バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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小問16(3) 失うは級友(とも)か誇り(プライド)か

 今、俺達のクラスは混乱に陥っている。だがその理由は分かっている。

 

「こ、降参……?」

 

「い、一体なぜ……?」

 

 西京が突然、降参宣言をしたからだ。吉井の勝利に狂喜乱舞しているFクラスと違い、こちらはその理由を各々必死で考えている。

 

[フィールド:日本史]

2-A 西京葉玖・・・35点

 

VS

 

2-F 吉井明久・・・57点

 

 だが、彼女が降参する直前の点差は、絶望的という訳ではなかった。正直あの場面から、調子に乗った吉井が不意を突かれて負けるのではないか、なんて考えが一瞬頭をよぎった程だ。

 そういうわけで、誰もその真意には辿り着けてないようだ。……まあ、俺も未だ見当がつかない訳だが。

 

「………ん?お、おい!皆!これ……。」

 

 そんな中、一人の男子生徒が、何かを発見したようだ。俺もその声のする方へ向かった。

 

[フィールド:日本史]

2-A 梶恋太 ・・・345点

 

2-A 久保利光・・・402点

 

2-A 横沢芽衣・・・333点

 

「あの~…、高橋先生~。もうそろそろフィールドを消してくれませんか~?」

 

 そこにあったのは、三体の召喚獣。そして、この集団の奥の方から聞こえる声。そこに目を向けると、召喚獣の状況と同様に、久保と梶に身柄を拘束された横沢の姿があった。

 

美穂「えっ!?か、梶くん、一体何を………。」

 

「何を、って言われてもねぇ~…。彼女が、変なことをしようとしてたんで、咄嗟に止めたんスよ。」

 

 ……変なこと、だと?大体想像できるが、一応聞こうか。

 

「…………ちょっと、私の崇高な行いを、変なことだなんて言わないで頂戴?あの堅物クソ真面目に代わって、観察処分者のクズを叩き潰してあげようとしたのよ?それを邪魔する方がおかしいのよ!」

 

 …………やっぱりか。本当、豊嶋とコイツは救いようがない。

 

「……何が、邪魔する方がおかしい、ですか。一騎討ちで決着を着ける、というのは霧島さんの同意のもとで決めたルールですよ。それを捻じ曲げる方が、おかしいと思いますが。」

 

「何言ってんのよ。あのクズ共が勝ちたいからって、一方的に有利なルール押しつけてんのよ?それに従う必要がどこにあんのよ?大体、カンニングしてる観察処分者に負けそうになってたくせに、指図されるいわれは無いわよ!」

 

 ………おい、もうその辺にしとけ。でないと……………。

 

「カンニング……?あの点数は、本人の努力そのものだと、私には見えますけど。大体、何かそのような証拠があるとでも言うのですか?」

 

「あの点数が何よりの証拠でしょ!?観察処分者があんな点数取れるわけ…。」

 

ズシャッ

 

[フィールド:日本史]

2-A 梶恋太 ・・・345点

 

2-A 久保利光・・・402点

 

2-A 横沢芽衣・・・333点→戦死

 

利光「…………いい加減にしなよ。」

 

 ほら見ろ、久保がキレた。その形相は、どことなく俺に似てるな。

 

利光「さっきまで黙って聞いていたけど、君は吉井君の何を知っているんだい?少なくともこの一週間、僕達Aクラスを倒すために必死に勉強して来た彼の姿を、僕は見てきた。そして、その努力が今回の戦争で、点数うという形で現れたんだ。……その努力を否定する者は、誰であろうと許さない!」

 

 なぜだろう。その力強い決意からは、私怨が見え隠れしている気がするのだが…。明久関連の事象だからか?

