バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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小問6-F 報告

 坂本君が試召戦争の引き金を引き、吉井君が宣戦布告に行って、ボロボロの状態で戻ってきて、ついでに言えば普通に授業を受けた後のこと。私は坂本君達との昼食の誘いを断り、校舎裏にやって来ていた。いつもなら、零次と情報交換(と言っても、私がほぼ一方的に話しているだけなんだけど)をしているわけだけど、今日はいつもとちょっと違うことがある。それは人数が多いことだ。

 零次がこの校舎裏で弁当を食べるようになってから、そろそろ一年が経つ。その間、昼休みの時間にこの場所に来る人は、ほとんどいなかった。去年の感じだと、4~5回に一回用務員の乙津佐助(おつさすけ)さん(愛称は用務員のおっちゃん)が校舎裏の手入れにやってくるくらいだ。期末試験が終わった頃だと、3回に一回は告白の現場に居合わせて、そのうち3分の2が恋が実らず終わるという、悲しい結果だった。

 要は、特に何もなければ、この時間帯この場所は、半ば私と零次の専用スペースになっているのだ。だから、これだけの人数がいるのは、いつもと比べたら異常なことである。

 でも、それも去年の話だ。零次がαクラスの集会所として、ここに集まることを決めたから、きっとこれからは賑やかになってくるだろう。

 

 さて、私がここに来たのは、こうやって、皆とワイワイ騒ぐためじゃない。さっきも言ったけど、本来は零次と情報交換するために来ているわけだ。でも、この様子だとそれもちょっと難しいかな?

 

零次「………………そういや、近衛。」

 

秋希「ん?」

 

零次「FクラスがDクラスに宣戦布告したらしいが………………。その事について、何か知っているか?」

 

 おっと。まさか、零次の方から聞いてくるとは。こっちは、零次もこんな大勢の前で話したいとは思わないはずだから、また時間を改めて話そうかと思ってたのに。でも、不思議ではないか。これは、私が独自の方法で調べた結果だけど、進級初日に、いきなり試召戦争を仕掛けたなんて、前例はないからね。しかも、行動を起こしたのは最下位クラス。零次じゃなくても気にはなるだろう。

 

秋希「そりゃあ、当事者だからね。何も知らない訳ではないよ。」

 

利光「当事者?もしかして、近衛さん………………。」

 

秋希「うん、Fクラス。私にだって、調子の悪い日くらいあるって。」

 

 まあ、実際はFクラスに入れるように、点数を調整しただけだけどね。

 

幽也「………………………………………………。」

 

秋希「影山君、どうしたの?」

 

幽也「………………別に………………………なんでも…………。」

 

秋希「………そう。それならいいけど。」

 

 そういえば、余り会ったことないけど、影山君の観察力がすごいって、零次に聞いたような………………。もしかして、嘘ついていることがバレたかな?

 

零次「で?どういうつもりなんだ?」

 

秋希「あ、そうだった。えっと………………。」

 

 そして、私は話し始めた。Fクラスが試召戦争に挑む理由と、そのちょっと後の話を。

 

 

・・・

 

 

 話をしようか。あれは今から、36億年前……いや1万年と2千年前の話か…………、という冗談は置いといて、吉井君がDクラスに宣戦布告のための死者…………、もとい使者として向かったちょっと後の話。私は、坂本君に適当な理由をこじつけて、吉井君のもとに向かった。

 というのも、下位クラス、特にFクラスが宣戦布告した時、余程のことが無ければ、宣戦布告の使者は酷い目に遭う。具体的に言えば集団暴行に近いかな?とにかく、上位クラスからしてみれば、授業の時間が減るわ、補習は増えるわ、そのせいで放課後の時間が削れるわで、とにかくデメリットしかないため、宣戦布告の使者はその八つ当たりを受けるのだ。ちなみにこの風習は、2年前の2年Aクラスの生徒がやったことが発端らしい。………学年の顔とも言える人達が何やってんだか。

 そんな訳で、Aクラス脇の階段についた。別に、廊下を通ってもいいんだけどさ?Dクラスに見つかると坂本君の作戦に支障をきたしそうだからね。目立たないように行動しなければ。

 というわけで、Dクラス教室前に到着。既に吉井君は教室に入っているし、中の様子を確認。

 

『調子に乗ってんじゃねぇーよ、クズがぁ!』

 

『進級初日から戦争とか、頭おかしいんじゃねぇか!?』

 

『安岡!お前のバット貸せ!』

 

明久『え、ちょっと、ギャアアアアアア!』

 

 ………………ゴメン、吉井君。君の犠牲は無駄にしないよ………………………………多分。

 

 それから10分後。吉井君は、なんとか生還したようだ。それにしても………………、零次も私も去年から思ってるけど、ここ本当に進学校なの?下位クラスに対する扱いが予想以上に酷いんだけど。………………こんなのが3年にもいると考えると………………。もう一度言うけど、本当に進学校なの? 

