ジャクソンの見た夢は   作:チームメイト

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遅れてきた最後の男。

 入隊日から2週間が過ぎた。

 

「現在のポイントは923。順調に減ってるな」

 

 おかしい。

 訓練でポイントを稼いでいるのに、なぜかポイントが減っている。

 

 いや、まあ、ランク戦で取られているからだが。

 オレの献身のおかげか、米屋のポイント数は3000の大台が近いらしい。何とも羨ましい話だ。

 

 オレだって全敗しているわけではない。ちょこちょこ勝利を収めることもあるんだが、いかんせん負けの方が圧倒的に多いっていうだけだ。

 

 米屋対策を身につけようと他の弧月使いに挑んだら、荒船さんにやられてしまった。

 米屋とどっちが強いのか、オレには分からないぐらいオレとは差があった。

 

 弧月使いに勝つのを諦めて、同じシューター同士で勝負してやろうと挑んだら、今度は犬飼さんにやられてしまった。

 同じ位置から撃ち合っても、相手の多彩な攻撃の前に手も足も出なかった。

 

 荒船さんと犬飼さんは、どちらも同期入隊だが、学年は1つ上で既に高校生だ。

 トリオン体での戦闘では年齢は関係ないとはいえ、やはり中学生と高校生では埋めがたい差があるように感じてしまう。

 

 負けたとはいえ、犬飼さんのアステロイドの使いっぷりは勉強になったので、いい経験にはなった。

 いい経験になったんだが、経験だけではなくポイントも欲しかった。割と切実な問題だった。

 

 そのためには、動きながらも正確にアステロイドを相手に叩き込む技能が必要だということは分かった。足を止めた状態なら結構正確に的を狙えるようになったが、足を動かしながらだとそこそこで、足だけでなく全身を動かしながらだと、まだまだ練習不足もいいところだ。

 

 正隊員になると無駄にスタイリッシュにムーブしながらでも、アステロイドを目標に向けて放つ人もいるらしいので、オレはまだまだ精進しないといけないのだろう。

 スタイリッシュに雪だるまを作れるようになれば、オレもスタイリッシュに動けるんだろうか。

 

 

「今日は、華さんと訓練か」

 

 オペレーターの華さんとの訓練は、あれから不定期に行われている。

 

 初回は、宇佐美経由で捕まったが、あの日に連絡先を交換し、2回目以降はメールでやりとりして実施されていた。

 

 華さんの連絡先を手に入れることができたのはラッキーだったが、今のところは業務連絡にしか使われていない。

 1学年下の女子と何のメールをしたらいいのか分からないので、基本的には向こうからのメール待ちだが、業務連絡以外の連絡が来ることは無かったというわけだ。

 

 なお、流れで宇佐美とも連絡先を交換したがこっちは割とどうでもいい。

 どうでもいいのに、いや、どうでもいいからか宇佐美とは業務連絡以外のやりとりも多かったりする。好きな作家が一致して盛り上がったりとかそんな感じだ。うん、どうでもいいな。

 

 間違ってもフラグが立ったりしているわけではないので、その辺は誤解しないように。

 

 

 華さんとの業務連絡は、まさに業務連絡そのもので『今日できる?』とかそんなもんだ。

 現在の最長文字は『今日は、ありがとう』の8文字なので、何とか10文字までは増やしたいところだが、オレの返事も『行ける』程度なのでどっちもどっちなんだろう。

 宇佐美からは無駄に長いメールが来て、読むのに疲れたので長けりゃいいってもんではないが、ちょうどいい塩梅があるにせよ、10文字以下は寂し過ぎるわ。

 

 なお、オレは入隊日から今日までボーダーには皆勤で足を運んでいる。香取含めて周囲の連中が受験勉強真っ最中で、邪魔をしたくないっていうのもあるし、家にいるのが姉に見つかるとやかましい、というのもある。

 華さんも似たような頻度で基地にいるので、事前に打ち合わせたりではなく、今日はどうかってやりとりだけで済んでしまうのも業務連絡が短くなる理由かもしれない。

 学校で香取と飯を食うのに、わざわざ事前に調整したりなんかしないのと似たようなノリだった。

 

 あれから華さんと行われた訓練は、5回を数える。

 宇佐美は居たり居なかったりだが、宇佐美が居たときは新しいオペの訓練が行われる日なので、要注意だ。

 

