バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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小問15 戦争直前、2人の行動

西村「…………そこまで!双眼、筆記用具を置け。」

 

 西村先生が試験終了のアナウンスをすると同時に、鉛筆を机の上に落とす。現在時刻は7:50。Fクラスとの、変則的な内容での試召戦争の開始時刻まで、2時間ちょっと、と言ったところか。

 

西村「それにしてもなぁ…………。まさかFクラス(アイツら)Aクラス(お前達)に挑む日が来るとはな…………。」

 

零次「俺は予想できてましたけどね。去年、散々バカやってはしゃぎまくってた、あの四人が一つのクラスに集まったんです。何もないまま、平穏に一年過ぎるという考えは甘い。というか、あの四人に関していい噂をあまり聞かない時点で、試召戦争が二年になったら本格的にできるようになる時点で、何かしら一波乱起こることは、もはや自明。正直この程度の予想、テストを解くより簡単だと思ってますが。」

 

 おそらく、こんな事態を想像できた奴などほんの一握りだろう。そのほんの一握りの人材も、結局は『Fクラスなんて学力最低の馬鹿の集団に出来ることなど何もない』と、嘲笑する。この学園のクラス分けのシステムをよく考えれば、Fクラスに思いがけない切り札がやってくることも、想定できるはずなのに、だ。現に、姫路がFクラスにいるわけだし、3年の方も、2,3名ほど途中退席者が出たらしい。

 

零次「………それより、近衛から、Fクラスの担任が西村先生、あなたに変わるらしいと聞いたのですが。」

 

西村「一体、アイツはどこからそんな情報を仕入れてくるんだか…………。ああ、そうだ。今回の戦争が終わり次第、担任が福原先生から俺に変わるそうだ。いくら『学力が全てではない』とは言っても、だからといって蔑ろにしていいものでもないからな。」

 

零次「その通りですね。」

 

 同じ『学力が全てではない』という言葉でも、勉強に打ち込むあまり、人間関係を疎かにしてしまった人間言うのと、ロクに勉強もしないくせに、親に怒られて逆ギレした人間が言うのとでは、言葉の価値は雲泥の差、月とスッポンだ。Fクラスの主張は明らかに後者。せいぜい坂本がどちらかと言えば前者といったところだろうか。

 

零次「まあ、安心してください。こうして早朝からテストを受けた以上、奴らにAクラスの設備を明け渡す気は毛頭ありません。」

 

西村「………………特定の生徒を贔屓するのは、教師としてあるまじき姿ではあるが………………、頑張れ。俺はお前を応援しているぞ。」

 

零次「ありがとうございます。それでは…………。」

 

 そう言って、俺は補習室を後にした。重めの扉が閉まる音が、いっそう俺の気合いを高めていった気がした。

 

 …………さあ、覚悟しろFクラス。そして、刮目せよ文月学園。これが俺、双眼零次のあるべき姿なのだ。

 

・・・

 

信楽「………………そこまでだ。筆記用具をおいて、答案用紙を持って来てくれ。」

 

 現在時刻は9:40。私と吉井君は1時限目の授業時間を使って、補習室で補充試験を受けていた。ちょうど、担任の福原教諭の授業で良かった。補充試験を受ける旨を伝えたら、二つ返事でOKを返してくれた。

 ちなみに二人きりで出ていこうとしたからか、Fクラスの過半数が暴走しかけた訳だけど、Aクラスとの試召戦争の話を盾にして乗り切った。

 

明久「はぁ~…………。疲れた…………。」

 

秋希「私も今回はちょっとね…………。そもそも、早起きしてって、昨日言ったのに寝坊するから、こうなるんじゃないの。おかげで無駄な労力使っちゃったわ…………。」

 

明久「ご、ごめんなさい…………。」

 

 まあ、大したことではないから、気にしてないけど。

 それより問題視しているのは、姫路さんの方だ。さっき言ったFクラスの暴走。そこには島田さんや姫路さんの姿があった。昨日の坂本君の演説の最中、坂本君と霧島さんの関係を知った時も暴動が起きかけた。その時、この二人は何故か、攻撃対象を吉井君に向けていた。

