異世界は後輩転生者のスマートフォンとともに。   作:ヒラメもち

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不信感、そして揺れる血

一晩が経った。

白虎に引き続き、望月はSSRの玄武を召喚して契約に成功した。

『黒曜』と『珊瑚』と名付けられた、蛇と亀である。

 

マスコット化した2頭の神獣によって古代神殿まで望月が到達、そして『ゲート』でここまで連れてこられた。

 

「つまり『バビロン』という空中に浮かぶ島を貴女たちの生みの親、レジーナ・バビロン博士が5000年以上も前に造った。それが今はバラバラになって世界中の空に漂っているというの?」

「左様でございまス。」

 

長々とした説明をリーンがまとめてくれた。

シルエスカ姉も九重もようやく思考を再開する。

 

かくいう、俺たちもいまだ半信半疑である。

もちろん、まだまだ質問したいことが山ほどある。

 

「あー、それで、ここって何か役割があるのか?」

 

いやもう、突然のことで頭が痛い。

 

「博士の趣味で造られた『庭園』でス。」

 

とりあえず、ここは『庭園』であって、その管理人がフランシェスカ。黄緑色の髪を持った美少女である。それぞれ役割を持った歴史的建造物とも呼べる施設に人工生命体がいるらしい。

 

『庭園』というよりは植物園だ。

その中には見たことのない植物もあって、種の保全的な意味合いがあるかもしれない。

 

まあ、単純にお茶会用の庭園かもしれないが。

 

「一体いくつ、このような浮き島があるんでござるか?」

 

「他には『図書館』、『研究所』、『格納庫』、『塔』、『城壁』、『工房』、『錬金棟』、『蔵』と当時は9つありましタたが、現在いくつ残っているのかわかりませン。」

 

『格納庫』とか絶対ヤバい武器がありそうだ。

戦闘機とか戦車とかミサイルとか。

 

いやもう、モビルスーツがあってもおかしくはない。

 

「私は『図書館』に惹かれるわね。」

 

「そうですね。5000年前の本には興味があります。」

 

ユミナやリーンはそこに反応したようだ。

 

『水晶の魔物』についての情報があるかもしれない。

他にも、多くの消された歴史が残されていそうだ。

 

ていうか、5000年も経っているのに、日本より発展していないのは魔法があるからなのだろうか。

 

 

「で、その『図書館』には行けないのか?」

 

各施設がワープゲートで繋がっていてもおかしくはないだろう。

 

「残念ながラ、姉妹とは現在リンクが絶たれていまス。」

 

「まあ、5000年だしな。」

 

「いエ、障壁のレベルが高く設定させていルだけでス。マスターが許可すれば『庭園』は変更できますガ?」

 

「いや、そのままでいいよ。」

 

望月が答えた。

つまりそういうことなのだろう。

 

「お前がマスターか。」

 

「そ、そうだね!」

「そうでス。」

 

望月が顔を赤くしている。

一体何をした。

 

「通信を阻害している障壁のレベルを下げるには、トウヤの命令が必要。でも冬夜は『空中庭園』のマスターでしかない、ってことね?」

 

「おっしゃる通りデ。」

 

「だから、結局は自分たちで地道に探すしかないな。」

 

「なるほどでござるよ。」

 

「そういうことよね!!」

 

「お姉ちゃん、本当にわかってる?」

 

それなりに理系科目を勉強してないと、理解はキツそうだ。

 

 

「それで、この後はどうしますか?」

 

ずっとこの場に留まっておくわけにもいかない。

 

「施設を探すべきなのは確かだ。だから地上に一旦戻る。どうだ?」

 

「うん。でも、海底遺跡のように苦労しそうだけどね。」

 

「まあな。」

 

『水晶の魔物』のこともある。

施設を探しておいて損はない。

 

秘匿性も高いようだし、望月以外の言うことには基本的に従わないだろうし。

 

 

「シェスカはどうする?」

 

「私はマスターと供にいたいと思いまス。おはよウからおやすみまデ。お風呂からベッドの中まデ」

 

リーン以外の女性陣の顔が真っ赤になる。

さすがにユミナと風呂に入ったことはない。

 

「あら。よかったじゃない、トウヤ。」

 

「責任はちゃんと取れよ。」

 

「何を言っているのかな!?」

 

 

結局、フランシェスカは望月の屋敷で暮らし始めた。

博士のおかげで露出魔であるらしいが、それは少しずつやめさせていけばいいだろう。

 

施設の探索。

そういう目的ができたことが大収穫だ。

 

 

 

****

 

 

扇風機、立体映像、温泉。

定期的に望月が知識チートするのが最近の悩みである。

 

どれも個人魔法を使ったものだ。

研究者気質というか、実践欲に飢えているというか、じっとしていられないというか、それとも故郷のことに執着しているのか。

 

案外、某博士とはよく似ているのかもしれない。

そんな博士が『未来視』で俺たちの行動を見て、メッセージを残したらしい。

 