 暗視訓練の時なんか酷かった。

 

 マップの光量がランダムに切り替わるマップをスタートからゴールまで走破する訓練だが、暗い、見える、眩しい、見える、暗いと、目まぐるしく切り替わり、最後は障害物に引っかかってタイムオーバーだった。

 あの後は、しばらく目がチカチカして眩暈までしてきたもんだ。

 

 これが華さんに代わって宇佐美が支援すれば、的確に暗視モードのオンとオフが切り替わって、無事設定タイム内にゴールが切れたあたり、オペレーターの支援も大事である。

 

 宇佐美はノリは軽いが、オペレーターとしての技量は凄腕らしい。

 オペのことは詳しく知らないが、暗視訓練は宇佐美すげえって思わせるには十分だったと思う。

 

 

 他には、これも真っ暗な空間を今度は暗視モードは使わずに暗いまま、オペの指示だけで動く訓練とかもあった。

 華さんの指示は論理的で分かりやすいが、指示に時間が掛かっている。

 

 例えば、正面から何か障害物が飛んで来たらしいシーンでは、「前方30メートルから飛翔物が接近、3秒後にぶつかるから横へ」といった感じの指示だったが間に合わずに、顔面でトラップを受ける羽目になった。

 

 これが宇佐美になると、必要最低限の早く短い指示で、「そこでしゃがんで」とだけで済ませて、言われるがまましゃがんだオレの頭上を何かが通過して、事なきを得ることができた。

 宇佐美すげえ。

 

 

 あとは、対近界民(ネイバー)訓練は、いつも行っている。

 オレの粘り強い説得により、戦闘は1体1で追加も無しというルールを勝ち取ることができた。

 ただ、1対1で落ちついたのはいいが、それで上手くいったわけではないのが難しいところだ。

 

 例のノッソリとした首伸ばし噛みつき君(バムスターと言うらしい)なら、もはや1対1で負ける相手ではない。

 が、華さんの用意した近界民(ネイバー)はそいつでは、なかったのだ。

 

 最初の近界民(ネイバー)は、腕がブレードになっていて近づいた瞬間、切り刻まれて終わった。

 次の近界民(ネイバー)は、反省して離れて様子を見ているうちに、口からビームが飛んできて終わった。

 なんだよ、口からビームって……本当に散々な目にあったわ。

 

 自分よりも強い相手を工夫して倒しなさいっていう華さんからの課題だと思って取り組んでいるが、中々結果はついてこない。

 

 単に、華さんが操作を覚えるために、さっさとオレを始末して次の訓練をやりたいだけの可能性もあるが、そうではないと思いたかった。

 

 

「…………うん、華さんはそんな人じゃないはずだ」

 

 100パーセント否定できないところに、若干の怖さを感じながら呼び出しに応じて、訓練室のあるロビーへと向かった。

 

 さて、今日の華さんはどこだっと、ロビーで目的の相手を探す。

 

「……誰だよ、アイツ」

 

 華さんは、見覚えのない男と談笑中だった。

 いや、まったく見覚えがないというわけではない感じだが、ほとんど記憶になかった。

 

「やたら近いし」

 

 オレと華さんが話すときは、テーブルをはさんで向かい合うのがデフォルトだが、そいつは華さんを横に見れる位置に陣取っている。

 華さんもそれを当たり前に許して、どう見ても親しそうだった。

 

 誰だよ。

 

「…………」

 

 親しそうな男女の仲に、割って入るのもためらわれるが、約束した時間が近づいているから仕方ないな。

 うん、決して邪魔してやろうとかそういうつもりは欠片もない。

 

「すまん、待たせた?」

 

 いつもの位置、華さんを正面に捉えられる席へと腰を落ち着かせながら声を掛ける。

 

「大丈夫」

「あれ? 華、待ち合わせだった?」

「いいの。雄太とも会わせたかったから」

「あ、そうなんだ? じゃあこの人が?」

 

 どうやらこの男は雄太というらしい。何やら一人で納得している。

 つーか、下の名前呼び捨てとか親しそうだな、本当に。

 

「三浦雄太、よろしく」

「……若村麓郎だ。よろしく」

 

 すっと手を差し出されたら握り返すしかない。

 握手しながら、相手の顔を伺う。

 少し冴えない感じだが温和そうな感じだ。若干、香取に似た雰囲気があるかもしれない。

 

「……華さんと三浦さんは、どういう関係?」

 

 どう話を切り出すべきか迷ったが、疑問点をそのままぶつけてみる。

 

「雄太でいいよ」

「いや、初対面だし……」

「えー、でも、これからチーム組むんだよね?」

「は?」

「まだ決まってないわ」

「そうなの?」

 

 ん。どういうことだ。

 オレがこの目の前の男とチームを組む?

