤爪を弾いて腕を切り落とす。
だがいくら弾いても切り落としてもキリがないので奴の本体目掛けて跳ぶ。
当然魔女もそれに気付いて迎撃しようとするが、腕を湾曲させてかなり伸ばしているため直線的に近づいてくるあたしに直ぐには反応出来ない。
魔女の下腹部に槍先を突き刺し、右に切り裂く。
そのまま返す刀で残った左側も切り、上半身と下半身を泣き別れさせる。
魔女が動きをピタリと止めた。
これでやっと倒したかと思ったら、次の瞬間後ろから衝撃と痛みが襲ってきた。
そこであたしの意識は一旦途切れた。
使い魔の相手をしつつ、さっき吹き飛ばされていた魔法少女の方にも気を向けることにした。
なんかすげぇ男っぽい口調だし気も強そうだったがフラグをバンバン立てそうな奴に思える。
だって吹っ飛ばされてたしな。
チラッと見てみると…………うん。
なんかさっきのモブ達と同じように腕がウネウネしてるんだが、その数が尋常じゃない。
魔法少女が吹っ飛ばされてた所を覆うようにして腕が球体を形成している。
ボスの本体は魔法少女が叩きつけられた所とちょうど反対側にチョコンと見える。
え、やばくね?
助けた方がいいかと思っていると、本体を上下に切り裂いて魔法少女が球体から脱出した。
やったか!?
なんて考えたのがいけなかったのか、あのボスは頭を切り落とされた上で胴体を上下に切り裂かれてもまだ死なないらしい。
まだボスを倒していない事に気付いていない魔法少女に向けて夥しい数の腕を集中させた。
魔法少女はその猛攻を一身に受けて再び吹き飛んでしまった。
俺はボスが腕を動かした瞬間魔法少女に向かってダッシュしていたので直ぐに落下地点に行くことができた。
近寄ると魔法少女は失神してしまっているのが見て取れる。
いやこれ失神っていうか生きてるのか?
背中の肉が抉られている。
先程の攻撃によるものだろう。
しゃがみ込んで口元に顔を近づけると取り敢えず息はしているようなので、立ち上がって振り返る。
こっそり近付いているのは分かっていた。
俺は耳もいいからな。
先程切り落とされた頭部はあるが下半身は無いままのようだ。
再生したのだろうか。
だとしたら、時間経過で下半身も再生するに違いない。
そもそも移動するのにも大量にある腕を使えば良いのだから下半身の存在意味が無いと思うんだが。
いや、そもそも再生かも分からない。
切り落とした頭部がくっついただけかもしれないしな。
そんなことを考えていると最初に対峙した時のように腕を俺に殺到させてきた。
焼け石に水という言葉の意味を教えてやろう。
向かってきた腕の先端についた鉤爪を、超強化された反射神経を駆使して無理やりいなす。
屈んだことで俺の頭上を通り過ぎた腕を捻りちぎる。
そうして出来た空白の時間にボスに接近し、ショルダータックルを食らわせる。
よろめいたので更に頭部にかかと落としをして爆散させると魔法少女を撃墜した時のようにまた上半身だけの身で俺に腕を伸ばして鉤爪で引き裂こうとしてくる。
流石に先さ予想できていたのでテレフォンパンチを胸元に突き出す。
果たして胸を貫通した俺の拳を引き抜く。
穴に両の手を突っ込んで上半身を左右に引きちぎろうとすると激しく暴れ出し、腕を鞭のように叩きつけてきた。
これが最後の抵抗か、と思ったら触手がピタッと静止した。
なんか嫌な予感がする。
いわゆる嵐の前の静けさというやつだ。
次の瞬間、触手が俺を無視して後ろに殺到する。
……後ろ?
