秋希「ど~も。近衛秋希で~す。結局前回の投稿から約1ヶ月後に投稿となったね。今回の話は長いから、もう、さっさと本編にいっちゃいましょう!」
ピンポンパンポーン
『Dクラス代表、平賀源二君が戦死しました。よって、Fクラスの勝利です。繰り返します………………。』
秋希「やっと、終わったか~…………。今回は私、完全に出番なかったな~。」
時刻は16:50。今回の試召戦争で、全く出番のなかった私は、教室で寝ころびながら、そう言った。坂本君の作戦は、どうやら上手くいったみたいだ。………これ、もう私いなくてもいいんじゃないかな?
秋希「ま、坂本君に協力しないと言っちゃった訳だし、不満はないけど。そろそろ行きますかね。」
協力はしてないけど、一応クラスの一員だし、初勝利を祝わないとね。そのついでに、『彼』に詳しい話を聞きに行くとしよう。
・・・
明久「雄二、皆で何かをやり遂げるって、素晴らしいね。」
雄二「………。」
教室を出て、さほど苦労もせず目的の人物を見つけたけれど、当の本人は、坂本君と握手をしていた。………………いや、よく見たら吉井君は手首を掴まれてる。一体何があったのかな?
明久「僕、仲間との達成感がこんなにもいいものだなんて、今まで知らな関節が折れるように痛いぃっ!」
雄二「今、何をしようとした。」
明久「も、もちろん、喜びを分かち合うための握手を手首がもげるほどに痛いぃっ!」
あー、なるほど。吉井君の足元には包丁が転がっている。おそらくこれで坂本君を刺そうとしたんだ。そりゃ、そうなるだろうけど、そろそろ止めに入るか。
秋希「はいはい。お二人さん、そこでストーップ。」
明久「近衛さん!?」
雄二「………近衛か。どうした?あのまま帰ってても良かったんだぞ。」
秋希「いやー、さすがにそういう訳にもいかない事情があるからさ。とりあえず、吉井君借りれる?」
雄二「ふむ………。別に構わんが、一体何の用だ?」
秋希「この包丁を返しに行くのと、今朝の続き、かな?あの時は時間の都合上、言えなかったことがあるからね。…………あ、坂本君はここに残ってよ?代表としての仕事があるんだから。」
雄二「言われなくてもそのつもりだ。ただし、後で俺にもお前が何を考えてるか、ちゃんと聞かせろよ。」
秋希「当然。二人だけの時間があれば、の話だけど。」
そう言って、私は吉井君を連れて、家庭科室へ向かう。さっき坂本君に、二人だけの時間があればと言ったけど、それは案外簡単だろう。去年の話だけど、私も坂本君も朝早い時間に学校に来るからね。
………………おっと、いけない。大事なことを言うの忘れてた。
秋希「坂本君、Fクラス初勝利おめでとう。とりあえず、今のところは素直に言っておくよ。」
・・・
ガチャッ キィー……… バタン
秋希「ここなら、邪魔は入らないよね。」
家庭科室に包丁を返しに行って、今は、旧校舎の屋上にいる。
旧校舎というのは、私達2年Fクラスと、あとは同じくEクラスがある校舎で、上階は確か、3年のD~Fクラスがあったはず。そして、残りの1学年全クラスと、2年のA~Dクラス、3年のA~Cクラスがあるのが新校舎だ。
というのも、文月学園の歴史は意外と長い。確か、今年で創立100と6、7年くらいだったかな?当然、その中で、何度も改築している。けれど、新校舎ができたのは、5~7年程前。試験召喚システムに合わせて建設が行なわれ、そんな歴史の中で見ればつい最近のことだ。Aクラスの設備や教室の広さから考えると、おそらくこの増築は、あの格差を明確に示すために、今までの校舎ではそれに関して十分なスペースが無かったがために、行なわれたものだろう。
さて、本題に移ろう。吉井君を連れて屋上に来たのは、言うまでもないことだと思うけど、今朝の話の続きだ。まあ………………。
明久「えっと………。近衛さん?僕をここに連れ出して、どうしたのさ。」
当の本人は分かってないようだけど。
明久「あれ!?やたらと単純!?」
秋希「何がー!?」
しかも、明後日の方角に勘違いしてるし!
