バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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小問4 祭り前の仕込み

 現在時刻は8:57。日時は清涼祭当日だ。俺は今、とある人物との待ち合わせのために生徒指導室前にいる。

 この日に至るまでに俺達Aクラスの催し物であるメイド喫茶にも多少の変化……というか改良がなされた。

 

 例えば某Fクラス生徒(土屋康太)の協力と高橋先生監督のもと、喫茶店内に隠しカメラを大量に設置したり。

 流石に外部から来る人間の中にはいないと信じたいが、文月学園の生徒連中に関しては既に信用も信頼もない。こちらの売上が好調となれば、嫌がらせを息を吐くかの如くしてくる先輩方がいると確信している。そんな輩を黙らせるためにも、防犯も兼ねてそこには徹底的に労力を割いた。

 実際にここまでガッチガチの防犯システムを組んだ店があったとして、行きたいと思うのは極々一部のマニアックな人達だけだと思うが……。こういうお祭り騒ぎに酔って、問題を起こす奴の被害に巻き込まれるより百万倍マシだ。

 

 それでも一部の奴らがゴネたのだが……、女子には『喫茶店内でのトラブルを自分達で解決すること』を、男子には『今後一切、土屋との取引を禁止にすること』を盾に強行した。

 

 ……と、どうやら目的の人物が来たみたいだ。

 

零次「……お前にしては、随分と早い到着だな。俺の予想では、待ち合わせ予定時刻の9時から5~10分遅れて来るとみていたが……。」

 

雄二「俺にしては、ってお前な……。最近、俺は遅刻してないだろ……。いや、去年から遅刻は一切してないんだが。」

 

 そういえばそうだったか。近衛からは『坂本は朝が苦手だ』ということと、『始業ギリギリに来ることもあった』ということは聞いていたが……。それらの情報がごちゃごちゃになってたんだろうな。

 

零次「それはすまなかったな。それよりも、この前の件は考えてくれたか?」

 

雄二「ああ。ついさっきトーナメント表を確認してきたんだが……。そうだな……、2回戦と3回戦の教科の選択権なら渡せそうだ。」

 

 そう言って渡されたトーナメント表を見てみると……。なるほど、俺達と坂本達が戦うことになるのは決勝のようだ。そして、坂本の名前のあるブロックを注視してみると……。なるほど、確かに3回戦はともかくとして、2回戦の相手を予想すると、科目の選択権は要らなそうだな。

 

零次「そうか。なら、お言葉に甘えて選択させてもらおうか。……と、その前にまず、他の場所の科目を先に決めてくれないか?万が一選択科目が被って、計画が狂ったら、元も子もないしな……。」

 

 こうして、坂本のプランと擦り合わせを行いながら、各々各回戦ごとに科目を埋めていった。俺の方は案外適当に選んでたんだが、同じ教科を別の対戦で使いたい、と言うような衝突も特に起こらず、すんなりと全ての対戦科目がピタリと決定した。

 

零次「……ところで坂本、気づいてるか?このトーナメント表を見て……。」

 

雄二「ん?ああ…………、秀吉も参加するんだな。」

 

 秀吉?もう一度トーナメント表を隅々まで確認してみるが………………。あったわ。『2-F 木下秀吉』って書いてある。ペアの相手は……『3-A 宝風月』?聞いたことない名前だな。まあ、秀吉とペアを組む先輩ってことは、十中八九演劇部関係の人なんだろうが……。

 

零次「…………って、俺が言いたいのはそこじゃない。もっと全体的な話、一年生が数名参加していることだ。」

 

雄二「確かに、一年が何人かいるな……。ってか、一年って参加出来んのか?召喚獣を持ってない筈だろ?」

 

零次「こうやって、参加できているということは……つまりそういうことだろ?結構勘違いされているようだが、召喚獣のデータ自体は一年のも既に存在している。」

 

 ただし、俺達第二学年以上の召喚獣と違い、武器も装備されてなければ、服装も学園の制服で防御性能なんて皆無に等しいがな。そのうえ、まだ中間試験の時期も来ていないため、彼らの最高点数は100点、つまり良くてもDクラス程度しかない訳だが。

 

雄二「そうか……、それなら脅威はさほど無いか。」

 

零次「とはいえ、油断は出来ないがな。こうして大会に出ている以上、彼らだって優勝を狙って来ているはずだ。……まあ、トーナメント表を見た限りだと、お前達が一年と当たることはなさそうだが、もし当たった時は最大限に気を引き締めておけよ。」

 

 そういえば、このトーナメント表に記載されている一年の名前だが……。知っている奴全員が広報部なのは偶然か?

 

零次「……と、少し話し込んでしまったな。今度はこっちの約束を守る番だな。」

 

 そう言って、制服のズボンのポケットから畳まれた6枚ほどの紙切れを取り出す。

 

雄二「……ほう。これにお前の腕輪の情報が書かれてるわけか?」

 

零次「そうだ。この中から2枚取れ。二戦分権利を譲渡した訳だからな。」

 

 坂本はそれなりに時間をかけて、時折紙に少し触れたり、考え込んだりをした後、意を決して二枚の紙切れをひったくっていった。

 

零次「…………改めて、交渉成立だな。今、ここで確認していくか?」

 

雄二「いや、お前はこういう約束を破るような奴でもないだろ。教室に戻ったあとで、ゆっくり読ませてもらうさ。」

 

零次「……そうか。それじゃ、俺はもう帰らせてもらう。後のことは大体お前に任せていいよな?」

 

雄二「ああ。たとえ、お前が『アイツ』と組んでたって、勝って見せるさ」

 

 ……さて、坂本の無謀と思える自信も聞けたし、そろそろ教室へと戻るか。

 

 

 

 

ピンポンパンポーン

 

『ただいま9時半をまわりました。これより第××回文月学園祭、清涼祭を開催します。』

 

 学園中のスピーカーから、祭りの始まりを告げるアナウンスが響き渡ったのはそれから数分後のことだった。

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