秋希「まず単刀直入に言うと、零次は霧島さんに匹敵するくらい、頭がいいのよ。」
思い出していたのは、Dクラスとの戦いが終わった次の日の朝、近衛が話していたことだった。
秋希「処暑中学には、『金の卵』なんて大層な呼び名の制度……と言っても、生徒会が勝手にやってることだけど……そういうのがあってね。学力が低い生徒が多い処暑中学の中で、ずば抜けて良い成績を修めた生徒を不良生徒から守るために、四十年ほど前に作られたものでね。これに選ばれた生徒は、生徒会から、安全な学校生活を保障してもらえるのよ。……もっとも、この制度自体、処暑中学の関係者以外には知られてないけどね。十年に一回適用される生徒がいるかどうかってレベルだし、評判が悪い学校だから、成績がいい生徒がいたって、どうせ井の中の蛙だと思われてるだろうし……。」
確かに近衛の言う通りだ。処暑中がどれほどレベルの低い学校なのかは、俺も正確には分からんが、そんな生徒ばかりとなると、テストの難易度だって、低く設定されるはずだ。そこで満点を取ったって、決して威張れるものでもないだろう。
秋希「……話を戻すわ。処暑中のテストは、偏差値が低いくせに、出される問題の難易度は、実は一般的な市立中学のそれとほとんど変わらないのよ。当然……って言い方も失礼だけど、周りの連中の点数は殆どが一桁。クラスに数人ほど二桁の点数を取る人がいても、精々20点代前半が関の山。そんな中、零次は全教科で100点満点を取ったのよ。……その後、零次がどうなったか、大体想像つくわよね?」
雄二「…………出る杭を打つ勢いで、周りの連中が零次をいじめにかかったんだろ?」
秀吉はどうもピンと来てないようだから、俺が答えた。
秋希「大正解。しかも、零次って基本無表情だから、なおのこと癇に障ったようでさ。……………………そんな時、いじめの現場に偶然居合わせた生徒会長に助けられてね。それが、零次が『死神』の異名を持つ持たないの分岐点だったのよ。」
そこからの近衛の話を纏めるとこうだ。
いじめから救われた零次は、その後『金の卵』に認定された。
その直後に零次は生徒会長に頼み込んで、護身術の体で喧嘩の技術を教わった。奴に恩を感じているというのもあるが、いくら『金の卵』に認定された生徒だとしても、学校外での出来事は生徒会の手にも負えないし、零次自身も生徒会に迷惑をかけたくなかったそうだ。
そこから零次は急成長を遂げ、学校内では勿論、周辺の他校相手の喧嘩でも、もはや敵なしと言われるほどになった。
そんな時に、当時の友達(零次自身はそんな風には思ってないようだが)から、悪ふざけ半分で、『死神』の異名をもらった。学校内外にこの異名が広がるのに、時間はかからなかった。
秋希「こうして、『死神』の名前だけが独り歩きした結果、零次は
道理で去年、アイツの噂があちこちで流れていたわけだ。殆どはくだらないもので、結局ひと月とちょっとで消えては新しい噂が作られるを繰り返してたが。
…………そう言えば、最近アイツの噂を耳にしないな。いや、よくよく思い返したら、『翔子の同性愛疑惑』や『俺と明久の交際疑惑』も、いつの間にか耳にしなくなったな……。とくに後者は、
秋希「それに、零次って実は、非好戦的……平たく言えば争いごとは好きじゃないのよ。だから喧嘩でも、自分がどれだけ不利な状況に陥ってたとしても、自分から手は出さない。相手の攻撃を躱し、時には同士討ちを狙い、相手が諦めるのをひたすら待つ。戦意を崩し、自らに向かう意思を砕く。これが、零次が『死神』と呼ばれる本当の理由。」
……そうだ。アイツとの喧嘩を思い出してみれば、確かに双眼は、俺を挑発してきてはいたが、殴りかかってくることは、ほとんどなかった。あっても、それらは全て、俺の攻撃を利用したカウンターだった。
そして、アイツはずっと……、俺のことを、ため息をついては哀れむような目で見ていた。
秀吉「むう……なんか、想像と全く違うのう……。」
秋希「あれ?秀吉君は零次と一度か二度会ってなかったっけ?」
雄二「何?それは本当か!?」
それにしては、終始目を丸くして聞いていたが……。もしかして、秀吉お得意の演技か?
