僕が日常から脱獄するまで   作:DEKKAマン

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主人公の言葉づかい乱暴なのは学校の知り合いとだからです


類似

「寝れない……」

 

 興奮が収まらない、もう半日以上経っているはずなのに。明日は学校があるのでできるだけ早めに寝なければならないのだが、僕の頭が、記憶が、心がそれを許さない。あの音が僕を縛って離さない。

 横になって20分くらいが経っだろうか。その間目を瞑り続けていたにも関わらず眠気が欠片もこなかったので充電中のスマホを手に取り動画アプリを開く。

 いつもはあなたへのおすすめを飽きるまで見ているのだが、今回は検索で『ギター』と入力して上から見ていく。

 

 動画を上げているくらいだから自分達の音に少なからず自信があるのだろう、やはりというべきかとても上手だ。

 だけど氷川さんのと比べるとどうしても劣っているかのような気がする。

 あの音みたく心を揺すらない、掴まない。あの感覚を求めて次へ、また次へと動画を見続けた。

 

 今何時なのだろう、表示される動画をあらかた見終えた僕はふとそう思い、画面に表示されている時間を見るとそこには午前5時と示されていた。

 やってしまった、今から寝てしまったら確実に学校には間に合わない。しかし時間があると言っても課題も既に終わっているため特にすることはなにもない。

 リビングに足を運び今日の学校で睡眠という魔の手に少しでも対抗しようと栄養ドリンクを飲む。栄養ドリンクってそこまで美味しくないくせに変な中毒性があるからついつい飲んでしまう。

 

 仕方がないのでゲームをしながら時間を潰していると親に呼ばれる。親は朝飯を作ってくれるわけではないが一応起こしてくれるので感謝はしている。

 テレビをつけて興味のないニュースを聞き流しながらお菓子を食べ、それを食い終えると制服に着替え学校に向かうことにした。

 

「お、悠がこの時間にいるなんて珍しいじゃん」

「今日は徹夜したからな」

 

 通学中、偶々会った友人とそんな風に下らない話をしながら自転車を漕いでいると学校に着いた。自分のクラスに入るなりすぐに席について寝る体勢に入る。

 朝のHRまで残り15分、まぁ寝てないよりはいいだろう。そう考え欲望のままに別の世界に旅立った。

 

 

「起きろ~、次移動教室だぞ」

 

 海の深くに落ちていたような思考を無理矢理釣り上げられる。移動教室は確か3時間目で1時間目は普通に教室で授業の筈では? と思って時計をみるともう午前中が終わりそうなことに気づく。

 もしかして、といった感じで顔を向けると誠に残念ですが、といった目でこちらをみている。

 

「流石に?」

「ヤバすぎ」

 

 そんな軽口を言いながら授業の準備をして移動を始める。徹夜はするもんじゃないなと改めて思わされてしまった。次の授業は化学で、何やら実験をするらしい。

 化学はいつもなら睡眠学習を僕はしているのだが、実験となると寝ていると班の他の人たちに迷惑がかかってしまう。

 めんどくさいけど真面目にやるかぁ、なんて思っていると隣から話しかけられる。

 

「ところで今日の放課後なんだがちょいと付き合ってくれね?」

「用件は?」

「ちょっとアンプを見たいんだけど一人だと行く気にならないからさ」

 

 こいつは3ヶ月前だったか、知り合いの大学生がギターを新しくするときに安く買い取ったと自慢気に言ってきた。それまで音楽に欠片も興味なかったのに今では結構お熱らしい。

 しかしアンプってどこで買うんだろう、というよりも僕が行く理由はどこにもない。

 

「いや行かないけど」

「じゃあ移動教室寝過ごしてよかったんだな?」

 

 移動教室寝過ごしなんてほとんど死と同義だ、多分三日は学校に来るのが鬱になっていたと思う。つい大きなため息をついてしまう。

 

「しゃあなし、行けばいいんだろ?」

「お、助かりまーす」

 

 めんどくさすぎる。もう一度ため息をつくと僕は意味もなく窓から空を見上げた。

 

 

「と、いうわけで向かうぞ」

「忘れとけ」

 