 

明久「チクショウ!騙され………………え?こn」

 

秋希「シーッ!Dクラスに気づかれるから、こっちに。」

 

 とりあえず、吉井君の手を引っ張ってAクラス脇の階段まで戻った。見た感じは、想像より酷い怪我を負っていなくて、良かったというべきか………………。

 

明久「それで、どうしてここに?」

 

秋希「そんなの、一人のクラスメイトとして、君が心配だからだよ。」

 

明久「え?」

 

 いや、そんな驚いた顔されても………………。まあ、君とはそんなに仲良くなかったから仕方ないけどさ。

 

秋希「これは、紛れもない事実だよ。それに君が試召戦争やりたいって言ったんでしょ?こんなことで倒れてもらっちゃ困る。君には、たくさんやることがあるからね。」

 

明久「やること?」

 

秋希「そ。それが何かは、私からはどうとも言えないけど、でも、君たちの目的を達成するためには、君の力はどうしても必要になってくる。」

 

 私は、一呼吸おいて、彼に告げた。

 

秋希「つまり、何が言いたいかっていうと、坂本君は君のことを『いてもいなくてもいい存在』なんて言ったけど、私はそう思わないってこと。」

 

 宣戦布告前、坂本君はFクラスでもAクラスに勝てる要素があるといった。 

 男子からは畏怖と畏敬を女子からは軽蔑を以て挙げられる『寡黙なる性識者』、もとい『ムッツリーニ』の二つ名を持つ、土屋康太。

 去年学年3位、もしくは4位に位置し続けたが、振り分け試験の時に起きたアクシデントでFクラスに入ってしまった、姫路瑞希。

 双子の姉がAクラスに在籍している演劇部のホープ、木下秀吉。

 小学生の時は『神童』と呼ばれていた、現在は『悪鬼羅刹』と噂されるFクラス代表の坂本雄二。

 そして、彼、吉井明久。だけど、彼の場合はちょっと違う。名前を聞いてもピンと来ていない人がほとんどだったし、代表である坂本君自身が『いていなくてもいい雑魚』だと、オチ要因として平然と切り捨てた。

 

 だけど、私は彼をそんな評価はしない。彼の良いところは、成績には決して現れないところにある。そう思っている。ついでの推測だけど、坂本君も口ではああ言ってはいるものの、本心では吉井君を信頼していると思っている。

 

秋希「それじゃ、私はもうちょっと用事があるから、吉井君は先に戻ってて。」

 

明久「分かったよ。チクショウ、雄二め。よくも騙したなぁぁぁぁ………………!」

 

 いや、騙したって………………。君、坂本君としょっちゅう行動しているんだから、いい加減学習しなよ……。

 

 

・・・

 

 

秋希「…………………以上が私の話せる全てかな?」

 

零次「そうか。ご苦労だったな。」

 

秋希「いえいえ、お気になさらず~。」

 

利光「それにしても、吉井君にそんな酷い事をするなんて……。」

 

 あれ?なんか、久保君怒ってる?というより、根民さんと似た雰囲気を醸し出してるんだけど。

 

利光「代表!」

 

零次「却下だ。」

 

愛子「返事が早くない!?」

 

零次「久保、お前の言いたいことは分かる。Dクラスに宣戦布告するつもりだろう?」

 

利光「そうだよ。吉井君を酷い目に遭わせたんだ。そうでもしないと気が済まないんだ!」

 

 なんだろう、ただ正義感が強い人の言葉にも聞こえるけど、個人的感情が含まれているようにも思えるんだけど。

 

零次「なるほどな。久保、お前の気持ちは理解した。だが、それでも試召戦争は認めない。」

 

 でしょうね。零次ならそう言うと思っていた。……その一方で、早めに行動を起こしてくるかもしれないとも思ったけど。

 

美穂「え?ど、どうしてですか?」

 

零次「どうしてか、って?それは……」

 

 

キーンコーンカーンコーン……

 

 

「「「………………。」」」

 

 一瞬、静寂がこの場を支配した。どうやら、昼休みが終わる時間になっていたようだ。外に時計が無いのって、こういう時不便だよね。

 

零次「………………いったん帰るぞ。」

 

愛子「そ、そうだね。」

 

美穂「分かりました。」

 

 ………………仕方ない。私も教室に戻りますか。

 




~後書きRADIO~

零次「あー。今回は、用件だけ、手短に話すぞ。簡単に言うと、タグをちょっと変更した。それだけだ。そういう訳なんで、次回もよろしくお願いします、と。」
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