秀吉「う、うむ……。じゃが、ワシが聞いておるのは、零次がテストで手を抜いておったことと、この学校をよく思っとらんこと、それから、去年の間はずっと不良のふりをし続けてきたことだけじゃ。今近衛が話しておったことは、ほとんど初耳なのじゃ。」
秀吉の話は。コイツがこんな場面で嘘を言うとは、当店思えない。信じてもいいが、謎しか出てこないぞ?
テストで手を抜いていた?それが本当なら、近衛が話した『双眼が賢い』という話も、アイツがAクラス所属なのも辻褄が合わない訳ではない。だが、なぜ去年は手を抜いていたのか、そしてなぜ今になって、真の実力を明かすことにしたのかが分からない。
文月学園をよく思ってない?……いや、これはまだ納得できる。近衛も言ってたように、アイツは酷い扱いを受けていたんだ。それで学校の印象が変わらないという方がおかしい。となると、テストで手を抜いていたのも、これが理由か……?
そして、不良のふりだと?アイツ、そんなことしてたのか。俺から見たら、かつて俺と喧嘩した頃と何も変わってないようだったが……。
秋希「……と、とにかく!話を纏めるわ。私の知っている零次は頭がよくて、喧嘩が強い。そして、独特な戦いかた故に、集中力も並大抵のものじゃない。もし、その集中力をもって召喚獣を操り、喧嘩の技術を召喚獣にトレースしてきたら、Fクラスじゃ…………、悔しいけど、私含めて誰も太刀打ち出来ない。……………これが、今私が語れる零次の力よ。」
その近衛の話に俺の思考は途切れてしまった。
・・・
今の教室中の様子を言葉で表すならば。
驚愕。
これがしっくり来るだろう。
今、私達Fクラスを代表して戦いの場に立っているのは、姫路瑞希さん。彼女の強さを私はもちろん、Fクラスも、敵であるAクラスも認めている。
そんな彼女はこの数日間で、去年学年首席を維持し続けた霧島さんに迫る点数を叩き出した。だから、誰もが現在のAクラス代表である、零次の敗北を確信していた。
しかし……。
[フィールド:総合科目]
2-A 双眼零次・・・5129点→1129点
VS
2-F 姫路瑞希・・・4409点→pass→410点
現実は逆だった。零次は腕輪の能力を使い、姫路さんの召喚獣を瀕死に近い状態に陥れた。普通に戦ったとしても、彼が十分に勝てる状況だったのにも関わらずだ。
瑞希「…………何が……起こったん……ですか……?」
彼女から、うっかりかどうかは知らないけど、そんな言葉が漏れ出る。
周りの反応は……、概ね予想通りね。
吉井君は、零次の召喚獣が付けている腕輪が原因だということには気づいたようだけど、肝心の効果までは分からないでいるようだ。彼の場合、考えが表情に出るからわかりやすい。
坂本君は、おそらく能力まで推測できているだろうけど、あえて口に出さない……つもりかな?それとも、判断材料が少なく確証が無いから、答えを待っているのか。
他のクラスメイトは…………どうせ、理解できてないだろうね。そもそも、成績優秀者につけられる腕輪の存在を知っているかどうかも怪しい。
対するAクラス側は…………多分、零次が口止めしてるのかな?それとも、彼らも理解が追い付いてないのか。多分、後者だろうね。ほぼ全員が為す術もなく一瞬で零次にやられたわけだから。
だから、彼女の疑問に答える者は誰もいない。
零次「………逆に、こちらからも質問させて貰おうか、姫路。お前は何が起こったと思う?」
零次本人を除いて。まあ、私も答えを知っているけど、聡明な彼女にわざわざ答えを教えてあげるほど、仲良くなった覚えはないからね。
零次「俺は質問には様々な種類があると思っている。相手の『興味・関心』を引き出すための質問。己の推測に対し『確信』を得るための質問。その他にも色々質問をする場面があると思うが、どんな状況においても、『自分の中に答えを準備している』という点では共通している。……ある二つの状況を除いてな。」
