遊戯王EX Maiden with Eyes of Red 作:ラーヒー
エジプトの遺跡
かつてペガサス・J・クロフォードが最愛の恋人の死によって訪れた場所。この地でペガサスは3000年前の古代エジプトの石板からインスピレーションを受け、デュエルモンスターズを生み出した。
そして、あれから何年も過ぎたある日。世界中でデュエルモンスターズが浸透し、今ではそれを生業とする職業すら生まれていた。そんな中、エジプトに新たな遺跡が発見された。その石板からはデュエルモンスターズの事について記されている事を調査で知ったエジプト考古局は生みの親であるペガサスを呼び、その実態の調査を行なっていた。
「ペガサス会長!」
「ン?」
調査員の一人が何かを発見したようだ。ペガサスはその調査員の元に向かうと、その調査員の手には彼の大好きな漫画本程の大きさの本が握られていた。
「Mr.ラム。読む事は出来マスカ?」
「はい、ペガサス会長。読み上げます」
そこに書かれていたのは、3000年前のエジプトで、密かにある魔術的な儀式を行なっていたこと。その儀式は大量の人々が内に秘めた
(古代エジプトでのもう一つの戦いの儀式……そして《聖典》……これは何か危険な匂いがしマース。これは、大いなる災いの前触れかもしれまセーン)
「この遺跡の調査はここで打ち切りにしマース。これ以上は危険かも知れまセーン」
(いえ、もう既に手遅れになってしまっているかもしれませんケドネ)
「基山!起きろ基山!授業中だぞ?」
「……ん?あれ?」
「あれじゃない!授業中に居眠りなんてしおって……もうすぐテストだぞ?分かっているのか?」
遊人は目をこすりながら上半身を起き上がらせる。頬杖を付きながらやる気のない腑抜けた顔を黒板に向けながら話を聞いている。数学の微分積分だの極限だの意☆味☆不☆明でこんな物に将来役に立つのだろうか。ほとほと疑問であると心の中で思いながらノートに板書をする。それから20分が経つとチャイムが鳴り、教師は教室を出て行った。
「なんだよ基山。授業中居眠りなんて、随分と余裕があるんだね?」
「……ツバサ?」
真っ黒な髪にワックスでキンキンにセットされ、少しタレ目の男子生徒。蝙蝠ツバサ。突然ご挨拶な奴だが、これがこいつの味なのだからなんとも言えない。それにこんな奴でも女子にはモテてたりするし、おやつに茎ワカメ持ってきて……って最後のは関係ないか。遊人は教科書とノートを仕舞おうとすると、そのノートをツバサはひったくった。
「それに相変わらず、紙のノートなんて旧時代のもの使ってるし、まぁ化石みたいな頭してる基山にはお似合いか」
「ツバサ君、遊人君。そろそろ何時ものところでご飯食べよ?早くしないと取られちゃうかもだし……」
「そうだな。いつまでも俺たちだけしか知られていないなんて可能性はないからな」
「分かってるさそれぐらい!行くぞ!」
ツバサはノートを机に投げ捨てると、ズンズン歩いて行く。遊人達はそれについて行きながら会話を楽しんでいた。
すると、前から一人の女の子が歩いて来た。年齢は遊人と同じぐらいだろうか、少し大人びた雰囲気を感じる。制服を来ておらず、オレンジのキャミソールとショートパンツを履いている。そしてスラリと伸びた腕と足。艶のある長い紫に近い藍色の髪をなびかせ、大きく吸い込まれそうな紅い瞳と整った顔立ち。男女共に魅了してしまうであろう誰が見てもまごう事なき美少女が遊人の隣を通り過ぎる。
「早くしないと、死んでしまうよ?」
「……え?」
遊人はその一言で振り向くが、誰もいない。でも、今でも耳の中に残っている『死ぬ』という言葉は、ぐるぐると遊人の頭の中を駆け巡っていた。
「どうしたの遊人君?」
「いや、さっき凄く綺麗な女の子が通ったから……」
「は?誰も通ってないよ?お前目大丈夫か?早退して眼科行ってこいよ」
「もう!ツバサ君はまたそんなこと言って!でも遊人君も遊人君だよ?突然変なこと言い出すんだから!」
「悪い悪い。俺の勘違いだったんだな」
若干納得出来なかったが、今のは何だったんだろう……?