秋希「ちょ…………ちょっと吉井君……………、まさかと思うけど………告白されるかもとか思ってるのなら………、それは、流石に…………バカすぎるよ。」
明久「うぇっ!?イ、イヤ、ソンナコトナイヨ?」
秋希「そう……。」
まあ、よく考えりゃ、そう思うのも仕方ないか。なるべく人の目がある所で話したくないこととはいえ、空が茜色に染まった時間帯に男女で二人きり、屋上にいる。このシチュエーションで告白以外の答えなんてものは、まず出てきやしない。家庭科室を出て、校舎裏で聞くことも可能だったけれど、運動系の部員の通り道になっているし、去年の事から、あそこでの話し合いはロクな目に遭わないことが目に見えている。その他にも候補はあったけど、どこも校舎裏と似たような感じだし、屋上を選んだのは、ある意味消去法だ。
秋希「ハァ…、本当は君が嫌いな理由を30個程言いたいところだけど、時間がないから、本題に入るよ。」
明久「さ、30!?僕どんだけ嫌われてんのさ!」
実際は3個しかないけどね。10回言い回しを変えて言うだけだ。
秋希「吉井君。君は………………、どうやってAクラスに勝つつもり?」
明久「へ?」
秋希「姫路さんのために設備を向上させたい、君のその気持ちはよ~く分かった。」
明久「う……。」
秋希「設備のランクアップを目標とするなら、試召戦争で勝たなきゃいけない。勝って奪い取るしかない。坂本君も試召戦争に乗り気だったからよかったものの、そうでなかったら、どうするつもりだったの?………改めて聞くよ。君はAクラスに勝つ方法を何か考えてるの?」
私の予想では、答えはNOだろう。なぜなら、彼の戦争に参加する動機には、姫路さんが関わっているから。彼女がここに来なければ、吉井君は坂本君に脅されでもしない限りは動くことはないだろう。その最大の理由は彼のみが持つ肩書きにある。
その名も『観察処分者』。字面から分かるように決していい肩書ではない。むしろ真逆。そもそもこの肩書きが課せられるのが、成績不良かつ学習意欲に欠ける生徒なのだから、良いものでないのは明白だ。
この『観察処分者』という肩書きだが、これを持っている生徒は、教師の雑用を手伝う義務みたいなものが課せられる。おそらくは、今まで遊びに無駄に費やしてきた時間を有意義に使えってことだろう。そして、この雑用では召喚獣が用いられる。本来召喚獣は立体映像か幽霊みたいなもので、召喚獣の体以外で触れられるものはほとんどないのだが、『観察処分者』と教師の召喚獣は特例として現実の物体に干渉できる召喚獣を使役できるのだ。私の召喚獣は通常仕様なので、教師から聞いた内容でしかないのだが、なんでも『見た目と違って、ものすごく力持ち』なのだとか。実に曖昧な情報だが、自分にとって都合がいい操り人形をいつでも自由に使えると考えれば、快適な生活を送れるだろう。………………『自由に』使えればの話だが。
残念ながら、教師はまあ…学校内に限れば、フィールドを自分で展開できるから、それなりに自由に召喚獣を使役できるが、『観察処分者』はフィールド形成権がないから、教師の監視下でしか呼び出せない。つまり、『観察処分者』である吉井君が、自分のために便利な自身の召喚獣を使う機会は無いに等しいのだ。教師が召喚獣を使いたい時に吉井君を呼び出しては、彼に召喚獣を召喚させ、手伝わせる。言い方は悪いが、まるで奴隷みたいだ。
それでもこの観察処分の制度に不満があるのに、こういった物理干渉能力を持った召喚獣に負担がかかると、何割かが召喚者にフィードバックするようにプログラムされている。簡単に言えば、召喚獣をあちこち動き回らせれば、その分、召喚者にも疲労が表れる。召喚獣が転んだり何かにぶつかったりすれば、その痛みも召喚者に何割か返ってくる、といった具合だろうか。
話を戻せば、吉井君は一応自業自得とはいえ、そんな『観察処分者』の肩書きを持っているから、積極的に動きたくないと思うのだ。だって、試召戦争じゃ、雑用で使う以上のダメージを受けることは避けられないからね。学園長も、せめて試召戦争の時は、観察処分者の設定を解除すればいいのに…………、いや、それはそれで面倒か。
さてと、吉井君の反応は…………?