 

 いや、待て。そんな約束はした覚えがない。オレがチームを組もうとしているのは、香取と華さんで──ってそういうことか。

 オレが華さんとチームを組み、この男が華さんとチームを組むのなら、必然的にオレともチームを組むことになるのか。

 

 つまり、三浦は華さんのチームメイトとなるわけだ。

 そして残念ながらオレはまだ、華さんとチームを組むのかどうかは確定していない。

 

 あれ? オレ、なんか負けてないか。

 

「そうなんだ。オレと華のチームに入る人かと思ったよ」

「雄太と組むかも決まってないわよ」

「うわー、華、厳しい」

 

 華さんの雄太呼びに続いて、こいつはこいつで華って呼び捨てか。

 本当にどういうことだ。

 

「で、どういう関係なんだ?」

「んー、一緒に住んでる関係だよ」

「は?」

 

 一緒に住んでいる。つまりそれは、いや、ちょっと待てよ。

 

「雄太。……ごめんなさい。雄太とは従兄妹で、雄太の家にお世話になっているわ」

「そういうわけだよ」

「……そうなのか」

 

 リアクションに困る話だ。

 

 話をしっかりと聞いたわけではないが、何となく伝わり聞く限りでは、華さんは大侵攻の被害者らしい。

 家と家族を失って、華さんだけが生き残ったみたいだ。

 

 ボーダーに入ったのは、近界民(ネイバー)への復讐というよりは、自立のためだと聞いていた。

 

 華さんみたいなケースだと、施設に入ったり、親戚の家に世話になったりらしいので、従兄妹の家に身を寄せているのも納得できる。

 が、それを知ってしまってどう返したらいいのかが分からない。

 

「雄太も私たちとの同期入隊よ」

「その割に見たことがないんだが」

「いやー、盲腸とか色々あって1ヶ月ぐらい入院してたから、入隊が決まって今日が初ボーダーなんだ」

「それは……大変だったな」

 

 盲腸で入院は分かるが、盲腸とか色々ってなんだよ。

 いや、大変だったってのは伝わるけどさ。

 これもまた、どうリアクションしていいのか困る話だ。

 

「ちょっと、なに華を囲んでるのよ」

「げ、葉子」

「げって何よ」

「今お前が出てくると、ややこしいんだよ」

 

 とりあえず、三浦を処理させてくれ。

 葉子はこっちの言い分なんか聞く耳を持たずに、華さんの隣に腰を下ろした。

 睨みつけてくるあたり、毎度のように機嫌が悪いのかもしれない。

 

 見た目は良いんだがら、たまには笑顔を華さん以外にも向けてもらいたいものだ。

 

「で、華を囲んでなにしてたのよ」

「自己紹介ぐらいしかしてねえよ」

「は? あんた若村麓郎でしょ」

「三浦とだよ」

「誰よ、三浦って」

「状況で分かるだろうが」

 

 この状況で自己紹介する相手と言えば、オレ以外のもう一人の男しか居ないだろうに。

 

「華さん、葉子にも説明してくれ」

「どうしようかしら」

「そこは素直に説明するところだろ、オペレーター」

 

 華さんは、このカオスに近い状況を楽しんでいるらしい。

 メガネがキラっと輝いて見える。

 まあ、そりゃ第三者ポジションなら楽しいだろう。が、当事者としては、たまったもんじゃない。

 

「雄太。この子が香取葉子。私とチームを組む予定の子よ」

「予定じゃないわよ。決定しているわ」

 

 葉子。そこはお前が噛みつくところじゃねえぞ。

 

「それで、この人が三浦雄太。私の従兄妹」

「よろしく、葉子ちゃん」

「は? なんであんたに葉子ちゃんって言われないといけないのよ」

「若村麓郎です。よろしく葉子ちゃん」

「死ねっ」

 

