異世界は後輩転生者のスマートフォンとともに。   作:ヒラメもち

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解決、そして片鱗

俺やリオンさんが、最後の扉を守る。

今なら騎士達の気持ちが少しはわかる。

 

言葉を交わすことはない。

無限とも言える時間が過ぎていく。

張りつめた空気は息苦しい。

 

強くなったはずの俺たちは、今は無力だった。

治療が成功するか、望月が来てくれるか、戦うことしかできない俺たちはそれに懸けるしかない。

 

胸が痛くなる。

聞こえるのは、部屋の中で呼びかけ続ける女性たちの声だけだ。

 

いや、足音だ。

足音が聞こえた。

 

 

「兄上は!?」

 

大汗をかいたアルフレッドさんが尋ねてくる。

 

「中に。」

「望月、頼む。」

 

深々と頭を下げる。

彼の個人魔法なら、助かる可能性は高い。

 

時は一刻を争う。

 

 

「う、うん。」

 

アルフレッドさんと望月が部屋の中に入っていく。

 

再びの静寂だ。

 

目を強く閉じて祈る。

今は望月を信じることしかできない。

 

 

『お父様!』『あなた!』

 

その歓喜の声が中から聞こえて、壁に寄りかかる。

そのままずるずると、尻を地面につけて座り込む。

 

 

「もうひと踏ん張りだね。」

「よしっ、気を引き締めていくか。」

 

初めて顔を見合わせる。

立ち上がって、背中を壁から離す。

 

「なんていうか、リオンさんたちの気持ち、少しは分かった気がします。」

「俺も、再確認したよ。」

 

これが、騎士の心構えなのだろう。

 

一度シャルロッテさんが出ていき、大使であるオリガさんとともに入室していく。ユミナもいるし、彼女の仕業ではないと確かめるためだろう。

 

 

 

 

 

***

 

 

あの時、現場にいた人全員が望月によって集められる。

場所は事件の起こった場所だ。

 

「へ、陛下! お身体の方はもうなんとも!?」

 

「おう、バルサ伯爵。この通りなんともない。ふむ、どうやら心配を、かけたようだな?」

 

皮肉を籠めてそう告げる。

ていうか、もう犯人を誰もが分かっている。

 

犯人は、俺やトリストウィンさんの様子を交互に必死で見ている。

 

 

「そう、ですか。それはそれは。何よりでございます……」

 

「それでトウヤさん。私たちを集めてどうするつもりですか?」

 

シャルロッテさんが代表して尋ねる。

 

「皆さんも知っての通り、国王陛下に毒が盛られました。現場はこの大食堂です。ここはそのときのままになっています。まあ、並んでいる料理は冷めてしまってますがね。で、この国王暗殺未遂事件の犯人ですが…………」

 

一度言葉を区切る。

この場で望月と俺だけが、このベタな展開を知っている。

 

「この中に犯人がいます!」

 

推理小説や刑事ドラマの影響だろう。

だがエンタメデュエリストはあまり好かれない傾向にある。

 

ていうか、初対面でよく王族の前で緊張しないな。

 

 

「まず、この毒の入ったワインですが。」

 

将軍に持ってきてもらったワインの瓶を手に持って指し示す。

 

「これはオリガさんの贈られたワインで間違いないんですね?」

 

「た、確かに私が贈ったものだが、私は毒など!」

 

「黙れ! この獣人風情が! まだシラを切るとは、恥知らずにもほどが……」

「「な!?」」

 

不覚にも伯爵と、俺の声が被ってしまう。

望月がいきなりワインをゴクゴクとラッパ飲みし始めたのだ。

 

どこぞの『自称女神』のように異世界をエンジョイしすぎなのか、前世でも酒をそうやって飲んでいたのか、そこまではわからない。

 

 

 

まあ、これでオリガさんが持ってきたワインに毒はないことが証明された。

 

「さて、ここに取り出したるは特別製法によるレア物のワイン。遥か東方で造られた、僕の知る限り最高級のワインですが……、このワインが犯人を見つけ出してくれます。」

 

レオン将軍にグラスに注いだワインを飲ませる。

演出へ乗ってくれた彼は、次に伯爵へと皆の意識を向けてくれる。

 

「ぜひ伯爵にも味の感想をいただきたいですね。」

 

またもやグラスに酒を注ぐ。

しかし望月は、あえて被害者の座っていた席のグラスを選んだ。

 

 

「いやっ、私は……!」

「……飲めませんか? では僭越ながら私が手伝って差し上げましょう」

「はっ!? ムグッ! うぐうッ!?」

「あれ、どうしたんですか?」

「う! うあ! うああ! た、助けてくれ! 毒が! 毒がまわる! 死ぬ! 死ぬうぅぅぅ!」

「あー、もういいですから。さっきのグラスね、アレ、新品のグラスですよ」

「……な、なに?」

「無理矢理飲ませたのは謝りますよ。でもなんで毒が入ってるって思ったんです?」

 

 

俺たちは一体何を見せられているのだろう。

もちろん犯人に同情する気はない。

ざまぁだ。

 

俺と同じように男性陣は、密かに目を細める。

バルサ伯爵も、最後に『一仕事』してくれた。

 

意図せず、有益な情報を得ることができたのだ。

『敵対した相手への容赦ない行動』、それは普段の彼からは想像がつかないことだ。

 

 

人の本質は、時と場合によって変わるのだろう。

ユミナも目を見開いている。

 

 

「く、くそっ!」

 

「悪あがきかよ。」

 

人のいない床へ勢いよく転がっていく。

ユミナに向かっていこうとする伯爵を、俺は蹴り飛ばした。

 

犯行がバレた理由が、『魔眼』にあるとでも思ったのだろう。

 

 

「とりあえず、協力者をさっさと吐いてもらわないといけないな。」

 

まだ仕事は残っている。

彼自身がグラスに毒を盛ったわけではないのだ。

 

 

「……すみません、気絶させてしまいました。」

 

失敗したな。

ユミナを標的にされてついカッとなってしまった。

 

 

 




注:『国の一大事』に、遊び半分で推理小説の真似事をしないでください。
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