 学校が終わると僕とこいつはアンプを見に行くことになった。徹夜をしてしまったのでさっさと帰って昼寝がしたいのだが、約束してしまったものを破るわけにはいかないので仕方がない。

 アンプはどうやらショッピングモールでも見れるらしく、帰り道にあるからそこのがいいだろとのことだ。

 

 1月なので風は冷たいし強い。もう押した方が速いんじゃないか? と思うくらいにはまったく進まない。

 自転車をひーこら言いながら漕いでようやくショッピングモールに着き、適当なところに自転車を止めアンプを見に楽器屋に向かった。

 

 ピアノにギター、ドラム等の様々な楽器が客寄せか知らないが置いてある店に入るとあいつはさっそくアンプを見に店員のところにいった。

 待つのは嫌いだ、暇で暇でどうしようもない。代わり映えのない日常でも虚無のような時間は新しかろうと欲しいとは思わない。

 折角なので触っていいですよと書いてある楽器のとこに向かうとピアノが置いてあったため、懐かしさもあって軽く鍵盤を押す。

 ピアノで軽く遊んでいるとあいつはアンプが決まったのか、上機嫌でこちらに歩いてくる。

 

「お前もギターやればいいのに、楽しいぞ?」

「ギターなんて似合わねぇよ、それにどうせ長続きしないし」

「まぁお前飽き性だからなぁ、高い金使って始めるのは合わないか」

 

 それならこれならどうだ? と近くにあったマラカスを指差してきたので頭を軽く叩く。この店にいる理由はもうないので僕たちは店を出る。

 そうすると何処かで見たことがあるような顔の人とすれ違う。水色の髪に多分同じ顔、僕は振り返るがその人はまるで僕なんか知らない、と言っているかのように真っ直ぐに楽器店に入っていく。

 

「どうした? 急に振り返って」

「……いや、知り合いに似てる人がいたからつい」

 

 そんなんいるか? と後ろを振り返って見ているこいつにはお前の知らない人だからわからねぇよ、といってショッピングモールを出る。

 家に帰ってからも考えるのはすれ違った人、氷川さんに似ていた人。見間違いかも知れないし、向こうが気づかなかっただねかもしれない。ただ少しだけ引っかかることがある。

 

「氷川さんってあんな笑うのか?」

 

 すれ違った人は凄い笑顔だった。それは本当に僅かにしか顔が見えていなかったが確かに見えた。楽器店に入るのが楽しみだ、なんて考えているかのように。

 いや、流石に人に対して笑うのか? なんて考えるのは失礼か。それに音楽をやる人なのだから多少なりとも楽しみなのだろう。

 心の中で軽く謝って横になるが、どうしても気になり連絡用のアプリを開く。

 

『今日氷川さんらしき人を見かけたんですけれど、〇〇楽器に行きましたか?』

 

 打ち込んだ後送信ボタンを押そうとしたが、やめた。

 これじゃあまるで僕が氷川さんに気があるみたいじゃないか。僕が気になっているのは彼女の音であって彼女自身ではない筈だ。

 文を全て消すと徹夜をしたのだしさっさと寝ようと目を瞑る。

 

 ただ気になる、気になって仕方がない。

 

 どうしても気になった僕は結局『今日◯◯楽器に行きましたか?』と送った。

 やってしまったと思う反面、これでモヤモヤが解消される。氷川さんが気づけば、だが。

 メッセージを送ると少しだけ紛れたのか一気に眠気が襲ってきた。無理に逆らう必要はないし逆らう事は不可能だろう。ゆっくりと再び目を瞑ると、今度はすぐに意識が落ちていった。

 

 数時間後目を覚ますと氷川さんから返信がきていた。内容は簡潔に『行ってませんが、どうしてですか?』とのことだった。

 どうやらあの人は氷川さんではなく、僕の見間違いだったらしい。もしくはそっくりさんか。

 氷川さんに似てる人がいて気になったので聞いてみただけですとだけ送る。

 

 流石徹夜の影響と言うべきか、目を覚ますと午後は吹き飛んでいた。当然こんな時間に既読が着くはずもなく、先程まで寝ていたせいか欠片も眠くない。

 生活リズムボロボロだなと何度目かわからない、今さら過ぎる事を思いながらゲームを起動した。




無意識に地雷を踏み抜く
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