異世界は後輩転生者のスマートフォンとともに。 作:ヒラメもち
王都『ベルジュ』までようやくたどり着いた。
新興国であるし、真新しい建物がよく見られる。俺や望月にしかわからないが、街並みがインドによく似ている気がする。様々な種族が暮らしていてベルファストとは違った温かさがある。
「オリガ・ストランド、ベルファスト王国より帰還してございます。」
「うむ、大儀であった。」
雪豹の獣人であるミスミド国王に謁見だ。
シルエスカ姉妹や九重はいつも通りガチガチに後ろで控えている。
望月は堂々としている。
本当に同じ日本人かどうか、疑ってしまう。
「ガルン、そしてリオン殿。オリガの護衛を無事果たしてくれたことを嬉しく思う。」
「「はっ!」」
「ユミナ姫と婿殿も、よくぞここまで来てくれたな。長旅ご苦労であった。」
「いえ、ミスミドとの友好のためですので。」
「こちらが王からの親書にございます。ご確認ください。」
ちゃんと側近の1人に渡す。
ここでマナー違反するわけにもいくまい。
「……なるほど。前向きに考え、近いうちに答えを出そう。それまではごゆるりと我が宮殿でお過ごしくだされ。」
王同士の会合、その方法について書いていた。
望月が作成してくれた『鏡』で城に直接移動するのだ。
しかし、どちらが出向くかで揉めそうだ。
お互いに譲り合って。
「ありがたき幸せ。」
「ありがとうございます。」
現在進行形で学習中のマナーで頭を下げる。
もうすでに肩が凝りそうだ。
「と、堅苦しい話はここまでにして。先ほどから気になっていることがあるのだが……」
王の視線は後ろに控えている望月たち、いや琥珀に向けられる。
「そこの白虎はそなたたちの連れか?」
「はい。召喚獣ですね。」
『がう』
単に珍しいから聞いてみただけのようだ。
白虎自体が神聖な獣として扱われているだけで、神獣とは気づいていない。
マスコット化した白虎は珍しいのだろう。
「ふむ……して、黒竜を討ったのは?」
「イッキですね。」
さらっと言われてしまった。
話に箔がついているのか、あの黒竜を殺したみたいにされているし。
「ほう、婿殿が……。」
「討伐ではなく撃退ですが。」
「撃退であっても称賛に値することだ。……よしっ、儂と立ち合わんか?」
ちらりと側近に確認する。
申し訳なさそうに頷いてくれた。
「いいでしょう、望むところです。」
一介の剣士として、求められた決闘は断れない。
現国王や次期国王にあるまじき、獰猛な笑みを交わす。
***
王宮の裏手の闘技場に立つ。
正装から、いつものパーカーに着替えられて本望だ。
「いや、すまんな!」
どこから聞きつけたのか知らないが、お祭り騒ぎだ。
ユミナたちは特等席を用意されたものの、一般の観客で満員である。
「手を抜く気も、花を持たせる気も、ないですからね?」
「ほほう。それは本望だ。」
両手で木剣を構える。
木でできた剣と盾を渡してきたが、盾は断わった。
さて、
正装から着替えていてわかったが、筋肉がすごい。
凄まじい修練を積んできたのだろう。
「勝負は、どちらかが致命傷になりうる打撃を受けるか、あるいは自ら負けを認めるまで。魔法使用も可、ただし本体への直接的な攻撃魔法の使用は禁止とする。」
審判がそう告げる。
3属性同時発動による『強化』は、隙ができるかどうかだな。
「双方よろしいか?」
「いつでも。」
「始めてよい。」
「では、始め!」
その声と同時に、地面を勢いよく蹴る。
「ぐっ、重いな。」
両手剣の振り下ろし。
その一撃を盾で防がれたが、ギリギリだったようだ。
後退し、右手の片手剣の斬り上げを避ける。
「いやはや、危なかったぞ。」
そう言いつつ、盾を捨てる。
1対1なら、攻撃こそ最大の防御だとか思っていそうだしな。
気が合いそうだ。
「いい反応でしたね。」
観客の大歓声が巻き起こる。
応援する声も多く、王の人気が高いことがわかる。
完全にアウェイだ。
「さて、様子見をする必要はなさそうだ。『アクセル』!!」
「『強化』!!」
高速戦闘で剣を打ち合わせる。
個人魔法の使い方が上手い。
本来、あまり燃費の良くない魔法だ。
俺と違って常に発動するのではなく、瞬間的に発動している。
死角からの一撃に、なんとか喰らいつく。
「これも防ぐか!?」
もし俺が殺気に敏感でなかったら、一瞬で敗れていただろう。
全体的な能力アップとは違って、スピードに極振りしているので防戦一方になってきた。
レオン将軍並みの強さだ。
次期国王として名を上げる意味もこの決闘にはある。
しかしユミナが見ているので、カッコ悪いところは見せたくはない。
ていうか、剣士として敗けたくない!
衝撃を後退に利用して、魔力を籠める。
「『雷よ来たれ 我が身を憑代に』、モード『雷龍』!」
2属性の同時発動によるスピードアップ。
「うおおお!『アクセル』!!」
しかし、これでようやく互角のスピードだ。
互いに、魔力を湯水のように消費していく。
ーーー慢心していた。
誰よりも速く動けるのだと思っていた。
そうだ、まだまだ雷速には届いていないのだ。
もっとつよく、もっと速く、
限界を超えていくーーー
「見事。」
「後味の悪い決着ですけどね。」
全力を尽くした剣戟だった。
すでに悲鳴を上げていた木の剣が同時に粉々になる。
剣士として、武器の性能を言い訳にはできない。
「この勝負、引き分け!!」
俺はまだまだ強くなれる。
たぶんミスミド王も同じことを思っているだろう。