気づけばUAが2000を超えててびっくりしました。そんなに沢山の人に読んでいただき作者として嬉しい限りです。
『KAIN』さん、『転生チートスマホ(人間化)』さん、誤字報告ありがとうございました。
それでは第5話です。ほんの少しでも楽しんでいただければ幸いです。
(強い!)
轟焦凍は、叶に対して率直にそう思った。叶の身体能力は明らかに見た目通りの物ではない。それは個性によるものだと彼は判断し、そしてそれは的中していた。叶は今、同時に五つの個性を発動していた。
葉隠の殺害を試みた『鎌』。それに加え増強系である『身体能力強化』『脚力倍加』『膂力増強』。それらの同時発動によって、わずか140cm程度の身長と女児のように細い四肢でありながら常人をはるかに超えたスピードとパワー、そして反射神経に瞬発力を得て足場の悪い土砂ゾーンを縦横無尽に疾駆している。
それに加えーーー
(なんて厄介な個性だ!)
つい先ほどまで葉隠透がもち、そして叶へと譲渡された個性『透明化』。それによって敵の姿を轟は目視できずにいる。
「ほらほら、こっちだよ!」
「ぐはっ!」
声がしたと思ったら次の瞬間背中に焼けるような痛みが走る。振り返ると同時に凍結を図るが、しかしすでにもうそこには誰もいない。致命的な一撃は未だ受けていないがその体には次々に切り傷が増えていく。
それでも、轟が今なお叶と戦うことができてるのは二つの要因がある。
一つは轟の個性が点ではなく、面での攻撃に特化していること。小柄で速く、かつ目視不可能なヴィランを牽制できることに加えて氷を踏み砕く足音によって大まかな居場所を把握できていること。これらのお陰でギリギリ救われた命は一つ二つではない。
しかし、いかに轟の個性がこの戦いにおいて適しているといってもそもそも彼我の実力差はかけ離れている。確かに轟の実力は同年代に比べて頭数個分は突出しており、日本一と言われる雄英高校の中でもその強さは個性・身体能力・思考力に判断力すべてで圧倒的である。だがしかし、それでも遥か小柄な叶の方に戦闘の軍配は上がっている。
なぜなら叶は『一人』ではないから。
叶えてきた。個性が発現してからAFOの手で救い出されるその日までありとあらゆる願いを叶え続け、そして
そして彼の奪えるものに制限はない。相手が『いらない』と思うものなら何でも奪える。だから当然、奪ってきたものの中には戦闘に関するものも多数ある。その知識、経験そして
ゆえにそこにはもう一つ、これは叶の方に要因がある。
「今度はこっちだよぉ!」
「ぎぃっ!」
叶は遊んでいる。幾度も殺せるチャンスがありながら、かつすぐそばに足手まといがある状況でありながら意図的に狙わない。今もそう、一瞬でその首を断ち切ることができたというのに彼はわざと腕を切りつけた。なぜそんなことをするのかと言われれば
「楽しいからさ」
どこまでも子供らしく、無邪気に答えるその口ぶりに嘘はない。幼子が虫をばらして遊ぶようにじわじわと殺していく。より長く、より楽しく遊べるように。もともと彼は倫理観を有していないため殺人に躊躇いはないが、だからと言って殺したいわけではない。死柄木弔に言われているから仕方なく殺そうとしているだけである。
もちろん、AFOに直接命令されていたら彼は一切の遊びなく、数秒でその首を断ち切っていただろう。だが、その指示は死柄木から出されており、叶は別に彼の仲間になったつもりはなく、AFOに言われているため仕方なく従っているだけである。ゆえに、そのストレス解消として遊んでいるのだ。
その二つの要因がかみ合うことで、今轟の命はギリギリでつなぎとめている。だが、それでも状況はじり貧であり傷は徐々に確実に増えており、そこに加えてーーーー
「はあっ、はあっ」
