ベルファストとレグルス帝国、それぞれの城を参考にして3日でサクッとできたのが、ブリュンヒルデ公国の城だ。城が完成したと同時に1つの国家として樹立した。しかし個人としては領地が広大であるとはいえ、まだ国民は多くはない。また、望月の家臣となっている者は、使用人や武術方面に偏っている。
少しずつ新国家へ人が集まってきているが、政治体制などはまだまだ整っていない。
「『グラビティ』!」
重力魔法を唱え、ベルファスト公国公王が大剣を振り下ろせば、水晶の脚はいとも簡単に砕ける。蜘蛛のようなフレイズであって、コアは3つ。つまりマンタと同等の強さなのだが、俺たちが以前より強くなっているし、対策もすでに分かっている。
炎と土の魔法で『強化』している両手剣で、縦に並んだコアを斬り裂いた。
「あれがトウヤ様たちの力なのですね。」
「すごいのじゃ!」
「相変わらず出鱈目な強さでござるな。」
人外扱いされつつも、望月は5人の嫁に囲まれる。女性陣同士はかなり仲がいいのだから、取り合いとなることはないし、安心して見ていられる。パーティー内でギスギスはしてほしくない。
「お疲れ様。」
「他にフレイズはいないみたいですよ。」
警戒を解いてなかった俺も、剣を鞘に収めた。そして、ポーラが器用によじ登ってきてパーカーのフードに入ってきた。この場所が気に入っているらしいが、戦闘中には降りてくれる。
リーンは散らばった水晶の破片を慎重に拾って、ユミナと一緒に観察を始める。
「これ、硬そうには見えないわね。」
「どうですか?」
指に挟んで力を籠めれば、容易く割れる。
つまり、あの防御力の高さの理由が、材質の強度によるものではないということだ。
「そうだわ。イッキ、魔力を流してみて?」
「なるほどな。」
新たに拾った大きめの破片に魔力を纏わせて放り投げ、剣で叩けば甲高い音が鳴った。
「これよ! この水晶は魔石に似た性質を持っているのよ。魔力伝導率がいいし、術式転換効率が最高だわ!」
「よく考えれば、イッキさんがいつもやっていたことですね。」
師匠と弟子で生き生きと魔法研究を繰り広げている。
「あ、あのー?」
「ど、どういうこと……?」
「魔力を通しやすくて保存しやすくて、硬度が高まりやすいということよ。」
「もし、それで武器を作った、なら。」
「拙者たちも、ふれいずを斬ることができるかもしれんのでござるな!」
「まあ、魔力を物質に流すということは、それなりの魔法の使い手でないといけないけどね。」
望月が『ストレージ』で破片を回収し始める。
うきうきしながら、運用方法を考えているのだろう。
「マヲゴワ、ノエサツノネクモウノネコ、ノネク?」
「……なんだって?」
「『あの魔物を、狩ってくれたのは、お前か』って。」
ここ大樹海では、樹木が鬱蒼としていて湿度が高い。よって、褐色少女の服装は環境に適しているものとなっている。布面積がとにかく小さくて、いわゆるアマゾネスが思い浮かぶ。女性の身体を凝視するのは嫁たちが怖いし、それにフレイズによる惨状を見ればそんな気も起きない。
「ワタク、パム!」
勢いよく飛びこんできたので、躱す。
よそ見していたとはいえ、彼女の行動は予想していた。
「さすがの危険察知能力ね。」
「どういうことなのでしょう?」
「ラウリ族は、女性のみの戦闘民族なの。強い男を連れてきて、強い娘を産ませてもらうそうよ。そうそう、パムは族長の孫らしいわよ。」
「だ、だめですからね?」
そういう文化は、否定をしないが肯定もしない。そもそもの目的はフレイズの討伐なのだから、これ以上ここに留まる理由はない。復興を手伝ってもいいが、彼女たちの目が光っていて涎を垂らしているのだから、将来のためにも俺たちは協力できない。
「げ、『ゲート』!!」