僕が日常から脱獄するまで   作:DEKKAマン

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ガールズバンドライフ2無事天井で紗夜さん5人ゲットしてエクゾディア作って満足したので実質初投稿です。


作戦

 雨が降りそうで降らない、そんなどんよりとした重い空気が世界を包む。

 太陽は有給休暇を取ったかのごとくサボりを決め込んでいて、その代わりと言わんばかりに雲が空を埋め尽くす。

 重なりあったそれは退く気配は微塵に感じられない。事実、ここ一週間近くはずっとこんな天気が続いている。

 

「あっつ……」

 

 太陽は見えない癖に無駄に暑い、夏が近くなってきている証拠なのだろう。

 SNSを覗きながら待ち合わせ相手が来るのを待つ。何故だか面白みを感じないでいると目の前が暗闇に包まれた。

 

「だーれだ?」

「……遅刻だけど」

「こーたーえーてー」

 

 日菜、と言うと世界に明かりが戻ってくる。今日は珍しく遊ぼうではなく話がしたい、と言われたのだがいったい何を話すのだろうか。

 

「今日は何の話を……ってなに見てるのさ」

「いや~、悠君ってどんなのに興味あるのかなって」

「ゲームや音楽だけだし見てもつまらないよ」

 

 そう言うと日菜さんは自分のスマホを弄りだす。何をしているのだろうと見ているとスマホが通知を知らせてくる。

 何かと思って見てみると先程のSNSからフォローされましたの通知、相手は『氷川日菜』と書いてあった。

 

「いや、そのアカウントでフォローは駄目でしょ」

「どーして?」

「そのアカウント公式じゃん、そんなのにフォローされてたら刺される気がする」

「えー、じゃあどうすればいいの?」

「……別のアカウントでフォローしといて」

「……フォローするのは別にいいんだ」

「見られて困ることは呟かないから」

 

 他人のフォロー欄を見る人なんてそうそういないだろうがもしものためだ。フォロワーにはPastel*Palettesファンが何人かいるし警戒しておいて損はないだろう。

 

「ところで今日は何するの?」

「お話……だけど先に遊ぼ!」

「遊ぶって何するのさ」

「そーだなぁ……決めた! ゲームセンター行こ!」

 

 そう笑顔で言われ手を差し出される。

 掴めばいい、握ればいい。それだけでいいしそれに意味は殆んどない。それでも僕はその手を掴めない。

 その手を振りほどかれるのが、突き落とされるのが怖くて掴めない。

 日菜の姿に氷川さんが重なって見える。双子なのだから見た目がある程度似てるのは仕方ないだろう。でも今までこんなことはなかった、氷川さんと日菜を重ねて見た事なんてなかったのに。

 

「……わかったよ」

 

 差し出された手は掴まない、掴めない。こんなにも暑いのに震えてしまうのはなぜだろう。こんな自分勝手な事があるだろうか。

 日菜と氷川さんは違うのに、日菜に嫌われる事が怖い。

 別にこうして会うことは何も怖くなかったのに、こうやって手を差し出されると急に日菜と氷川さんが重なってしまった。

 

 それはただの妄想。別に氷川さんにも実際に手を振りほどかれた訳ではないのにこうしてこんなにも怯えてしまっている。

 日菜の横を通りすぎショッピングモールに入ろうとしたその時、手を掴まれる。強く、離せないくらいに。

 

「……ねぇ、なんで悠君はおねーちゃんしか見ないの?」

「っ……氷川さんの事を見てなんか」

「嘘ばっかり、じゃあなんでさっき無視したの?」

「それは……」

 

 手を振りほどこうとするが出来ない。痛い、それは手ではない。ちょっとは手も痛いけどそれ以上に心が痛い。

 嘘をつくことも、答えられない事も、図星な事も、その全てが僕を痛め付けてくる。

 

「何かあるならあたしに全部言ってよ」

「……どうして日菜は僕にそんな優しくしてくれるの」

「そんなの決まってるじゃん」

 

 ──悠君の事が好きだからだよ。

 

 あの時言われたその言葉、それをまた言われる。

 なぜだろう。嫌われたくないと思っていただけなのに、好きと言われるとどうしても安心してしまう。

 掴まれていた手が離される。それについ声を漏らしてしまうが、もう一度先程と同じように手を差し出される。

 

「えへへ、じゃあ行こっか」

 

 今度はその手を無視することはなく握る。離さないように、取り逃さないように。

 さっきとは違い優しく握られたその手は、とても暖かかった。

 

 

 

「あ、これおねーちゃんの持ってたバッチだ。ほしーなー」

「取ろうか?」

「取れるの?」

「多分ね」

 

 そう言ってお金を入れて取る。日菜に渡すととても喜んでいて、失敗しなくてよかったと思うと共にこちらまで少し嬉しくなってしまった。

 その後も太鼓だったり射撃ゲームだったり色々やったがどれもいつも以上に楽しかった。

 日菜はやったことがないのか最初は少し苦戦していたが、終わる頃には僕と同じくらいにはできるようになっていた。

 

「いやー、悠君はゲーム上手だねぇ」

「まぁ、数だけはやってるから」

「そう言えば悠君夢ないって言ってたけどプロゲーマー? にはならないの?」

 

 ゲーム好きなんでしょと付け足される。プロゲーマー、なんていい響きだろう。憧れたことだってあるに決まっている、だけどもうその夢は持てていない。

 

「ならないよ、好きを仕事にしたくないから」

「なにそれ」

「仕事にして嫌いになるかもしれないならなりたくないなってこと」

「悠君ってときどきめんどくさいよね」

 