どさりと、隣で葉隠が倒れる。凍結の個性を持って生まれた自分はほかの人よりもはるかに寒さに耐性を有しているが、彼女は違う。無個性となってしまったことを抜きにしても肉体的には普通の人と変わらない上に、上着を一枚身に着けているだけの葉隠はそれほど寒さに強いというわけではない。そんな彼女のそばで氷の世界を展開し続けていればそう遠くないうちに凍死しかねない。
そてそれを抜きにしたとしても叶の強さは圧倒的であり、偶然氷でとらえることができてもまるでトカゲの尻尾きりのようにその部位を引きちぎって脱出する。そして無論、次の瞬間には無傷に戻っている。そんな相手に勝算などなく、轟自身の死まで秒読みの段階である。
(死ぬ……のか)
その年で実感するのはあまりにも早すぎるそれがよぎる。
(こんなところで。こんな年で。まだ、ヒーローにだってなれていないのに)
一歩一歩、死の断崖へと歩を進めていく中、轟焦凍の走馬燈が映し出したのはクラスメイトのことでもなく、兄や姉、そして大好きな母親のことでもない。
(ふざけるな!!俺は、俺はあんたの道具じゃない!俺はあんたを超える。
「!!?」
先ほどまで死にゆくだけだったその瞳に光が戻り、
「死んでたまるかぁぁぁぁ!!!!」
バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ
そこに現れたのは、一言でいえば『氷山』。先ほどまでとは明らかに規模の違う、今の轟の出せる最大規模によって生み出されたその氷の壁の中に叶はまるで映画のように閉じ込められていた。手足を無理に動かすことすらできないため、これでは先ほどまでのように引きちぎることすらできない。
チェックメイトである。
「はあっ、はあっ」
ガクリと膝をつく。一気に一度に出せうる限りの氷を出したことにより急激な脱力感にさいなまれ、ひどい眩暈を誘発し立っていられないがそれでも意識ははっきりしている。すぐにでも横になりたい気持ちを抑えて立ち上がり葉隠の元へと駆け寄る。
「良かった……」
意識はないが脈ははっきりしており、右の個性で温めると呼吸もはっきりしてくる。
「よっと……」
葉隠の背中と膝裏に腕を回して持ち上げる。いわゆるお姫様抱っ子の状態で、そのまま皆がいるであろう出入り口を目指して歩き出す。
(強かった……危なかった……)
ギリギリ勝つことはできたが、いつ死んでもおかしくなかった。
(もっと、強くならねえとな)
「う、う~ん」
さらなる決意を固めていると腕の中で唸り声ともぞもぞと動く感覚がし、目を向けると葉隠が意識を取り戻したところだった。
「あれ?轟君?」
「良かった。痛いところはないか?」
「うん。……って!ちょちょちょ下ろして下ろして!」
「?悪い」
自分がお姫様抱っこ、さらには裸の上に一枚上着を羽織っているだけの状態でそれをされていることに気づいた葉隠はじたばたと轟の腕の中で暴れる。降ろされた彼女は先ほどまで極度の低温にさらされていたことで若干の違和感を手足に感じていたが問題なく動かすことができた。
「うう~、裸を見られただけでなくお姫様抱っこまでされるなんて」
「すまん、気持ち悪かったよな」
「……ははは、轟君らしいや」
轟の鈍感ぷりに苦笑していた葉隠はそこではっと気づいたように顔を上げる。
「そういえばヴィランは!?」
「あれだ」
そうって示された場所にあるのは大氷壁。それを見た彼女はまさに開いた口がふさがらないという状態だった。
「凄い……流石だね、轟君」
「いや、正直ぎりぎりだった。今までにないくらい強い奴だった。あとはプロに任せようと思う」
「そっか。うん、そうだね。それがいいよ」
(叶ちゃん、か……)
倒したことで余裕が生まれたのか、ヴィランのことを気にかけていた。
あの子は、轟君に願いを叶えなければいけないといったとき、笑っていたけどどこか怯えているような、強迫観念のような思いを感じた。そもそもあんな小さな子が、普通は笑いながらあんなことができるわけがない。そして『願いを叶える』という、その個性。もしあの子の言っていたことが本当だったら、きっとあの子はその個性が原因でまともな人生を送ってきていないのだろう。それゆえにあんなふうになってしまったんだろう。だから、