 

「ちょっと、梶!いい加減放しなさいよ!葉玖もさっさと助けなさいよ!」

 

「あれだけ自分勝手なことを言っといて、まだ騒ぐつもりっスか?戦死者は補習室行きっスよ。」

 

「梶君の言う通りです。それに、Fクラスが勝ちそうになった時に、また邪魔されることがあっては、それこそAクラスの沽券に関わります。」

 

 こうして、横沢は仲間であるはずの梶と西京に捕らえられ、教室を出ていった。

 

零次「……さて、霧島。お前の計画ではこの後、佐藤美穂、工藤愛子、久保利光が順に選出され、その後にお前と俺が続く予定だったが……、全て破棄させて貰う。」

 

翔子「……え?」

 

零次「いや、正確には久保を出さない代わりに、俺が用意した補欠に、次の試合入ってもらう。いくら級友を止めるためとはいえ、今の戦いに関係ない奴が、召喚獣を出している時点で、ルールを破ったことと同義だ。」

 

「でも、久保君をメンバーから外して大丈夫なのかい?補欠が誰かは知らないけど、学年トップクラスの学力を持つ、彼の代わりを勤められる人がいるとは思えないけど……。」

 

零次「栗本、お前はさっきの戦いの何を見ていた?学力だけで試召戦争の結果が分かると思うな。……それに、Fクラスで警戒すべき特記戦力4人のうち、2人が早々にいなくなったんだ。残りの2人のうち、どちらか1人を倒せば、勝利は固いだろう。」

 

 そう言って、俺はフィールドで不気味に揺れている長身の男子生徒に目を向けた。

 

 さあ、ここから反撃開始だ。




~後書きRADIO~
零次「さあ、第13回後書きRADIOの時間だ。」

秋希「今回は3回戦……ではなく2回戦直後のAクラス陣営の話ね。」

零次「ああ、そうだな。……結局、前話との繋がりを考えて、前回の後書きRADIOで語った没シーンの名残りを使うことになったな。」

秋希「ま、それよりも今回は、Aクラス対Fクラス戦の休憩話だから、折角だし、第二学年の成績を見ていこうか。」

零次「唐突だな……。まあいい。じゃあ、まずはAクラストップ10を見ていこうか。」

1位 双眼零次(????点)
2位 霧島翔子(4412点)
3位 久保利光(3997点)
4位 工藤愛子(3782点)
5位 佐藤美穂(3779点)
6位 木下優子(3761点)
7位 西京葉玖(3574点)
8位 豊嶋圭吾(3499点)
9位 梶恋太 (3483点)
10位 横沢芽衣(3398点)

零次「俺の点数は、今回の戦争でおそらく公表するだろうから、伏せておくが、本作の振り分け試験の結果はこんな感じだ。」

秋希「本来は木下さんを飛ばしたトップ8が一騎討ちに出る予定だったのね?」

零次「ああ。木下は、前に自分の弟をボッコボコにしていたところを『誰かさん』に目撃されてな…。ソイツに呼ばれた先生に現場を見られて……、事情聴取の後、原因が試召戦争がらみだってことと、次にFクラスがAクラスに宣戦布告する予定だという、秀吉の証言から、『今回の戦争に不参加』という………一応、厳重注意という形でその話は終わったんだ。」

秋希「なるほど。秀吉君が戦争不参加の理由は察しが付いてたけど、姉が不参加なのはそういうことだったのね。所謂、喧嘩両成敗、と。」

零次「そういうことだ。」

秋希「それじゃ、次は学年全体のトップ10を……と言いたいけど、これは次の休憩話に持ち越そう。」

零次「マジか。というか、次の休憩話って……………、あったな。予定通りなら次々回に。」

秋希「それじゃあ、次回予告をよろしく!」

零次「次回はAクラス対Fクラスの3回戦だ。俺が久保の代わりに選んだ補欠とは誰なのか!……………って、αクラスのメンバーが限られてるから、もう『アイツ』しかいない訳だが……。」

秋希「アイツ…………。一体何山君なんだ!?」

零次「お前、ワザと言っただろ。」

秋希「そ、それでは!」

「「次回もよろしくお願いします!!」」

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