――月――日
今日から日記をつけることにした。
孤児院に生まれ育った俺は物心ついた5歳のときから前世の記憶を持っていた。
ここが遊戯王ゼアルの世界だということはハートランドであるということと遊戯王が当たり前に日常にあるということですぐに気がついた。
そうなれば話は早いとプロデュエリストになる道を目指すことにした。
孤児院生まれで将来が不安だったし前世の記憶を使えばそう苦労することなくなれるだろうと思ってしまったからだ。
――月――日
しかしそんな甘い考えはすぐに打ち砕かれることになった。
まず遊戯王カードの価値が思っていたより高かったことがある。
カード自体がその人の資産でありあらゆることをデュエルで決めることも多いこの世界でカードを親から受け継ぐことは基本だった。
孤児院などにもカードが寄付されることはあるのだが強いものや希少なものは寄付されることはない。
パックはどうなのかというとまず何が入っているのかさえ公開されていない。
目玉のカードやどんな種族が多い程度の情報しか公開されずwikiなどもない。
情報を公開をしようとするものも少ないうえにバニラモンスターなども多く収録されているので本当に運頼みになってしまう。
パックの値段事態はそんなに高くはないのだけが救いだった。
――月――日
そんな環境でも大まかなシナジーやコンボを知っているのはかなりのアドバンテージだった。
あまり評価されていないカードをトレードすることで孤児院の中でトップクラスの実力に2年の時間でなることができた。
だが切り札などもなくエクシーズモンスターすら持っていない現状では強くなるのに時間がかかるのは目に見えていた。
小学校に入学しても周りには勝つことはできていたが明らかに持っているカードの質が違う。
勝てているのはまだ皆のプレイングが未熟なだけでこのままではプロになるのなんて到底無理なように思えた。
――月――日
そんな日々をすごしていたある日俺はデュエルの闇を知ることになる。
元孤児院育ちのある男がやってきたのだそいつはいろいろと悪い噂があるらしく。
あまり近づかないようにしていたのだが、強いデュエリストを探しているらしく俺のことを聞きだしたのだろうデュエルを挑まれた。
最初は厄介なことに巻き込まれたので適当に負けておけばこれ以上関わることもないと思い適当に負けるつもりだった。
しかしその男のデッキはレアリティが高いカードこそは少ないもののテーマが統一されているデッキを使用していたのだ。
同じ孤児院育ちでなぜそんなデッキを持てているのか気になった俺は全力を出してデュエルをした。
その結果あと一歩のところで敗北した。
こんなに考えてデュエルすることなどなかったので悔しくて涙を流してしまうほどだった。
その熱意がよかったのか追い詰めたことが項をなしたのだろう俺はその男にスカウトされることになった。
――月――日
プロデュエリストの試合では禁じられている賭けデュエルを行うコロシアムに放課後参加することになったのだ。
その男が使っていたデッキも貸し与えられたものらしい。
そこはデッキを客に公開して賭けさせて、そのデッキを本番直前にデュエリストに貸し与えて戦わせる形式もあった。
まさに俺にうってつけのルールだった。
カードの知識があればどんなデッキを渡されても大体対応できた。
――月――日
そんな裏デュエル漬けの日々を5年間続けて12歳になった。その時にはコロシアムで間勝率8割という好成績をのこしていた。
謎の仮面天才少年として売り出されているのはかなり恥ずかしかったが背に腹は代えられない。
そんな5年間を過ごしていれば当然だがデッキはかなり強くなった。
そうしてプロデュエリスト育成校に入学する準備は完了した。
入学試験も特に苦労することなく終えることができた。
コロシアム側に入学を反対されるかと思ったが意外にもすんなり受け入れられた。
報酬のほとんどをカードでもらい態度も大人しい俺はオーナーにかなり気に入られていたらしい。
だが将来プロになった時はまたよろしくななどとといわれたので弱みを握られたに等しいのだろう。
まあ今はそれを考えてもしょうがないでクローバー校での生活をすごしていくのだった。
――月――日
学校には寮がありそこで暮らすことになった。
同室になったのは片桐大介というやたら熱血熱血とうるさいがとてもまっすぐなイケメンだった。
あまり関わらないでおこうしていたが向こうからの強い押しにいつの間にか親友とも言える仲になっていた、しかも大介は学年トップの実力者でこいつには何回負けたか分からない。
――月――日
もう卒業も近くなるころに大介がジャイアントトレーナーを使い出したときにようやくアニメのゼアルに出てきた登場人物だと思い出した。
俺は結局3年の月日を費やしても学年トップ10クラスの実力にしかなれなかった大介なんかには及ばない自負がある。
プロになれるのは決まっていたのでこれから精進すれば良いだけの問題だろうときらくに考えることにする。
――月――日
そうして卒業トーナメント大会が始まる時期が来た各校が代表を決めて戦いその年の頂点を決める。
ここで優勝したデュエリストはもれなくトッププロになっているのもありテレビ中継までされる一代イベントだ。
プロに入ってから環境を把握してからデッキの強化をしようと貯蓄をしていたのだが大介に決勝では絶対決着をつけようなどといわれてしまった。
――月――日
そこまで言われると俺も全財産を放出してこの大会に全力を出してやろうと誓うのだった。
それが功をなしたのかドロー運も悪くなくクローバー校代表を決める決勝戦まで勝ち進めることができた。
相手はもちろんというかなんというか大介だったさすが原作キャラの一人だな。
――月――日
決勝前日にデッキ調整をしているとなぜか教頭が訪ねてきた何の用かと思えば八百長の相談だった。
なんでも普段成績もトップといえず、デッキも地味な俺には代表にはなってもらいたくないらしい。
早く出て行ってもらいたいので受ける振りだけでもしておこう。
そうしたほうが話が早いだろう負ける可能性のほうが高いんだし勝っても後で恨み言を言われるだけだと判断した。
そんないざこざもあったが無事調整を終えて万全の準備ができた。