バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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小問3-F 少女達は刃を研ぐ

コツ……コツ……コツ……

 

 部室棟の廊下には私の歩く足音が響く。

 所々明かりのついた部屋からは、中にいる人達の話し声が聞こえるけど、微かに漏れ出ている程度で、話している内容までは聞こえない。

 

 私がここに来たのは、この部室棟に活動拠点を持つ、とある部に用事があるからだ。別にその部に所属しているわけではないけども、私の情報収集癖にその部の現部長と目をつけてきたことが付き合いの始まり……だったかしら、ね?

 それからは私だけが知り得る情報を彼女やその後輩達に渡している。

 

コツ……コツ……

 

コンコン……

 

 …………と、そんなことを思っているうちに、目的地に着いたわね。部室のドアを叩き、反応を待つ。

 

……ガチャ

 

?「あややー。お待ちしてましたよー、秋希さん。」

 

秋希「αクラスの入部試験以来ですね…………、青葉先輩。」

 

 広報部部長、青葉文(あおばあや)先輩。この人が私が目的としていた人物だ。

 

 

・・・

 

 

 場所は変わって、部室棟の屋上へ。副部長の木地標示(きじしるし)先輩が加わって、情報交換が行なわれた。

 

文「なるほど……。ようやく、2年Fクラスの出し物も決定したのですね。」

 

標示「全く……今まで何をやってたのですか?清涼祭一週間前になるまで出し物が決まらなかったのは、私が学園に在籍したここ3年では、少なくともありませんでしたよ。」

 

 うーん、やっぱりその辺の嫌味は言われるか。

 

秋希「いやー、今日という日まで綿密な会議をして、ようやく出し物が決まったんで、許してくださいよ。」

 

標示「嘘を言わないでください。朝のHRの時間に、Fクラスの生徒がグラウンドを無断使用して野球をしていたでしょう?」

 

文「そういえば、西村先生が何やら頭を抱えてましたねぇ。」

 

 アハハ……。やっぱりすぐバレるか、こんな嘘。

 

標示「全く……。あなた方Fクラスが問題を起こすせいで、こっちに皺寄せが来てることを、あなたの口から言ってくれませんかね?現状ではそれほど目立つ問題は出てきていないのですが……。バカな彼らのことです。いずれ過激化して、学園外でも問題を起こすようになってからでは遅いのですよ。」

 

文「まあ、ね?無実の人間が将来的に『文月学園を卒業しているから』なんて理由で距離を置かれたら、堪ったものじゃないしねぇ。」

 

 まるで親の敵とばかりに睨み付けてくる木地先輩と、こめかみに指を当てつつ、やれやれと言うような表情をする青葉先輩。二人の表情は全く違えど、考えていることは同じみたい。

 

文「まあ、小言はこの辺にしておきましょう。それよりも、本来の目的達成のために、ミーティングを行ないましょう。」

 

 さて、ここで私達が集まった目的でも話そうかしら。

 

 青葉先輩と木地先輩は元々は今は亡き新聞部に所属していた。しかし、そこで発行していた『文月新聞』は、新聞というよりはゴシップ満載の週刊誌のようなものだった。

 

 青葉先輩はそんな『文月新聞』の在り方に不満を感じ、当時部長の八木先輩に抗議するも、部の体制が変わることはなかった。ま、読者の意見も称賛ばかりを耳に入れて、批判はシャットアウトしている人だ。あの時は青葉先輩一人だったけど、仮に集団を率いていようが、部のほぼ全員の意見書を叩きつけようが、結果は変わらなかったでしょうね。

 

 木地先輩も同様だ。青葉先輩ほどにスクープと呼べるネタに貪欲な姿勢を見せてはいないけれど、彼も読者に向けて正しい情報を発信するという考えで動いていた。

 けれど、それは八木先輩や当時顧問だった八木沢先生からしてみれば、気に食わない考えだったようで、木地先輩が所属していたグループは理不尽なパワハラを受けたり、その他陰湿な嫌がらせを受けたりと、とにかく冷遇されていた。その結果、木地先輩と同じグループにいたメンバーは一人また一人と彼のもとを離れ、それだけでなく、新聞部でない友達すらも、木地先輩に関わらなくなっていったのだ。

 

 そんな中、二人のもとに双眼零次への密着取材の依頼が送り込まれたのだ。おそらく、零次の学外での醜態を晒し上げて、悪者に仕立てよう、というのが八木元部長の考えだろう。