 左手を掴まれて思いっきりつねられた。

 自分でもないなって思うから、葉子のリアクションは間違いないな。

 口でのからかいで手を出すのは、やめて欲しいが。

 

「って、あんたポイント減ってるじゃない。何やってるのよ」

 

 目ざとく左手の甲のポイントに気づかれていた。 

 

「ランク戦?」

「ランク戦やったらポイントが増えるでしょ、普通」

「それは勝った場合だろうが」

「どうやったら負けるのよ」

「葉子のポイントは、どうなんだよ」

「さっき2000を超えたわよ」

「葉子さんって呼ばせてもらってもいいですか?」

「嫌よ、気持ち悪い」

 

 これだから天才は困る。公式訓練日にしか見かけない以上、そんなにランク戦やってないくせに、ポイントだけはしっかり稼いでやがる。

 それにどうやったら負けるとかなんだよ。凡人は負けることだって当たり前にあるんだぞ。

 葉子がポイントを奪った分だけ、泣いてる隊員だっているって気づけ。

 

「そんなんでよくあたしとチーム組みたいとか言えたわね」

「うるせー。そのうち強くなるんだよ」

「そのうちっていつよ」

「……そのうちはそのうちだ」

「望み薄っ」

「うるせー」

 

 まあ、先行きが見えていないのは事実だから、反論のしようがない。

 

「オレもチームに混ぜてよ」

「は?」

「ろっくんと葉子ちゃんと華でチーム組むんだよね?」

「その予定だが、いきなりろっくん呼びはやめろ」

「勝手に予定にしないでよ、ろっくん」

「お前もここぞってばかりに呼ぶんじゃねえよ」

「お前って言わないでよ、ろっくん」

「へいへい、すみませんでしたね、葉子ちゃん」

「葉子ちゃんもやめてってば」

 

 ろっくんは、宇佐美から呼ばれているからそこまで抵抗があるわけではないが、ほとんど初対面の奴に言われるのは微妙だ。

 初対面じゃなくても葉子に言われるのは、虫唾が走る。

 あれ? でも宇佐美の奴もほぼ初対面で呼んでいた気がするな。

 

 宇佐美は宇佐美だから仕方ない……のか。

 

「本当にふたりは仲が良いわね」

「「誰がよ」」

「ほら」

「…………」

「…………」

 

 互いに睨み合っても、なんか照れ隠しみたいになっているのが嫌だ。

 

「もういいわ。ポイント減るような奴とチーム組むなんて絶対嫌だから。華、行こ」

「私は麓郎君と訓練の予定だったのだけれど」

「オペの訓練でしょ? あたしが協力すれば済む話じゃん」

「…………」

 

 華さんがこちらを伺ってくるので、何も言わずに無言で頷いておく。

 葉子がやる気になっているのなら、葉子に任せた方が良いだろう。

 華さんとの訓練が減るのは、残念だが仕方ない。

 

「葉子は、麓郎君にだけ下の名前で呼ばれたいのよね?」

「はぁ? なんでよ」

「だから、雄太に葉子ちゃん呼ばわりされたくない」

「違うわよ。もう行くわよ」

「またね、麓郎君」

「へいへい、行ってらー、華さんにオマケで葉子」

「誰がオマケよ」

 

 華さんは、この状況を楽しみ過ぎだと思います。

 葉子がオレにだけ下の名前で呼ばれたいとか、あるわけねえわ。

 

 葉子に引っ張られるようにして去っていく華さんを見送り、男二人だけが残った。

 

「…………」

「…………」

 

 微妙な気まずさだが、ここでオレが席を立つのも、初対面の相手に失礼な気がする。

 ここは黙ってオレと同じように、葉子たちの背中を見ている三浦のリアクションを待つことにした。

 

「…………」

 

 三浦は完全に葉子たちが見えなくなるまでその背中を見送って、その後さらに30秒ほど消えた方角を見つめたあとに、ようやく口を開いた。

 

「ねえ」

「なんだ?」

「葉子ちゃんってめちゃくちゃ可愛くない?」

「見た目だけならな」

 

 見た目だけなら確かに美少女の範疇に入るだろう。だが、中身は別だ。くそ生意気過ぎて可愛さの欠片もない。

 だから三浦よ、その恋をしているような目で、葉子の消えた方角を見るのはやめたほうがいいぞ。

 

