異世界は後輩転生者のスマートフォンとともに。 作:ヒラメもち
レグルス帝国は帝都の復興でいまだ大忙しらしい。
哀しみを乗り越え、平和な国への希望を持って尽力している。
数日で体制を立て直したため、周囲の国が動くことはなかった。また、独立に動いていた辺境や国境の軍も新体制に従っているらしい。軍国主義の家もまだまだ多いが、ベルファストとミスミド、リーフリースの同盟が締結されていることで力をつけることにしているようだ。
ベルファスト側としては、一件落着したわけだ。
だから、次代の国主としてもパーティーメンバーとしても、望月の様子を見にきた。
その予定地は、建物などは一つもなく、森や山に囲まれている場所らしい。自然溢れる場所なのだが、魔物が多くて、ベルファストとレグルスの国境の上にあって、そのために開発を行っていない土地らしい。
とりあえずは望月が『マップ兵器』で、魔物を駆除したらしい。
「『工房』を使って城を建てるから、豊富な材料が欲しい、というわけね。」
リーンも、望月の話を聞いてやれやれ顔である。
国造りのためにやることはまだまだ多く、まずは城を建てるらしい。
「城の設計図はできたんだけどね。材料が必要なんだ。」
「材料さえあれば……、できるんですね。」
ユミナも苦笑いである。
城なんてものは、公共事業として年単位かけて建てるものだ。
「……まあ、無から有を生み出せるわけはないしな。」
ていうか、公国の領地って東京より小さいよな。
それって、役割も含めて国境にある砦だ。
そもそも、国民がほとんどいない。
「今向かっているのは、使われていない城砦ですわ。それを使えば」
「完成するのじゃ!」
ルーシア姫も、スゥシィも、すでにパーティーメンバーとして馴染めているようだ。アクティブな女の子なので、外の世界にはワクワクしているらしい。神獣がいるから魔物は寄ってこないし、それにまだ戦闘には参加できないだろう。
2人とも少しずつ慣れていくしかない。
ユミナも、かつてはそうだったたし。
「あはは、3日くらいはかかるって言っていたけどね。」
それかなり早いよ?
「……幽霊、本当に出るん、でしょうか?」
「こ、怖いこと言わないでよ~」
シルエスカ妹は興味津々だが、姉はそうでもないらしい。
ちゃんと昼に来たのだから、マシだろう。
「斬れるで、こざろうか。」
暗闇が怖い侍も、覚悟を決めようと必死である。
そういう階段話は、オエドでも流行していそうだ。
「リーン、幽霊っているのか?」
「そういうのは会ったことはないわよ。アストラル系の魔物は別だけど。」
「た、倒せるんですか?」
「光魔法があれば、な。ちゃんと守ってやるよ。」
「はい!」
「あら、私もお願いしようかしら。」
「光魔法使えるし、俺よりずっと上手だろ。まあ、前衛は任せろ。」
「頼りになるわね。」
パーカーのフードに収まっているポーラが後頭部を撫でてくれる。
「おっ、あの城か。」
廃城だ。
窓ガラスはほとんど割れていて、人が住んでいた形跡などない。
以前コオロギと戦った廃城と違って、素材にはなるだろう。
「もう100年ほど経つらしいですわ。」
「盗賊とかいるのかな。」
「いえ、複数の領主が呪いに遭いましたので、根城にはできないかと。」
「それって、出るじゃない!」
「おもしろそうじゃな!」
「斬れる、でござろうか。」
「どうして、呪いが……?」
「妻を亡くされた、かつての領主が『死者蘇生』の研究を行っていたそうで。」
「ずいぶんと、無茶苦茶ね。」
この世界の個人魔法でも、蘇生はできない。
神にしか、理を捻じ曲げることはできない。
「はい。城に務められていた方はもちろん、領民も犠牲になったらしいですわ。」
「うぅ、聞きたくなかった……」
目の前にその城があるのだから、シルエスカ姉や九重の震えは悪化している。
「……ここで待つか?」
これ、俺が言うのかよ。
ちゃんと待っていたんだけどな。
「いや、克服するでござる!」
「そうね、足手纏いにはならないわよ。」
「じゃあ、分かれて見回ろう。なにかあったら、琥珀や珊瑚たちを通して連絡してね。」
中に盗賊や魔物がいるまま、資材としては持って行きたくないしな。
「リンゼとスゥとルー、それに琥珀は1階部分。」
「じゃあ、俺たちは地下行ってくるぞ。」
「うん。珊瑚と黒曜と、八重、エルゼは僕と上の階を回ろう。」
パーティーリーダーのおかげで方針は決まった。
ガンガンいこうぜ、な気質があるメンバーが多い。俺も含めて。
「ほ、ほら! いくわよ、トウヤ!」
「ま、待つでござる、エルゼ殿!」
「もう、危ないよー」
お化け屋敷に来たテンションな彼ら彼女らを見届けて、俺たちも中に入る。
城の中には光源はないが、外から入ってくる日光がある。
しかし俺と違って、ユミナやリーンは見えづらいだろう。
片手に、火を灯して地下への階段を探す。
「壊さないでね?」
「なぜバレた。」
地下への直通の穴を開けようとしただけだ。
「それにしても、魔物もいませんね。」
「そうだな。アストラル系はいるかと思ったんだが……おっ」
開けっぱなしのドアの奥に、地下への階段が見えた。
「これは、なかなか……」
「イッキさん。」
俺たちの表情が歪む。
近づいてきたユミナの手をそっと握り返す。
降りていけば多くの地下牢があって、『惨状』が残されているだけだ。彼ら彼女らがアンデッド化することはない。その表情はもはやわからないけれど、成り果てた姿で苦しみ続けている。
ユミナやリーンは膝をつき両手を組む。
俺はというと、手のひらを合わせる。
「南無阿弥陀仏……悪いが、これ以外の念仏は知らないんだ。」
俺を真似て、
ポーラも、ぽんっと両手を合わせた。