遊人は若干モヤモヤしながらも二人の後に続いて歩く。階段を登って屋上に着くと、ダンボールが積まれている一角の前に行く。ダンボールを退けると隠し扉があり、開けた。
「まさか学校の中にこんな所があるなんて思わなかったよね」
「ああ!この僕が見つけたんだ!お前たち、感謝して使えよ?」
「わかったわかった」
1教室分ほどの大きさのこの部屋を見つけたのはつい一週間程前のことだ。ツバサが謎の教室がある事に気が付き探し回った。廊下からの入り口が無く、その部屋の丁度上の屋上にダンボールが不自然に積まれていた。それを退けてみたら、正しく部屋に入る為の隠し扉があったという訳だ。
「窓も付いてて外も一望できるし、いい所なのは納得よね」
「そうだね」
「はは!そうだろう!そうだろう!もっと褒めろ?」
鼻が偉大天狗になってるツバサを他所に俺は窓の外をふと見てみる。
何時もなら外で元気よく遊んでいる生徒たちで溢れかえっている筈なのに、今日はやたらと静かだ。花壇の方を見てみると、一人のショートヘアな女子生徒が中央で電話をしているようだ。
次の瞬間、遊人はギョッとした。電話をしていた少女が振り向いて自分と目が合ったのだ。その少女の冷たい瞳からは感情が感じられない。
思わず目を外らすと、今度は不思議そうにこちらを見る友人二人。
「どうしたの?」
「いや、その……外にいた女の子と目が合って…….」
「また女の子?遊人君……」
「なんだよ基山!外には誰もいないぞ!あはは!さっきから女の子女の子って溜まってんのか?」
「ちょっとツバサ君!」
ツバサの最低な発言に顔を真っ赤にして嗜める。「怖い怖い」とツバサは悪びれることなく、手をひらひらとさせている。
遊人はそんな友人二人のやり取りを尻目に再び外を見て見る。本当に誰一人としていない。先ほどの電話をしていた少女がいた場所にも影も形もなくなっていた。
「それよりさっさと飯食べて戻ろうぜ。時間ももう少ししかないし」
ツバサが腕時計を二人に見せると、昼休みは残り15分を切っていた。三人は急いで食べると、隠し部屋から抜け出す。教室に戻ると既に他の生徒達は自分の席に座っていた。どうやら自分達が最後だろう。さっさと席に着くと同時に昼休み終了のチャイムがなる。
再び始まる退屈な授業。遊人は教科書とノートを広げつつ、また頬杖をついて黒板の文字を眺める。
(このまま同じ事を繰り返していく生活が続くのか……)
そう思った次の瞬間だった。
ドォォォン!!
突然の轟音。そして強烈な光が教室中に差し込んできた。遊人は余りの眩しさに目を瞑った上に腕で目をガードする。光が収まってくるのを感じると、目を開いて外をみる。窓の外には灰色の煙が一面に広がっていた。
「な、なんだよ……。今の……雷か……?」
「び、ビックリしちゃった……」
ツバサ達も外を見ていた。確かに今の感じは雷だ。しかし、遊人の脳裏に何かがよぎった。
(雷……さっきまで雲一つなかったのに?)
疑問は尽きない。それと同時にある違和感が生まれた。
これほどの衝撃的な出来事があったと言うのに遊人達三人以外、誰一人として外を見ていない。何事もなかったかのように教師の話を聞き、教師も教師で外には目もくれずに授業を続けている。
それはまるで機械のように、イレギュラーな出来事が起きた事を認識できないロボットのように、あくまで淡々といつもの日常を続けている。
「な、なんなんだ……これ……」
遊人がそう溢すと、今度は廊下で何かが水溜りに落ちたようなビシャッと言う音が響く。
遊人達は教師の声を無視して廊下に飛び出ると、
「「「ッ!?」」」
三人は目を見張った。其処にはうつ伏せで血塗れになっている男子生徒が倒れていた。辺り一帯にも血が飛び散っており、所々が赤くなっている。
「い、いやぁぁああ!!」
「なんだよ……なんなんだよこれは!!」
漸く状況に意識が認識処理が追いついた友人二人は阿鼻叫喚となる。
すると、血塗れの男子生徒の身体が少し動いた。それを見た遊人は素早く動いた。
「お、おい!しっかりしろ!」
遊人は男子生徒の身体に触れる。冷たくなりつつあるその身体を仰向けに返すと、三本の深い傷が制服を諸共せずに刻まれていた。
その生徒は血を吐きながらも何かを自分達に伝えようとしていた。
遊人とツバサは耳をその生徒の顔に近づけると、
「に……にげろ……奴らだ…………モンスターを放ちやがった……」
「何を言って───」
ピンポンパンポーン!
『デュエリストノ皆サンニ緊急連絡ノオ知ラセデス。予選終了時間ガ残リ僅カトナリマシタ。コレヨリ人数ヲ減ラス為ニ殺戮ヲ始メマス。本戦出場ノデュエリストハ、直チニ本戦会場に避難シテクダサイ。繰リ返シマス。デュエリストノ皆サンニ───」
片言の放送が校内全域に流れる。遊人達は立ち上がって放送を聴いていた。
「避難……?」
「何かの冗談……なのか……?それよりこの人を───」
ドシャッ!!
