バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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小問12 神童の苦悩

 Bクラスとの戦争が終わり数日後。土日の休日を挟み、いつも通り教室にやって来たけど……………。

 

秋希「おっはよ~。……………あれ?坂本君どうしたの?」

 

雄二「ああ、近衛か。……………いや、なんというかな……………。」

 

 そこにいたのは、我らがFクラスの代表である坂本君。何やら、ノートを目の前にして難しい顔をしている。神童と呼ばれていた頃の彼だったら、不自然さは感じなかったけど、そんな面影が一切感じられなくなった今では、そんな姿に珍しさを覚える。

 

雄二「近衛、お前から双眼の事を聞いてから、ずっと頭の隅で危惧していた事が起きたんだ。アイツが……………双眼がAクラスの代表という、な。」

 

 ……………ああ、そう言えばそんなこと言ったね。多分一昨日くらいに。

 

雄二「……………それで、色々考えたんだ。Aクラスに、双眼に勝つための作戦をな。」

 

秋希「…………………………なら、それを実行すればいいんじゃない?わざわざ事前に私に話す必要はないと思うけど?」

 

雄二「………お前、知ってて言ってるだろ。その作戦が全部パァになった。本当だったら、アイツも言っていたAクラスの反抗派閥?のリーダーに協力を持ちかけて、双眼を追い詰めたり、DクラスやBクラスを巻き込んで人数差にものを言わせてAクラスを倒したりと、したかったんだが……………。」

 

秋希「……………………………なんというか、作戦と言えるけど、根本君のことを馬鹿にできないくらい、随分と卑怯な作戦だよね。」

 

 そんな作戦、提示されたら、Dクラスの平賀君はともかく、Bクラスの根本君は『人のこと言えないじゃないか!』とか言いそうだ……………。いや、多分言えないか。あんな目に遭わされちゃ。

 

雄二「卑怯汚いは敗者の戯言だ。俺達がやってるのは試召『戦争』だろ?どんな手を使おうが、勝った方が正義だ、そうだろ?」

 

秋希「間違いではないね。」

 

 根本君だって、勝つために必死に策を練ったに違いないんだよね。ただ、彼の場合は、その策で反感をあまりにも買い過ぎた。それだけだ。

 

雄二「………………話を戻すぞ。そんな感じで色々作戦は考えたし、それなりに勉強をし直したりもした訳だが……………、問題は双眼の腕輪だ。代表があの『死神』というだけあって、情報収集は意外と出来たわけだが、アイツの腕輪の事だけは、ほとんど分かってないんだ…。」

 

秋希「それで切羽詰まってる感じになってるのね。」

 

雄二「ああ……。近衛、正直お前には出来れば頼りたくなかったんだが、力を貸してくれないか?アイツらがまともに成長していない状況で言えた立場ではないが……。」

 

 ……驚いた。まさか坂本君が頭を下げて人に頼み込むなんて。彼にもFクラスの代表としての責任とか、プライドとか、そういうのがあるし、『神童』と呼ばれてた頃は上級生すら見下してたという話もあったから。

 それに、DクラスもBクラスも、私の協力がほとんどない状態で勝利を収めてきた。私がいなくても、なんとかなる。Aクラスにも勝てる。そんな雰囲気がFクラスにあるから、代表もそんな考えをしていると思ったけれど、それは杞憂だったか。

 

秋希「……分かった。いいよ。協力してあげる。元々、対Aクラスに関しては、全力を尽くすつもりだったし。」

 

雄二「本当か?いつものお前だったら、こうして頭下げても、首を縦に振らなかったろ。」

 

秋希「まあね。」

 

 その事については、否定する気は微塵もない。

 ただ、私は知っている。Bクラスと戦う前にした話のあと、坂本君が、去年よりほんの少しだけど、勉強に力を入れるようになったこと。吉井君も、まだαクラスで弱音を吐きつつだけど、勉強する習慣が付きつつあること。学園の問題児として真っ先に名前が挙がる二人が、目的を達成するために少しずつ変わり、成長しつつあること。

 出来るなら、そういった変化を見て、他のFクラスの生徒も勉強するようになってくれれば、もっと嬉しかったけど。

 たけど私には、それよりも気になっていることがある。

 

秋希「…………ねえ、坂本君。君はAクラスに勝った後、どうするつもり?」

 

雄二「………………………んん?どうって、具体的なことはまだ決めてないが………………。現状維持が妥当じゃないか?」

 

 現状維持。これはどう解釈するか。おそらくは、Aクラスの設備を他のクラスに取られないようにする、という意味合いだけど、曲解したら、Fクラスの今の学力を維持するとも聞こえる。

 

秋希「それだけ?まさかとは思うけど、君は今のFクラスのままでいいと思ってるの?」

 

雄二「……………まあ、概ねそうだな。」

 

