バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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小問5-A 東は紅く、西白く

 最近姫路さんが、おかしくなってると思うのは気のせいだろうか……。

 

 僕の記憶では、姫路さんは誰にでも優しかった。……それこそ僕みたいな、馬鹿で甲斐性のない人間にも優しくしてくれていた。それだけじゃなくて、姫路さんは努力家でもあった。詳しいことは思い出せないけど……、姫路さんが何かにひたむきに頑張る姿は、僕の目には『憧れ』に映ったんだ。

 

 でも最近の姫路さんは……、何故か分からないけど、僕への当たりが酷い気がする。この前のラブレター騒動に、ついさっきだって、召喚大会の優勝賞品の使い先について、美波と一緒になってしつこく迫られた。それこそ、雄二がフォローしてくれなかったら、ずっと付きまとってくるんじゃないか、って思うくらいに。……まあ、雄二のフォローの仕方も最低だったけどね。

 

 ……もしも。

 

 …………もしも、その原因がFクラスにいることだとしたら。僕がやっていることは、本当に正しいことなんだろうか?美波は、姫路さんが転校することをどうしても阻止したいようだけど……。それだって、数少ないFクラスの女子がいなくなって、友達が減ることを恐れているエゴから来るものじゃないんだろうか……?

 

 …………ダメだ。人のことをそんな風に悪く言うのは。たとえ、それが本心だとしても、姫路さんがいなくなって欲しくないのは、美波も僕も同じだ。

 やっぱり、零次や近衛さんに相談するべきなのかな……。とりあえず今は、この召喚大会を優勝することだけを考えよう。

 

 

 

・・・

 

 

 

 …………退屈だ。……いや、店番がつまらない、という訳ではない。そもそも清涼祭が始まって、まだ30分程度しか経っていない。その間にAクラスのメイド喫茶(出し物)に来た奴の特徴と言ったら、文月学園の生徒が約6割、他校の生徒と思われる人が約3割、残りその他、といった具合。その中でも俺が最も警戒している文月生徒も、9割は後輩と思われる顔ぶれで、わざわざAクラス(俺達)にちょっかい……もとい妨害を仕掛けてくるような奴はいなかった。……ま、このまま何事もなく終わってくれた方が楽なんだがな……。

 

「……あの。もう少し、やる気を見せてくれませんか?店番がそんなだらしない姿していたら、誰も入りたがらないと思うのですけど。」

 

 そう言って冷ややかな目を向けてきたのは、かつて過激派の一員だった西京葉玖だ。彼女とはちょうど数週間前のFクラスとの試召戦争を機に和解し、今は過激派から霧島派閥へ移りかけている途中らしい。

 

零次「それはそれでいいんじゃないか?客が入らなければ、少なくとも問題は起きないんだからな。」

 

「よくないでしょう。皆この日のために、入念に準備を進めて来たんです。ならばAクラスらしく、他のクラスに負けない利益を叩き出したいはず。その気持ちはあなたも同じでしょう?」

 

零次「残念だが、俺にそんな感性を期待しても無駄だ。俺が危惧しているのは店の利益よりも、面倒なトラブルが起きることだからな。」

 

 何か問題が起きれば、全責任が俺にのしかかる訳だからな。これがこちら側の不備だと言うなら、まだ納得できる。が、クレーマーが意図的に騒ぎ立てたものまで、こちらが悪い風に言われるのは、納得いかない。

 

零次「ところで話は変わるが、西京、お前は召喚大会にエントリーしていたみたいだが……。結果はどうだった?」

 

「……惨敗です。私達の力不足もありますけど、先輩の逆鱗に触れたことが、一番の敗因だと思います。」

 

 ……そういえば、西京達の対戦相手は誰だったんだ?坂本からもらったトーナメント表で西京の名前を探すと……。見つけた。

 

 

2-A 西京葉玖

2-A 横沢芽衣

 

VS

 

3-A 東堂茜(とうどうあかね)

2-E 戸祭太子(とまつりたいこ)

 

 

 ……なるほど。この人が相手だったのか。となると、敗けた原因も容易に想像できる。

 

 東堂茜。トーナメント表にある通り、3-A所属の生徒だ。去年の時点から清涼祭の運営委員長を務めており、去年俺がクラスを追い出された時も、彼女から運営委員会の監視部隊員に任命されたのだ。この大義名分のもと、俺は去年の清涼祭に参加することが出来たのだ。念のため、変装はしたが。