明久「それは…………………えと……………。」
秋希「…………やっぱり、ノープランなのね。」
明久「ちょ、やっぱりって何さ!」
秋希「言葉通りの意味よ。何か考えがあるなら、そんなに考え込む必要ないでしょ。」
明久「う…………。」
ま、予想通りだったね。
明久「で、でも、雄二には何か考えがあるんだから、僕はそれに従えば大丈夫だよ。」
秋希「坂本君ねぇ…………。随分な自信だけど、何か理由でもあるの?」
過去に『神童』って呼ばれてたらしいけど、結局は過去の話だし。一応、霧島さんが幼馴染だってことは知っているけど、それを利用するのかな。
明久「いや………、近衛さんって結構頭いいし、理論的な考え方をしてるから、理由にはならないと思うけど……、雄二が昼休みの時、言ったんだ。『俺達は最強だ』って。」
秋希「…………君が『理論的』って言うと、やっぱり違和感あるわ………。」
明久「ちょっと!」
秋希「ハハハ、ごめんごめん。確かに私からしてみれば、理由と呼べるものでは無かったね。」
明久「うぐ………。」
秋希「じゃ、そんな君に、悲しいお知らせがございます。坂本君にも後で言うつもりだけど、君の胸の内に仕舞っといて。誰にも言わないと、ここで約束してくれるかな。」
吉井君は一瞬迷ったような顔を見せたけど、一応了承してくれたようだ。私もそれに応えるように一呼吸おいて、話した。
秋希「簡単に言うよ?私達はどう頑張っても、Aクラスには勝てない。いくら姫路さんが頑張ってくれても、坂本君が私に頭を下げて、協力を申し出たとしても。」
明久「………………うん。」
秋希「…あんまり驚かないんだね。君ももしかして、自分で言ったものの、打倒Aクラスなんて無理なんじゃないか、って思ってる?」
明久「まあ………、そう……かも、しれない。」
秋希「いいよいいよ。自分と相手の力量差が分かってるんだから。」
そう思うのも、無理もない。去年の時点でも、上位50名のうち、11位~50位の生徒はBクラスレベルの生徒と大した差はない。実際、この領域に入る生徒の順位変動が激しかった。けど、私や姫路さんを含む上位10名は、常に同じ生徒で構成されていた。10位と11位の生徒の総合得点の差が1000点を超えることも多かった。
今年はその10名のうち2人がFクラスとはいえ、残り8名は確実にAクラスだろうし、ついでに言えば『アイツ』がいる。まず間違いなく、私達が勝てる確率は0だ。
秋希「それに、やっぱり君達が試召戦争をすることに賛同できない。私個人としては、坂本君にはこれ以上戦争をやって欲しくないし、次に戦争を起こした時は、負けてもらいたい。そう思ってる。」
明久「ちょっ、そんな!じゃあ、姫路さんはどうなるのさ!それに、近衛さんだって、あんな設備イヤでしょ。」
秋希「………………………………………………別にどうでも?」
明久「………は?」
その声からは明らかに怒りの感情が汲み取れた。まあ、普通に考えたら、私の思考なんて分かる訳ないから当然だろうけど。
明久「どういう意味さ。」
秋希「言葉通りの意味だよ。私は別に姫路さんと友達という訳でもないから、彼女がどうなろうが、私には関係ないし。それに私自身は、あの環境の方がAクラスの何倍も過ごしやすいからね。」
明久「姫路さんが可哀想だと思わないのかよ!」
秋希「じゃあ、君は今Aクラスにいる人が、あのゴミ溜めにぶち込まれるのは可哀想だと思わないのね!?」
明久「………………!!」
秋希「おそらくだけど、坂本君はAクラスに勝つまで、どことも設備を交換する気は無いと思うの。Fクラスの皆は、設備目的で試召戦争に参加しているから。だから、もしそんな状態でAクラスに勝ったら、あの設備をAクラスの人達に押しつけることになる。…………姫路さんは体が弱いから、それを心配する気持ちは分かる。でも、Aクラスにだって、姫路さんと同じような人間がいることも頭に入れといて。」
明久「………そうか………………、ごめん、近衛さん。一番身近な姫路さんのことばかり考えて、他の人のことは全く考えてなかった。」
秋希「………いや、私もゴメンね。吉井君がそんなに姫路さんに惚れてるとは思ってなかったから。」
あ、いけない。吉井君が落ち着いたのを見て、ちょっとからかってしまった。
明久「え!?い、いや別に、そんなんじゃ………。」
秋希「そう?ま、別にいいけど。」
さっきまでの不穏な空気はどこへやら。屋上に来た時よりも軽い空気がこの場を満たしていた。
秋希「………さてと、吉井君。ここからが本題だけど。」
明久「え?」
秋希「改めて聞くけど、君は姫路さんがあの設備で暮らしていくのに納得していない。その気持ちは変わってない?」
明久「………もちろん。」
一瞬、解答までに間があったけど、まあいいか。
秋希「それならさ、今回みたいに姫路さんを活躍させるような戦い方は………………、うまく言い表せないけど、君の目的とちょっと違うんじゃないかな~って、思ってさ。できるなら、君自身の手で代表を仕留めたりとか、そういう戦果が欲しくない?」
明久「まあ、そりゃあ欲しいけど………。」
秋希「なら決まりだ。明日の放課後、この場所に集合。観察処分者の仕事は、全力で回避して?」
そう言って、私は『ある人物』の家の住所が書かれた紙を渡す。
明久「………え?………いや、どこなの、ここ。」
秋希「分からないなら、明日地図を渡すから。それじゃ、また明日。」
若干逃げるような形で、私は屋上を後にした。
とりあえず、帰りに100均に寄ろうっと。明日には綿がいっぱい詰まった座布団を量産して、クラス全員の度肝を抜いてやる。