 ……………概ね、か。となると、やはり後者の方か。まあ、他人の成績なんて心配したところで、自分の点数が上がる訳でもないしね。

 

雄二「そもそもアイツらだって、Aクラスの設備目的で動いてる訳だからな。それを維持するよう、俺が皆を引っ張っていけば問題ない。」

 

秋希「なら、別にAクラスに勝たなくてもいいんじゃない?」

 

 一瞬にして、空気が凍り付くような感覚に襲われる。自分でも、坂本君の態度に苛立っているのがよく分かる。

 

秋希「こっから先は、私の独り言だから聞き流して構わないわ。正直な話、この数日間、君含めてFクラスの皆のことを見てきたけど、君の言う通り、まともに……………いや、まったく成長している印象が見受けられないわ。その証拠に、Dクラス戦の後に福原先生が渡した課題をちゃんと解いて、私に提出したのは、ほんの数名だったわよね。」

 

 この課題を集めて提出しに行く途中で、全員のプリントの内容をざっと見渡してみたけど、ほとんどの人は空欄だらけだった。提出先は何故か西村先生だったので、Fクラスほぼ全員の分纏めて怒られることも考慮してたけど、結果は大きなため息が一つと、吉井君を呼んでくることだけだった。

 

秋希「で、一つ問題を出していいかしら?あの時、吉井君が呼び出しを食らったわけだけど、何故だかわかるかしら?」

 

雄二「あん?そりゃあ、あまりにも出来が酷すぎるから……………、と思ったけど、そう言うってことは、違うのか?」

 

秋希「そう。君の、そしてFクラスの皆の想像と真実は全然違うわ。………吉井君は、あの課題……………、出来が良すぎたのよ。」

 

雄二「………………………………は?」

 

秋希「まあ、私や零次が面倒を見たってのもあるけど……………、それは置いておこうか。吉井君の課題は、全ての欄が埋まっていて、尚且つほとんどが正解だったわ。……………というか、出来が悪くて呼び出し食らうんだったら、君達全員纏めて補習室行きでしょうが。」

 

 観察処分者である吉井君の存在が悪目立ちしているけど、実際の彼の立ち位置はFクラス内だけで見れば、中の下か、下の上と言ったところ。吉井君より点数低い人だって、普通にいる。要は、『観察処分者=点数が低い』というだけで、『観察処分者=学年最下位』ではないのだ。

 

秋希「それに坂本君、成長していない……というか、何も変わってないのは君自身もよ。Dクラスとの戦争では、姫路さんが決着を着けた。今回のBクラス戦は、土屋君が得意の保健体育で勝負して、代表を倒した。この二つの戦争、一体何が違うの?どっちも結局は、高得点所持者による一撃必殺じゃない。『学力が全てじゃない』って君は言うけど、今のところ、その証明が出来ているとは言い難いわね。」

 

雄二「うっ……………くっ……………。」

 

 もちろん、坂本君の指揮や作戦、Fクラスの団結が、これまでの勝利の一因になっているとことは理解している。けど、どうしても姫路さんや土屋君個人の強さの方が目立ってしまうのも事実。そして、この学園の人間、特に私達第二学年の生徒は、勝利の要因を後者だと思い、酷い場合は決めつける。これも、嘆かわしい現実なのよね。

 

秋希「そして、それは今回も同じよ。たとえ、Aクラスに勝ったとしても、私や姫路さんに頼って勝って、それで君は満足するの?目的を何も達成してないのに、勝てたからそれでいいと言うなら………………………、私はどんな手段を用いてでも、君達をもう一度この底辺の教室に叩き込むつもりだから。…………………最も、君には他にも何か目的がある気がするから、その誰にも言ってない『裏目的』を達成できれば、それはそれでもいいけれど。」

 

 最後に坂本君にギリギリ聞こえるくらいの大きさで呟いた言葉に、坂本君は肩を震わせた。………………………どうやら、当たりのようだ。

 

雄二「………………………お前は一体、どこまで気づいてるんだ?」

 

秋希「少なくとも、君には何か他に目的があるんじゃないか、ってことがあるくらいかな?だって、『学力が全てじゃないことを証明する』ってだけだったら、土屋君や秀吉君みたいに、何か一芸に秀でていれば、それで結果を見せればいい訳だし。第二に、これを誰に証明したいのか、君はあえて何も言ってなかったし。そもそも『学力が全てじゃない』って言っておきながら、学力が重要な要素である試召戦争を使っているし……………。」

 

 まあ最後のは、理由というよりは難癖というか、こじつけと言うか、理不尽な言い掛かりと言うか……………。そんなものに聞こえるけどね。

 

秋希「……………こうして考えてみると、君が他に何を考えているかがなんとなく分かって来たんだけど、答え合わせしてもいいかな?」

 

雄二「いや、結構だ。」

 

秋希「そう………………。ま、ゆっくり考えていったら?現状を考えたら、零次が君達にAクラスを譲り渡すとは思えないし、まともに相手してくれるかも怪しいからね。」

 