 そんな彼女の身長は大体185cmほど。女子にしては大分ガッシリとした体型の持ち主であり、体育でも先生からの評判は良いのだが、部活には所属していないし、スカウトもすべて断っているらしい。

 その理由はこれまでスカウトに来た人間が、『自分と好みの異性のタイプが合わないから』というもの。流石に小中学生や教師相手には自重しているそうだが、初対面の人には自己紹介の後に、ほぼ必ずと言っていいほど好みの異性のタイプを聞いているという。東堂先輩曰く、『好きな異性のタイプから、普段その人物がどのようなことを考えて生きているか、人には決して見せることのできない本性を割り出すことが出来る』とのこと。

 

 ちなみに俺はこの質問に対して、近衛の本性を包み隠さず暴露したわけだが、内容もさることながら、学園での彼女の評判と乖離し過ぎたためか、若干引かれてしまった。

 

零次「逆鱗に触れた、ねぇ……。東堂先輩とはおそらく初対面だろ?質問になんて答えたよ?」

 

茜「そこの生徒ぉ……確か西京、で合ってるよなぁ?コイツはぁ『勉強第一だったので微塵も考えたことなかった。』ってぇ、答えたぜぇ?」

 

「と、東堂先輩……。」

 

 ……噂をすれば何とやら、って奴だな。相も変わらず荒っぽく、かつやや間延びした口調だが、どこか俺には耳障りがよく感じるんだよな……。

 

茜「けどよぉ、コイツの言い分はぁ、まだ良いんだよ……。問題はコイツの相方の方だ!!ソイツはなぁ、『少なくとも年収は1000万以上で、私の言うことを何でも聞いてくれる人』とほざきやがったんだ!!相手のことを金づるか奴隷としか見ていねぇ!!こんなの、アタシじゃなくたってなぁ、キレるだろうがよぉ!!」

 

 東堂先輩、大分頭に来ているようだ。多分これまで質問してきた人でも、ここまで自己中心的な答えを述べた人はいなかったのだろう。隣で複雑な表情を浮かべている西京を見ていると、同情しか湧かないな。

 

茜「……ったく、その時のぉ、ソイツの顔を思い出しただけでも、腹が立ってきた。戸祭が業務の一部を引き継いでくれたけどなぁ、もうちょっとぉ、頭冷やさねぇといけないかもなぁ……。」

 

 そう言って、東堂先輩はさっさとこの場を離れていった。上の階へ向かったのを見ると、自分の教室(3-A)へ戻ったのだろうか。

 

 さてと、横沢がいないのが気がかりだが、西京が戻ってきたとなると、そろそろ俺の番が回ってくるだろう。ちょうど宣伝から帰って来た久保と栗本に警備を任せ、俺は召喚大会の会場へと向かった。

 

 

 

・・・

 

 

 

 ……さて、召喚大会に参加するために、会場である校庭の特設ステージ、その選手控室に来たわけだが……。

 

零次「……来ないな。」

 

 俺の相方が来ていない。まだ時間まで余裕があるとはいえ、少々不安になる。

 俺達のタッグの評判は、優勝候補の一角として他の参加者から注目を浴びている。だが、その要因は相も変わらず俺の相方だけに向けられたもの。俺個人の評判も『相方一人に任せきりにして商品をかっさらう卑怯者』、『Fクラスに落ちた優等生の威を借りている二年の恥さらし』、『寧ろ、自分が組んでやった方が苦労せずに優勝できるし、相方も幸せだろう』と、相変わらず散々なものだ。

 しかも、それを撒き散らしてるのは3年の上位クラスの先輩方ときたもんだ。学園の一番の顔とも言える人達がコレなのに、よく毎年毎年300~400に近い人数が受験しに来るもんだと思ってしまうわ。

 

?「いや~、ゴメンゴメン、零次。ちょっとFクラス(うち)の出し物の方でトラブルがあってさ……。」

 

 俺が会場に来てから3分ほど経過して、ようやく相棒がやってきた。……ま、俺がペアを組める相手なんて、二人に一人しかいない訳だが。

 

零次「トラブルだと?Fクラスの奴らが、とんでもないことやらかしたのか?それとも、Fクラスも同じ飲食系統の出し物だから……、質の悪いクレーマーでも来たのか?」

 

