異世界は後輩転生者のスマートフォンとともに。   作:ヒラメもち

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銀龍、そして黒竜

この姿での戦闘経験はあまり多くない。

 

それでも、

秘めていた本能と闘争心を全力で解放するだけだ。

 

 

『グオッ!?』

弾丸となって黒竜にぶつかり、地に墜とす。

 

轟音が鳴り響く。

黒竜の巨体が森の木々を押し退けた。

 

 

『グッ、何者だ。我が享楽を邪魔するとは。』

 

「人間だ。」

 

『どこがだ!? まあよい、その身体を八つ裂きにしてくれる!』

 

巨大な爪を振り下ろす。

その衝撃波は木々をなぎ倒していく。

 

パワーは黒竜に軍配が上がるが、スピードで負けるつもりはない。

 

「おうちに帰れ!」

 

『うっとおしいぞ、この大蛇め!』

 

勢いよく息を吸って炎を吐き始める。

特性上、効かないが。

 

「無駄ァ!」

 

顔面に向かって、尾を振りかぶる。

黒竜は倒れ伏して地響きを鳴らす。

 

 

角が見事に折れた。

 

 

『グオオオオ!』

 

どうやら逆鱗に触れてしまったようだ。

炎を吐き続け、このままでは森が大火災になるだろうと焦る。

 

 

急に、黒竜が横転する。

 

たぶん『スリップ』だろう。

大きな隙ができたし、ありがたい。

 

大技にはそれなりの集中力が必要なのだ。

立ち上がるまでに時間がかかっている。

 

 

魔力を尾に籠める。

「『剣龍!』」

鋭利に、尾は剣と化す。

 

勢いよく振るって、

竜の右腕を吹き飛ばした。

 

 

その斬撃は地面まで斬り裂いていて、

黒龍はおびただしい血を流している。

 

人に使ったらヤバい技だ。

 

 

『…いってぇ、くそ!』

激痛に悶えている。

そして、自身の炎のブレスで傷口を塞ぐ、そんなことを躊躇いもなくできるのは彼が生粋の竜だからなのだろう。

 

 

 

その巨体をぶっとばすことで、向かってきた光の極太レーザーから救う。

 

 

望月の魔法だと思うが、黒竜に致命傷を与えるものだったと思う。

 

『ぐっ、なぜだ……』

 

「さあな。俺が人間だからじゃないか?」

 

『甘いな。』

 

「自覚してる。」

 

 

戦いが再開することはない。

そこへ赤い竜が空から降りてくるが、攻撃されることはないようだ。

 

『我が同胞が迷惑をかけたな。若き龍よ。』

 

威厳ある声の持ち主には、まだ勝てそうにない。

 

「どうも」

『けっ…』

 

『我は聖域を統べる赤竜。こいつを連れ戻しに来たのだ。』

 

『赤竜よ。《蒼帝》に言っておけ。自らの眷属ぐらいちゃんと教育しとけとな。』

 

マスコットから元に戻っている。

その漏れ出した威圧感に、琥珀よりずっと巨大な俺たちはビクっとする。

 

『貴方は《白帝》様!? なぜこのようなところに!?』

 

聖域の主である赤竜にとっても、神獣には頭が上がらないらしい。

 

『どうかご容赦を願いたく。この者の処遇は何卒温情をもって……』

 

『どうしますか、主。』

 

赤竜や黒竜はお口あんぐりである。

神獣が人間に仕えていることが驚愕なのだろう。

 

「あー、まあ、まだ村は襲ってないからね。でも今回だけだよ。二度とこんなことがないように若いヤツらに言い聞かせてよね。」

 

上から目線が凄まじい。

琥珀の威を借る人間様である。

 

「そっちのヤツの腕、治そうか?」

 

赤竜と違って、人語を理解できないようだ。

黒竜が俺に視線で尋ねてくる。

 

「俺が言うのもなんだが、腕を治そうかって聞いている。」

 

『いや、治さなくていい。これは戒めだ。』

 

「そうか。治さなくていいか。」

 

『また会おう、銀龍。次に会った時は、お前にリベンジしてやる。』

 

「ああ。また返り討ちにしてやる。」

 

『そんなお前にはキツいお仕置きが待っているぞ。』

 

逃げるように飛び立つ黒竜を、赤竜が追いかけていく。

その姿を見て、俺も『龍化』を解く。

 

 

 

 

「ふぅー……」

 

立ちくらみがする。

さすがに魔力を消費しすぎたようだ。

 

「イッキさん!」

「ヴェ!?」

 

ユミナに押し倒された。

 

「無事で...よかった..です…」

 

信じることと心配することは違うのだろう。

俺もユミナに怪我がないようで、ホッとしている。

 

矢筒の矢はかなり減っていた。

やはり村の方では逃げてきた魔物の討伐で忙しかったようだ。

 

「よくがんばったな。」

 

泣き崩れて抱きついてくるユミナを撫でながら、報告を聞く。

 

 

 

死者は0。

俺の仲間も全員無事。

負傷も避難中に起こったくらい。

 

 

もう日の出である。

王都へ着くのは遅れるだろうし、とにかく疲れた。

 

まあ、終わり良ければすべてよしだ。

 

 

 

 

 

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