異世界は後輩転生者のスマートフォンとともに。 作:ヒラメもち
「『炎よ来たれ 雷よ来たれ 我が身を憑代に』」
各魔力を強化に転換し、力として纏う。龍の身体からは熱を発し、かなりの負担となっていることは間違いない。『龍化』に加えて、3属性魔法の同時発動だ。
気を抜けば、各魔法が霧散してしまいそうな状態である。
「こいよ。」
全長30mものフレイズは、俺の全長に匹敵する。
水晶の魔物の特徴はそのままに、さらにエイのようなヒレが特徴的だ。
仮にマンタと呼ぼう。
『イッキさん!!』
「ユミナ、フレイズだ。しかもコアが2つ!」
ユミナからの念話に、そう返す。
2つのコアの同時破壊がベストだろう。
片方のコアが残っていれば、コアが復活なんてこともありうる。コオロギよりもはるかに強力な個体であるだろう。魔法無効、物理耐性、さらに再生能力もあるはずだ。たぶん『アポーツ』を使えるようなコアの大きさではない。
「っ!?」
咄嗟に避ける。
先にマンタが動き始めた。
コアが点滅し、高威力の光弾を発射した。
光魔法に近いが、この世界の魔力とは違った感じなので、その攻撃の兆候に気づくのは至難の業だろう。光弾が砂漠の上に当たったとき、轟音を鳴らして破裂した。耐魔力耐性のある俺でもどれほどのダメージを負うかどうか。
しかし、攻撃後にそれなりの隙はできるようだ。
近づきつつ、さらに魔力を籠める。
さらなる魔法の組み合わせに、身体は悲鳴を上げ、頭痛も生じる。
「『雷炎剣』!」
剣と化した尾は硬い外殻に阻まれてしまう。厳密に言えば、減り込みはしたけれども、切断するまでには至っていない。身体を捻って弾き返されるとすぐに、マンタにできた傷は再生し始めている。
―――俺にできる最大の技だった
意識を切り替え、後退する。
光弾が絶えず襲ってくる、
近づくことすらままならない。
「あいつら!?」
氷魔法によってできた大きな氷がマンタにぶつけられた。
しかし魔法による事象なら吸収されないとはいえ、シルエスカ妹の魔法に全く動じてない。
マンタが急に方向を変える。
尾は地上へ向けられ、攻撃の雨を降らす。コオロギのような脚の伸縮ではない。針と化した水晶を打ち出すという遠距離攻撃だ。衝撃による砂煙で辺り一帯は見えなくなってしまう。
狙われたシルエスカ姉妹は、身体能力を上昇させた望月によってちゃんと救われていた。
「覚悟ォォッ!!」
九重による『ゲート』による近接攻撃。
マンタに比べて、ずっと細く短い刀は食い込んだだけだ。
九重は再び『ゲート』で無事に回収される。
俺も防戦一方だ。
避けることに集中するしかない。
『イッキさん、今からリーンさんの言うことを伝えます。』
「なんだ?」
『土属性の魔力、これをイッキさんに送ります。それを『強化』してください。』
無茶なことを言う。
元々持っている、風と炎の1つずつでさえコントロールが大変なのだ。
『私もリーンさんも、信じていますから。』
そんなこと言われたら、やるしかないよな。
「いいぜ、2人とも頼んだ。」
3属性同時発動を解く。
――『トランスファー』――
――『土よ来たれ、我らが龍を憑代に』――
大切な2人の声が聴こえる。
初めて感じるタイプの魔力、それが俺に流れ込んでくる。
『強化』していけば、新たな水が溢れてくる感じ。
これは、初めて魔法を使ったときと同じ感覚だ。
受け入れられないものを受け入れて、あがいた。そもそも俺には無属性魔法しかなかったのかもしれない。平凡な日本人な俺にとって魔力なんて未知のもので、使うことすら自分なりに試行錯誤してきた。攻撃力を求めて火の魔力を、速さを求めて風の魔力を、身体の奥から引き出した。転生してからずいぶんと俺は俺に救われている。
この才能があるなら、俺はもっともっと強くなれる。
もう、失いたくはないから。
前世の繋がり、全てを捨ててここまでやってきた。
もっと硬く、もっと強く。今はもう独りじゃないから。
「『炎よ来たれ 我が身を憑代に』」
求めるのは威力だけだ。
炎魔法と『強化』、そして土魔法を重ね合わせる。
魔法の反発による痛み、マンタの光弾が身体に当たって痛み、それらを伴うとしても、この一撃を止めるつもりはない。
さらに速度を上げる。
「『炎龍の撃鉄』!!」
硬質化した龍の体当たりがマンタを貫く。
身体を翻して、警戒は解かない。
「やったか……」
再生する気配はない。
2つのコアもろともあの水晶の身体は風に吹かれて、塵となっていく。
俺は魔力を使いきったのだろう。
龍化も解けて、浮遊感を感じた。
召喚魔法によって引き寄せられた感覚、これは2度目だ。
目の前に大好きな2人が見えた。
安心して、意識を失った。