大急ぎでそのまま体を引きちぎった。
引きちぎると同時に動きを止めてボトボトと地面に落ちる触手に安心しつつ後ろを振り向くと一本だけ触手が魔法少女に刺さっている。
急いで引っこ抜く。
触手は心臓付近に大きな風穴を開けていた。
周囲が先程のスプラッター空間から普通の街並みに戻る。
ここからどうしよう。
警察に通報するか?
だが説明のしようがない。
悩んでいると、足元に猫がいる事に気付いた。
いや、なんかキモい顔してるなこいつ。
しっしっと追い払おうとするが、猫は口を開くと次の瞬間。
「久し振りだね、けんじ。僕はいつかこうして相見えるんじゃないかと思っていたよ」
「ん?誰だ?」
「ここだよここ。君が今、まるで鬱陶しい小動物を追い払おうとするかのような仕草を向けた僕だよ」
「……おっ?おぉっ!?まさか猫が喋ってるのか!?」
「猫じゃないよ。僕はキュゥベえ。さて、けんじ、再び言わせてもらうよ。久し振りだね」
「いやいや今の反応見たら分かるだろ。初対面だからな?あとお前みたいなやつ見たら忘れるわけないから」
「無理もないさ、覚えてないだろうからね。神社で会った、と言えば分かるかな?」
「神社で?……そういう事かよ」
神社で会ったというなら色々知っているんだろう。俺が記憶喪失なことも知っているはずだ。
なんて悪趣味なヤロウだこいつは。
「君達人間は久し振りに会った相手に対して久し振りと言うだろう?だから僕もそれに倣っておいたんだ」
「猫のくせに……ん?そういやなんでこのタイミングで現れたんだ?」
「いや、僕は最初からこの杏子に付き合ってこの結界内にいたんだけどね。そうそう、僕は君に用事があったんだ。正確には君の中にある魔力に、だけどね」
「はぁ?魔力ぅ?」
「うん、その魔力を杏子のソウルジェムに注いで欲しいんだ」
「いやいや使い方を聞いてるんじゃなくて。その魔力を、とか言われても魔力なんか感じ取れねぇぞ?」
「流石に僕も素人に魔力の操作を頼んだりしないさ。君はソウルジェムに触れてくれれば良い。そうすればあとはこっちでどうにかするよ」
「よく分からねえけど、この宝石に触ればいいんだな?」
俺が宝石に触るとキュゥベぇとかいうやつも続いて触れた。
よく分からない何かが腕を伝って体から抜けているような気がする。
そうすると宝石が少し輝いた。
そしてみるみるうちに傷が塞がっていく。
数秒後には元の、と言うべきかは分からないが綺麗な状態に戻った。
風穴も消えている。
「なにこれ……おいお前、どうなってんだこれ」
「彼女は魔法少女なのさ、魔法を使えばどんな怪我もすぐに直せる。それにしても流石の魔力量だね」
「魔法?今魔法って言ったか!?俺は魔法を使ったのか!?」
「いや、君は使ってないよ。僕が君の魔力を使って回復魔法を使ったのさ」
「はぁー?つまんねーなぁ。魔法ってのは誰でも使えるものなのか?」
「いや、魔法を使えるのは魔法少女だけだよ。そして魔法少女になるには僕と契約するしかない」
「男は魔法少女にはなれねーのか?この場合魔法少年だと思うけど」
「無理だろうね、適正というものがある。男にはそれが皆無なんだ」
「はぁ……分かったよ。それで?」
「それでっていうのはどういう意味だい?」
「この魔法少女どうすんだよ。気絶しちまってるから流石に置いてくのも忍びねぇし」
「そのうち目が覚めるから放っておいても大丈夫だと思うよ?」
「俺の話聞いてた?そのうち目が覚めるのはそりゃそうだろうけどよ。放置したら後味が笑いじゃねぇか」
「そうなのかい?それなら安全な場所に運べば良いんじゃないかな?」
