ついにUAが1000を超え、お気に入りももうじき30です。読んでくださった方々本当に感謝感激雨あられです。
また誤字報告をしてくださった「ふーん」さん。ありがとうございました。
では第4話です。どうぞ。
「だからーーーー死んで」
死神の鎌が首を断ち切るーーーーーーーーー寸前
「葉隠ぇ!!」
「え?きゃあ!」
一体何が起こったのだろうか、全然理解が追い付かない。叶ちゃんという女の子を保護してよくわからない質問の後、ほっぺに触られたと思ったら突然の喪失感。さらにそこへ追い打ちをかけるようにして轟君がらしくない大声を上げて私を思いっきり後ろに引っ張った。突然のそれに反応できなかった私はされるがまま後ろに下がり、ここに来た時のようにしりもちをついた状態でそれをただ見ているしかなかった。
ガキンッという、甲高い硬いもの同士が勢い良くぶつかり合う音があたりに響く。気づけば叶ちゃんの右腕が三日月状の鎌に変形しており、死神を彷彿させるそれを轟君は左腕を氷で覆って作った即席の鎧で受けていた。
「ぎゃあ!」
氷の鎧は完全には鎌を受け止めきれずに刃は肉に少しだけ食い込んでそこで静止し、その一瞬のスキをついて轟君は相手を蹴り飛ばして凍結で拘束していた。
「えっと……葉隠で、いいんだよな?」
「?うん、そうだよ」
ここでようやく轟君は私の方を向いた。いや、正確には向いていない。私からわざと視線を外すようにしており、その態度は普段きちんと相手の目を見て話していた轟君にしては珍しいものだった。
「これ。俺ので悪いけど」
そう言って、轟君は自分の氷を溶かして脱いだ上着を私に差し出してくる。その行動に首を傾げていると、急かすように揺らしながら「頼むから早く着てくれ!」と言ってくる。一体なにを言いたいのだろう。服を着たら相手に丸見えになって私の『透明化』のメリットがなくなってしまう。そんな簡単なこと轟君だってわかってるはずなのに……
「え……な、なんで」
そこで、私は気づいた。
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今、私の個性はどういうわけか発動していない。そして私の個性は『透明化』であり、それを最大限生かすために私のヒーローコスチュームは『ない』。つまるところ私は全裸であり……
「きゃあああああああああああああああ!!こっち見ないでぇぇ!!」
絶叫を上げて轟君の上着を思いっきりひったくる。貸してもらう側の態度ではないが今はそれどころではない。今の私は全裸で大股広げた状態でしりもちをついているという女子にあるまじき様である。
「み、見た?」
「…………………………悪い」
長い沈黙ののち、短く簡潔に聞きたくなかった答えを返す轟君は、普段のクールな表情のままわずかに頬を染めていた。そんな彼を涙目で睨みつけながら私は借りた上着を羽織り前を閉める。当然ながらスカートなどないが、私よりずっと身長の大きい轟君用に作られているそれはワンピースのように私の膝あたりまで覆ってくれた。
「うう、ひどいよ~」
「わ、悪かったって」
もちろん轟君が悪いわけではない。私だって気づけないほど突然の変化だったし、彼は私を助けてくれたのだから感謝こそすれ不満を口にすべきではないことはわかっている。わかってはいるが、しかし裸を見られたことは女子高生である私にとって重大な問題である。乙女心は複雑なのだ。
「でも、一体なんで急に個性が消えたんだろう」
「さあな。でも、原因は間違いなくあいつだろう」
「うん」
私と轟君の視線が首から下が氷漬けになっている子供へと向く。その子は文字通り指一本動かすこともできない状況でありながら、一切の焦りを感じさせない無邪気な笑顔のままで、首を傾げながら「ん?なーに?」と言っている。そのさまは非常に愛らしく、まさに天使というにふさわしいものだったけど、私を殺そうとした直後という今の状況でそれができる精神構造が私は恐ろしくてたまらない。
「お前、葉隠にいったい何をした」
「お願いを叶えただけだよ」
そう言って叶えちゃんは、いやヴィランは私の方を向く。
「つらかったよね。苦しかったよね。でももう大丈夫だよ。ほらーー」
