3時限目の数学も4時限目の現代国語も、2時限目と同様の理由で自習となった。俺を見下したり、軽蔑したり、霧島を過大評価したりはすれど、流石Aクラスだ。自習といえど、授業中のため、私語はほとんど聞こえない。あったとしても、他人の勉強の邪魔をするような大声ではなく、ヒソヒソ話程度の声量だが。
そんな感じで、今は昼休みだ。俺は教室を離れ、校舎裏へと向かった。放課後なんかは、運動部が部室棟へ向かうために通ったり、告白する時に使われたりもする場所だが、さすがに昼は、誰も来ないようだ。
去年入学してから数週間後くらいから、よくここで昼食を食べているため、その辺は詳しい。特別なイベントと言ったら、たまに、俺と同じ中学を卒業したという、用務員のおっちゃんが草刈りに来たり、そのついでに駄弁っていったり、期末試験が終わった頃になると、昼でも告白スポットになることもあったから、偶然その現場に居合わせちゃったり、なんてこともあった。
けど、今日は進級初日だ。用務員のおっちゃんが来ることはあっても、こんな日に告白するような輩はいないだろう。多分、きっと。そういう訳で、ゆっくりのんびりご飯を食べつつ、午後の授業(どうせ、自習だと思うが)に向けて英気を養っていこうと思っていた。
零次「………………で?何故ついて来た?」
奴らがいなければ。今俺は、αクラス(真倉を除く)のメンバーと一緒に昼食をとっている。今の時間帯、ここにいるのは、大抵俺一人か、近衛や用務員のおっちゃんが来て最大3人なので、これだけの人数が校舎裏に集まるのは極めて異常な事だろう。
美穂「何故って……、その、代表が教室を出て行くので、学食に行ったのかな、と思って………………。」
佐藤の話に耳を傾けつつ、口の中にから揚げを放り込む。衣はベチャッとしているが、中はジューシーだ。………と言っても、冷凍食品だが。
幽也「…………僕は………………ただ………………、零次と一緒に…………食べたかっただけ………………。そういう………………気分………………だったから………………。………………ダメ………………だったかな………………。」
次に影山が口を開く。ゆっくり、細々とだが、彼なりの主張をする。俺は白飯を食べつつ、彼の言葉を拾った。
零次「そうか………………。ハァ………………。」
秋希「どうしたの?零次。」
利光「大丈夫かい?」
零次「大丈夫だ…………。ただ、去年はここで一人でいることが多かったからな、昼休みは。」
愛子「そうなんだ。友達とかいなかったの?」
…………その質問はどうなんだ、工藤。俺がもう少し短気な性格だったら、殴り飛ばすところだったぞ?
零次「………………………逆に聞こうか。あのAクラスの様子を見て、俺が友達を作れるとでも?」
愛子「そ、それもそうだね………。」
零次「去年から、俺に対して変な因縁だとか、言い掛かりとかつけてくる奴が多かったんだよ。本当に進学校なのか疑うほどな。おかげで、学食も安心して使えやしねぇ。」
秋希「あ~、あれね?確かに、あの事件は酷かった。」
二個目のから揚げを食べつつ、あの時のことを思い出す。本当に腹が立つ事件だ。あの時突っかかってきた奴らもそうだが、今は別の学校に勤務している山口先生のことも、本当は思い出したくもないくらい。
利光「どういうことだい?零次だって、この学校の一員だ。学食を使う権利はあるはずだよ。」
零次「ああそうだ。だが、去年の春頃、だったか?当時の3年の先輩が変な言いがかりをつけてきたんだ。確か、『ここは、俺達みたいな高尚で、順風満帆な将来を約束されたエリートのためにある場所だ。お前みたいな1年のクズが気軽に使っていい場所じゃない。』みたいなことをな。」
利光「それは酷いね………………。」
美穂「そうですよ。私の友達、今年はEクラスなんですけど、そんなこと言ってくる人はいませんでしたよ。」
零次「まあ、俺の場合は、中学校がアレだし、『死神』なんて渾名が付いているほどだったから、相当悪い意味で目立っていたんだろう。……………話を戻すぞ。で、俺はその先輩方を適当にあしらった訳だが………………。それがいけなかったのか、先輩方が俺に殴りかかってきてな。こっちとしても、余り喧嘩とかして、問題を引き起こすことは避けたかったから、ひたすら防御したり、躱したり……………。そのうち、先輩方も疲れたのか、撤退していったけど、学食の椅子とかテーブルとかがめちゃくちゃになってな………………。」
途中から、椅子やテーブル(プラスチック製)を投げつけてきたからな。他の人に当たるかもしれないから、回避することも出来なかったし、それ以外はまあ、何とかなった感じだが。
零次「で、問題はここからだ。あの先輩達が去ったあと、俺は、学食おばちゃんと一緒に後始末をやってたんだが………………、そこに山口先生が来てさ、俺を職員室に引っ張っていったんだよ。そこで『俺が先輩たちに変な言いがかりをつけてきて、無視したら、いきなり殴ってきた。』このことについて、延々と説教された。」
利光「………………ちょっと待って?さっき零次が言ったことと、話が違っているじゃないか。」
幽也「…………………………むしろ………………逆………………な気がする………………。」
零次「ああ。あの時学食を使ってた奴らが、報告の仕方を誤ったのか、故意に嘘の報告をしたのか、それともあの先輩達が報復手段として、そうしたのか、まあ、それは置いとくとして、だ。とにかく山口先生は事実と全く違うことを無理矢理認めさせようとしてきたんだよ。途中で、学食のおばちゃんが、俺を弁護するために来てくれたが、おばちゃんが去った後、まあ、予想通りというか、そのおばちゃんの発言も、俺が脅して言わせたと言ってきやがった。」
愛子「酷いね………………。」
零次「………………まあ、あたかも向こうが悪いみたいに俺は言ったが、実際のところ、こっちにも非があったのかもしれないし……。結局、あの後、3ヶ月間の学食使用禁止が言い渡された。それ以来、こんな面倒事は嫌だから、学食を使わなくなったんだ。」
秋希「しかも、あの時の先輩達のこと調べたら、Cクラスの人だったんだよね。成績も平凡だし。」
その情報で、俺の怒りは倍増されたわけだが。
零次「………………………なあ、ふと思ったんだが。」
美穂「はい。」
利光「何だい、零次。」
零次「ここを俺達αクラスの集合場所………………というか、活動拠点にしないか?ここで、昼食を食べつつ、情報交換をしあう。一応代表だからな。折角俺についてきてくれた、お前達とは出来れば仲良くやっていきたいと思っている。………………どうだ?」
利光「僕は全然構わないよ。」
美穂「いいですよ。去年は怖いイメージがあったんですけど………………。もっと、代表のことはいろいろ知りたくなりました。」
幽也「…………………………僕も………………いいと…………思う………………。でも、………………雨の日とかは………………………………どう………………する………………。」
零次「………………その時は、その時だ。ま、候補としては、Fクラス隣りの空き教室辺りになりそうだが。」
秋希「いいじゃん、いいじゃん!なかなか面白くなってきたよ!」
こうして、俺の二年初めの昼休みは過ぎていった。
………………………………まあ、この話はもうちょっとだけ、続くけどな。