「一緒に来たって言ってた割には随分冷たいなお前。友達とかいるのか?」
「何を言っているんだ君は。そこにいる杏子は僕の友達さ。それに、魔法少女ならみんな僕の友達だよ」
「胡散臭っ。まぁしょうがないか、俺の家に運ぼう。…………はぁ、親父と母さんになんて説明したもんか」
魔法少女を背負い、家への道を歩く。
俺のことを中二病なんて言いやがる奴らへの腹いせとして世界の闇を探していただけなのに、まさか本当に見つけてしまうとは。
それにしても魔法少女か……
良いなぁ。
俺も魔法とか使いてえなぁ。
いや、やっぱこの身体能力だけで良いか……
これ以上能力増えたら足りなくなりそう。
何がとは言わないけど色々と。
でも魔力自体はあるらしいしな。
やっぱり炎魔法とか使ってみたいなぁ。
なんて思考をループさせ、時折キュゥベぇと話しているとふと背中にいる魔法少女の息遣いが変わったのを感じた。
「んんっ……ん?ここは?」
「起きたか、さて、降りてくれ」
「え、うん……誰?」
「俺だよ俺、さっき一緒に戦っただろ」
「……?…………あっ。あーー!」
「うるさっ、静かにしろよ」
「ご、ごめん。じゃなくて、ここどこだよ。というか魔女は?それにお前何者なんだよ!」
「あ〜……パス、俺もよくわからんし」
「はぁ!?」
キュゥべぇに話をパスするとこちらに向き直り口を開く。
「ふむ、じゃあ説明しようかな。何から説明した方が良い?」
「任せる。俺も訳分かってないからな」
「ならまずは魔法少女について話そうか。けんじには予備知識が無いから話についていけなさそうだしね」
「あぁ、そんじゃ頼む」
「魔法少女っていうのはこの杏子みたいに魔女と戦う少女達の事を言う。彼女達は僕と契約することで一つの願いを叶え、そして魔法少女として魔女と戦うことで世界を救っているのさ」
こいつってじゃあ魔法少女の元締めなのか。
「ふーん。さっき戦ってたのも魔女ってことでいいのか?」
「いや、さっきのは魔女ではないよ。あれはネクロモーフと言って全くの別物さ」
「はぁ?じゃあ何でお前ら戦ってたんだよ。魔法少女は魔女と戦うんだろ?」
疑問を口にすると魔法少女が話に割って入ってきた。
「そうだ!キュゥベぇ、さっきも聞いたけどそのねくろもーふ?ってのは何なのさ。わざわざお前が呼び出すから魔女退治かと思って付いて行ってやったのに、どうなってんだよ。ぶっ飛ばすぞ!」
「僕は人に害なす者が現れたから付いてきて欲しいって言っただけで、それが魔女だなんて一言も言ってないよ。それに、あのネクロモーフを放置していたらそのうち表の世界にも侵食し始めるからね。早い段階で退治出来たことを喜ぶべきじゃないかな」
「はぁ?そんなこと知ったこっちゃないね。あたし以外の人間に被害が出たところでなんだってんだよ。大体、魔女でも無いのになんで結界なんか作ってんだよ、ったく」
この魔法少女性格悪すぎて逆に笑えてくるんだが。
「おいおい魔法少女は正義の味方じゃ無いのかよ。何のために魔法少女やってんだよ」
「……あたしはあたしの為にしか戦わない。なんでわざわざ他人の為に頑張らなくちゃならないんだよ」
「おいキュゥベぇ。なんでこんな奴魔法少女にしたんだ。どうせなら俺が魔法使えるようにしてくれよ」
俺が魔法を使えれば完全に中二病の権化になれるし、しんやとしょうたに自慢できる。
「奇跡の代わりに、と言っただろう。あくまで彼女は奇跡の代償として戦っているのさ。あと君が魔法を使えるようになることはないよ」
「チクショー現実見せやがって……話が逸れたな。魔法少女についてはまぁいいさ。魔女は何なんだ?」