(今度は、幸せになってくれるといいな)
ヴィランとしてではなく普通の子供として、当たり前の幸せを手に入れてほしい。
「葉隠、行こう。他の奴らが気になる」
「うん!」
そのためにも、少しでもいい世界に。まずはこの場を生き抜こう、みんなと一緒に。
そうして、二人はUSJの入り口目指して走り出した。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン
爆音、そして後ろから熱風と共にばらばらと何かが崩れ落ちる音が二人の耳に届く。
「嘘、だろ……」
「そんな……」
二人は震えながらゆっくりと振り返った。そこに何がいるのか、それは火を見るよりも明らかだったが、その予想が外れることを願いながら。
「ふふふ、残念だったね。この程度じゃ死なないよ」
笑っている悪魔がそこにいた。砕け散った氷の破片がイルミネーションのように幻想的に輝く中、まるで芸術作品としてすら通用する美しい肢体を隠すことなくさらしながら無傷の悪魔がそこにはいる。
「逃げるぞ!!」
「う、うん!!」
二人は慌てて走り出す。無理だ。あれには勝てない、勝てるわけがない。
(くそ!くそ!くそ!)
ヴィランを前にして無様な撤退をしながら彼は心の中で悪態をつく。あの男を超えるどころか、あんな子供にまけるだなんて、と。
「いい、いいねえ」
走り去っていく二つの背中。死柄木弔に殺すように言われた二人が走り去っていく様を見ていながら叶は一歩も動こうとはせず、ただうれしそうに笑っていた。
「轟くん、だったかな。下の名前も知りたいなぁ」
この氷を作り出す直前、途轍もない光が彼の目に宿った。あの輝きは知っている。『憎しみ』だ。それも今まで叶えてきた中でもかなり上位にくこむほどの強い『願い』。
「叶えたい、叶えてあげるよ、轟くん。そのために僕がいるんだから」
願いを叶える、それだけが僕の存在意義で、僕はそれをし続けなくちゃいけないんだから。じゃないと、
『お前が殺したんだからな』
「?」
誰かに言われたそのセリフを思い出して叶は首を傾げた。はて、これは誰の記憶だったかなと。膨大な記憶を有している弊害として、それがもともと誰の記憶だったのかを思い出せない。
「まあ、いっか。どっちにせよ、ゲームオーバーだ」
「黒霧さん失敗しちゃったかな。まあ、僕もだから人のことは言えないけど」
今回の作戦の失敗条件は『プロヒーローを多数呼ばれること』『脳無がやられること』の二つであり、どちらか一方でも満たせば即座に撤退しなければいけない。それをAFOに厳命されている。
「残念だけど、お預けだね。轟くん」
パキパキと氷の破片を踏み砕きながら二人の後を追うように叶は歩き始めた。
「それにしても今日は素敵な日だ。願いもかなえて素敵な人に会えた。ああ、パパありがとう。パパがいなかったら、こんな気持ち知らなかったよ」
ちなみに叶ちゃんが最後に氷を壊すのに使った個性は『自爆』です。自分の体を爆弾がわりにして、犠牲にする部位の大きさに応じて爆発の威力も変わってきます。また、自分から離れた部位は爆発させられないため自分もダメージを負います。叶ちゃんは『いらないもの』を奪うその特性上、持つのは基本的に没個性ばかりです。ただ前回同様ストックがあるので即座に再生します。
最後まで読んでいただきありがとうございます。そろそろUSJ編は終わりになると思います。もちろん、その後も話は続きますが。
質問などはコメント欄でしてくれると嬉しいです。ただど素人のガバガバ設定なので矛盾点も有ると思います。その時は修正できたら修正しますが、どうしてもの時は・・・申し訳ありません(土下座ずざー)
エメラルドでボルテッカーを覚えたライチュウを育成。電気玉とか現役時代存在も知らなかったよ。思った以上に奥が深い。