秋希「まあ、後者ね。アイツのお陰で、なんとか最悪の事態は免れそうだし、私も大分スカッとしたけど……さ。」

 

 アイツ?…………ああ、もしかして弟か?なら、近衛が若干不機嫌なのも説明がつく。

 

秋希「ところで…………零次でしょ。アイツを呼んだの。」

 

零次「どうだろうな。『Aクラスの出し物を見に来てくれ』としか、俺は言ってないからな。お前の所に来たのは、奴の勝手だ。」

 

秋希「いや、学園に呼んだら全クラスの飲食系の出し物、全部回るに決まってるでしょ。……まあ、私個人の事情でFクラスの総意を曲げるわけにもいかない訳だけどさ……。」

 

「あ、あのお取り込み中の所すみません。そろそろ時間なので、入場していただけませんか?」

 

 と、なんだかんだ口論をしていたら、運営委員会の生徒らしき人から、そう言われた。

 それじゃ、行くとするか。さて、お相手は……。

 

?「はあ…………。まさか、あの二人と真逆のブロックに組まれるとは……。折角、あのクソ女共をボコボコに痛めつけれると思ったのに……。」

 

?「私も同じ気持ちですわ。あの豚野郎をこの手で始末するチャンスでしたのに……!」

 

 近衛と同じクラスの根民と………誰だ?トーナメント表に目を落とす……までもなく、電光掲示板にデカデカと表示されていた。

 

 

2-F 近衛秋希

2-A 双眼零次

 

VS

 

2-F 根民円

2-D 清水美春

 

 

 ああ…………。アイツか。近衛がくれた情報だと、確か同性愛者で、Fクラスの島田に惚れているとか。それでいつも奴の隣にいる明久を目の敵にしているんだったか。

 

円「……ねえ。吉井君のこと、豚呼ばわりするのはやめてって、言ったと思うのだけど。」

 

美春「そのセリフ、そっくりそのまま返して差し上げますわ。お姉さまを愚弄する者は、たとえ神であろうと許しませんわ。」

 

 うーむ……。俺が言うのもどうかと思うが、この二人どうしてペアを組んだんだ?クラスが違う以上、接点と言ったら去年同じクラスだったとか、部活が同じとか、試召戦争くらいだろうが、どれの可能性を考えても、俺の持ちうる情報では、この二人が手を組む状況が想像できないんだが……。

 

秋希「あー、この二人が相手ねぇ。………………零次。」

 

零次「……なんだ?」

 

秋希「…………ここは任せる!!やってしまいなさい!」

 

零次「待てやコラ。」

 

 いきなり何言ってんだ、コイツは。たまに近衛の思考が想像の斜め上を飛んでいくことはあったが、今回はあまりにもその意図が読めなさすぎる。……まあ、この二人が相手で教科もアレなのだから、近衛がいなくても問題は皆無だし、その逆も然りだが。

 

円「……どうやら、向こうはAクラス代表一人で相手するみたい……。見下されているとも、それが妥当とも、どちらとも思えるのが腹立ちますね……。」

 

美春「問題ありませんわ!相手は一人。こっちは二人です!それに、卑劣な手段で学年首席になった偽りの代表なんて恐るるに足りません!」

 

 …………よし、少しは相手に合わせようとも思ったが……、一瞬で終わらすか。立会いの船越先生も体を震わせてるしな……。

 

「「「試獣召喚≪サモン≫!!」」」

 

お馴染みのキーワードで近衛以外が召喚獣を喚び出す。学園指定の制服に木刀を持つ者、ゴスロリ服に背丈程の大きさのカッターナイフを構える者、オーソドックスな西洋鎧を身に纏う者……。まさに三者三様だ。

 

円「……あ、そう言えば、Aクラス代表の得意教科って確か……。」

 

 

 

[フィールド:数学]

2-A 双眼零次・・・506点

 

2-F 近衛秋希・・・NONE

 

VS

 

2-F 根民円 ・・・100点

 

2-D 清水美春・・・106点

 

 

 

美春「……………………はい?」

 

円「ま、そうですよね。対戦ありがとうございました……。」

 

 一人が呆然とし、一人が諦めの表情を浮かべるのを横目に、俺達は二回戦へとコマを進めたのだった。

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