異世界は後輩転生者のスマートフォンとともに。   作:ヒラメもち

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水晶の魔物、そして懺悔

銃、自転車、冷やし中華もどき。

望月の知識チートは留まることを知らない。

 

それ以外の変化は、レネという孤児を住まわせることになったくらいだ。

 

 

 

ミスミド王国から『ゲート』でサクッと帰還して2週間ほど経った頃。

 

リーンがミスミド王国からやってきた。

もちろんポーラも膝の上で抱きかかえられている。

 

「まさかこっちに来るとはな。久しぶり。」

 

「ええ。そうね、久しぶりよね。」

 

リーンは城同士を結ぶ『鏡』でサクッと来たらしい。

そう度々『ゲート』使ってもらったり、龍化して飛んでミスミド王国に向かうわけにはいかない。

 

「はじめまして。ユミナと申します。」

 

「リーンよ。こっちの子はポーラ。よろしく、ユミナ。」

 

扉の開く音がした。

望月も遅れて部屋に入ってくる。

 

「トウヤも久しぶりね。」

 

「リーンじゃないか。なんでここに?」

 

「ちょっと調べ物にね。あとシャルロッテにお仕置きをしてきたの。」

 

「えっと、シャルロッテさんは無事なのでしょうか?」

 

苦笑いしつつ、安否を尋ねる。

 

「たぶん無事よ。気になるの?」

 

「ユミナの師匠らしい。」

 

「それも初耳ね。またひっぱたいてこないと。」

 

「程々にな。」

 

シャルロッテさんの師匠はスパルタだったらしい。

 

 

「さて、本題に入るわ。貴方たちが倒した『水晶の魔物』について聞きたいの。」

 

「「なんだって?」」

 

廃城の地下から現れたコオロギのことだろう。

思わず、今はもう傷口のない右肩を手で抑えてしまう。

 

「ミスミドにも出たのよ。始まりは、宙にできた小さな亀裂だったらしいわ。」

 

「そこから出てきたの?」

 

「そうね。大きくなった亀裂から『水晶の魔物』が現れ、1つの村が壊滅したわ。」

 

「そうか。」

 

儚げに紅茶に口をつけた。

その惨状を見た時の心情は、少しは察することができた。

 

ユミナも俯き、膝の上の手をギュっと握っている。

 

「俺たちが戦ったヤツは、物理耐性、魔法耐性、再生や伸縮能力持ちだ。」

 

「そんな魔物が……」

 

「こちらと同じだわ。」

 

「倒せたの?」

 

「なんとか、ね。土魔法で岩をぶつけたの。犠牲になった人は多かったけれど。」

 

魔法で引き起こした事象なら通じる。

その土魔法が頭部の赤いコアの破壊まで及んだのだろう。

 

「俺たちは、望月の個人魔法だ。コア自体を引っこ抜いた感じだ。」

 

「そうね。『アポーツ』は有効だわ。」

 

リーンの表情が陰る。

しかしそれは一瞬のことだった。

 

「そうだったのね。そうそう、シャルロッテに吐かせたわよ。貴方、無属性魔法全て使えるらしいわね?」

 

「あー、なんと言いますか、あまりバラさないでいただけると…」

 

しつけに耐えられなかったシャルロッテさんのせいでもあるが、まさか望月自身がそういうことを言うとは思わなかった。また少し俺たちの苦労が報われた気がする。

 

「そういうことにしてあげるわ。そうそう、こいつよ。」

 

ポケットから出した紙には、『水晶の魔物』が描かれている。

コオロギに対して、こいつは蛇だ。

 

望月が思い出しながら紙に描いて見せた。

 

 

「昔、私がまだ小さかった頃、一族の長老から聞いたお話があってね。どこからともなく現れた『フレイズ』という名の悪魔が、この世界を滅ぼしかけたとか。」

 

「その『フレイズ』とやらが、こいつら?」

 

「確証はないわ。長老もお伽噺と言っていたから。」

 

「ま、僕たちだけで考えても仕方がないか。なるべくなら二度と会いたくない類の奴等だけど、また現れたら叩くだけだな。」

 

「そうね。もう倒す方法はわかっているのだから。」

 

「軍やギルドには俺から報告しておく。」

 

廃城の遺跡特有の魔物かと思っていたのだ。

後手に回ってしまったし、急いで周知させるべきだ。

 

混乱を招きかねないが、その『水晶の魔物』を国民が見かけたらすぐに討伐に行くことができるようにしておきたい。

 

もし、救援に迎えていたのなら、、

 

「そう、助かるわ。」

 

ここで一息つく。

重い話だったが、その脅威がこれで終わる気はしない。

 

少し普段と違う紅茶の味にほっこりする。

俺よりは断然上手く淹れられているな。

 

「ところで私、オリガの代わりに今度ミスミド大使としてこの国に滞在することになったのよ。よろしくね。」

 

「それなら、会いやすくなるな。」

 

「ふふっ、そうね。」

 

「あの、シャルロッテさんのことは、あまり……」

 

「あの子次第ね。それとトウヤ、あなた『ゲート』はもう使えるのでしょう?」

 

「使えるよ。一度行ったところにしか跳べないのが難点だけどね。」

 

「それなら、無属性魔法『リコール』と組み合わせなさい。 他人の心を読み取って記憶を回収する魔法よ。」

 

シャルロッテさんの師匠であることは伊達ではないらしい。

ここにいる誰よりも魔法を使いこなすだろう。

 

「貴方に連れて行ってもらいたいところがあるのよ。その場所にある古代遺跡から、手に入れたい物があってね。」

 

「よくわかんないけど……どこに?」

 

「遥か東方、東の果て。神国イーシェン。」

 

「イーシェン?」

 

「確か、ヤエさんの故郷ですよね。」

 

「それは都合がいいわね。」

 

「いや、そうなんだけどね。」

 

「接触には口づけが一番良いわよ。」

「望月、さっさと行ってこい。男は度胸だ。」

 

リーンとは気が合いそうだ。

 

「ええっ!?」

 

年相応に顔を赤くしている。

まだまだ若いな。

 

「冗談よ。額を近づけたらいいはずよ。明日行くからそれまでにやっておきなさい。」

 

「う、うん。そうするよ。」

 

渋々、望月が部屋から出ていく。

かなり遠くにあるイーシェンまでサクッと行けるのだし、九重も顔を真っ赤にして喜ぶだろう。

 

 

 

「ちょっと、リーンと2人で話していいか?」

 

「……はい、わかりました。」

 

寂しそうに、

そして俺に任せるという意味も籠めて、微笑む。

 

ユミナにはポーラを抱きかかえて部屋から出てもらった。

そのポジションを譲ってやるのは今だけだ。

 

 

 

「次にあいつらが出たら、俺も力を貸す。」

 

「何を言っているのかしら?」

 

「慰めてるつもりだ。」

 

「それを先に言うのは、ちょっと卑怯な気がするけれど?……はぁ、まだ20年も生きていない子どもに見抜かれるなんてね。」

 

「ああ。だから、全部を理解してあげられない。それでも……」

 

「ちょっと肩借りるわよ。」

 

華奢な身体が、いまだ成長途中の俺の身体に包まれる。

 

 

潤んだ金色の瞳が見上げてくる。

 

「いいの? ユミナのことは。」

 

「ユミナも、リーンのことをよろしくってな。」

 

「そう。愛されているのね。」

 

その後、言葉を交わすことはなかった。

服を強く握りしめ、顔をうずめてくる。

 

これで少しでも気が楽になってくれると、うれしい。

 

 

 

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