そう言って零次は、先程まで姫路さんに合わせていた視線を、一瞬だけ床の方に伏せ、睨み付けるようにして、また姫路さんに目を向けた。
零次「それは、目の前で起きた状況を飲み込めず、『逃避』するための質問と、答えを知りたいだけの『怠惰』から生まれる質問だ。それらには自分が想定した『答え』が無い。そんな、思考の介在しない問いかけに答えるつもりはない。」
実際、零次はうんざりしていた。おそらく零次の目は、今の彼女の裏側に、かつて自分に絡んできた処暑中の連中を重ね合わせて見ている頃でしょうね。
奴等は課題をしょっちゅうサボっては、零次に答えを写させようと画策していた。その時は零次に力は無く、当然『死神』なんて異名も持っていない、ただの模範生だった。幾度か断っては、暴力の餌食になっていた。その回数はもう覚えちゃいないけど、そんな奴等を今でも許す気がないことは、明白だった。
零次「……
瑞希「!!」
その言葉に、姫路さんは咄嗟に自分の召喚獣を、足元まで移動させた。けど、それは最善手のように見えて悪手だ。
零次「………そこで
その通りだ。これは試召『戦争』なんだ。卑怯汚いも作戦の内、勝てば官軍負ければ賊軍だ。今私達は、窮地に陥ってるんだ。そこでバカ真面目に、もう一度勝負の仕切り直しなんてやっていられるほど、悠長な場面ではないのだ。
零次「そもそも、だ。姫路、何故Fクラスが上位クラス二つに勝利できたか、本気で考えたことがあったか?お前が試験を途中退席したことは、あの場にいた先生方はもちろん、生徒だって知っていたはずだ。」
……あ。そういえばそうだ。姫路さんが途中退席したことは、私が試験を受けた教室にも届いてきていた。それなのに、姫路さんがFクラスに居ることをDクラスの生徒は誰も知らなかった。
……まさか、本当に誰も知らなかったって訳じゃない筈なのに……。
零次「坂本の策がうまい具合に嵌った?お前がFクラスのために頑張ったから?逆にFクラスが一丸となってお前のために頑張ったから?…………どれも違う。その答えは『慢心』だ。Dクラスは『Fクラスが相手なら楽勝だ』と高を括り、Bクラスは『
確かに零次の言う通りだ。
Dクラスが私達をクラスで弱者だと判断せずに、しっかり調査をしていれば、下手すれば、姫路さんが試験を受けている間に、やられてしまうことだってあり得たはずだ。
Bクラス代表の根本くんだって、決して頭が悪い方ではないんだ。もう少しマシな手段を取っていたら、負けていたのは私達の方だった可能性が高い。
……そう考えてしまうと、今まで私達が勝利を収めてこれたのは、『坂本君が考えた策略がすごい』というよりも、『相手が私達を侮っていただけ』という、陳腐なものに成り下がってしまうね。……正直、そんな事実、受け入れたくないんですけど。
零次「そして、それはお前達も同じだ。俺が代表であることも、それが正当な評価だということも、先生方に聞けばすぐ分かったことだろう?だが、お前達は教師という存在を恐れているのか知らんが、そんな単純なことでさえ聞くことも出来ず、生徒共が垂れ流す、根拠無き妄想で固めた不確かな情報源を、さもそれが『事実』だという風に鵜吞みにする。そのくせに、今目の前で起きている現実は、自分達の情報収集不足を棚に上げて否定する。一体いつから、お前達はそんなに偉い立場にいると思い上がっているんだ?そんな奴らが
零次、この状況を何気に楽しんでない?話の相手がいつの間にか姫路さんからFクラスに変わってるし、最早、顔が完全に悪役のソレじゃないか。
瑞希「どう……して……。」
零次「…………?」
