異世界は後輩転生者のスマートフォンとともに。 作:ヒラメもち
裏路地から出て、人で賑わう街を歩いていく。
行き先は貴族や騎士が御用達の場所であるし、王都の中心に向かうことになる。
「軽装の方がいいか? 鎧って動きづらいし。」
「うん。やっぱり機動力を重視するからね。」
ていうか、その私服ですでに戦闘してそう。
王都まで来たのにまだチュートリアル終わってなかったんですね。
「ちょっと待って。迷子かもしれない。」
「は? ちょ、どこ行くんだ。」
そう言い残して狐の獣人の女の子の所へ向かっていった。
彼と女の子のやり取りに目を向ける人が多い。心配そうに見守ってくれる人もちゃんといるが、ヒソヒソと憶測を述べる者や獣人に対して顔をしかめる者がいる。俺は辺りを見回して騎士を探すが運悪く見つかっていない。女の子を助けたいという彼の良心はわかるが、本質を見れない奴らがこの群衆の中にいるのだ。
手を繋いで女の子の言う待ち合わせの場所へスマホを片手に向かっていく。
俺はというと、周囲に警戒しつつ彼らの後ろを付いていく。
魔法屋の前。
無事に保護者の方に出会えたようで一安心した。
「なぁ、望月。もう少し警戒心を持った方がいいぞ?」
「え?」
「秘密が知れることで、どんなことが起きるかわからないし。」
「心配しすぎじゃないかな。」
杞憂だといいんだがな。
そんなに世界は甘くはない。
まあ、まだ転生したばかりだし、そういうことに遭ったことがないのだろう。
再び目的地に向かって歩き出す。
「そういえば、そのパーカーって魔力を纏っているの?」
「ああ。魔力付与した防具だからな。例えば、耐火性能がある。限られた職人しか作れないし、あまりそういう防具は手に入らないんだが、今から行く店には豊富にある。それなりの額はするけど奢るつもりだ。」
ていうか、転生したばかりでもう魔力を感じることができるのかよ。
「そうなのか。」
顎に手を当て、何かを考えこんでいる。
思慮深い奴で、そういう癖なのかもしれない。
「あー、オーダーもできるがどうする?」
「うーん、待たせている娘たちがいるし、できればすぐに買いたいな。」
「はいよ。 そろそろ着くぞ。」
冒険者仲間とは別行動しているのだろう。
目的の場所が見えてきた。
「いらっしゃいませ、ベルクトへようこそ。あら、イッキ様お久しゅうございます。」
最もレベルの高い防具屋の扉を開けば、顔見知りの店員で挨拶してくれる。
「様づけはやめてくれって。」
「いえ、ユミナ様のご紹介ですので。」
貴族や名のある騎士しか入れないような店に顔パスできるのはユミナのおかげだ。
だからといって、平民である俺にかしこまられるのはむず痒い。
ちなみにこの店員さんにも敬語は似合わないって言われた。
「それで本日はどのようなご用件でしょうか?」
「連れの防具を見させてほしい。魔力付与の軽装で。」
「はい。こちらへどうぞ。」
店の奥には多種多様な商品が展示されている。
それぞれラベルがついていて、魔力付与が一覧化されている。
筋力増加や魔法反射など、個人魔法に比べれば弱いものだが、それらを使えない者からすれば重宝される。
ラベルを手に取って読みながら、1つ1つ確認している。
読み書きもすでにできるようだ。
「これがいいかな。」
襟と袖にファーが付いた白いロングコートに目をつけたようだ。
「あのー、こちらには少々問題がありまして。」
俺も望月も首を軽く傾げて、続きを促す。
「耐刃、耐熱、耐寒、耐撃、加えて非常に高い攻撃魔法に対する耐魔の付与が施されております。しかし耐魔の効果は、装備されたその方の適性にしか発揮しないのでございます。」
例えば、俺なら火魔法や雷魔法に耐性が生じる。
望月の魔法適正が何かはわからない。
属性限定とはいえ、耐魔は魅力的ではないだろうか。
「その、逆に持っていない適性のダメージは倍加するといった有様で……」
「は? いや、極端だな。」
倍ってヤバくね。
場合によっては即死コースだ。
「申し訳ございません。」
「いやこっちこそ難癖つけて悪いな。」
「それなら問題ありません。」
望月がさも当然のように、そう告げる。
「「は?」」
店員さんと声が被った。
望月は『イマジンブレイカー』でも持っているんですかね。
試着して、サイズも合ったようだしそのまま購入する。
最後まで遠慮していたが、金貨7枚を支払った。
金貨1枚分巻けてくれるとか、ユミナさまさまですね。
1枚で10万円ほどだ。
ちなみに基本的に世界は共通通貨である。
旅をしていた時ずいぶんと助けられた。
……貨幣統一って、そう簡単じゃないんだけどな。