バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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小問16(7) 消化試合

高橋「4対2でAクラスの勝利です。」

 

 淡々と伝える高橋先生の声を、俺は背中越しに聞いた。

 ついでに、Fクラスの悲痛に叫ぶ声も。

 

翔子「…………。」

 

利光「零次……。」

 

 そして、勝利を収めた俺を出迎えたのは、決して温かいとは言えないクラスメイトの視線。

 

零次「なんだ?文句があるならはっきり言ってくれ。だが、謝りはしないぞ。」

 

 堂々とあんなことを言ったんだ。クラスの奴等から非難されても当然だ。

 だが、そこまで言われるほどに、Aクラスの評価が地の底スレスレを這っていることを、明確に言わねば、奴等は自分を省みることはなかっただろう。

 

翔子「……零次…………よく、頑張った。」

 

 だが、霧島から送られたのは、称賛の言葉だった。

 

零次「……誉められることをした覚えはないが。」

 

翔子「……そんなことはない。もし、あそこで戦っていたのが私だったら、負けていたかもしれないから。……素直に受け取って欲しい。」

 

 それに同意するかのように、クラスメイトも次々と声をかけてくるが……。まったく、随分と都合がいい奴等だ。

 そうやって俺に媚びれば、牙が己に向くことはないと考えているのか?それとも、二度も腕輪の能力(ちから)で殲滅戦を行なっただけで、俺のことを畏怖する対象として見るようになったのか?一番考えられるのは、今までと同様に、霧島に同調してる線だが……。

 …………ま、そうやって疑っていったら、キリがない。今回だけは素直に受け取ってやろう。

 

利光「僕は、一、二個ほど言いたいことがあるけど……、わざわざ今話すことでもないからね。まずは、目の前のことを終わらせてきなよ、零次。」

 

零次「そうか。…………それじゃ、行くぞ。霧島。」

 

翔子「……?」

 

零次「忘れたか?試召戦争が終わったら、何をするか。もっとも、このまま終われやしないが……。とにかく、Fクラスのもとへ向かうぞ。」

 

 さあ、行動開始だ。

 

 

・・・

 

 

「そ、そんなバカな……。」

 

「姫路さんが……負けた……?」

 

 Fクラス陣営に来ると聞こえてきたのは、予想通りの言葉の数々だった。どいつもこいつも、姫路のことを完璧超人か何かと勘違いしていないか?奴とて人の子だ。失敗も敗北もあるだろうに。

 

零次「……さてと、負け組代表。交渉といこうか。」

 

雄二「……交渉、だと?」

 

零次「ああ、そうだ。どうせ、先生が『勝負がついた』と言ったところで、その勝者が俺な訳だ。納得するやつなど皆無だろう?」

 

 そう言い終えると同時に、あちこちから『姫路は負けてない』だの、『向こうがズルしてなければ、勝ってた』だの、『あんな勝負無効だ』だのと、馬鹿共が騒ぎ立てる。その様子は、奴らを『人間』というカテゴリーで見ることを、嫌悪してしまうほどだ。…………動物園の猿でも、ここまで騒げんぞ。

 

零次「だから、このまま七戦目に移ろうと思う。こっちからは、霧島が出る。というか、彼女以外の選出は認めん。」

 

翔子「……どうして?」

 

 疑問をぶつけてきたのは、意外にも霧島の方だった。

 

零次「今回の戦争では、勝利したクラスには通常の試召戦争で発生する報酬に加え、『負けた方がなんでも言うことを聞く』という、敗北クラスへの命令権があっただろう?Fクラスの数多の条件を了承する代償として加えられた、この条件を提唱したのは誰だったかな?」

 

雄二「翔子だろ。それがこの交渉と、どう関係するんだ。」

 

零次「その肝心の霧島は、今回の戦争で誰と戦った?………誰とも戦っちゃいないだろ?そのくせに、命令権だけは行使する、と言うのはおかしな話じゃないか?『働かざる者、食うべからず』って諺を真に受けるなら、『戦わざる者に、行使する権利はない』と、言ったところだろう。」

 

 なら、俺が命令権を使えばいい、って?バカか。いくら勝負の決まり事とはいえ、未だに俺のことを下に見ているFクラスの連中が俺の命令を素直に聞くとは思えない。

 