 ときどき、多分めんどくさいことの方が多いと思うが。なんて思っていると次はあれ行こ、と手を引かれてたどり着いたのはキラプリといわれる機械のところ。

 写真を撮ってそれを加工するものなのだが、わざわざ金を払って更にはスマホでも出来るのにする意味がわからない。

 人生においてやることはもうないだろうと思ったのにこんな形ですることになるとは。

 

「悠君はこれはじめて?」

「姉に一回だけやらされたよ」

「なるほどね~、えーっと、相手より後ろに下がって……」

「何してるの?」

「彩ちゃんにやり方教えて貰ったんだけど難しくて、やらなきゃいけないことが多いんだよ」

 

 立ち位置は一緒に撮る人より後ろに立ったり、撮った後も加工の仕方がなんたら、なんともめんどくさいものだ。加工の手伝いを軽くして機械から出る。

 

「写真取ってないよ、ほら」

「別にいらな……いや、貰っとく」

 

 出てきた写真を取り忘れていたらしい。別にいらなかった、そう思っていたのだが折角だし貰っておく。

 折角、そう、勿体ないから。日菜と一緒に撮ったからとかは関係ない、多分。

 部屋にでも飾っておこうか財布にでも入れておこうか、どうしよう。

 

「あー楽しかった……」

「そうだね、でも今日の目的はそうじゃないんでしょ?」

「……うん、取り敢えず場所を変えようか」

 

 それは先程までが嘘みたいな重苦しい雰囲気。思わず呼吸が深くなる。

 日菜の後を付いていくとたどり着いたのは屋上、周りに誰もいないそこで二人きりになる。

 

「もう星が見えそうだよ」

「雲があるんで見えないでしょ」

「それもそっか」

 

 手すりに腰をかけながら言う。少し押されたら落ちてしまいそう、そんな危険が少しだけ気持ちよくて癖になってしまいそうだ。

 

「落ちたら死んじゃうよ?」

「まぁ……落ちないでしょ」

「やっぱり悠君っておかしいね」

 

 日菜も僕の隣にくる。姿勢も僕と一緒で危なっかしい。落ちたら死ぬ、言われて気づいたそんなことが少しだけ体を前に倒してくる。

 

「それで、話って?」

「おねーちゃんのことどう思ってるのかなって聞こうと思ったけど……やめた」

 

 よっ、と軽快な声と共に日菜は手すりから離れる。僕と日菜は向かい合って目を見つめ合う。重たい空気、それは湿気でも気温でもない。

 そんな空気に流されるように、だけど引き裂くように重く、弱く声を出す。

 

「おねーちゃんと仲直り……したい?」

「……それは日菜の方なんじゃないの」

「あまりふざけてると……こう、だよ?」

 

 その場で両手を前に付き出す。それを意味することはわかっているし、怖いので手すりから体を離す。

 その声はちょっとだけ笑っていたが、多分奥では笑っていないと思う。

 

 仲直りしたい、それはそうだ。これを仲が悪くなったと言うのかはわからないが今はそんなことはどうでもいい。浮かんだ答えは二つ、だけど出せる答えは一つだけ。

 

 日菜の方を見る、空を仰ぎ見る。本当は言いたいそれは言うことができない。

 日菜の方を見ると、氷川さんの事を思うと、どうしても言うことができない。

 

「別にそうでも……」

「あたしは悠君の答えが知りたいの、あたしとかおねーちゃんのことは考えないで」

「僕の……」

 

 答え……か。日菜とか氷川さんのことを考えるなというのなら、僕の願いというのなら先程切り捨てた答えしかありえない。

 

「したいよ、仲直り」

「……やっぱり、そうだよね」

 

 残念そうな声がする。悪いことをしてしまった気がしてしまう、日菜の顔を見ると本当に残念そうにしているのが伝わってくる。

 ああ、でもこれが僕の思いで答えなんだ。捨てきれないこの思いを持った僕は、救いの糸に迷わずに手を伸ばした。

 

「あーあ、悠君がしたくないって言えばなぁ」

「そしたら月が出てる日にあの問いかけを答えてるよ」

「……それってあたしとおねーちゃんのどっちがいいか、まだ決まってないって事じゃん」

 

 それはどういう意味なのか僕にはわからない。僕と日菜は手すりに肘をかける。

 心が軽い、さっきよりも。何トンもの重りがぶら下がっていたかのようだったのに空気のようにふわふわとなっている。

 

「日菜は優しいね……」

「悠君のが優しいでしょ……それよりどうやって仲直りする?」

「どうしよっかなぁ……会うのは無理だし」

 

 頭をガシガシと掻く、どうしよう。連絡先は残してある、でもきっと出てくれないだろうし確認していないが切られているかもしれない。せめて会えればどうにか出来るかもしれないのだが。

 

「リサちーが近いうちにコンテストがあるって言ってたしそこに行けば?」

「なるほど……場所とかってわかる?」

「あー、後でリサちーに聞いておくね」

「何から何までありがとう」

 

 悠君はかっこいいセリフを考えといてね、と言われたがかっこいいセリフなんて……厨二病の影響か結構知っているな。僕目線でかっこいいだから他人から見たらどうなるかわからないが。

 

「後で何か埋め合わせしてね」

「わかってる、何がいい……とかは後でいいか」

「別に、今でもいいんだよ?」

 

 なんだろと思い日菜の方を向くと日菜は自分の唇に指を当てていた。思わず顔が赤くなって、逸らしてしまう。

 

「なに想像しちゃったの?」

「……高校生にそういうことしない方がいいよ」

「えー、別にあたしはされてもいいんだけど?」

 

 馬鹿な事を言わないで、そう言って二人で空を見上げる。月も星も見えないけど、雲の奥に何かが見える気がした。

 

 




誤字報告ありがとうございますv^^v
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