 もちろん、零次にそんなものはない。学内での印象は悪いけど、それだってほとんどは冤罪だ。となれば、青葉先輩達は当然事実に即した記事を書く。だがそれだけでは、八木元部長に突き返されて、書きたくもない内容に記事を無理矢理変更させられるのは、これまでの部の体制から目に見えていた。そこで青葉先輩達は、原稿を新聞発行期限のギリギリに提出することで、無理矢理修正できないようにしたのだ。結果として、八木元部長は怒りで肩を震わせながらも原稿を受け取り、青葉先輩達の『勝ち』で、その場は幕を下ろした。

 しかし、実際に『文月新聞』に掲載されたのは、彼女達の予測に反して、事実無根の誹謗中傷や、やってもいない犯罪の一部始終が書き連ねられた記事だった。しかも、その記事を書いたのは青葉先輩達だとして発行されたのだ。さらにこの記事を読んだ教師の一部が零次を強制連行。危うく零次は退学処分になりかけたのだった。

 

 この事件をきっかけに、ついに先輩達は新聞部との決別を決意した。

 今二人の中にあるのは、文月学園に対する『怒り』。八木元部長のことは当然、彼のような人物を頭に据える決定を下し、八木沢先生のような人をのさばらせ、事実無根の記事を鵜呑みにし、無実に生徒一人を退学させかけた教師陣の方々を許せるほど、彼女達の心はもう広く無くなっていた。

 そこで私は、今の二人の原動力に目をつけ、こう提案した。『学園の弱味になるような事件や物証を探して、白日のもとに晒してやろう。』と。それからは余裕のある時間を見つけては、こうして集まり学園に一矢を報いるための準備をしているのだ。

 

文「あやややや……。つまりは、私達がその『召喚大会』とやらで優勝すれば、学園を揺さぶれる材料とやらを手に入れられる。という解釈で良いんですよね?」

 

秋希「そういうことです。いやあ、それにしても私達、大分エグいことやってますよねぇ。こうやって、日々学園の弱味になるようなネタを探して……。新聞部とやっていることが、変わりありません?」

 

標示「他人の不幸を副菜に添えてご飯を食べているような奴らと一緒にしないでいただけますか?我々は己の正義のために、そして未来の文月学園のために行動しているのですから。」

 

 淡々と返された。『自分達の正義のため』が先に来て、『文月学園のため』がついでに加えてきたような言い回しをしている時点で、新聞部の『他人のために動いているようで、結局自分のことしか考えていない』という風潮を受けついでいると思うのだけれど……。

 

文「あやや?何か不満でもありましたか?」

 

秋希「いいえ、何も?」

 

文「そうでしたか。いやぁ~、何やら木地君が新聞部の悪い影響を受けているんじゃ……なんて思っているのかと。……ここだけの話、私もたまに木地君が怖く感じるんですよ。クソがつくほど真面目な人ですからねぇ……。」

 

 そういう先輩も怖いんですが。なんでサラッと、こっちの考えを見透かしてくるのか……。

 

標示「……とにかく、今後の予定は決まりですね。部長、今日からまた、みっちりと指導しますから、そのつもりで。」

 

文「あややぁ~……。やっぱりそうなりますか。」

 

標示「当然です。以前のαクラス入部試験の対策のためにあなたの学力を上げてきましたが、それでもAクラス下位レベル。優勝は十分狙えますが、確実性はありません。……まあ、彼女が参加している以上、うまくいっても準優勝で終わるのは目に見えてますが……。」

 

 ハハハ……、やっぱりちゃんと調べているか。私も召喚大会に参加すること、そしておそらくは相棒(パートナー)が誰なのかも。流石にその相手に私から大会に誘ったことまでは、分からないでしょうけど。

 

標示「…………おや、もうこんな時間みたいですよ。」

 

文「あややや……、これは早めに部室へと戻りませんと。」

 

 木地先輩が見せた腕時計の時間は、二人が部室に戻らないことを部員が不自然に思うくらいの時間が経っていることを示していた。こうして、今回の会議も滞りなく終わることになった。

 

文「…………いえ、木地君、あなただけ先に戻っていてください!何やら、どこかでスクープ……と言うよりかは、事件が起きたようです。早く取材に行って、情報を整理しなければ!」

 

標示「……!そうはいきません。取材は後輩に任せて、あなたは部長としての役目を果たしてください。私から逃げられると思わないでください。」

 

 ……騒々しくこの場を去っていきましたね、先輩方は。

 さて、こちらも行動開始といきましょうか……。

 

 

 

 

 

 

 あ、そうだ……。せっかくだから、もう一つ火種を投下してみますか。

 

プルルルル……。

 

秋希「……あ、もしもし姫路さん?実はちょ~っと、話したいことがあって…………。」

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