「魔女というのは、魔法少女が奇跡から生まれる存在なら、その逆の呪いから生まれる存在のことだよ」
「なんかいきなりふわっとした感じになったな。もっとこう、魔法少女の時みたいに具体的な説明無いのかよ」
「僕たちも完全に魔女のことを分かってるわけじゃ無いからね」
「じゃあネクロ……なんたらはなんだよ」
「ネクロモーフの事だね。あれは…………」
「おいどうした。いきなり黙って」
「あれについては本当に情報が少ないんだ。それにその情報にしても確度が低いしね。取り敢えずは地球外生命体でかつ魔女と同じか或いはそれ以上に直接人類を脅かしかねない敵だと思ってくれていいよ」
「ふーん。さっきの魔法少女の反応を見るとネクロ……なんとかと戦うのは今日が初めてなんだろ?」
「そうなるね。偶然なのかはたまた君があの場所に今日来たことと関係があるのか、中々興味深いよ」
ネクロモーフとかいうのは置いといてこいつの喋り方の胡散臭さはどうにかならないのだろうか。
「おいてめぇ。さっきから魔法少女魔法少女って、あたしには佐倉杏子っていう名前があんだよ!」
「おっそうか。俺のことはけんじって呼んでくれ。なぁ、結界ってのはなんなんだ?」
「はぁ?なんであたしに聞くんだよ。今までキュゥべぇのやつに聞いてたくせに」
「なんとなく」
「ちっ」
「なぜ舌打ち……」
なんでこんなにあたりが強いのこの子……
「まぁいいじゃ無いか。結界についても僕が簡単に説明するよ。あれは魔女がグリーフシードから発芽する際に周囲の環境を取り込んで自らの形を定義するのに用いるのさ。つまり、結界が形成された場所によって魔女の姿というのは大きく違うんだ」
「魔女を見たことがないから知らないけどな。おい佐倉、どうなんだ。実際魔女ってのは見た目が違うものなのか?ガラパゴスに棲んでる鳥みたいな感じに」
質問するとぶっきらぼうながらも答えてくれる。
「意味わかんない。まぁ、魔女の姿がそれぞれ違うってのは本当だよ。それよりキュゥべぇ、あのネクロモーフってのはこれからも現れるのか?」
「その可能性は高いね。だからこれからは君たち魔法少女には魔女に加えてネクロモーフ退治も頼みたいんだ」
「はぁ?嫌だね。どうせ他の魔法少女がやってくれんだろ?そう言うのは優秀でやる気のあるやつらに任せときゃいいんだよ」
「それは無理だ。きっと君の近くにネクロモーフは現れるし、さっきも言ったけど放っておいたらいずれ表の世界にも侵食してくる。そうなったら君とて無関心・無関係ではいられない。だから早いうちに、まだ対処できるうちに倒す方が労力も少なくていいだろう?」
「わーったよ。ったくなんであたしが……」
確か魔女と戦うことが魔法少女の仕事なんだっけか。
「なぁ、魔法少女よ」
「だからあたしにはちゃんと名前が……」
「俺もそのネクロモーフってやつと戦うよ。暇だしな」
「勝手にすれば?っていうかあんたがわざわざやってくれるんならあたしがやる必要なくない?」
「それなんだけどさ。キュゥベぇ、結界の見つけ方ってあるか?」
俺も自分で見つけられれば便利で良いんだけどな。
「うーん、無いね。少なくとも魔法少女と僕以外で探知する方法はあるにはあるけどけんじには無理かな」
「そういやキュゥベぇ、なんであのネクロモーフは魔女じゃないのに結界を作ってんのさ?」
「杏子、それはだね。あれは魔女の結界とは似て非なるものだからだよ。どうやらあれは時間を歪めることに特化しているようでね。結界というよりは、時間の歪みでできた周囲との時間の差がそのまま空間の壁になっているだけみたいなんだ」