雄二「……一理ある。だが、仮にFクラスが勝ったとしても、四対三でどのみちAクラスの勝利で終わるだろう。それにこの場合、命令権は誰が使用するんだ?戦ってない奴が命令権を使うべきでない、と言うなら、負けた奴には尚更、命令権を使う権利は無いんじゃないのか?」

 

 わざわざこんな交渉をしてくるんだ。お前が命令権を使いたがらないのは明白だ。坂本の目が、そう語ってるような気がした。

 

零次「そうだな……。ならば、この勝負でFクラスが勝ったら、設備のランクダウンくらいは免除しようか。それと、例の命令権も、七戦目の勝者に渡す。これでどうだ?」

 

雄二「……いいのか?」

 

零次「負けた奴が、命令権を使うべきじゃない。そう言ったのはお前だろう?それに霧島は『負けた方が言うことを一つ聞く』と言っただけだ。この『負けた方』というのを、『クラス単位』でなく、『個人』と解釈すれば、何もおかしいことはあるまい。」

 

 若干屁理屈っぽい気もするが、霧島がこの提案に何も言わないのであれば、このまま押し通すのみだ。実際、異議を唱えてこないということは、それでも構わないと思ってもいいだろう。

 

雄二「……分かった。いいだろう。その条件、乗った!」

 

零次「そうか…。じゃあ、話も纏まったところで、この事を先生に報告に言ってくる。二人はそれぞれクラスの奴等に話を通してきてくれ。」

 

雄二「ああ。」

 

翔子「……分かった。」

 

 

・・・

 

 

高橋「……それでは、両クラス代表の同意により、第七戦目を始めます。各クラス、最後の一人は前に出てきてください。」

 

 高橋先生への交渉も、先生の二つ返事ですぐに終わり、俺はAクラス陣営に戻ってきた。こちらの選出は、坂本にも直接伝えた通り、霧島だ。さて、向こうは誰が出てくるか……。

 

雄二「俺の出番だな。」

 

 やはり、坂本か。近衛も姫路も役目を終えた現状では、彼以外の選択肢はないのだろう。だが、どんな科目を選択したところで、霧島が負けるビジョンが見えないのだが……?

 

高橋「教科はどうしますか?」

 

雄二「……教科は日本史。内容は…………、小学生レベルで方式は百点満点の上限ありだ!」

 

ざわ……!

 

 なるほど、そう来たか。一見、『そんなルール認められるか!』なんて、騒がれそうな発言だが、実際この方式はルールに一切違反していない。

 試召戦争のルールには、『テストの点数を用いた戦争であることを意識せよ』という記述はあるが、『必ず召喚獣を用いること』という記述はない。

 試召戦争で使うのは、あくまで『テストで獲得した点数』だ。召喚獣はそれを使う手段の一つにすぎない。

 

「上限ありだって?」

 

「しかも小学生レベル……。満点確実じゃないか?」

 

「となると、注意力と集中力の勝負になるわね……!」

 

 Aクラスも流石にその勝負内容は、霧島が負けてもおかしくないと感じたようだ。

 

高橋「わかりました。そうなると問題を用意しなくてはいけませんね。少しこのまま……。」

 

零次「先生。重ね重ねすみません。少しFクラスと話をしてもよろしいですか?」

 

高橋「ええ、構いませんよ。」

 

零次「…………ありがとうございます。」

 

 折角だ。坂本の作戦、ほんの少し利用させてもらおう。

 

雄二「なんだ?別にルール違反はしてねぇだろ。」

 

零次「ああ。お前のやり方に文句はあるが、それは今はどうでもいい。一つ頼みがあるだけだ。」

 

雄二「……言ってみろ。」

 

零次「お前の勝負内容はこれからテストを受けて、その点数の大小で勝者を決める、というものであってるよな?ならば…………、そのテスト、俺も受けていいか?そのついでに、須川亮・近藤吉宗・君島博・田中明・柴崎功・吉井明久。以上6名のFクラス生徒にも、同様のテストをしてもらいたいが。」

 

