異世界は後輩転生者のスマートフォンとともに。   作:ヒラメもち

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忠告、そして解決

次にやってきたのは魔法屋。

 

獣人の女の子を送り届けた場所で、また戻ってきたのだ。

魔具も売っているが、やはり魔道書が多い。

 

ちなみに、やはり魔法は自分勝手なイメージで扱ったり、魔力を水のように垂れ流して使うものではないらしい。無属性以外の魔法は、その魔道書から呪文を覚え、練習を繰り返して自分の物にしていく。そういう傾向は個人的にあまり好かないので、ここ数年で教科書的な魔法以外も取得した。魔法とはMPを消費した必殺技であると思っているのはゲーマー思考だと思う。自分に合った自由な発想こそが大切ではないか。

 

ていうか、一般的に周知されているものは遠距離攻撃魔法が多いので、隙を作りたくないソロにはキツい。これが最大の理由。

 

 

 

「なんで無属性魔法なんだ? 確かに思いつく可能性もあるから重宝されるが、百科事典みたいなものなんだが。」

 

店に入った瞬間にそれを立ち読みし始めた。

コンビニじゃないんだから、立ち読みはあまりいい印象は抱かれない。

 

「言ってなかったけど、僕は多分全部の無属性魔法が使えるみたいなんだ。」

 

「は?」

 

目を見開く。

うっそだろ。

 

個人魔法は似たような効果はあれど、同じものを扱う人はほとんどいない。魔法辞典も使い手のいる魔法を纏めたものにすぎない。有用な個人魔法を持つ者はすぐに国に取り立てられる。

 

つまり呆気なくバラしたその情報は、危険すぎた。

 

「ちょっと、こっちこい!」

 

「え?」

 

また裏路地まで戻ってくるとは思わなかった。

まずはヤバすぎることを懇切丁寧に説明し、もっと警戒心を持てと再度忠告する。

 

 

しかし結果としてはあまり真剣になっていないし、使えるものはどんどん使っていこうという気質なのだろう。どんな敵でも返り討ちにできるとでも思っているのか。

 

 

いや、それよりも俺たちにとっての希望が見えたのだ。

はやる気持ちはもう抑えられない。

 

 

 

「頼みがある。『リカバリー』っていう個人魔法があるんだ。それを使ってある女性の病気を治してほしい。俺にできることならなんだってやるし、場合によっては国王にも頭を下げる! だから……」

 

 

虫のいい話だろう。

彼の才能を知ったことで、俺自身が必死になっている。

 

本末転倒だ。

 

だが俺の評価なんて今はどうでもいい。

このチャンスを必ず物にしなければならない。

 

 

「えーと、それってもしかしてスゥのお母さんのこと?」

 

「は? ……いや、そうなんだが。」

 

頭をスッと上げる。

どうしてユミナの従妹のスウシィの名が出るのだ。

 

 

「えっと、王都に来る途中で魔物に襲われていたスゥに会ったんだ。」

 

「マジか。」

 

知らない間に、知り合いが命の危機に遭っていた。

そのことについても詳しく聞きたいが、今は堪える。

 

 

「で、そのまま護衛を頼まれて、屋敷に招待された矢先に、目の見えないらしいスゥのお母さんを教えてもらった『リカバリー』で治したんだ。」

 

「そ、そうか。救えた、のか…」

 

全身の力が一気に抜けることを感じた。

ここ数年、俺たちを悩ませていたことが意図せず解消されたのだ。

 

 

「うーん、そういうことになるのかな。」

 

あまり実感はないようだ。

本人的には、教えてもらった『リカバリー』を使ったにすぎないのかもしれない。

 

 

「いや、スウシィも助けてくれたみたいだし、マジでありがとう。」

 

今度はお礼を述べるために頭を下げる。

 

 

「う、うん。どういたしまして。」

 

かつてユミナがそうだったように、スゥシィも次第に治療法を探し回るようになっていた。その過程で魔物に襲われてしまったのだろう。護衛もいたはずだし、あいつらが無事かどうかも一刻も早く確認したい。

 

「じゃあ、俺は会いに行くから。 また何か力になれることがあったらスゥシィたちを通してでも呼んでくれ。」

 

「うん、またね。」

 

 

 

『強化』の魔法を使って、貴族の街を駆ける。

お昼時であるし、道はある程度空いていることが幸いだ。

 

 

 

 

屋敷の前には見覚えのある馬車が止まっていて、少女が足早に屋敷に向かっている。

 

「ユミナ! 聞いたか!?」

 

「イッキさん!」

 

久しぶりに会ったユミナに追いつき、並走する。

涙ぐむ使用人の方たちを横目に、2人して飛び込むように屋敷の1室に入る。

 

 

 

「よかっ…た…」

 

スゥシィにもケガはない。

スゥシィの顔を目に焼きつけるエレンさん、そして2人を抱きかかえるアルフレッドさんがいた。

 

 

「ああ、そうだな。」

 

口に両手を当て、涙ぐむユミナの背中を支える。

それが赦される行動かどうかなど、気にする余裕はなかった。

 

俺も久しく流していなかった涙を流していた。

 

 

 

 

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