雄二「………………なんだ?まるで、俺達の態度次第じゃ、向こうが勝手に負けてくれるともとれるんだが……………。」

 

秋希「だって、零次はAクラスを嫌ってるからね。Aクラスを引き継がせてもいいと思う相手が現れれば、喜んで席を譲るし、相手の実力に不足が無ければ、全力で戦う。元々零次は争いごとが嫌いだからね。」

 

 その後も、私と坂本君の話は続いた。結論を言えば、坂本君は、今日のところは少なくとも、予定を変えることはないそうだ。 そうして、決戦の時間は刻一刻と近づいていった。




~後書きRADIO~
秋希「祝!後書きRADIO第10回目~~!!」

零次「……………………別に喜ぶべきことでも無いだろ。」

秋希「そうだけどさ。でも、やっと二桁の大台に乗ったのよ?喜ぶことでしょ。」

零次「それは、真面目にやってきたらの話だろ。不定期更新なのは百歩譲ろう。筆が中々進まないのも許そう。だがな……………作者は、遊び惚けてるだけだろうが。」

天:それはちょっと違うっスよ~。

零次「……………随分と久しぶりだな、天鋸江。」

天:そりゃあ、本作にま~ったく、関わりが無いっスからね。前にここに呼ばれたのが何時なのかも、覚えてないっス。

秋希「それはそれで問題だけど……………。」

天:で、さっき零次は作者は遊び惚けてるって言ってたっスけど、そもそも、この小説の投稿だって、作者からしてみれば、遊びの一つっスよ。それに、前に君が言ってたように、作者の書き方は頭の中にある会話のイメージと、大雑把なストーリーをたてて、これまでのストーリーと矛盾が出ないように確認しつつ、脳内イメージを出力するやり方だから、どうしても時間がかかるっス。

秋希「……………メモを取れば、ってツッコミは無しかな?」

天:そうして欲しいっス。零次を擁護するわけでもないけど、結局進捗は作者の気分次第っスからね~。……………あ、でも、次回は進みが早いらしいっスよ。

零次「そう言って、一か月後に投稿だったりしてな。」

天:ハハ……………あり得るっスね。まあ、言いたいことは言い終わったんで、そろそろ切るっス。

プツン…………。

秋希「……………零次。」

零次「……………なんだ?」

秋希「前回の後書きRADIOで言っていた、零次サイドの試召戦争のまとめをしようか。」

零次「……………本来だったら、後回しにするつもりなんだが、折角の10回目の後書きRADIOだ。それに、次回が書き終わる頃には、もう忘れてる可能性もありそうだしなぁ……………。仕方ない、やりますか。」

・・・

秋希「…………………という訳で、仕切り直そう。前回は、私がFクラスとBクラスの試召戦争の話をしたから、今回は零次のターン、CクラスとAクラスの試召戦争について、どうぞ。」

零次「正確には、Cクラス対Aクラス対αクラスだが、まあいいだろう。」

秋希「零次ならやるだろうとは思ってたけど、まさか本当にAクラスを蹂躙するとはね……………。」

零次「一応構想の段階では、俺の腕輪でこっそりサポートしながら、霧島をCクラスに直行させる方法もあった。AクラスとCクラスは隣同士なわけだし、あの腕輪の条件を満たす生徒はいないからな。霧島に挑みに行くだけでCクラスは勝手に蒸発する。」

秋希「本当にただの蹂躙だね。」

零次「だから、俺はあまりこの腕輪を使いたくないんだよ。俺がしたいのは、互いに認め合えるような、熱い戦いで、無双したいわけじゃないからな。……………まあ、今回の戦争で、Aクラスの印象は少々変わったがな。」

秋希「へぇ~。どんな風にさ?」

零次「具体的に数字で表すとだな……………。」

零次から見たAクラスの印象の内訳(αクラスと霧島を除く計44名)

・俺がAクラスの代表しても構わないが、霧島の方が安心できると思っている。及第点レベル。
0名→25名くらい(奥井・栗本・木下など)

・俺を代表には認めないが、それなりに筋の通った理由がある。まあまだ許せるレベル。
数名→10名ほど(時任など)

・『死神』の異名だけで、俺の価値や行動を決めつける。もはや論外のレベル。
ほぼ全員→6名(豊嶋・梶・西京・横沢、他二名)

零次「こんな感じだ。あくまで印象だから、かなり雑だが。」

秋希「大体が『死神』というだけで見下してた、という印象から、代表に関してはあまり気にしてない、って印象になったかな?」

零次「ま、この戦争の前に時任達との勝負があった訳だからな……………。もしかしたら、そこで印象が変わったか?」

秋希「それもありそうだね。……………そんなところかい?」

零次「ああ。俺から話せることは以上だな。」

秋希「OK。それじゃあ……………。」

「「次回もよろしくお願いします!!」」
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