後ろに何かが水溜りに落ちたような音が聞こえてきた。三人は振り返ると、人一人分程の大きさの何かが血塗れで倒れていた男子生徒の丁度身体の上に着地していた。
着地の土台となったその生徒の身体はその何かが乗った部分が陥没しており、目に宿っていた僅かな生気が完全に失われていた。
「や、ヤバい!!逃げるぞ!」
「きゃああ!!」
「みんな逃げろ!!」
遊人は教室の中の人達に向けて叫ぶ。しかし、誰も自分に対して何の反応も無かった。遊人は教室に入って生徒の肩を掴んで揺らす。
それでも反応はない。それどころか視線は自分の方を見ている筈なのにどこか虚ろで、まるで人形だった。
気がつくと、ツバサ達もいなくなっていた。
バン!!
教師の扉を壊し、廊下にいた何かがズカズカ教室に入ってくる。
「うわぁああ!!」
鋭利な爪と角の生えた頭、緑色の身体で口からは涎が垂れている。遊人は反対側の扉から逃げようとすると、その怪物は生徒たちを薙ぎ払ったり串刺しにしたりしながらこちらに近づいてくる。遊人が扉から出ようとした直後、隣に何かが飛んできた。それは先程まで機械のように授業を受けていた女子生徒だ。女子生徒の制服は切り裂かれ、下着が露わになっているが、それでもその生徒は授業の板書をしようと手を空中で動かしている。あの怪物は遊人に向かって次の生徒を掴み上げるとこちらに向かって振りかぶっていた。
遊人は急いで廊下に飛び出る。そのまま走って階段を駆け下りる。
(逃げなくちゃ……ここから遠くに……!)
どこへ?
(家に……!家に帰るんだ……!)
どこへ?
(家に帰るんだ!)
どこへ?
(家に帰るんだよ!家に───あれ?)
遊人の足が次第に遅くなっていく。
(あれ……俺の家……どこ……?)
そして遂に遊人の足は走るのをやめ、普通に歩いて階段を降りていた。
(それ以上に……ここはどこの学校だ?……俺の学校はこんな感じのとこじゃないぞ?)
それを認識した瞬間に遊人の中から冷や汗が大量に流れ出て来た。
寒気が止まらない。吐き気が止まらない。目の前が真っ白になる。くらくらする。何故?何で?どうして?どうして俺はここにいるんだ?疑問は尽きない。尽きないのにどんどん疑問は増えていく。頭の中はもう爆発してしまいそうで苦しかった。
気がつくと、階段を降り切っていた。出口は近い。目の前の廊下を進めば出られる筈だ。今はとにかくここから離れるのが先決だ。遊人はそう自分に言い聞かせて重たい身体を引きずるように歩いて行く。すると、
「やぁ基山。随分辛そうだね」
遊人は顔を上げてハッキリしない目を向ける。そこには途中からいなくなっていたツバサが立っていた。
「ツバサ……」
「どうした基山?汗びっしょりじゃないか。汚いから近づかないでくれよ?いや、ここだと別にそういうのは無いのか」
「ツバサ……あいつは?」
「あーあいつね。あいつは僕の記憶が戻った時に置いていったよ。今頃どこかで泣いているんじゃないかな?」
ツバサはなんて事ないような感じでそんな事を言っている。その他人事のような口振りに遊人はツバサに掴みかかり睨みつける。
「なんだよその目は。僕は全部思い出したんだよ。これから始まる事を。僕が何しにこの世界にやって来たのかを」
ツバサは遊人の掴んでいた手を振りほどき、そのまま遊人は倒れる。
「じゃあな!僕は本戦会場に向かう。まぁお前たちとの学生生活は割と楽しかったかもね……」
「ツバサ……!」
遊人はゆらゆらと不安定ながら立ち上がると、ツバサの方に向く。しかし、そこにはツバサの姿は無かった。
どこを見渡してもツバサの姿は無い。それどころか人の気配がしない。
遊人の中からツバサへの怒りすーっとが抜けて行く。
(あいつを探そう……)
もう一人の友達。黒咲ルリを探しに遊人は歩き出した。
世界観・設定
この世界に登場するキャラは同姓同名の別人です。
舞台は遊戯王DM、GX、5D'sの世界ですが、世界線が違うためにその登場人物そっくりなキャラクターが登場する事があるかもしれません。しかし、上記の通り別人です。
さて、プロローグ第1話をご覧になっていただきありがとうございます。既視感ある世界観だなと思った方、私と仲良くなれるかもしれませんね←誰得
第2話は完成しておりますので近いうちに公開します。