瑞希「どうして……、そんな酷いことが言えるんですか!?」
ここでようやく、姫路さんが口を開いた。てっきり、もうずっと放心状態のまま、零次に呆れられるかと思ってたよ。
零次「酷い?俺はFクラスを客観的に見つめた事実を言っただけなのだかな……。それを酷いと言えるってことは、お前はまだまともな感性があるってことだ。それだけはちょっと安心したよ。」
瑞希「…………どういうことですか。その言い方だとまるで…………Fクラスがまともなクラスじゃないと言ってるみたいじゃないですか!!」
珍しく私と姫路さんの思考が一致した。
でも、それも仕方ないんじゃない?クラスメイトをもう一度ちゃんと見てみなよ。学園側から不名誉な称号を与えられたバカに、盗撮・盗聴を生業にしている男子。それから、特定の生徒に愛か憎しみか判断できない暴力を振るう帰国子女。はては進級当初から事あるごとに姫路さんにラブコールを送ってる生徒が数名いる。
これをまともなクラスだとは、胸張っては言えないでしょ…。
零次「そう聞こえたのなら、素直に謝罪しよう。だが、そう思われる要因である、一部の問題児のおかげで、クラスの印象が悪くなっているのも、事実だろう?」
瑞希「誰が問題児ですか!?Fクラスの皆は、確かに成績は良くありませんし、勉学をサボり気味かもしれません……。でも、それだけで、どうしてそこまで酷いことを言われなければならないんですか!!点数に出てこない部分にだって、大事なことはいっぱいあるのに……!」
少なくとも、『問題児』というのは、姫路さんではないわね。吉井君か、坂本君か、あるいはその両方なのか、全く別の誰かなのか……。
まあ、そんなことはどうでもいい。問題は姫路さんが発した最後の台詞だ。
『点数に出てこない部分にも、大事なことがある。』
残念ながらその思考は、完全に零次の理解の外だ。
零次が処暑中学にいた頃は、Fクラスに比肩する程のバカの集まりであり、自らに災難をもたらす奴等ばかりだった。文月学園では逆に、エリートや、それを騙る平凡な先輩(笑)に幾度となく冤罪をかけられた。
これらの経験からなのか、零次の中では既に、人間は学力の有無に関わらず、ロクな奴がいないという結論を出してしまったのだ。それ故に、零次は人を欠点でしか見ることが出来ない。
もちろん、まともな人間がいることは、零次だって頭で理解できている。でも理解しているだけだ。だから、零次は今まで誰一人として、心の底から信用したことはない。…………私を含めて、ね。
ところで、これまでにどのくらい時間が経ったんだろう……。ああ、零次がそろそろこの状況に痺れをきらすタイミングだ。これはもう、姫路さんに勝ち目無いね。
零次「ハァ…………、姫路。」
トントントントン……。
小気味良い靴音が教室に木霊する。
瑞希「……何ですか?」
零次「……………………恨むなよ?」
その言葉と同時に、零次の召喚獣が動いた。
[フィールド:総合科目]
2-A 双眼零次・・・1129点→1109点
VS
2-F 姫路瑞希・・・410点→306点
瑞希「え…………。」
零次「何を驚いている?試召戦争はまだ終わってないぞ。それどころか、『始まってすらいなかった』というのに……。」
瑞希「………何を…言ってるんですか?」
零次「だってそうだろう?俺はさっきまで、召喚獣を一歩たりとも動かさず、お前が動き出すのを待っていたんだ。加えて、お前は俺の話に釘付けになり…………実際は違うんだろうが、召喚獣を動かしてない。これで勝負が行なわれていると思うやつがどこにいる?」
というか、零次があまりにも喋りすぎたせいで、戦争中だってことを危うく忘れるところだったのだけれど。Fクラスに至っては、もう忘れてるんじゃないかな?