 直接俺が試験を受けている様子を、A・Fクラス全員に見てもらう。どうやらここまでしなければ、俺はずっと『カンニングでAクラスの代表になったクズ野郎』扱いされるみたいだからな。明久も指名したのも、似たような理由だ。アイツの点数を見たときも、Fクラスが『カンニングだ』とか、『あの明久(バカ)が、あんな点数とれるわけない』とか、ほざいてたからな。本当、それしか言えんのかと、心の奥底で思ったね。

 

雄二「……受けるだけなら、別にいいぞ。」

 

零次「ありがとうな。」

 

「おい待てよ。俺はそのテスト、受けるつもりないぞ!」

 

「そうだ!『死神』の分際で、そんなこと勝手に決めるな!」

 

 坂本は素直に了承してくれたが、巻き添えを喰らった須川と近藤は、案の定気に食わないようだ。

 

零次「……やれやれ。明久以外に指名されたメンバーの並びを見て、何も気づかないのか?第六戦目開始前に、名指しで恥をさらされたメンバーだろ。折角、汚名返上の絶好のチャンスを与えたというのに、それを棒に振るのか?もしここで俺より高い点数を叩き出したら、あの時の言葉を謝罪………いや、土下座して詫びてやってもいいのだが?」

 

 もっとも、俺はコイツらが良い結果を残せるとも思ってないがな。このまま言われっぱなしで終わるか、さらに赤っ恥をかくかの違いでしかない。 

 

「……いいぜ!その言葉、忘れんじゃねぇぞ!」

 

 須川に続いて、近藤、君島、田中、柴崎も『双眼相手に負けるわけない』と高をくくる。全く、どいつもこいつも単純(バカ)な奴らだ。

 

零次「…そういう事ですので高橋先生、テスト用紙を計9枚用意していただけませんか。」

 

高橋「わかりました。では、少しこのまま待っていてください。」

 

 そう言って、高橋先生は教室を出ていった。

 ところでこれって、今から作成するってことだよな……。

 

翔子「……零次。なんで、こんなことを。」

 

零次「俺の実力を証明するのに、もっとも好都合だったからだ。ここまでしなければ、俺の認識を改められないと思ったからな。」

 

 これでも改めない奴に関しては、もうどうしようもない。元々期待なんてものはしてないが。

 

翔子「……そう。それでも、何か相談くらいはして欲しかった。これからは、もう少し私のことを頼って欲しい。あなたを冷たい目で見る人は、前より少なくなってるから。」

 

零次「……なら、まずはお前が俺の信頼に値する人間か否か、示す必要があるんじゃないか?」

 

翔子「……どうすればいい?」

 

零次「簡単なことだ。これからテストが行なわれるだが、そこで…………。」

 

 俺は霧島に一つの『約束』をとりつけた。さて、霧島はどうするか……。

 

高橋「では、最後の勝負、日本史を行ないます。参加者の霧島さん、坂本君、君島君、近藤君、柴崎君、須川君、双眼君、田中君、吉井君、以上九名は、視聴覚室に向かって下さい。」

 

 数分後、問題作成から戻ってきた高橋先生の指示に従い、視聴覚室へと向かった。

 ……さて、俺の望む結果であることを願うとしようか。

 

 

・・・

 

 

 簡潔に、結果だけを伝えよう。

 

 概ね予想通りだ。

 

[日本史勝負:限定テスト(100点満点)]

2-F 君島博 ・・・7点

 

2-F 近藤吉宗・・・28点

 

2-F 柴崎功 ・・・6点

 

2-F 須川亮 ・・・32点

 

2-F 田中明 ・・・27点

 

2-F 吉井明久・・・97点

 

VS

 

2-A 双眼零次・・・100点

 

 

 

2-F 坂本雄二・・・71点

 

VS

 

2-A 霧島翔子・・・97点

 

 予想と違うのは、坂本の点数が思ったより高かったことと、明久がポカをやらかしたことぐらいだ。

 だが、結果は5対2で、Aクラスの勝利。そして、『俺達』の完全勝利だ。




~後書きRADIO~
秋希「さてと、第17回後書きRADIOの時間ですね。」

零次「それじゃ早速、前回の話のまとめから行くか。」

秋希「ところで、その前回の話でちょっと零次に聞きたいことがあるのよ。」

零次「………?何かあったか。」

秋希「ほら、あの人に質問する時は、多くの場合『自分の中にあらかじめ答えが用意されている』みたいな発言したじゃない?その後に例外として『気が動転している時』と、『思考放棄している時』の質問を挙げたわよね?でも、他にも『自分の答えが用意されてない』質問があるのよ。」