「いいなー、葉子ちゃん。オレ絶対葉子ちゃんとチームを組むよ」

「発言だけ聞くとストーカーの変態みたいだな」

「ろっくんだってそうなんでしょ?」

「ろっくんというのをまず止めろ」

 

 どうやら葉子は三浦の琴線に触れたらしい。何やらやたら気合が入っている気がする。どんな決意をしたんだか。……オレはこんなんじゃなかったと思いたい。

 

「葉子ちゃんを葉子ちゃんって呼ぶなら、ろっくんはろっくんじゃないかな?」

「葉子を葉子ちゃんって呼ぶのも止められていただろうが」

「でも、ろっくんは葉子呼びだし、オレも葉子ちゃんって呼ぶよ」

「オレはやむを得ない理由があったんだよ」

 

 葉子の兄がオレの親友で、そいつを香取と呼んでいなければ、葉子を葉子と呼ぶことも無かったはずだ。

 

 よくよく考えてみたら、葉子を香取呼びして香取兄を名前呼びすれば、解決したような気がしないでもないが、その場合華さんを染井さん呼びに戻さなければならないので却下だな。

 華さんを華さんと呼ぶためならば、葉子を葉子呼びすることぐらい我慢できる。

 

 ああ、不本意だが、これからも葉子呼びしてやるさ。

 

「ってわけでさ、オレも同じチーム、正隊員目指すからさ」

「どういうわけだよ」

「正隊員になってさ、葉子ちゃんやろっくんや華と同じチームを組む」

「オレもカウントしてくれてるんだな」

 

 葉子には否定されてばかりで、華さんからは保留状態だけに、こんなことでもちょっと嬉しい。

 

「そりゃそうだよ。ってわけで、ボーダーについて色々教えてよ。入院してたから説明とか全然聞いてなくてさ」

「……まあ、それぐらいならいいけど」

「じゃあ、よろしくね、ろっくん」

「だからその呼び方は止めろ」

「でも同じチームになるなら、ろっくんっしょ。オレのことも雄太でいいからさ」

「…………」

 

 否定するのは簡単だが、ふと華さんが最後に言っていた話が脳裏をよぎった。

 

 オレだけが葉子を葉子と呼び、三浦のことは三浦と呼んでいたら、周囲からどう見えるだろうか。

 これではまるでオレと葉子が特別な関係みたいじゃないか。

 

 それを防ぐためには、葉子と同じように三浦のことを雄太と呼ぶのは、ありかもしれない。その代わりにろっくんと呼ばせるかどうかは別問題だが……この調子なら雄太は聞く耳を持たないだろう。

 

 ああ、この感じはやっぱり香取にどこか似ているかもしれない。

 

「今のポイントはどれぐらいだ?」

「ポイントって?」

「そこからかよ。左手の甲にポイント有るだろ」

「ああ、1543ポイントってなってる」

「マジかよ」

 

 オレより高いのかよ。

 正式入隊から今日まで休んでいたとしたら、1500ポイントぐらいスタートかよ。十分有望隊員じゃねえか。

 

 まあ、現時点で1000ポイントを下回っているオレよりは、ポイントが上なのが普通なんだろうけど。

 

「とりあえず、今日の訓練はやったんだよな?」

「やった。戦闘訓練とかだよね?」

「なら後はランク戦だな。いいか、ランク戦ってのはだな──」

 

 本気で正隊員を目指すつもりらしく、三浦は熱心に話を聞いていた。

 

 ああ、こいつとは、たぶん長い付き合いになるんだろうなぁ。

 

 一瞬だけだが、葉子と華さんと三浦と組んだチームについて考えてしまった。

 

 チームの中心として輝く葉子。その背中を守って支える三浦。アタッカーの2人をフォローするオレ。オペレーターの位置から全体を冷静にコントロールする華さん。

 

 かなりオレが振り回されそうだが、意外といいチームになるんじゃないかって、思ってしまった自分が悔しい。

 

 そんな近いのか遠いのか、そもそも、あり得るのかどうかもよく分からない未来のことを思いつつ、オレは三浦へとボーダーについて、説明していくのだった。

 

 

 

 後に、このメンバーで本当に香取隊が結成されたときに思う。もう少しマシな4人の出会い方もあったんじゃねえか、と。

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