零次「それに、俺は攻撃する前に、合図を送ったぞ。『恨むな』とも言った。それなのに、防御するわけでもない、回避する素振りもない。ボーッとつっ立ってりゃ、召喚獣がダメージを受けて当然。むしろ、これでまだやられてないのが不思議なくらいだ。」
瑞希「だったら……何故今まで攻撃してこなかったんですか!?隙があったというなら、そうすれば良かったじゃないですか!」
零次「お前、それ本気で言ってんのか?俺とお前とでは、取り巻く環境が真逆なんだよ!お前が多少なりとも卑怯なことをしたところで、『お前は悪くない』だの『油断していた自分が悪かったんだ』だのと、味方は勿論、敵すらもお前の行ないこそが正しいと擁護する。だが、俺が同じことをすれば、敵は勿論、味方すらも俺を非難する。
加えて、零次が善行をしたところで、『点数稼ぎだ』とか『余計なお世話だ』とか言われる始末だし、今回みたいに高得点を取ろうものなら、『カンニングだ』とか『教師を脅迫して、点数を水増ししている』だの『他の生徒を脅迫して替え玉を行なわせてる』などと、根も葉もない噂が瞬く間に拡散する。私や零次本人がどれだけ事実を述べようと、騒ぎは簡単には収まらず、さらには私に対して『零次の魔の手から解放してあげる』などと、的外れどころか的すら見てないような言葉を平然と吐く輩まで現れるおまけ付き。
零次関連以外でも、思いつく限りでは、『吉井君と坂本君』、『霧島さん』、『秀吉君』などに関して、事実無根の噂が、さも真実かのように横行していた。まるで、情報の真偽をまともに判断できない人間をわざと集めているのではないかと、思ってしまうほどに…………。
だからこそ、何度も言える。
零次「…………だから、お前は甘いというんだ。自分を取り巻く環境がどれだけ恵まれていると思ってるんだ?お前が声を発さなくとも、お前の異変に気づき、行動してくれる奴がいることが、どれだけ素晴らしいことか……。お前のために、己の名声が下がることも気にせずに、どんなことも平気でする人間がいることが、どれだけ幸せなことなのか、分かっているのか?それに気づいてないから、もしくはそれが当然だと心のどこかで思っているから……。」
根本恭二に脅迫されるのではないか?