零次「…………本当にそんなのあったか?全く予想できないのだが。」

秋希「それよ。今の零次みたいに『必死で考えたけれども分からなかった場合』の質問よ。学校だと度々『分からないことがあったら先生に聞きなさい』なんて言われるけども……。この質問に関してはどう思ってるのよ?」

零次「あー……。確かに言われてみれば、それも『自分の中に答えがない質問』だな。だがこの場合は、俺が挙げた二例と違って、『自分で考えても分からなかった』という答えが出たとも解釈できる。…………まあ、実際そう考えていたわけだからな。お前の意見に対して、すぐに納得がいかなかったわけだ。」

秋希「そういうことね。じゃあ、次は姫路さんの腕輪解説に行きましょう。」

名称:熱線
消費点数:50点(総合科目では500点消費)
詳細:
前方に突き出した手から、高熱の光線を発射する。

零次「姫路の腕輪も土屋同様、原作通りの設定だ。まあ、今回は俺の腕輪のせいで不発に終わったが。」

秋希「それじゃあ、次は零次の腕輪を……。」

零次「いや、それはまだ秘密にしておこう。実際、お前の腕輪も詳細説明がされなかっただろ。」

秋希「あー……。そう言えば、そうだったわね。まあ、私の腕輪が特殊なことは、本文をよく見たら、気づくからね……。私達の腕輪のお披露目は、全貌が明かされた時、かしら?」

零次「そうだな。……では次に、前回の話の一番の焦点に移ろう。」

秋希「えーと……、あれか。Dクラスが姫路さんの存在に気づけなかったのは何故か、ってことか。」

零次「ああ。振り分け試験であれだけの騒ぎになったのに、Dクラスの誰も姫路が退席したことを知らないことに……作者は違和感を覚えたらしくてな。『Fクラスを侮ってた』と言ってしまえば、それまでだが、もしかしたら『途中退席者の点数は0として扱われる』ということを知らなかったとも考えられるんだよな。」

秋希「あー、もしかして姫路さんは優秀だから、皆心のどこかで『去年の成績を考慮して、教師陣は彼女をAクラスに入れてくれるはずだ』って、思ってたのかもね。」

零次「もしくは、退席するまでに受けた点数で、振り分けられると思ったのだろう。姫路が倒れたのは、4科目目の試験が始まって十数分後だ。文系でも400点弱の点数を叩き出していることから、3科目の合計点数は1000点を超えててもおかしくはない。そう考えると、FクラスではなくEクラス所属だと思っていた、と考える方が自然だろう。もし、Eクラスから宣戦布告された時は、かなり焦っただろうな。」

秋希「うーん……。でも、こういう振り分け試験のルールも、校則に明記されてたと思うんだけれど……。」

零次「確かに生徒手帳にも校則は記載されているが、そんなもん真面目に読み込んでるやつなど、Aクラスにもいないぞ。」

秋希「………零次、そろそろ次の話題に移ろう。」

零次「コイツは……。まあいい。前回の話で決着が着いた訳だが、今回は、本文でも話した通り、このまま霧島に例の命令権を使わせるのは納得いかないから、急遽第七戦目を行なった、という話だ。」

秋希「確かに、零次のおかげで勝ったのに、霧島さんが『あの命令』を坂本君に下すのは、な~んか釈然としないわね。」

零次「それに、原作小説1巻で一番外しちゃいけない名勝負(?)なわけだからな。姫路対久保もこれに匹敵するが、俺がいる以上、Fクラスには『姫路がいても勝てない』ことを第六戦目で暗に伝えて、目を覚まさせたかったのさ。」

秋希「その意図はFクラスには全く伝わってなかったけどね。」

零次「さて、そろそろ時間だ。」

秋希「次で、長かった小問16も終わりかな?」

零次「その予定だ。」

秋希「それでは……。」

「「次回もよろしくお願いします!!」」
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