異世界は後輩転生者のスマートフォンとともに。 作:ヒラメもち
銀髪のロングヘアが姉のリンゼで拳闘志、銀髪のショートヘアが妹のエルゼで魔法使い。
そんなシルエスカ双子姉妹と、武士である九重が望月のパーティーメンバーである。王都で見かけた彼へ挨拶をした時に紹介された。ベルファスト王国のリフレットの町を普段は拠点としているが、より難易度の高い依頼を求めて立ってきたらしい。
今はお礼も含めてそれに同行しているわけだ。
なんていうか、美少女揃いだ。
さて、この世界にも『冒険者ギルド』があって、冒険者はここで仕事を受注する。冒険家というよりは、対魔物の傭兵として働いている場合が多い。商人の護衛や魔物討伐が主だったものである。『ランク』も段階的に用意されていて、俺は中間の青である。
「『炎よ燃やせ、焼却の息吹、ファイアブレス』」
教科書魔法を詠唱しつつ、魔力を籠める。
グローブを嵌めた右手を前へ突き出す。
魔法陣からは炎が噴きだし、ゾンビを焼きつくした。
強烈な臭いが発生しているので、この場から退く。
「望月の魔法か?」
向こうでは光の魔法が使われているのが見えた。
その方向へと向かう。
アンデット系には有効だろうし、いいチョイスだ。
この元王都だとかいう、廃城に住み着いた『魔物の殲滅』が今回の依頼内容である。アンデッド系が城内に、一角狼が庭を縄張りとしていたため、相性を考えつつ各個撃破している。
「マルチプル!」
「は? なんだあれ。」
聞いたことがないし、無属性魔法だろうか。
望月の周りに四つの魔法陣が宙に浮かび上がっている。
「『光よ穿て、輝く聖槍、シャイニングジャベリン』」
それぞれの魔法陣から、同時に4本の光の槍が飛び出しデュラハンを貫く。
1回の魔法を4回分にする効果でもあるのだろうか。
もっと増やせそうな気もする。
首のない鎧は、ゆっくりと倒れたまま動かなくなる。
「片付いたわね。」
「疲れたでござるー」
シルエスカ姉や九重がそう告げる。
物静かなシルエスカ妹もホッとしている。
周囲の警戒を欠かさないのは俺くらいだ。
「ていうか、九重の刀。刃こぼれしていないか?」
「あの大剣と切り結んでいたし、無理もないでござるよ。」
「そうなの、か……。望月、なにか良い魔法はないか?」
よく折れなかったな。
普通の刀で、大剣とあまり鍔迫り合いしちゃダメだ。
「わかった。まだ慣れていないんだけど、『モデリング』!」
望月の個人魔法がまたもや使用される。
刀は元通り、いやそれ以上に手入れされている。
「ありがとうでござる。」
魔法辞典に載っていたものだろう。
造型魔法の類だと思う。
「しかし、昔の王都って言ってもなんにもないな……」
「1000年前らしいし、ちゃんとした遷都をしたらしいしな。」
「そうなのでござるか。」
「王の隠し財宝とかあったら、面白いんでしょうけどね。」
「もしあっても、オーパーツとか墓とかじゃないか?」
骨が出てきても、反応にも対応にも困る。
「…おー、パーツ?」
ヤバい、口が滑った。
シルエスカ妹が不思議そうに尋ねてくる。
「あー、なんていうか…古きよき物のことだな。」
あてはまるべきいい言葉があったはずなんだが思いつかなかった。
「またあんたらの故郷の言葉?」
「そんなとこ。」
考えこんでいた望月が、徐に魔力を籠め始める。
考え込む癖があるんだよな。
そして、唐突に行動起こすこともよくある。
「『サーチ:財宝』」
「『サーチ』を使ったの!? どうだった?」
「少なくともこの近くに財宝はないね。」
某RPGの『とうぞくのはな』を超越する、
サーチエンジン付き検索魔法といったところか。
「では、オーパーツ、というものなら、どうでしょう?」
「そうだね。『サーチ:オーパーツ』」
使った本人の発言を待っていれば、
望月の表情がハッとしたものになる。
「……引っかかった。」
「「「え!?」」」
女性陣が望月へ詰め寄る。
3人ともかなり期待していたんだろう。
「だが、さっきのデュラハンとかも、ある意味オーパーツなんじゃないか?」
「いや、もっと大きなものを感じる。こっちだよ。」
それ、ヤバいオーラが出ていそうなんだが。
望月を先頭に、廃墟の中をゆっくり進んでいく。
今にも崩れ落ちそうな場所も全員が淡々と進めるのは、全員が冒険者だからだろう。
「この下か?」
立ち止まっている望月に尋ねると、頷く。
さて、この瓦礫をどかそうにも、慎重になるべきなのだろう。
天井が崩れでもしたら困る。
知識として知っている土魔法の中で、何か適するものがあっただろうかと俺は考え込む。俺は使えなくとも望月なら魔法名と効果を教えれば扱えるだろう。
さーて、
「『炎よ爆ぜよ、紅蓮の爆発、エクスプロージョン』」
「うっそだろ おい!?」
シルエスカ妹の爆発魔法が炸裂する。
ちなみにこの魔法自体、某中二病の『爆裂魔法』ほどの威力はない。
自然と額に手を当てる。
この廃城が崩れなかったのは奇跡ではないだろうか。
「上手くいったでござるな!」
ともかく大きい瓦礫を無事に吹っ飛ばした。
穏やかそうに見えて、無茶苦茶なことをする。
「あとは俺たちがやるか、慎重に。」
今度は、姉が強引に地面を勢い任せに殴りそうだ。
俺や望月が残った瓦礫を手でどかしていく。
なんか俺、すでに苦労人ポジション与えられてないだろうか……
「階段か。」
「深くまで続いていそうでござるな。」
明らかに隠されていた場所。
それなりのものが出てきそうだ。
「これはもしかしてお宝あるんじゃない?」
「でも、トウヤさんの『サーチ』では、財宝はなかったよ?」
「わ、わかってるわよ。」
期待に胸が膨らむのは分かるが、生き埋めの恐れのある地下はさらに危険だろう。
どうするべきか……