「なっ!?」
「それ!私の個性!?」
ヴィランの体が空間に溶け込むかのように透明になる。服だけが不自然に残っているそのさまはまさしく私の個性『透明化』の特徴だった。
「もう大丈夫だよ、お姉ちゃんの願いは叶ったんだよ」
そう言いながら再びヴィランの体が見えるようになる。
「おい、それを今すぐ返せ。それはお前のようなヴィランが触っていい物じゃない」
「やだよ。これはもう僕のものだし、それにいらないといったのはお姉ちゃんの方だ。僕はただお姉ちゃんのお願いを叶えただけ」
「願いを叶えた、だと?」
繰り返す轟君にヴィランは誇るように、それでいてなぜか憎むような雰囲気を出しながらうなずいた。
「そう、それが僕の『個性』。みんなの願いを叶える力。どんな願いでもかなえる代わりにいらない物をもらうだけ。すごいでしょ」
いらない物。そう言われて、私は即座に否定できなかった。なぜなら私は、自分の個性が大っ嫌いだったから。付き合い方を変えることで前向きになることはできても、生まれてからただの一度もこの個性をもって生まれたことに感謝したことはない。こんな個性が邪魔だと思ったことは数えることなどできないほどに。
「お姉ちゃんのいらないものを僕がもらって、お姉ちゃんは願いが叶う。みんなハッピー。だから大丈夫だよ。お兄さんの願いもかなえてあげる。欲しいものはある?なりたいものはある?会いたい人はいる?それと、死んでほしい人はいる?」
「結構だ。自分の願いは自分で叶える、ヴィランなんかの手は借りねぇ」
「ううん、遠慮しないで。叶えてあげる、いや叶えさせて。僕を使って僕を必要として。そのためだけに僕はいるんだから。じゃないと僕は何のためにうふふあはははははは!!」
突然狂ったように笑いだすその狂気に、私は一歩下がる。そんな私とは対照的に、さすがは推薦合格者というべきか轟君は疲れたようなため息をつくだけだった。
「はあ、話にならねえな。とにかく、プロヒーローが来るまでお前は動けねえから静かにしてろ」
「……それは困るなあ。これ、解いてくれない?じゃないとお兄さんたち殺せないじゃん。君たちを殺せって弔くんに言われてるんだから」
「そんなこと言われて解くわけねえだろ」
「そっか。じゃあーーー」
次の瞬間、ヴィランは信じられないことをした。
ボキン
ぞっとするような不気味な音が周囲に響いた。それは固い何かが折れるような音であり、そして何が折れたのかは一目瞭然だった。
「んー、腕が取れたのなんて久しぶりだなあ」
懐かしそうに目を細めて、どこかおかし気にそうつぶやくヴィランの右腕が無くなっている。氷漬けになってしまった腕を無理やり動かそうとしたことにより、肩から少し先を最後にしてそこから先は砕けて折れており、噴水のように血が噴き出していた。
「ひっ!」
「お前!?」
それを前にして私たちは恐怖した。自分の腕を迷わずへし折り、それをしながら相変わらずニコニコしているその精神。今までテレビや街中で見てきたものなんかとは比較にならない本当の
そして動揺収まらぬうちに新しい異常が起こった。
「再生、だと」
ずるりと、右腕の断面から新たな腕が生えてくる。新しくなったその腕には一切の傷はなく、先ほどまで同様に白磁のようなきれいな腕だった。
そして当然、腕だけでは止まらない。
バキン
左腕
ベキン
右足
ゴキン
左足
「さて」
四肢のすべてをへし折って、そして再生させた。もうそこには、先ほどまでと同じ無傷の子供がそこにいた。そして、まるで挨拶をするかのような気軽さで、恐ろしいことを口にする。
「じゃあ、殺そっか」
今回も読んでいただきありがとうございます。ちょっとしたものでもいいのでコメントいただけると嬉しいです。
さて本編のついてですが、叶ちゃんは奪ったものを自由に出し入れすることができます。そのため、異形型の個性でも仕舞えば元どおりの可愛らしい男の娘に早変わり。また奪った腕や足を使って、最後のように失った肉体を修復することも可能です。イメージとしては障子くんが複製腕を切られても平気な感じ。
現在、エメラルドでサンドパンを育成中。可愛い。飼いたい。