…………零次、ついに爆弾を落としたな?『情報屋』から、この手はあまり好ましくないと、言われただろうに。
瑞希「なんで……それを知ってるんですか…………。」
零次も『やっちまった』って、内心思ってるのかな?顔を少し伏せている。
瑞希「まさか……あなたが……。」
零次「だとしたら、どうする?怒りに任せてその剣を振るうか?俺に謝罪を要求するのか?」
前言撤回。やっぱり零次は零次だった。自分の台詞に後悔なんてしていない。というより、さっきの台詞はわざとだ。今までの悶着状態を打破するために、わざわざ姫路さんを煽ったんだ。……本当に煽るつもりで言ったかは知らないけど。
瑞希「……そうですね。でもそれは私じゃありません。Fクラスの皆にです!……あなたに勝って、そして、Fクラスの皆をバカにしたことを謝ってもらいます!!」
おお。見事なまでの勝利宣言。でも、それって所謂敗北フラグだったような気が……。
零次「……いいだろう。それがお前の決意なら、俺もそれ相応の力で相手しよう。……全力で来い。」
瑞希「言われなくても!」
その言葉と同時に姫路さんは召喚獣を動かした。それは何の変哲もない、ただの突撃。当然、零次は難なく躱す。
瑞希「…………かかりましたね。『熱線』!」
零次「しまった……!」
まあ、このくらいは想定しているよね。姫路さんの腕輪の能力は『熱線』。文字通り、高熱の光線で辺り一帯を焼き尽くすものだ。いくら零次でも、この至近距離で腕輪の能力をくらったら、ひとたまりもない。
ただ………………。
零次「なんてな…………。」
[フィールド:総合科目]
2-A 双眼零次・・・1109点
VS
2-F 姫路瑞希・・・306点→211点
『腕輪が使えない』となれば、これらの仮説も無意味なものだけどね。
瑞希「!!…………どうして…………。」
零次「またか…………。貴様の脳みそは、紙面上に書かれた問題を解くことと、四肢を動かすこと以外に機能しないのか?それとも、フィールドに散らばる謎の残骸が見えないのか?もしそうなら、腕のいい眼科医でも紹介しようか?」
確かに零次の周りには、どこかで見たことがあるような金色に輝く金属の破片が散らばっている。零次が攻撃を仕掛けに行った時に、零次の点数が少し減っていたのは、その破片を踏んでしまったからだろう。
零次「どうした。終わりか?」
瑞希「…………いえ。まだです。」
零次「いや。終わりだ。」
[フィールド:総合科目]
2-A 双眼零次・・・1109点
VS
2-F 姫路瑞希・・・211点→戦死
瑞希「…………そ、そんな…………。」
零次「お前が強くなれたのは、Fクラスが好きだから…………だったな。なら、こちらからも言わせて貰おう。俺はAクラスが、否、お前達第二学年が嫌いだ。人を噂だけで判断し、下位クラスと言うだけで嘲笑う上位クラスが。互いに傷を舐め合い、上位クラスにいる奴の名を借りて、威張り散らすような下位クラスが…………!人の成長を!努力を!『カンニング』の五文字で汚すお前らが大嫌いだ…………。だからこそ、振り分け試験に本気で挑み、高みから見下ろす女王を、玉座から引き摺り下ろす必要があったのだ。」
零次が文月学園に抱いていた不満の一部を吐き捨てた。
零次「…………これが、俺がここまでの点数を取れた理由だ。」
こうして、Fクラスの下剋上は、誰もが想定していなかった魔王に敗北する形で幕を下ろした。
~後書きRADIO~
秋希「さあ!今回も後書きRADIOの時間がやって来たよ~!」
零次「今回で第16回だ。……なんだかんだ、長かったな。ここまで来るのに。」
秋希「今回は前半は坂本君の回想、中盤・後半は零次の独壇場だったね。……本当、零次に勝てる奴がいるのかねぇ……。」
零次「さあな。それは、今後の展開次第だな。少なくとも、現状対抗できるのは、お前くらいしかいないんじゃないか?」
秋希「それが冗談じゃないから、笑えないんだよね……。今後、Fクラスが成長するような事がなければ、尚更、ね……。」
零次「実際原作じゃ、明確な成長が見られたのは、明久と坂本くらいじゃないか?あくまで、点数だけに注目したらの話だがな。」
秋希「確かに、あの二人は点数が上がっても、中身……というか思考までは変わって無かったよね……。いや、変わっても困るけども、変わらないとそれはそれで、これからも問題を起こしそうで……。う~ん……。」
零次「まあ、悩むのは後にしてくれ。今回、本文が長いから、ここにあまり時間を取れないんだ。」
秋希「……いっそのこと、今回はさっさと切り上げる、というのは?」
零次「……あまり好ましくないんだがな……。今回はまあ、しょうがないか……。ないのか?」
秋希「悩むのは後にしたら?というわけで……。」
「「次回もよろしくお願いします!!」」
零次「まあ、次回かその次の回でこの戦いも終わるし、いいか……。」