件の『水晶の魔物』は、『フレイズ』。

それが5000年前の文明を一度リセットしたとのこと。

 

 

―――次々とフレイズが出現する可能性が高い

 

今できる対策は2つ。

俺自身が強くなることと、各施設を見つけること。

 

ミスミド王国と連携して、世界中の古代遺跡を探している。

ようやく今日、1つ見つかったのだ。

 

 

 

「望月、1つ見つかったぞ。 場所はサンドラ王国の南東にある、ラビ砂漠だ。」

 

「かつての調査なのだけどね。砂漠の中にあった古代遺跡に、六つの魔石が埋め込まれていた石柱があったそうよ。」

 

「ふーん、よかったね。」

 

朝食をゆっくりと食べつつ、そう告げた。

俺やリーンは、むっとしそうになるのを堪える。

 

もはや俺たちだけで行きたくなったが、博士と同じ7属性を持つ望月にしか封印は解くことはできないのだ。

 

「海の次は砂漠かよ……。あの博士、僕に嫌がらせしてるんじゃなかろうな……?」

 

「……そう簡単に見つかったら苦労しないしな。」

 

「それもそうか。」

 

「ああ。フレイズが出てくる前にできる限り探しておきたいんだ。」

 

「『図書館』でもあれば、詳しいことがわかるかもしれないわね。」

 

「うーん、そうだね。よしっ、行こうか。」

 

「酒池肉林、ウハウハですネ。」

 

「お前さんみたいなのがもう1人増えるのか……」

 

フランシェスカのように管理人がいる可能性は高い。

だからといって、面倒そうな顔はするのはムカつく。

 

 

各自準備を整えて、望月が『ゲート』を使った。

 

 

 

 

****

 

飛行艇として『庭園』を使っても、4時間ほどかかるらしい。

それでも、何日もかけて歩いて行くよりはマシである。

 

ユミナたちは庭園の隅の空き家を掃除している。

俺、リーンやポーラはというと、『庭園』にある機器をいじっていた。

 

5000年前のものとはいえ仕組みはわからない。

今は『庭園』の下の風景を呆然と見ている。

 

「さっきのことなんだけど。」

 

「……今までも何度かあった。やんわりとは指摘してきた。」

 

「そう。」

 

「転生してまだ1年も経っていない。本当にそれだけなんだろうか。」

 

「さあね。」

 

そう、それが俺の答えなのだ。

 

望月のことがわからなくなるときがある。

年相応な部分も確かにある。

 

平穏。

それを求めていることはわかるが、あくまで望月自身の価値観によるものだ。

 

 

「あら、遭難者かしら。」

 

リーンの声にはっとする。

どうやら思考の海に沈んでいたらしい。

 

「そうみたいだな。」

 

砂漠の中を10人ほどが歩いている。

ラクダも連れているが、何人か危険な状態だ。

 

「なにしてんの?」

 

「遭難者よ。」

 

望月がフランシェスカと様子を見に来た。

 

「遭難者なら助けないとマズいんじゃないか?」

 

「どうやって? 遭難者にこの『庭園』の存在を明かすの? もしあれが悪人やおたずねものだったら?」

 

「悪いが、発見したのも偶然なんだ。」

 

俺は正義の味方ではない。

ベルファスト国民ならともかく、ここはすでにサンドラ王国内だ。

 

フレイズの対策、今はそれが優先される。

1分すらも惜しい。

 

しかし、施設まで行くには望月さえいればいい。

 

「じゃあ、俺が……」

「急いだ方がイイかもしれませンよ。」

 

砂漠に棲む魔獣だろう。

牙が無数に生えた巨大なミミズだ。

 

「サンドクローラー、砂と一緒に獲物を飲み込む砂漠の魔獣だわ。」

 

「行ってくる!」

 

『ゲート』を使って、望月がさっさと行ってしまった。

同時にフランシェスカは『庭園』の移動を停める。

 

「行ってきなさい。まったくあなたも甘いわね。」

 

嬉しそうにリーンは微笑む。

俺個人として行こうとしていたのは、ばれていたようだ。

 

 

しかし、望月は人のために動いたことは間違いないのだろうが、どこか違和感があった。

 

 

 

「『龍化』。」

窓を開けて飛び降りつつ、銀龍と化す。

 

違和感を感じた。

―――理性を一瞬、失いそうだった

 

 

 

勢いよく降下し、止まって滞空する。

 

銃の弾丸に付与した『エクスプロージョン』ですでに満身創痍のようだ。

続いて、『アクアカッター』による水の斬撃で息絶えた。

 

「……心配いらないみたいだったな。」

 

ユミナを呼び出して、魔眼を使ってもらっている。

望月自身の屋敷で一度保護するために視てもらっているようだが、イラっとした。

 

 

しかし、あるものを見つけてしまう。

 

「やべぇ……」

 

空中に、避けるような切れ目だ。

『ヒビ』ともいうだろうか。

 

 

リーンの話の通りなら……

 

 

 

 

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