 私の調査と、根民さんから発せられるどす黒いオーラから(九割がたこっちだけど)考えると、原因はおそらく嫉妬。本来自分に向けられるべき、と思い込んでいる『好意』が別の誰かに向いているという不満から、二人は怒りをぶつけようとしているのだろう。そして根民さんはそれを察知し、無言で警告しているようだった。

 まあ、今はこの戦争を終わらせることを考えよう。彼女らの問題は、まだ放置しても大丈夫なレベルだし、吉井君から助けを求められた訳でもないからね。

 

明久「そう言えば、あの後気づいたんだけど……。」

 

秋希「なに?」

 

明久「零次はαクラスの完全勝利を勝利を目指してるんだよね?」

 

秋希「そうだけど?」

 

明久「それが達成されたら、僕らFクラス負けるよね?」

 

 …………チッ。あのまま気づかなきゃよかったのに。

 

秋希「………………そうだね。でも、問題無いよ。」

 

明久「え?どうして?」

 

秋希「零次はああいう風に伝言で言ってたけど、アイツの本当の目的は『双眼零次は文月学園にいても問題のない人間である。』その証明にあるからよ。学校での零次の評判は君以上に酷いものよ。『死神』なんて物騒な異名を付けられたおかげで、問題が起きれば何かと零次のせいにされてた訳だし。……まあ、処暑中学が不良校なのは事実だし、零次は喧嘩が強いことも認めるわよ。けどさぁ、一応進学校に入学できた訳なんだし、それなりに学力も兼ねていないと入学できないと思うのが、普通じゃないの?」

 

 隣にいるバカを見るまではそう思ってたよ。

 

明久「……なんか、サラッと馬鹿にされたような気がするんだけど。」

 

秋希「とにかく、零次の味方であるαクラスのメンバー全員の点数が進級した時と同じくらいか、大幅に上がっていれば、誰も文句なんて言えないでしょ。そして、それを手っ取り早く証明するのに、試召戦争は最適なのよ。点数が表示されるし、何よりαクラスメンバーのほとんどの成績は大体知られてるわけだから。」

 

 αクラスのメンバーの半数は、奇しくも去年、成績トップクラスだった人達だ。正直、零次と絡んだくらいで点数が何百点も落ちるほど、彼らの努力は陳腐なものでは無い。

 

秋希「………………ま、αクラスに関係なく、君には勝ってもらわないといけないけどね。私や姫路さんが負けることはほぼ無いし、土屋君も保健体育なら敵なし。けど正直言って、それ以外で確実にAクラスに勝てる生徒はFクラスにいないのよ。」

 

 島田さんの数学は、Fクラスと見れば確かに高いけど、Aクラス相手ではかなり厳しい。

 秀吉君は、あの木下優子さんの弟だけど、Fクラスに入ってる時点で点数はお察し。

 坂本君は対霧島さん用の作戦があるけど、そんなもの信用ならない。

 あと有望株と言ったら、根民さんがいるけど…………。残念ながら、Aクラスと戦えるほど、まだ点数は高くない。

 

秋希「それにいいチャンスじゃない?ここでAクラスに勝てば、姫路さんと話すキッカケができるし、君の目標も達成できる。もしかしたら、姫路さんと付き合うことも…………、なんてね。」

 

 ………これまでの戦争で、そして今回の戦争でも、姫路さんが十分活躍しちゃってるのは、この際仕方がない。FクラスがAクラスに勝つためには、彼女の存在が必要不可欠だったからね。

 

秋希「そう考えたら、ちょっとはやる気、出るんじゃない?もっとも、坂本君が2対5で負けてしまうような作戦をとると思う?こと作戦の立案に関しての頭の良さは、圧倒的に坂本君に軍配が上がるよ。だいたい、作戦があったら、あの時伝言で伝えているでしょ。」

 

 そもそも零次の戦いって、中学時代の喧嘩が基になってるから、作戦なんて無いに等しい。あったとしても、他人にやらせるくらいなら、自分が動いた方がいい、と考えるのが零次だ。

 

明久「…………それもそうか。」

 

秋希「………………とにかく、頑張ろうか。DクラスやBクラス以上に一筋縄ではいかないだろうけど…………。自信を持って。今の君は強い。」

 

明久「…………うん!」

 

 さあ、行こうか。標的はAクラス。勝ったら明日からシステムデスクだ。

 

 …………私は全く興味無いけど。

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