なんか難しい話になってきたぞ。
「ちょっとちょっと、俺の話も聞いてくれ。お前らって結界の探知とか感知みたいなことって出来たりする?魔法を使えるんだろ?」
「あたしはできるよ。まぁネクロモーフの結界に関しては自信が無いけどね」
「僕はどちらの結界も感知できるよ」
「じゃあ佐倉、お前携帯持ってる?メアドと電話番号交換しようぜ」
「持ってないよ。持っててもお前とは交換しないけどな」
「それは困ったな。結界を見つけたら俺に知らせてくれれば向かうんだけどなぁ。キュゥベぇなんとかならないか?」
「じゃあ僕がけんじにネクロモーフの結界の発生を知らせるとしよう。魔女の方はどうする?」
「やめろよ。魔女はあたしの獲物だぞ」
「ネクロモーフは面倒くさいって言って魔女には拘るんだな。恨みでもあんのか?」
「なんでも良いだろ」
佐倉はそっぽを向いてしまったのでキュゥべぇに顔を向ける。
「魔法少女はソウルジェムを媒体にして魔法を使うんだけどね。段々と穢れが溜まっていってしまうから魔女を倒した時に落とすグリーフシードが必要なんだ」
「なるほどなぁ。魔法少女も大変なんだな、まぁでも俺はグリーフシード?とかいうのは要らないしただストレス発散したいだけだ」
呑気に発言したら、今思い出したかのように佐倉が俺に質問してきた。
「そういやあんたは何者なんだ。魔女の感知魔法に引っかかるし本当に人間なのか?事と次第によっちゃあ……」
「おいおい、いきなり槍を人に向けるとかどういう教育されてんだよ。俺はあれだ、神社の神様に敬虔な信者へのご褒美として力を授けてもらったんだ」
「あんまりふざけてるようだと本当に殺すぞ……」
「落ち着きなよ杏子。それに彼の言ってることもあながち間違いじゃないからね。この世には摩訶不思議なことがたくさんあるのさ」
「……ふんっ、信用したわけじゃないからね」
「お、おう。まぁ今日はこんなところでいいだろ。佐倉はどこに住んでるんだ?」
「何だよいきなり。あたしの家を知ってどうするつもりなのさ」
「情報交換とかしたくなるかもしれないじゃん?その時にお前の家が分からないと不便だから」
「キュゥベぇに仲介させれば良いでしょ。そもそもあんたとは二度と会うつもりはねぇよ」
「えぇ!?なんでそんなこと冷たいんだお前は」
「ともかく!あたしはもう帰るからね!」
「お、おう……」
「けんじ、いずれまた杏子とも会えるさ。僕もネクロモーフ発生を知らせるために君の所に行くだろうしね」
「……まぁ、いいか。じゃあな」
長い1日が終わった。
明日しんやとしょうたにも魔法少女のことを教えてやろう。
きっと喜ぶに違いない。
あいつらにもネクロモーフと戦わせてやるか。
それにしてもキュゥベぇか……
俺たちが小学生時代神社にいたことを知る異形。
いずれこうなると知っていた、と語っていたことからも俺達の事情を俺達よりも恐らく知っているのだろう。
いつか分かる日が来ると信じたい。
何がって?
俺たちの能力のことだけじゃない。
魔法少女やネクロモーフ、それにキュゥベぇ自体もだ。
「本当に厄介だよ、邪神は。こっちがあくせく働いて手に入れた成果を全部台無しにしようとするんだから。それにしてもまさかマーカーが時空を超えるほどの能力を持っていたなんて……いや、それともマーカーは関係なくて、あのときわずかに開いた扉から漏れ出た影響なのかな。あぁ、本当にわけがわからないよ」
クロスオーバー難し過ぎて笑えない問題を提起します。
佐倉杏子の性格がなんか違和感感じても許してね。